「ようし、自分の武器が有る者は、それをとれ。
ない者はここから好きなものを選べ。」
今は、いわゆる養殖の時間だ。駄目教師プッチンが手近な雑魚モンスターを拘束・無力化し、それに生徒がとどめをさして経験値とスキルポイントを得ると言うものだ。
ゆんゆんは、先日購入した自前の短剣を持っている。他の生徒達は無造作に置かれた巨大な武器を持ち上げるため自らの魔力に語りかけたりしていたが………。
「先生~これみんな外側細工しただけの木製じゃないですか。」
「ゆんゆん、減点5だ。少しは空気を読め。」
各々武器をたずさえ、私達は森に入った。なお、この養殖授業も男女合同である。近くには他の男子に混じってユウヤの姿も見える。14歳の彼は、さすがに他の男子に比べても長身だ。170㎝はあるかもしれない。
「それでは、先生が片っ端から拘束していくからな。少ししたら、進んでこい。」
そう言ってダメ教師がずんずん奥に入っていく。
「フリーズバインド!」
ぼうっとしてたら、他の面々もグループ分けをして進んでいく。
ユウヤも他の男子2人と行ってしまった。
「ほら、めぐみんもいつまでもユウヤに見とれてちゃ駄目だよ。」
声をかけてきたゆんゆんに反論しようとしたが、珍しく私以外の女子と行ってしまった。確か、ふにふらとどどんこだったか?
「めぐみん、組む人がいないなら、私達とどうだい?」
「私もめぐみんと話したいかな。」
話しかけてきたのは、あるえと………ねりまきだった。
「………分かりました。私は逃げも隠れもしません。
一緒に行こうじゃありませんか。」
目の前に首から下を凍り漬けにされたトカゲがいた。
「お先にいいかな?」
頷いた私とねりまきを確かめて、あるえがハリボテの大剣を振り下ろす。断末魔の声をあげてトカゲが絶命した。彼女は自分の冒険者カードを見て満足げにしている。どうやら、レベルが上がったらしい。
「ねえ、めぐみんはさ~ユウヤのことどう思ってるのかな?」
ねりまきの言葉につまってしまう。
「別に………。あの男がこめっこや我が家のために獲物を貢いでくれたことには感謝していますがそれだけです。」
「ふう~ん。ユウヤは明らかにめぐみんだけを特別扱いしてるよね?ゆんゆんもそう言ってたよ。」
「何が言いたいんですか?」
「別に~。たださあ、ゆんゆんやあるえだけじゃなくて、わたしもユウヤのこと好きだからさ、必要なら冒険者になって着いていきたいし、そうじゃなくてもテレポートの呪文を覚えて彼には毎日里に帰ってきて会ってもらいたいかな。」
「うん、ユウヤが冒険者になった後も顔を会わせたいのは私も同じかな。」
モンスターにとどめを刺したあるえも口をはさんできた。
「貴女達は作家と居酒屋の女将をそれぞれ目指すのでしょう?冒険者にならないのでは?」
「さっき言ったわね。私は、ユウヤが好き。
そして私もれっきとしたアークウィザードよ。」
「わたしも、ねりまきと同じだよ。さて、そこで質問に戻ろう。めぐみん、君はユウヤのことをどう思っているのか、正直に答えて欲しいかな?」
「わ…私は………。」
私は最後まで答えることが出来なかった。
繁みの奥からゆんゆんとふにふらやどどんこが血相を変えてこちらに走ってきたのだ。しかも、背中から翼を生やしたモンスターが追いかけてきたのだ。
あれは、断じて養殖用の無力化されたモンスターではない!
「何をやってるんですか、ゆんゆん!私達までまきぞえにしないでください。」
「そんなこと言ったってしょうがないじゃない。
あいつ、クロちゃんをみたら、どこまでも追いかけてくるんだもの。」
「捨てなさい。助かるためにクロ助には尊い犠牲になってもらうのです。」
「いやよ!絶対に手放さないわ。」
いつのまにか、一緒に走っているのは私とゆんゆん二人だけになってしまった。
クロが狙われているのだと分かってふにふらとどどんこは離脱し、あるえとねりまきもプッチンに助けを求めに行った。
どうしたら……。考え事をしていたのがいけなかったらしい。木の根につまずいて転んでしまった。
「めぐみん、早く起きて逃げて!」
後ろを振り返ればモンスターは滑空して目前まで迫ってきていた。もうダメだ。私は何も伝説を残さないまま死んでしまうのか。覚悟の目を閉じると……。
「ルーンオブセイバー!!」
衝撃波によってモンスターか真っ二つになった。
声のした方を見れば、黒い長剣を持ったユウヤがこっちに走ってくるのが見えた。
「2人とも無事か?」
「ありがとうユウヤ、よくここが分かったわね。」
「あれだけ、騒いでればな……。あと、あるえとねりまきにも感謝だな。」
見ると、ユウヤとグループを作っていた男子二人のそばにあるえとねりまきが立ってこちらに手を振っている。
ユウヤがやって来ると翼を生やしたモンスターの首を切断して復活しないことを確かめた。
そしておもむろに近くの繁みに声をかける。
「プッチン先生、生徒が危険にさらされてるのになぜ助けないんですか?」
「もちろん、最高のシチュエーションを狙っていたのだ。タイミングが大事だからな。」
「めぐみんとゆんゆんに何かあったらどうするつもりだったんだ?」
ユウヤは、この男は明らかに怒っている。
私達を命の危険にさらしたモンスターに、そして側にいながらすぐに助けに入らなかった駄目教師にも腹をたてている。
「めぐみん、怪我してないか?」
私を心配してくれてる紅い瞳は優しい光を帯びている。里では見かけない銀の髪がきらきら輝いている。彼が、そばにいる安心感で私は意識を手放した。
この時点のユウヤはまだ魔法を修得していません。
来るべき紅魔の里への魔物の大量発生に備えてスキルポイントをためてる最中だと思ってください