戦闘中は邪魔でしかなかったコメントに目を向ける。
『頑張れ』
『世界の命運は君に託された!』
他にも、たくさんの応援コメント的なのがあるが、どれもなにも感じなかった。
その中で一つ、異質なコメントがあった。
『お願い。生きて帰ってきて!逃げてもいいから!』
魔王云々より、僕の命を優先するそのコメントは他より、目立っているように見えた。
「母さんかな」
僕を魔王の生死より優先する人なんて中々いないだろう。口調的に母さんな気がする。
そこからどんどん遡って見たけど、特に香菜らしきものは見つからなかった。
肩を落としていると、後ろからトントンと肩を叩かれた。
「なに?」
どうせレイだろう。振り向くのも嫌だ。そう思っていると予想外の声が聞こえてきた。
「正義君」
「え…。香菜?」
びっくりして勢いよく振り向いてしまう。なんでここにという前に、香菜が答えを口にした。
「正義君と一緒に居たかったから、自衛隊の人にお願いしてここまで飛ばしてもらったんだ。なんかそういうスキルもあるみたいだよ?」
「そ、そうなんだ」
にこにこと話して来る香菜をちゃんと見れない。どこか、後ろめたい気持ちが胸で燻っている。
「ねぇ正義君。これってもう倒したの?」
「いや、まだだよ」
「じゃあどうして倒していないの?」
「それは…」
言っていいものなのだろうか。
「正義君。なにかあるなら教えて?難しいことがあるなら一緒に考えよ?私は正義君の仲間だよ?」
「実は…」
どうなるか分からないが、話してみることにした。
話を聞いた香菜が僕の聖剣を持っている方の腕を掴んできた。
「ねえ。正義君。一緒に逃げよう?」
「逃げたって仕方ないよ。結局、ここでやらないと皆死んじゃうんだから」
母さんは逃げていいとは言っていたけど、ここで逃げた所で寿命がちょっと伸びるだけだ。近いうちに、皆死んでしまう。それは、嫌だ。僕が死ぬより嫌だ。
「だから、僕はやるよ」
「━━だめ!」
香菜が叫ぶように止めて来る。
「そんなん言ったって…」
「別にいいよ!ちょっとでも寿命が伸びるんだったら選んだらいいじゃん!お願いだから逃げようよ!」
まくし立てるように香菜は叫ぶ。
「香菜。この前言ったよね。僕は皆を守りたい。なにも失いたくないって。僕にとってはこっちの方が命より大切なんだ」
「なんで…生きてよ!どうして皆私をおいていくの!?お母さんもお父さんも私になにも言わずどっか行っちゃったし、正義君も行っちゃうんでしょ?なんでよ!」
香菜は目に涙を浮かべて
「お願いだから私をおいてかないでよぉ」
泣きはじめた。
その姿を見て、父さんの言葉を思い出した。
『正義!そして、お前は一人の男だ!好きな子ひとり助けられないと、男の名が廃るぞ!!』
このままでいいのかな。もし、このまま魔王に止めを指して僕も死んでしまったら香菜はどうなるんだろう。
元気に、笑えるのかな。
よし。決めた。生き残ろう。ここでは死ねない。
「香菜。僕は死なない」
「…え」
「だから、助けてね」
「…うん。絶対助ける!」
頼もしい香菜に背を向けて、聖剣を魔王の胸に当てる。
「≪限界突破≫」
そのまま、聖剣を突き刺した。