世界の変化に追いつけない   作:ありくい

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第百話

 

「何故だ」

ヒカが平淡な声で尋ねてきた。

「そりゃあ、決まってるでしょ。犠牲者が出る前提だからだよ」

ヒカの作戦はこうだ。

1.純以外で明子を叩く。おそらく取り巻いているであろうベル、人間はマユ担当。

2.全員が力尽きる、または膠着状態に陥った時、純に全てを任せる

考えた割には何とも単純な作戦だ。ただ、最高戦力となる純に託すという点で見ればこれ以上はないだろう。

「別にそんなものは前提にしていない。お前達で倒せるならそれでいいし、無理なら深井純で確実にということだ。それともなんだ?初めから純を使うべきとでも言うのか?」

「別にそういう訳ではないよ。ただ、僕が1番言いたいのは操られている人への対応だよ」

この作戦で最も気に入らないのはこの部分だ。

「マユさん。貴方って峰打ちとか出来ますか?」

「ん~、あ、私に聞いてるのかな。一対一なら余裕、2人だとちょい厳しい。三人以上は…って感じかな。でも大丈夫だよ?当日は容赦なく殺すから」

「助けられるなら助けるとかないんですか?」

「ないかな。そんなもの言ってる暇あるくらい余裕ならひーちゃんがこんなにぴりぴりしないだろうし、私も生きていたいからね」

淡々とそう告げられる。これは充分予想できた答えであり、だからこそ、納得出来なかった。

明子を倒すまで、僕等がやるのはいわば時間稼ぎだ。明子の体力を削り、できる限りスキルを使わせ、そして、満を持して純がやる。時間がかからない訳がないだろうし、その間に遠くの人だって明子を助けにくるだろう。

決戦時の近くにいた人、数時間でここまで来れる人。数にすればとんでもないはずだ。それらを敵として殺していけば、どれほどの死体が積み上がるのだろうか。

「要するに犠牲者をゼロにしたいのか?それならレイがなんとかするだろう。胴体が二つになったくらいじゃ、レイで治せる。それともなんだ?殺すこと自体がダメなのか?ならどうするんだ?そう言うならなにか代案があるんだろうな?」

心を読んでいるのだろう。なにか言う前に言葉を被せられ、反論を潰していかれる。でも、話すタイミングは出来た。

「香菜の≪全天≫で僕と明子を閉じ込めてほしい」

 

 

 

 

「はぁ」

長い沈黙の後、心底呆れたような声がヒカから漏れた。

「俺の話を聞いていなかったようだな。俺は出来るだけ友井明子の隠している情報をなくしていくのが役割だと言ったよな?なんだ?自分一人で充分ですってか?自分一人に友井明子は全力をだしますってか?」

「そうだ」

「はっ!馬鹿言え。あれはどう考えても俺達、もとい神の使徒の役割の化け物だ。それとお前が同格?ハハハ!」

「それでもだ」

まっすぐと前を見る。口から出るのはいわばハッタリだ。それでも、皆を守ると決めたくせに、ここで動かないのはダメだ。

「………」

じっと相手の目に視線を合わせる。そして、チッと舌打ちの音がした。

「マユ」

「ほい」 

ヒカはマユから一本の剣をを貰うと切っ先をこちらへ向けた。

苛立ちをかくしきれていない表情で静かに言いきった。

「勝負だ」

 

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