世界の変化に追いつけない   作:ありくい

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第百十七話

 

「良かったよ~。もう会えないかと思ったぁ」

姉さんについては明子からの情報しかなく、嘘をつかれればお手上げといった状態であった。蘇生の手段があったとしても時間経過でそれは出来なくなってしまう。だから、そうそうに生きている姉さんと会えて心の底から安堵した。

「その、ごめんなさい」

こっちは歓喜の表情で涙まで浮かべているというのに、姉さんはしょんぼりとした表情を崩さない。

「む~。今は喜ぶ時でしょ?せっかく再開出来たんだからさぁ」

不満ありありといった様子でそう告げても、姉さんの表情は変わらない。

「あ~もう!わかったよ!話聞くから!」

仕方なく、本当に仕方なく、姉さんの話を聞くことにした。

 

 

 

 

テーブルにお茶とお菓子をセットして、準備を整えてから話しはじめることにした。といっても、

「ねえ、姉さん。どうせあれでしょ?わたしのせいで明子の洗脳が加速しちゃったとかでしょ?」

明子から姉さんの役目を聞いているのでだいたいは予測できる。

「うっ。そ、そうだけど…」

「やっぱり。そんなのもう終わっちゃったことなんだから気にしなくていいよ。それに、明子の洗脳は抵抗出来る人の方が少ないだろうし」

少なくとも俺は聖域なしだとそんなの知らない。しいていうなら、確証はないけど、正義には何かありそうだ。≪望みのために≫が洗脳という手段をとらなかったわけだし。

「分かってるけど、気にしないのは無理というか…」

「姉さんにはこれまで何度も助けられてるんだからこのくらいチャラにすらならないよ」

ほんとに、この騒動前にもどれだけ助けられたことか。父さんや母さんより親してるもん。

「でも…」

机の上にある煎餅を姉さんの口に突っ込んだ。

「いい!?き に し な い で !」

姉さんが煎餅をバリバリと食べて、口を開いた。

「分かったわよ。もう」

「よろしい」

満足そうに僕は頷いて、しばらくの間のんびりと雑談していた。空気を読んでなのか、レイも一度も話しかけて来なかったし、とても有意義な時間であった。

 

一、二時間ほど話してから、本題に入ることにした。

「さて、姉さん。俺の近況についてはもう分かってると思うけど、一番大事な話があります」

「?明日のこと?」

おっ!察しがいいなぁ

「うん。姉さんにはね、これから会いに行く優さんと一緒に自衛隊の避難所に行ってほしいんだ」

「ちょっ!どういうこと!?私だって行くわよ!」

まあ姉さんならそういうよね。でもさ、仕方ないことなんだよ。

「姉さんって今どのくらい弱いか分かる?多分だけどゴブリンの一体すら倒せないんだよ」

「そんなことっ!」 

「俺ですら二発かかるんだよ。代償強化をしたとしても」

忙しいから確認はしていないが、正義のステータスは馬鹿上がりしている事だろう。だから、代償強化したくらいのステータスじゃ肩を並べられるかも…?っていうレベルなので心配はしていない。香菜の聖域も、どちらかというと魔法や状態異常を防ぐ物であり、明子の普通の魔法を止められたのだから心配はいらない。自衛隊には連携と数があるからこれも心配していない。まあ要するに明日の戦うメンバーは何とか出来る算段はあるのだ。

でも、姉さんは違う。

姉さんは配信ばっかしているせいでレベルも低いし戦いに適したスキルもない。これではお荷物である。

「でもっ!」

それでも食い下がる姉さん。分かっていた。だからこそ、決めていた。

「さっきさ、何度も助けられたって言ったでしょ?だから恩返ししたいんだけど、今回だけは、また、恩をつくっちゃうね」

軽めの代償強化をして、姉さんの意識を落とした。

「ごめんなさい」

後に、軽く挨拶をするだけに留めた優さんと一緒に自衛隊に送り届けた。最後に、いつの間にか風花ちゃんを保護していた旭川さんに姉さんを見てもらうよう頼んでおいた。

 

さあ、明日は最終決戦だ。

 




ちなみに余談ですが本編では語らないのでここで一つ。
風花ちゃんは明子が魔王と話し合ったあと、ダンジョンをただ、ひたすら作らされています。ある程度行ったところで満足したのか、一応安全な洗脳済みの自衛隊の中において置かれていました。そのため、洗脳が解かれた瞬間保護されるといったことになりました。
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