「ちょっと待ってください。」
冒険者カードを無造作に仕舞って出ていこうとする少年を私は呼び止めた。
「どうしたのよ、めぐみん。ユウヤに何か?」
「ユウヤと言いましたね。私は、あなたに質問があります。」
横でうるさいゆんゆんを無視してこの新参者の顔を睨み付けていると、感情の窺えないこいつは、なんと私を横抱きにして大股に歩き出した。
「なにをしているのですか?早くおろしなさい。
やめろ~」
「ユウヤがめぐみんを抱っこしてる、うん?めぐみんがユウヤにしがみついてるのかな?あれ?どっちだっけ?」
「おかしなことを口走るのはやめなさいゆんゆん。あなたの従兄弟は変態ですか?」
「俺に聞きたいことがあるんだろう?
ここでカードを操作する気はないし、公衆の場で秘密の話をする気もない。」
じたばた暴れる私を苦もなく抱えて、傍若無人男はゆんゆんを従えて族長の屋敷に戻ってきた。そのまま、ずんずんと奥に入ってゆく。
入り口はゆんゆんが開け、中にいる使用人達も圧倒されてただ頭を下げるだけである。
まるで、このユウヤと言う男がここの主人のように振る舞っている。
「それでなにを聞きたいんだ?」
「そうじゃないでしょう!何故、あなたと私が一緒のソファーに座っているのですか?」
今、私とゆんゆん、この男と、ついでに族長がリビングにいるのだが、族長とゆんゆんが一つのソファーに座り、このユウヤが私を後ろから抱えたまま、一緒に座っているのだ。
「めぐみんが、いつもと違うわ。顔真っ赤よ。」
「ゆんゆんうるさいですよ!」
怒鳴り付けてみたが、自分でも耳まで熱くなっているのがわかる。目の前に族長がいるし、ここで暴れるわけにもいかない。なんとか脱出しようとしたが、私を抱えてる腕はびくともしない。
私の動揺を気にかけず、テーブルに先程作成した冒険者カードを置いて確認しだした。
「俺の名はユウヤだ。よろしくな、めぐみん。」
「我が名はめぐみん!紅魔の里随一の魔法学校レッドプリズンの首席にして、やがて最強の魔法使いになるもの!」
「おお!立派な名乗りだね。ゆんゆんも見習いなさい。」
「ユウヤに抱えられたままじゃ、格好つかないわよ。」
ゆんゆんが生意気なことを言っているがこのさい無視だ。この男………いや、ユウヤがいじっているカードに注目してみる。年齢が14で、レベルが12になっている………。
「スキルポイントが75もあるよ!それに悪魔特攻と全状態異常無効って最初からスキルが付いてるんだけど?」
「ユウヤは、この紅魔の里まで歩いて来た様だよ。」
「遠目にオークを見た時は、悲惨だった。あの時は、全力疾走しながらほとんど諦めていた。」
「それで髪がその色に変わったとでもいうのですか?」
「まさかな…。これは、父親ゆずりだよ。瞳は母親からだ。この目と手紙がなければ、門前払いだったろうさ。」
私達と会話をしながら冒険者カードを操作し、彼は、奇襲スキル・ウエポンマスタースキルそれに物理と魔法両方の耐性スキルを獲得していた。
それぞれ、奇襲スキルが2ポイント・ウェポンマスタースキルが3ポイント・物理魔法両方の耐性スキルが5ポイントだ。
10ポイント消費で残り65ポイントだ。
いつものごとく夕飯をごちそうになった私は、泊まっていくようにとのすすめを断り、帰宅の途についた。
「何故、あなたがついて来ているのですか?」
「めぐみんの家まで送って行くよ。」
「………あなたが年上だったとはね。今あるポイントでも上級魔法をおぼえられるでしょう?」
「よせやい。一日しか通わないで、卒業した気にならないさ。聞きたいのはそれじゃないだろう?」
「あなたの父親は?」
「俺がものごころつく前には、いなかったな。魔王軍幹部と闘って殺されたとさ。」
話している内に家に着いた。なぜか父のひょいざぶろうと母のゆいゆい、おまけに妹のこめっこまで玄関前に立っていた。
「族長の家で世話になってるユウヤです。めぐみんを送ってきました。」
挨拶をして背を向けた彼に無言だった父が凄む。
「娘はやらんぞ!」
頭を下げて帰って行ったユウヤを見送ってから、家の中に入る
。
ユウヤは、紅魔の里まで自力で来た設定なのである程度戦闘経験があるようにしました。
赤い瞳と魔力の高さが紅魔族の証として、混血要素を銀髪で表現しました。金髪にすると、王族、貴族とのストーリーを考えなくてはいけないと思い、断念しました。