その日、アクセルの地では幸いにも雨は降ってなか
ったので依頼を受けることにした。
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「昼前にギルドに来て、“ブラックファングの討伐”の依頼があったのはラッキーでしたね。」
「いや、めぐみん、それってラッキー違うから。
駆け出しの街で一撃熊の亜種のブラックファングなんて塩漬けクエストになる扱いだから!」
「クリス、それでも毎朝、紅魔の里でモンスターを狩ってる私たちには可能だし、ギルドの依頼は素材換金だけじゃなく依頼報酬が入るからね。」
「じゃあ、話に一段落ついたところで相手もしびれを切らしてるからな、さっさと始めよう。」
ユウヤが一同に号令をかける。現地についてさほどかからないうちにクリスが目標のブラックファングを見つけた。
「何かに追いかけられてるように見える。
めぐみん、先にこの群れだけでも片ずけよう。」
「準備はできてますよ、エクスプロージョン!!」
閃光と爆音が轟き、一撃熊が十頭も四散した。
残ったブラックファングも瀕死の状態でクリスがなんなく仕留めた。
「アサシンになって攻撃力が上がったの?」
「それだけじゃないよ、ねりまき。新しく獲得した会心の一撃のスキルのお陰でね、どこでも武器が命中した部分が相手の弱点になるんだ。」
「必要ポイントは多かったみたいだけど、クリスはずいぶんスキルポイントが貯まってたみたいだし、問題ないよね。」
「それにしてもクリスがレベル七十とは驚きです。」
「今まで一人で活動してきたことが多かったからね、それでも盗賊職だからギルドでは注目されなかったんだ。他の人には、カードを見せなかったからね。でも、それを言うなら、君たちのレベル上昇の早さは、すごいよ。」
「まあ、私とあるえは、レベル十八に上がってるし、めぐみんは?」
「今ので二十二になりました。そしてユウヤは………。」
「空気が変わったな‥……クリス、分かるか?」
「これは………ゴブリンにコボルドにレッドボアに、ああ、一撃熊も一杯いる。他にもまだ分からないけど後から来てるよ。ギルドに知らせた方がいいんじゃないの?」
「いや、ここで見逃しても依頼が来るんだ。
被害が出る前にやってしまおう。爆裂魔法を使ってしまったから、めぐみんは慎重にな。“ホーリーテリトリー”…今回は逃がさないために奴等を囲んでるからな。」
そう言ってユウヤが黒い長剣から衝撃波を放つ。
ルーンオブセイバーだ。少年はソードマスターのスキルを好んで使うが、以前よりも威力が増している。複数の一撃熊が巻き込まれて倒れ伏した。
めぐみんは、槍で地道にコボルドを相手している。
「いっくよー、ライトオブセイバー!」
「ライトニングストライク! おまけにカースドライトニング!」
「ふふん、魔法の檻からでられないんだから、攻撃し放題だね♪」
「うーん、辺り一面死体の山だねー。」
「それでも、レベル上げには役立ったよ。これでレベル二十だ。」
「私もあるえと一緒♪」
少女達が賑やかにしゃべってるところにユウヤが戻って来た。大きなトカゲのようなものを引きずっている。
「それは、バジリスクじゃないですか?
危ないところでしたね。」
「俺には奇襲スキルがあるからな。
石化攻撃でお前らが襲われる前に仕留められてよかった。」
その後、ギルドに戻り、依頼の他にどこかから逃げてきたであろう、大量のモンスター討伐の報告に驚かれたが、追加の報酬が出た。
「今回は災難でしたね、ユウヤさん。
本来なら、ブラックファング一頭だけの討伐依頼なのですが、十数頭の一撃熊にゴブリン・コボルド・レッドボア、ついでにバジリスクですか‥……」
「素材も買い取ってもらうがバジリスクはこちらで引き取る。」
「そうですか。追加報酬と素材の買い取り分と合わせて千二百万エリスをお渡しします。」
「それで、熊どもが逃げてきた理由があるのか?」
「………つい最近、魔王軍の幹部らしき存在がそれほど遠くない古城に来てると報告があったんです。」
待っていた仲間にこの場で小分けにしてもらった報酬を分けていると、カズマ達が近づいてきた。
「よう、もう帰るのか?」
「ああ、受付で聞いたが魔王軍の幹部が来てるらしいな?」
「お前らは気づかなかったようだが、今朝から、低レベルの依頼は軒並み出てないんだよ。」
「じゃあ、しばらく仕事はなしだな。別な街に行くか。」
「お前らが行って倒してきてくれよ。」
「それより、相手の偵察が先だろう。」
出て行こうとするユウヤ達をカウンターの奥から出てきた年かさの男性職員が呼び止めた。
「あなた方にその古城に現れた幹部の偵察をしてきて貰いたいのです。」
ユウヤが仲間を見回すと、無言のうちに賛意を表していたので、否やはなかった。
「オーケー。明日は朝から来て打ち合わせをしよう。それでいいな。」
頷いたベテラン職員を見て、少年少女らは冒険者ギルドを出た。
「アイツ、バジリスクの死体を引きずって行ったぞ。」
「たぶん、紅魔の里に持ち帰ったら、鍛冶屋と魔法の武具を作る気なんだと思います。」
「そうなのか、ゆんゆん?」
「王都で製作されてる武具より、性能面なら、紅魔族が作ったものが上です。テレポートが使える強みですね。」
ゆんゆんは、羨ましそうな表情をしていた。
「低レベルの依頼がないのは、さっきので確定だし、俺たちはどうするかな?」
大量発生したモンスターの中に地味にバジリスクがいました。
武器?防具?これは使えるかも。
原作では、爆裂魔法以外は、攻撃手段のないめぐみんですが、この物語ではしっかり武器の訓練もしてるので、ダンジョンもいけます。