世界の変化に追いつけない   作:ありくい

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第百八話

 

レイがいなくなって、明子と二人きりになってしまった。本当は正義のお父さん、清志さんのことで怒りに震える時もあったのだが、この様子を見ていると、そんな気力すらなくなった。

とはいえ、なにも話さないという訳にはいかない。明子については正義に一任するとして、後から使えるかもしれないから質問してみた。

「ねえ明子。明子はあの日から何をしてきたの?」

「……」

「黙り込んでないでさ。教えてよ」

明子は、少し目を伏せながらぽつぽつと語り出した。

「私は、もともと純が好きだった。それが、ベルが私の側についてからその思いは一層強くなった。思いはどんどん増していって、ヒカと戦ったときかな。もう、なにも考えられなくなるくらいだったんだ。でも、頭の中で、どうすればいいのかが自然と分かったんだ。それは私の意思では無かったけどこれに従えばいいって強く本能が訴えかけて来たんだよ。だから、ずっとそれに従って、私はここまで来ちゃったの」

「それで?どんなことをしたの?」

「まず、頭に浮かんできたのは勇者を倒せるほどに強くなること、そして、勇者を殺すことだった。あと、人をなるべく洗脳しちゃうってのもあったかな。だから、私はひたすらに化け物を殺しつづけたよ。時折倒せない奴もいたけど、適当な自衛隊を使えば良かったから、一日も経たずに十分なくらいレベルが上がったんだ。だからね。勇者を殺しに行くことにしたんだ。確実性を高めるために既に洗脳済みだった正義のお父さんを連れてね」

ここらへんで声が少し震えていた。でも、話すのをやめる気はないみたいだ。

「で、香菜ちゃんに邪魔されて、貴重な駒を一つ失って。また、レベル上げに戻ったんだ。そして、二回目。今度は新しい駒の中から一番もっと強力なのを連れていった。全天相手にも効くような魔法もあったし、終わらせようって感じだったんだ。でも、今度は正義が良くわかんないくらい強くなってて諦めた。で、そこで方針がちょっと変わったんだ。正義より先に周りを潰そうってね。だから三回目はあの闇の人を使って遠くに飛ばした。本当は香菜と分断させたかったけど失敗しちゃったから少しでも絶望させようと教会を狙った。ヒカや香菜のお父さんは逃したけど、信者は全員洗脳したし、向こうの方で香菜の心にちょっとした負い目が出来たのが分かったから十分だった」

「なんで正義相手に洗脳をしようと思わなかったんだ?」

「あの聖剣は持ち主を守る力があったようだからね。それも何となく分かったんだ」

ふーん。やっぱあの聖剣やばいんだな。

「で、本能に導かれるままに化け物を殺しつづけてると変な個体がいたんだ。見た目はよくわからない。まあ気持ち悪かったんだけど、私の魔法ををそこら辺の小石を蹴るように弾いて、なのになにもせず、私にただ、対話を求めてきたんだ。『我は魔王。勇者について話し合いたい』それを聞いて、私の本能は…いや、さっきから本能って言ってるけど要するにスキルだね。≪望みのために≫はうまくいったと喜んでいるようでそこからは≪望みのために≫に従って話し合ったんだ。曰く、魔王は本来、この世界に絶望をもたらすものだと。勇者以外は魔王を倒せず、そしてそれは、

 

 

神の使徒であっても同じだと言うこと」

 

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