辺りは真っ赤に染まり、目の前では次から次へと赤い液体が生み出されている。聞き馴染みのない音が響き、音源では、純が潰され続けている。
「美香さん!」
呼ばれてハッとする。私は何をしているんだ。助けないと、何が何でも助けないといけない。
「優さん、何とかできませんか?!」
「いえ、逃げましょう」
「…」
「すぐにここを離れて自衛隊に純さんもろとも撃ってもらいましょう。よくわからないですがあそこまでされても純さんは見た目が変わり続けるだけで死なないみたいですし、あれは私たちにはどうすることもできません」
「本当に何もできないんですか?」
逃げたくない。純を残して逃げるなんて嫌だ。
「できる分けないですよね?速度も力も私たちよりはるかに高い純さんが何もできていないんですよ?それに明らかに力が上がっています。近づいたところであれにとってはただのハエのようなものでしょうし。」
たしかに先程から耳に届く衝撃音は大きくなり続けている。
「それにこれが一番速く、確実に助けられるはずです。自衛隊以上に頼りになる存在は今はいません。時間はかかりますが、これ以外はないでしょう。もし私達が死ねば純さんへ応援を呼べる人がいなくなるので純さんは確実に死ぬでしょう。いつまで耐えるかわからないですが特攻なんてしても意味がないので」
正論だ。しかし、しょうもない感情が、無理にでも助けたいという想いが私の足を止めてしまう。
「何しているんですか!美香さんが生きていないと、美月も陸も悲しむんですよ!たとえ純さんが死んだとしても貴方は生きないと!」
優さんは私の手を取り強引に引いてくる。
ああ、嫌だ。純がこんなにも苦しんでいるのに離れたくない。死なないとはいえ痛みはそのままだと純は言っていた。助けてあげたい。かわってあげたい。せめて少しでも時間を稼げば純は逃げられないだろうか。命をかければ一秒くらいなら…少しでも、和らげられたら…
そんなとき、音が止んだ。さっきまで鳴り響いていた純の音。純が踏み潰される音が止んだ。
「え…?」
純が起き上がっていた。さっきまでのは何だったのか、大男の足を押し返している。
優さんは目を白黒させる。
「あれ、純さんですか?」
「優さんは何を言っているの?女の子になっているけどあの純じゃない」
「目が赤いです……」
純は大男をはじき飛ばす。何かを呟くと、純は赤い何かを纏った。口から血を吐き出して、瞬間、純は消え、空中に浮かんでいた大男は地面に叩き込まれた。地面には大きな凹みが生まれ、大男は消えた。
純はその場に立ち尽くし、倒れ込んだ。
死んだときのように、銀色の髪は短く、黒に染まり、男の姿に戻っていった。
「純!」
私は純に駆け寄った。
どこまでも続くような真っ白な空間に一人、佇んでいる。
「はぁ~。こんなに速く出ることになるとは思わなかったな~。さすがにこのペースだともっと出ないといけないかな~。それはやだな~」
どこからかスナック菓子を取り出す。
「う~。まずぅ~。何これ~」
すぐさまスナック菓子は消え去り、またもや突然出現したベッドに腰掛ける。
「ここから出たくないし、仕方ないか~」
銀色の髪と人を引き込むような赤い目をした少女はベッドに潜り込んだ。