最終決戦前日、僕はヒカと香菜と一緒に自衛隊基地へ来ていた。ヒカの目的は自衛隊との作戦のすり合わせと言っていたけど、僕達の目的は違う。
「じゃあ、また後でね、ヒカさん」
「ああ。…あまり長居するなよ」
「分かってるよ」
目的はヒカには告げていないが、彼の心を読む力でばれているらしい。まあなんにせよ、今回の目的は母さんに会うことである。
「ここです。もうしばらくお待ちください」
「「ありがとうございます」」
自衛隊の人に連れられて、面会室までたどり着いた。この後、母さんを呼びにいってくれるらしい。
「うう。私きてもよかったのかな…」
いろいろ悩んだのだが、香菜にはこっちについて来てもらった。
「ごめん。やっぱり嫌だった?」
「いや、そういう訳じゃないんだけど…」
そんな話をしていると、目の前のドアが勢いよく開かれた。
「正義っ!」
「ぐえっ」
母さんがものすごい速さで僕を抱きしめた。思わず唸ってしまったけど、勇者である僕のステータスじゃあ…く、苦しい。
ぱしぱしと母さんの腕を叩く。すると、少し力が弱まった。
「よかった。貴方が無事で、本当によかった…」
涙声でそんなことを言われたもんだから、僕の涙腺も震えはじめた。でも、言わないといけないことが…
「母さんっ!ごめんなさい。父さんがぁぁぁぁじんじゃっでぇ」
ダメだ。涙が溢れて声も震えてしまう。しっかりと伝えないとだめなのに。
「…そっか。やっぱり、死んじゃってたんだね」
「ごめんなさい」
僕が守れなかったから、父さんが死んでしまった。一度香菜と一緒に整理したはずなのに、どんどん後悔が溢れ出てしまう。
「大丈夫、大丈夫だから。…あのね、正義。この前ね、お母さんの夢にお父さんが出てきたの」
「…え?」
「お父さんはね。明るくいろんな事を話していたんだ。あの時は楽しかったとか、お前が帰ってこなくて寂しかったぞーとかね。でも、最後にこう言ったんだ」
涙声から一変、芯のある、はっきりとした声へと変わった。
「置いていってごめん。正義にも謝っておいてくれって」
母さんは続ける。
「どういうことって言ったんだけど、次の瞬間にはもう目が覚めてた。だからね、正義。後できっちりとお父さんの最後を教えて。お父さんの言葉にはどんな意味があったのか一緒に考えて、その上でお父さんを見送ってあげよう」
「…うん」
「はい。じゃあそのためにも、明日頑張ろっか」
「うん!」
にこりと微笑む母さんにこれ以上ないほどの安心感を覚えていた。
その母さんが、倒れている。焼けただれた皮膚がこれ以上ないほどの
「母さん?」
呼びかけても、動かない。近寄って揺さぶってみても、動かない。
「ねぇ。どうして?一緒にお父さんを見送るって行ったじゃん」
「朱里さん!」
香菜が駆け寄ってくる。
「≪聖域≫」
暖かな光に母さんが包まれている。ぴくっと母さんが動いた気がした。
「正義くんっ!」
香菜が少しばかり喜の感情を混じらせ呼びかけて来る。
「香菜。なんとか出来そう?」
「うん。きっと…いや、絶対になんとかしてみせるよ!」
「分かった。お願いね」
聖剣を片手に振り返る。そこには、大量の魔王が立ち並んでいた。その大半が別の場所へと永続的に魔法を撃ちつづけている。
「おい!烈火正義!よく聞け!」
ヒカが叫び、今の状況を伝えてくれる。一度、魔法を繰り出してみるが、確かに効かなかった。
「勇者よ。どうだ?今の気持ちは」
その言葉と同時に莫大な魔力を伴う魔法が飛んでくる。
「最悪だよ」
黒が入り混じった光が聖剣から飛び出て、その魔法と相殺した。