世界の変化に追いつけない   作:ありくい

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第百三十話

 

がやがやと賑やかな人の声で目を覚ました。首筋がひりひりと痛み、頭がぼんやりとする。

「あ…れ?純?」

「あ、おはようございます。美香さん」

優さんが話しかけてきた。

「あれ?優さん。どうしてここに?というかここはどこですか?」

いつのまにか洗脳されていた時に使っていた部屋からどこかの体育館に移っているし、純もいない。それに、なぜか沢山の人がいる。

「ここは純君達が通っていた中学校の体育館です。自衛隊員の方々が守っているので避難所としてここらへんの人達が集まっているんですよ」

……。

「純は?」

「純さんは別の所です。多分、正義さんとかと一緒の場所にいるんじゃないですかね」

外も暗いし、まだあの日じゃないということだろう。

「よかった。まだ間に合う」

純が何をしたのかは大体分かったしその目的も予想できる。でも、純の姉として見ているだけなんて自分が許さない。

「所で優さん。これ、外してもらえます?」 

手足が手錠で縛られている。私、何か悪いこと…。してるね。でもあれは洗脳されていたからだし、許してほしい。

「いや、ごめんなさい。純さんに外すなって言われてるんですよ」

え?

「姉さんは起きたらこっちに来そうだからって。まあどこにも行かないというか私から離れないならいいですよ」

ふーん。なるほどね。

「分かりました。じゃあ早速、純のところに行きたいので一緒に言ってくれませんか?」

「ダメです」

ニッコリと笑顔で断られた。

「じゃあトイレ行きたいです」

窓とかから出れないかな?

「仮設トイレに窓なんてないですよ」

読まれてる…。この人もっとポンコツじゃなかったっけ。

「はぁ。じゃあご飯ください。お腹空いたので」

「はい。保存食しかないのでこれで我慢してくださいね」

「流石に贅沢は言いませんよ」

さて、どうやって抜け出そうかな。

「先に言っておくと、私は徹夜慣れてますし、交代の人もいますし、それで純さん達の邪魔になるといけないのでなんと言おうと絶対に許しませんよ」

…難しそうだなぁ。うわ、この保存食おいしい。

 

 

 

 

よし、役にたてる方法は思いついた。後は抜け出すだけ。もう朝だし時間に余裕はない。

「ちょっ…!優さん!お腹痛いです!助けて…」

演技スキルと場作り、さらに注目で優さん以外の周りの人にも深刻そうな状況を伝えていく。

「ねえ…あの人大丈夫かしら」

「ね。助けてあげないとダメなんじゃないの?」

さらに!ここから一番近いトイレは窓つき!仮設じゃなくて学校のだから当然だね!

さぁ!諦めて私を逃がすんだな!はっはっは!

「え、大丈夫ですか!?すぐに連れていきますね」

よしよし。思った通りのトイレに行ってくれてる。個室も開けて、そのまま優さんと一緒に…ちょっと待って。

「ついて来なくていいですから!」

「いえ、尋常じゃない様子なのでちゃんと助けてあげますよ」

気づかれてる?違う…これただほんとに心配されてるだけだ!やり過ぎた!

ならBプランだ!

 

「弟を助けたいんです!」

「ちょっ!どうしたんですか美香さん!?」

避難所の中心でさっきと同じくスキルをフル活用して叫ぶ。当然、周囲の人の注目は私に集まる。

「今!弟が命懸けで戦ってるんです!」

どんなことを言っても場作りと演技の効果でそれっぽく聞こえる。おかげで思っていることをそのままこぼしても賛同する人が表れてくれる。そして、一人でもそういう人が出ると次々と同じような人が出てきてくれる。

「「行かせてあげろー!かわいそうだろー!」」

「え、どうしましょう…」

優さんが周りの人から追い詰められている。ククク、計算通り…。

上手く人の心を誘導出来た!これなら…!

「仕方ないかぁ。じゃあ良いですよ、行ってもらっても。でも、私もついて行きますからね」

勝った。

 

 

そうして、魔王が見える場所に潜み、配信を一瞬だけ使って純に気づいてもらった。一緒にメッセージも送ったから自衛隊員も連れて来てくれたし、明子の洗脳活動で増えた視聴者に事情も説明した。後はカメラアングルに気をつけて、正義だけを映す。

「スパチャの時間よ!」

 

 

 

 

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