翌日の昼になってユウヤ達がギルドに現れた時も中では、仕事もない冒険者が飲んだくれているだけだった。
奥に行ってほどなく出てきた彼らは、さっさと出発してしまった。
「おい、今見送りに出たのって、ここのギルドマスターだろ?名指しの依頼って………。」
「俺達にゃー関係ねえだろう。どうせ、王都から討伐隊が来なけりゃ、ずっとこのままなんだしよ。」
ユウヤ達が出ていってからだいぶたってから、奇妙な現象が起こった。
アクセルは快晴なのにある一帯だけが豪雨に襲われていたのだ。
午後になってから、たまたまギルドに来ていたカズマ達が遅い昼食のために席についた。
「ねえ私思ったんだけど、あのユウヤって奴、私を避けてない?」
「アクアさんをですか?」
「というより、向こうからは近づこうとはしてないな。」
「ゆんゆんの知り合いなんだから、もっと親しくなれるかと思ったんだけどゆんゆんのことも突き放してる感じだし。ダクネスは………ダクネスは実家なんだっけ。」
「そうですね‥……あのクリスさんもユウヤのパーティーに入ってから、知り合いのダクネスさんにも自分からは話しかけようとはしてないようですし………カズマさんの社交性があれば、とっくに親密になってもおかしくないですもんね…私なんか‥……」
「そうね、カズマさんなら、とっくに相手の弱味を握って寄生するかと思ったんだけど~」
「おい、いいかげんにしろよ駄女神が!」
「なによくそニート!好きな相手がいるゆんゆんに色目つかってるロリマが生意気よ!」
「ふざけんなよ!おまえは今の今まで何の役にもたってねえじゃねえか!それで毎回お前がこさえた借金は誰が払ってると思ってるんだ。
今目の前に並んでる料理の支払いも自分の分は払えるのか?」
「あのカズマさん?私、昨日の分の支払いで前貸してもらったお金使っちゃったんですけど?」
「知るか!自分で始末つけろ!」
「お願いよ~カズマ様~」
目の前で繰り広げられている喜劇を見つめながら、ゆんゆんは、別なことを考えていた。
ギルドに来たとき、既にユウヤ達はクエストに出た後らしかった。間に合えば付いていきたかった彼女は、内心がっかりしていた。
今のパーティーは、確かに楽しい。
人付き合いが苦手な彼女があの時パーティー加入をしてなければ、もしかしたら今は一人で各地を巡っていたのかもしれないし、ろくに知り合いも増やせなかったろう。しかしだ、パーティー加入ができなかっためぐみんの前にユウヤが現れた。
「あまりにもタイミングがいいんだよね。」
独り言をつぶやいてみる。最初から、めぐみんだけを迎えに来たのかな………
豪雨が続いていた空はいつの間にかこちらと同じ夕闇に包まれているようだった。
「向こうの雨がやんだようだから、もうすぐゆんゆんの好きな男が帰ってくるわよ。」
気がつけば、目の前の争いはやんでいて、アクアが優しく微笑んでいた。
「お前、そうしてるとマトモな女神に見えるな。」
「ふざけんじゃないわよ、ロリニート!
私は、正真正銘の水の女神よ!」
「じゃあ聞くがな、あっちの大雨がやんだら、なんでユウヤ達が帰ってくるんだよ?」
「カズマさん、めぐみん達が受けたのは指名依頼なのでたぶん、古城の魔王軍幹部の調査でしょう。」
「ゆんゆんの言うことは分かるが、それが雨となんの関係があるんだ?」
「これだから引きニートはダメね。
いい?調査依頼に行ったんだから、行き先はあの古城よ?そしてあの豪雨は、ただの天気雨じゃないのよ。私ほどじゃないけど、女神に次ぐ神聖に溢れた聖水の雫なのよ。」
「おい、マジかよ?聖水って女神でもないのにあんな大量に降らせることできんのかよ?」
「できるんでしょうねあの男には…それに、今しがた向こうからの邪気も晴れたようだし‥……問題ないわよ。すぐに帰ってくるわね。」
アクアの発言で見るからに元気になったゆんゆんを複雑そうに見つめるカズマがいた。
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カズマ達がギルドに着く前、五人の男女が見晴らしのよい丘に到着していた。
ユウヤとそのパーティーだ。
「すまないな、ここで戦闘前の打ち合わせをしよう。」
「え~今日は偵察だけじゃないの?」
「偵察クエストの報酬は百万エリスだ。
相手を討伐しても、領主の横槍があったり、たとえ、正当に報酬が支払われたとしても、王都に目をつけられて俺たちを束縛しようとしてくるかもしれない。だったら、クリスの言う通り偵察だけして帰った方が良いのかもしれない。」
「だったらどうして?」
「そろそろ潮時なのかもしれないからだ。」
全員がユウヤを見つめる。
「アクセルは、駆け出しの街だ。そして冒険者として新人だっためぐみん・あるえ・ねりまきもあそこにいる奴等を討伐すればlevel二十五にはなるだろう。そろそろ、この街を出る時期だ。
最悪、報酬がでなくとも領主と揉めてお尋ね者にならなければよしとしよう。」
「分かりました。幸い、当面のお金には困っていません。他のまちに行くにも夜には紅魔の里に戻り、翌日にテレポートの登録ポイントから再出発ができますからね。」
「うんうん、めぐみんの言う通りだね。
私たちは、言ってみれば、“自宅住まいの冒険者”なわけだし?里の森に討伐に行けば、普通に暮らしていけるくらいにモンスターの素体が得られるからね。」
他のメンバーにも不満はないようだ。
草原に座り込んだままユウヤがネックレスを取り出し手渡した。自分以外は全員だ。
「……ユウヤ、これは身代わりの首飾りかい?」
「あるえの言った通りだ。ねりまきは、あれから状態異常の解除の魔法を教わったが、即死の呪文には対応できないだろう?」
「でも、それではユウヤは?」
「俺にはあらゆる状態異常は効かない。
エリスのお陰だな、ありがとう。」
礼を言われたクリスは頬を赤らめてうつむいた。
それを見ていた他の娘は、不機嫌になる。
「なんかずるくない?ユウヤに加護を与えたのは女神エリスなのにどうしてクリスがお礼言われるのかな~」
「ずるくないさ。私とエリスは一心同体だからね、
私はクリスでもあるし、女神エリスでもあるのさ。」
険悪になりそうな雰囲気に“ゴトッ”と音がして皆が注目した。それは、銀色に輝く円形の盾だった。
「バジリスクを討伐しただろう?鍛冶屋の親方とひょいざぶろうさんと三人で大急ぎで作ってみた。」
「ユウヤ、もしかしてこれは相手を石化させる盾かな?」
「ああ、それも抵抗される確率はかなり低い。
ボス以外は軒並み通用するはずだ。
片手でメイスを使うねりまきに渡しておく。
回復魔法のために、魔力を温存しなくちゃいけないだろ?」
「ありがとう♪♪」
「ねりまきだってずるいじゃないか。」
「そうだそうだ~」
「うるさいな、これでいいの!」
「それじゃあどうするか。俺とクリスで突入して相手を挑発するか‥……それとも手持ちのマナタイトを魔力補充用と考えて城に爆裂魔法をくらわせるか?」
“爆裂魔法を”の台詞でめぐみんが嬉しそうにしたが途中で驚いた顔で城を指差した。
「………城門が開いてます。」
そして、いつのまにか鎧を装備した大量のアンデットが出現しており、集団の中央には人馬ともに首なしの騎士がいた。
「?!あれはデュラハン!王都を襲撃した魔王軍の首なし騎士だよ!」
「いかにも、我こそはデュラハンのベルディア!
魔王軍幹部の八人が一人。誇り高き暗黒騎士である。我輩の城に爆裂魔法など放たれては迷惑なのでな、貴様らにはここで死んでもらおう!」
戦闘前で一度切ります。
めぐみんがカズマパーティーではないので、爆裂散歩はありません。
ユウヤは、それこそ毎回めぐみんに爆裂魔法を撃たせますので。環境破壊と魔力枯渇の問題がなければ、連発も視野に入るかと思います。