世界の変化に追いつけない   作:ありくい

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第百三十五話

 

さっきは聖剣が刺さった瞬間、痛みが発生して剣を落としてしまったが、その痛みは限界突破で感じないようにしているため止めずに差し込む。

「グオオオオオオオ!!!!!!」

ピクリとも動かなかった魔王が悲鳴を上げて大きく跳ねた。その衝撃で上に乗っていた僕と香菜は振り落とされる。しかし、僕も香菜も受け身は取れたようで深刻な怪我に繋がるとかはなさそうだ。

魔王は聖剣の刺さった場所を中心に、体が崩壊をはじめた。同時に、感じないはずの痛みが僕を襲った。

「ぐっ!!」

どうして…。限界突破は痛みを感じないようにするはずなのに…!

体が失われていくような空虚感とともに激しい激痛が体に走る。こんなにも痛いというのに、思考はやけにはっきりとしていて、じっくりと痛みを感じられる。

いつまでだ?これはいつまで続くんだ?魔王の体が崩壊した場所に合わせて痛みが走るので崩壊しきるまでといった所だろうか。

「正義君!≪聖域≫」

僕の様子を見て展開してくれた香菜の聖域の中には入り込んだけど、この激痛が和らぐ様子はない。

ああ、痛い。

どうしてこんなにも痛いのか。どうして僕がこんな思いをしないといけないのか。様々な感情が痛みに反応して生まれ、流されていく。

ダメだ。このままじゃ耐えきれる気がしない。なにか、どうにかこの痛みを…!

その時、視界の隅でなにかが動いている。これは…コメントか。

『魔王倒したぁぁ!!』

『うおおおおお!!!』

お祭りのように、高速でコメントが流れている。その中でも一際目立っているのが、スパチャだ。

『回復魔法』

回復魔法。そんなものがあるのか。なんにせよ、なにかに役立つか…?

即座にそれを使用する。しかし、特に効果はなさそうだ。あいもかわらず、ジリジリと激痛が体を蝕んでいく。

くそ、考えろ。限界突破の力で考えられているうちに、どうすれば生き残れるのか。もし、魔王の体が崩壊しきるまで、であるなら、それを加速させるというのはどうだろうか。

一本の聖剣は腰に付けているが、もう一本は魔王に刺さったままだ。いや、崩壊していっているから、既に地面に落ちているだろう。それに暴れさせてさらに細かく…。

しかし、そうすればこの痛みにその痛みが足されるんじゃないか?そうなったらおしまいだ。

でも、聖剣で何かをするというのは良いかもしれない。

聖剣は勇者という職業のメインとなるもののはずだ。限界突破の他に何かないのか。

目の前にいる香菜をみる。…香菜。

そういえば、香菜の精神世界で僕は聖剣を使うことができた。僕はそれで香菜と僕を隔てていた壁を斬った。

魔王との痛みの共有はいわば魔王の苦しみを逐一僕へと届けているようなものだ。なら、その痛みを共有する道を斬れないか?

これなら、ミスった所で弊害はない、はずだ。もしかすると、この配信の方が斬れるかもだが、別にそれは構わない。

弱々しく、腰の剣に手をかける。さて、どこを斬ればいいんだ?とりあえず我武者羅に魔王の方向へと剣を振るう。でも、それは空を斬るだけだ。

いや、ダメだ。よく考えろ。香菜の時はどういう状況だった?

父さんが出てきて、手元に聖剣が現れて、頭に出来るイメージが湧いていた。それに従って剣を振るうことで精神世界の全天を斬れた。

聖剣を見つめる。聖剣ならなんとか出来ると信じて。すると、カタカタと聖剣が勝手に動いた。もしかすると僕の腕が痙攣しただけかもしれないが、僕には聖剣が任せろと言っている気がした。

「≪聖剣≫」

だから、聖剣を勝手に動けるようにして、僕は、聖剣を掴んでいたその手を離した。

僕の手から離れた聖剣は一直線に…僕の頭へと突き刺さった。

 

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