深紅の瞳の魔法戦士   作:アキラ1

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ミツルギファンの方には申し訳ありません。
クリス(エリス)が完全に肩入れしているので、魔剣の勇者の出番は今回限りです。


28話

「やぁ、みんなお待たせ!」

 

ユウヤ達がギルドの奥から出てくるとクリスがカウンターの手前で待っていた。

 

「クリスの用が終わったなら早く帰ろう。

この街は、長居する所じゃない。」

 

「ちょっと待ってくれないか?」

 

目の前には、サークレットを装着し蒼い全身鎧を着込んだ青年が立っていた。

傍らには取り巻きのような女の子が二人。

そして、三人を睨んでいるカズマ達が傍に立っていた。

 

「カズマ、こいつらは?」

 

「はじめまして、 僕は…」

 

「あぁ、お前には聞いてない。カズマが説明してくれ。見たところ、ずいぶん険悪なようだし、ここにいる他の冒険者にも恨まれているようだしな。」

 

いつのまにか傍らにゆんゆんも来ていた。

仲間の少女たちの前に出て様子をうかがうユウヤ。

 

「こいつは、ミツラギというんだ。」

 

「いえカズマさん、カツラギさんですよ。」

 

「失敬な、僕の名前はミツルギキョウヤだ。」

 

「だから、どうした。説明しないんなら俺達は帰るぞ。」

 

「いや待ってくれ、話すからよ。」

 

痺れを切らしてこの場を離れようとすると、 慌ててカズマが説明を始めた。

それによると、ユウヤ達がギルドの奥に消えた後、このギルドに三人組の冒険者が現れた。

そのうちの一人の青年の名がミツルギキョウヤ。

世間で“魔剣の勇者”の二つ名で知られている高レベルのソードマスターで、一緒にいる二人の少女はフィオとクレメアと言うらしい。

それがギルドの酒場でカズマ達と一緒にいたアクアを見つけ話しかけた。アクアが馬小屋で寝泊まりしていることを聞き、激昂、一緒にいた、ゆんゆん・ダクネスにも強引に勧誘の声をかけて大ひんしゅくをかった。

 

「ふうん、ゆんゆん達だけじゃなく、割りと見た目が良さそうな私らもそばに侍らせてハーレム気分でも味わいたかったのかな?」

 

「だとしたら、そちらにいる女の子二人は、どう感じるんだろうねー。ずっと一緒にいて君を支えてきたはずなのにさ、ないがしろにされて面白くないんじゃないのかな~♪」

 

「そんなことはない!アクア様たちも君たちも立派な上級職だ。特に君たちはアークウィザードが三人にアサシンまでいる。レベル三十七のソードマスターの僕と一緒に来るべきだ。」

 

ねりまきに指摘され、あるえに煽られて、ミツルギは必死にアクア達が上級職だから自分といた方がよいと弁解した。

しかし、話を聞いていためぐみんは容赦しなかった。

 

「アクア達はあなたについていくと自分から言ったのですか?言ったなら、もめてるわけがないですね。私たちもお断りです。

上級職云々もあなたのこじつけでしょう。

あなたのそばにいる二人も上級職ではないでしょう

?」

 

「つまり、拗らせた自称勇者が回りに迷惑かけてるだけか?」

 

カズマの放った一言に周囲からは失笑と嘲笑が浴びせられた。

喧騒を余所にクリスがユウヤに耳打ちする。

 

「ユウヤ、あれは本物の“魔剣グラム”だよ。

私、お願いがあるんだけどな~」

 

いたずらっぽい笑みを浮かべたクリスの頬をなでていると、我慢の限界に達したミツルギが叫ぶ。

 

「決闘だ。サトウカズマ、君が勝ったら何でも一つ望みを叶えようじゃないか。勝負しろ!」

 

その瞬間、カズマは思いきり悪どい顔をして答えた。

 

「声を掛けられた当人に断られたら、腕ずくで連れ去ろうとするわけか~ギルドはこう言うことを見逃す訳なのかな~。低辺職の冒険者に高レベルソードマスターがごり押ししてるんですけど?」

 

酒場内はますます剣呑な雰囲気になる。

居合わせた女性冒険者はミツルギを女の敵と言う目で見ている。ミツルギも

今さら引っ込みがつかない状態だ。

 

「まぁ、待ちたまえ。不公平だと言うなら、上級職同士で闘うならどうだね?幸い、そこにいるユウヤ君も上級職だしね。」

 

奥から現れた痩身の男性に一同が注目する。

あちこちから、『ギルマスだよな』と声がする。

 

「つまりは、あれか?ギルドの体面を取り繕ってるわけか?」

 

「この場はこうする他ないだろう。」

 

「王都で話題になってる“魔剣の勇者様”はないがしろにできないから理不尽もまかり通ると言うわけだな?良いだろう。が、後で苦情が出ないように条件を書面で残すことだな。

ただし、俺が闘うんだ。試合なんかのつもりでいないことだ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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ギルドの裏手、芝生が生えた広場にやって来た。

ギルドの責任者たるギルドマスターの他に記録係として指名された職員が一名。

そして、当事者としてカズマのパーティーとユウヤのパーティー。加えて、ギルド内にいたほとんどの冒険者が見物している。

ユウヤはクリスと内緒話をしている。

クリスが含み笑いをしながら、空を指差している。

 

「僕の条件は先の通りだ。ユウヤと言ったね。

勝ったら、君の言うことを何でも一つ聞こうじゃないか!」

 

「……出来もしないことをよくもまあ…。

おい、今のをちゃんと記録したか?

ちゃんと細かい取り決めをしなくていいのか?

俺が勝ったら、“お前の一番大事なもの”をもらうぞ。そこにいる二人もこいつに加勢しなくていいのか?後で卑怯だなんて言うなよ。

ミツルギ、一番大事なものと言われて、どうして剣を見てるんだ?なぜお前を支えてくれる彼女達の心配をしないんだ?最低なやつだな?」

 

加勢しなくていいのか?ユウヤの発言に動揺したフィオとクレメアだったが、一番大事なものを奪うの言葉にミツルギが彼の魔剣グラムを気にしているのを見て失望した様子だった。

同様にこれには、他の冒険者、とりわけ女性はゴミを見る視線を向けている。

 

「うるさい、勝負をさっさと始めろ!」

 

完全に頭に血が上ったミツルギを尻目に、なんとユウヤはその防具の胴体部分と盾をはずしてしまい、直剣だけを携えてかまえた。

 

「いいぞ、合図をしてくれ。」

 

 

 

「それでは、相手の戦闘不能か降参にて決着とします。始め!」

 

 

合図と共に、猛然とミツルギが走り込んでくる。

わざと離れた位置で戦闘の合図を受けたユウヤが指輪をはめた左手を掲げる。

 

「“ホーリーテリトリー” 」

 

瞬間、ミツルギとユウヤが対峙している空間を白銀の障壁が覆った。

 

「小細工をするな、ルーンオブセイバー!」

 

「ルーンオブセイバー!」

 

激昂したミツルギが魔剣から衝撃波を放つとユウヤが同じスキルで返す。正面からぶつかり合ったエネルギーはミツルギに向かい、魔剣の勇者は猛烈な勢いで吹き飛ばされた。

爆風に向かって疾走するユウヤを見て、めぐみんがぽつりと洩らす。

 

「一気に決める気ですね。私達を賭けの対象にしたギルドマスターにもそうとう怒っているようです。」

 

「でも、あの魔剣グラムには、普通の剣には太刀打ちできないよ?何しろ神器だし。」

 

「律儀に刃と刃を会わせる必要はないのですよ、見てください!」

 

めぐみんが指差す方を周囲も見つめる。

吹き飛ばされたミツルギだが、ユウヤが迫ってくるのに気づくとなんとか体制を立て直して迎撃の体制を取る。いち早く魔剣を振り下ろすと、ユウヤは魔剣の真横、ミネの部分に向かって斜めに自らの直剣を振りきる。白銀の閃光が走り、“魔剣グラム”は半ばから真っ二つに折れた。

 

「勝負あったかな?」

 

「やさしいね、ユウヤ。」

 

呆然としているミツルギの両腕を切断し、返す刀で踏みしめていた両足も切り離していた。

絶叫を上げるミツルギを見て続行不可能と見たギルドマスターが決闘の終了を告げた。

 

「あれで、やさしいの?カツラギ君はイモムシになっちゃったけど?」

 

「だってあれだけ綺麗に切断したら、アクアさんなら簡単に直せるでしょう。私は頼まれたって嫌だけど。」

 

クリスの疑問にねりまきが何でもない顔で答えた。

 

 

 

 

決着がついたので、障壁は解除されている。

アクアがそばに寄ってきて回復魔法を使用するのを手で制し、ユウヤが聞き慣れない魔法の名を口にする。“オールリセット”と。

 

「ユウヤ君、今の魔法は何かね?」

 

「こいつが冒険者登録をする前の段階、初期値まで戻した。魔剣の修正値も入ってないから、同レベルの冒険者より弱いだろうな。」

 

朦朧としているミツルギから冒険者カードを取り上げたギルドマスターがそれを見つめる。

一緒にカズマたちも覗いてみると、レベルは一に戻っており、そのステータスは、カズマが登録したときの初期ステータスと同等だった。

むしろ、運と知力の面ではカズマが勝っている。

 

「結局、魔剣がなけりゃ、こんなもんか。

バカにしてた俺以下のステータスじゃねえか。」

 

呆れたといったカズマを横目にユウヤが発言する。

 

「ギルドマスターがわざわざ指名して俺を戦わせたんだ。負けたら、俺の嫁と大事な女達を奪われるところだったんだから、当然要求は通してもらうぞ。」

 

周囲の冒険者も沈黙している。

フィオとクレメアも庇う気はないようだ。

両手足をアクアの魔法によって繋いでもらったミツルギは脂汗をかきながら、観念の表情を向けた。

 

「君の要求は何だい?」

 

「あぁ、負けてからとぼけられないようにもう実行している。“魔剣グラム”は、へし折った。

お前は女神アクアの期待に答えられなかったんだから、天上に返す。」

 

ユウヤが折れた魔剣を頭上に掲げると、上空から白銀の光が降り注ぎ、やがて天空に消えた。

 

「冒険者を続けたければそうすればいい。

ただし、魔剣グラムの加護は無しだ。

そして自分勝手に各地で迷惑をかけた謝罪をできるならの話だけどな。」

 

話し終わると立ち上がり、銀髪の少年は仲間に預けていた鎧を着込む。

全身鎧(プレートメイル)にも方形の盾(ヒーターシールド)にも、くっきりと女神エリスの紋章が刻まれていた。

パーティーメンバーの少女達と一塊となって、少年はテレポートで姿を消した。

 

「エリス、あれは、女神エリスの紋章だ。」

 

残された冒険者の一人が呟いた。

それを皮切りに口々に女神エリスの名を唱える声がする。

 

「女神エリスが遣わした白銀の使徒……か。」

 

ギルドマスターの呻くような一言に、その場に居たアクアが反発する。

 

「なによ、アイツには、しっかりこのアクア様の加護も与えてるはずなんですけど!

エリスが白銀の使徒なら、“女神アクアの蒼き翼”はどうかしら?」

 

「寝言は寝てから言え、この駄女神が!」

 

その後、アクアがカズマと口論になり、毎度のように泣かされた。

 




ユウヤは転生前のトラブルでアクアに対して良い印象を持っていません。なるべく彼女と会話をしないようにしています。好き嫌いが激しいのかも?
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