まずい
すでに皆疲れきっている。経験値も外の三体が攻めてこないので入っていないから誰のレベルも上がっていない。周りを見ると、全員呆けている。
「はは、仲間を呼ぶってか」
渚が乾いた笑いと共に言葉を吐き出した。
状況が理解するにつれ混乱がひろがっていく。泣くもの、叫ぶものと様々だ。
「…」
梅田先生も何も言わない。ただ下を向いている。
そんなとき、希望とも言える音がなる。
全員が耳に意識を集中させて顔をあげ、空を見た。
迷彩柄のテレビでしか見ることのないヘリコプターが空に浮かんでいる。
そう。この国の平和と独立を守る自衛隊が到着したのだ。
そこからは圧倒的だった。ゴブリンは全て自衛隊員によって倒された。またもや
≪ホブゴブリン五体とゴブリン32体を討伐しました≫
≪レベルが上がりました≫
と、声が響き、皆のレベルが上がった。生き残れた事を喜ぶものや、亡くなってしまった先生を想うもの。様々な感情がうずまき涙を流すものもいる中、ゴブリンを倒しきった自衛隊による説明が始まった。どうやら、町中のゴブリンはすべてここに集められたため倒せたという。また、ゴブリンは家を壊すほどの力はないため家にいれば安全らしい。そうして俺達は自衛隊の人に連れられ家へと帰った。
「ただいま」
「純!」
「お帰りなさい。無事で良かったです」
姉さんは俺に抱き着いてくる。よほど心配をかけてしまったようだ。
「純。ケガはない?」
「大丈夫だよ。いろいろ話すからとりあえずリビング行こうよ」
俺が死なないことを知っているはずなのに聞いてくる。
そうして、リビングで学校での事を俺が戦った当たりを少しぼかして話した。
「それにしてもスパイからエージェントって昇格なの?」
エージェントとは、味方側のスパイといった感じの職業だ。ほとんど意味は同じである。
「まあ、そんなの気にしたって仕方ないでしょ」
「そうですね。それより新しいスキルが気になりますね」
「≪言語翻訳≫ってどこまで分かるんだろ?」
「じゃあいろいろ試しましょう」
そういって姉さんはスマホを取りだし、画像を見せてきた。
「何ですか?これ」
優さんが尋ねる。画面には見たことのない文字が写っている。
「読めるよ」
どこにどれが対応しているかはわからないが意味がぼんやりと頭に浮かんでくるため、それを読む。
「ほんとに?これ、カードゲーム独自の文字何だけど、しかも意味はわかっても発音は決められてないっていう」
どうやら、発音すらわからない文字であっても読めるらしい。
「かなり便利ね。もしかすると言葉で連携を取る敵に有効かも。英語の授業も無敵になったわね」
それはいい。本当に英語は無理、むずすぎ。
「そうそう、話は変わるけど自衛隊の人やばかったよ」
そうして自衛隊の活躍を語った。自衛隊の攻撃はかなり強く、ホブゴブリンですらシャベルやナイフで一撃で、銃を使わないのに大量のゴブリンを圧倒していた。
「かなりレベルが高そうね。後ゴブリンハンターに就いている可能性もあるかもね」
ゴブリンハンターは、≪武器召喚≫と≪エンチャント ゴブリン特攻≫が与えられる。≪武器召喚≫では棍棒が出てくる。そしてエンチャントはその名の通り武器にゴブリン特攻が与えられるらしい。先生達はこれを箒にかけていた。ちなみに棍棒はリーチ的な問題で使わないことになった。聞いていないためわからないが、自衛隊の殲滅速度を見るとありえるかも知れない。
「私的には勇者が気になりますね。ファンタジー感満載でカッコイイですね~」
優さんがのんびりと言う。
勇者は、≪聖剣≫そして、≪成長促進≫というスキルが手に入るらしい。≪成長促進≫はやばい。その名の通りレベルアップに必要な経験値が減少するようだがまさかの今や17レベルとなった。俺と同レベルである。
「それにステータスの上昇幅も気になるわね」
そう。正義のステータスは次の通りだ。
ステータス
名前 烈火 正義
レベル 17
攻撃 66(直接46 間接20)
素早さ 66
防御 66(直接 33 間接 33)
魔力 66
職業 勇者 なし
スキル 聖剣1 成長促進
称号 なし
何だこのチート。正義はレベルが上がるごとに全ステータスが4上がるらしい。比較として、俺のを載せよう。
名前 深井 純
ステータス
レベル 17
攻撃 34(直接17 間接17)
素早さ 53
防御 34(直接 17 間接 17)
魔力 34
職業 エージェント2 転職 昇格 可能
スキル 変装1 隠密1 不死
称号 神の祝福
ハハッ(絶望)
エージェントとなることで素早さは4ずつ上がるようになったものの、レベル1から勇者の正義には勝てない。
「もしかすると、職業なしだと全ステータス2ずつで職業によってステータスの上がり幅が変わるのかもね」
「だとしたら俺もう正義に勝てないんだけど」
「いいじゃない。守ってもらいなさいよ。勇者サマに」
姉さんは俺が女の子になっているのをからかっているのかニヤニヤしている。くっ!
「そういえば純さんってトイレとかお風呂はどうしているんですか?」
「諦めて普通に見てる」
はじめは少し抵抗があったがいざやってみると特に何も感じなかったので気にしないようにしている。
「ts物の展開はないんですね~。ちょっと残念です」
自分のことながらそれはちょっと思った。
そんな話をしていると腹の虫がなる。
「おや。そろそろご飯にしましょうか」
「そうね。そういえば今日国防省の記者会見があるから見ましょうか」
そうしてテレビをつけると、ちょうど記者会見が始まるところだった。