世界の変化に追いつけない   作:ありくい

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第十七話

 

意識の覚醒とともに痛みに備えて、体を硬直させる。そこから一分二分と時間がたったが何も起こらなかった。

「あれ、痛くない?」

恐る恐る目を開けると俺を踏み潰していた大男はいなくなり、目に映る景色は路地裏の空から見覚えのある天井へと変わっていた。安堵の息が漏れる。

「起きましたね。大丈夫ですか?」

すぐそこで座っていた優さんが声をかけてきた。

「はい。ところであの大男はどうなったんですか?」

「純さんが倒したんですよ。やっぱり覚えていない感じですか?」

やっぱり?

「何でやっぱり何ですか?」

「あーそれはですね。純さんあの時、何か違う感じがしたので」

「詳しく教えてください」

優さんに説明を受けていると、姉さんがトイレから出てきた。いないと思ったらトイレに行っていたのか。

「純。起きたのね。ステータス見た?」

俺を見るなりそう尋ねてきた。

「何で?」

「純のあの状態はスキルのせいだと思うのよ。それ以外考えられないわ」

 

名前  深井 純

ステータス

レベル 30

攻撃  60(直接30 間接30)

素早さ 79

防御  60(直接 30 間接 30)

魔力 60

 

職業  エージェント5 転職 昇格 可能

 

スキル 変装1 隠密1  鑑定1 言語翻訳 不死 代償強化 

 

称号  神の祝福

 

≪代償強化≫

体の一部を消費し、ステータスに変換する。

 

 

レベルが上がり新しいスキルが手に入っている。代償強化とかいう不死をもつ俺にとってはデメリットがないようなものまで手に入っている。書いてあることは怖いが。

「代償強化っていうのが手に入っているのと、レベルが13上がってる」

「やっぱり、前のあの状態はスキルの力なのね」

目の赤い女の俺、何故かハッキリとイメージが浮かぶ。

「ところで純さん。何で死んでいないんですか?ゴキヤェロはまだしもこれは誤魔化せませんよ?」

ああ、大男との戦いで何度も死んだところを見られているのか。

「そうですね。実はスキルの解析というのが終わって不死ってスキルが出てきたんですよ」

「性別が変わるのは?」

「それについてはわからないです。スキルには死なないとしかかいてありませんでした」 

優さんはそれを聞いて納得したように手を合わせた。

「なるほど!謎がとけました。あの大男が回復したのも、大きくなったのもそれが原因何じゃないんですかね?!」 

優さんはやけに興奮して声を荒げる。

「はい?」

「だから、純さんが経験値になったんですよ!あの大男は純さんを何度も殺して経験値を稼ぎ、進化したんです!そして大男は進化して圧倒的な力を手に入れたので純さんを殺しつづけてもっともっとレベルをあげようとしたんですよ!」

なるほど。あれほど機械的に何度も何度も殺されたのはそういうことなら辻褄があう。

「そして、そうなるってことは私達が純さんを殺せばレベルアップが簡単になります!」

優さんは高らかに宣言した。

「………………………え?」

「優さん?何を言っているのですか?冗談でも度が過ぎていますよ?」

そういうと優さんは何でもないような顔で、

「何故ですか?今回の件で化け物は明らかに強くなっていました。世界の中ではそこまでとはいえ弱いとも言えない純さんを何度も殺したんです。つまり、私達ではどうすることもできません。このままだと、本当に手遅れになってしまいます。そこでこんな救済システムですよ!」

「やめてください!もう死ぬのは嫌なんです!」

何度も何度も感じた痛みが頭をよぎる。

「そんなことを言っていたら手遅れになりますよ!純さんはいいですけど、私達の命は一つしかないんです!速く強くなって一ヶ月後も生きていないと!」

優さんがヒートアップの声が大きくなっていく。

「別にまだゴブリンが新しくでている可能性があるでしょ!何でそんなに俺を殺そうとするんですか!」

「いたとして探している間にあの大男に見つかれば終わりですよ!そんなことするより純さんでレベルを上げるほうが安全です!」

正気か?そんなんで納得するわけがない。死ぬ痛みも何も知らない癖に。俺の頭もあったまり、手が出そうになる。

「ねえ」 

姉さんの一言で場が冷える。背筋はこおり、大男の比にならないくらいの圧が姉さんから放たれている。俺も優さんも一言も喋れなくなる。

「私何て言いました?言いましたよね?三人で協力しないといけないって。ねえ?」

圧を放ちながら優さんに問い掛ける。 

「はい」

優さんの体が震えだす。

「で?何で殺すほうにいくの?」

「その方が」ガタガタ

「安全だから?それとも効率がいいから?」

場がどんどん冷えていく。

「…」

「純が提案するならわかるよ?で、あなたは純の何なの?そんなことを決める権利があるの?」

余りの圧に俺の怒りはすべて恐怖に変わる。優さんは必死に周囲を見回す。

「 ど    こ    を    み    て     る     の     ?」

「ヒッ」

「純の命を何だと思っているの?それは純のことを考えたの?」

ガタガタ

「そのうえでまだ考えが変わらないなら」

姉さんは一拍おいて微笑み

「殺しますよ?」

優さんは気絶した。

 

 

 

 

 

 

 

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