一度部屋に戻った俺は支度を整えはじめた。500円貯金箱をたたき壊して袋に詰める。包丁も布でくるんで胸元に入れた。余り重さを感じないくらいで止め、リビングに下りた。
リビングでは優さんはまだ、床にはいつくばっていた。
「姉さん。行ってくるよ」
「ああ、そうだ。帰ってきたら優さんともう一度話してみて」
「なんで」
「純は喧嘩したからって家からは追い出そうとはしていないでしょ?険悪なまま、一緒に暮らすのは厳しいだろうし、せめて折り合いをつけて」
「まあ姉さんが言うなら」
「そもそも話をぶった切ったのは私なのにごめんね。いってらっしゃい」
そうして俺は戦いに向かった。
外には朝にいた警察はおらず、少し離れたところで怒号が響き渡っていた。おそらくあの大男に対応しているのだろう。
「あっちに警察が集まっているということはあそこには少なそうだな」
警察の負担になってもいけないので、警察とは反対の方向に足を進めた。
しばらくすると、公園のど真ん中にホブゴブリンが立っていた。すぐに袋を取りだし全力で投げつける。ホブゴブリンの頭は砕け、頭に声が響いた。
「これ、いいな」
ところどころの警察は隠密を使いスルー、変装を使い、男の姿にさらに男の姿を重ねる。スキルを上げるためだ。
どんどんと辺りをまわり、ゴブリン、ホブゴブリンを倒していった。合計20体を超えた辺りで大男を見つけた。すぐに隠密で身を隠す。そして後ろに回り込み、後頭部に硬貨の固まりを勢いをつけて振り下ろした。大男はかなりのダメージを負ったようだが死んではいない。距離を取り、もうちいど硬貨の固まりをぶん投げた。
さすがに堪えたのか、大男は消え、声が響いた。
≪オークを討伐しました≫
≪レベルが上がりました≫
「っし!耐えられて焦ったけど何とかなった」
大男はやはりオークだったようだ。ステータスを見たい衝動にかられるが、押さえ、周囲を見渡す。レベルはそこそこのペースで上がっていて、何レベルか家で確認するのが少し楽しみだ。
あれから二時間ほど周囲を狩り、レベルを上げまくった。そろそろ辺りも暗くなったので家へと帰ろうとすると、やけに違和感を感じた。とりあえず隠密を使って身を隠し、壁を背にして何があってもいいようにしてから考え、気づいた。
「警察がいない…?」
辺りには静寂に包まれていて、おそらくオークが出たからということもないはずだ。すぐに携帯を取り出し、確認しようとすると姉さんから連絡がきていた。ばれないようにマナーモードにしていたのが裏目に出たらしい。
『純!近くでオークっていうらしいあの大男の上位がでたから、警察が一旦引いたらしいわ。気をつけて!』
なるほど、なら、自衛隊でも来るのだろうか。
考えていると、足音が響いた。明らかに人ではない重厚感のある足音だ。
冷や汗が出てくる。気がつけばクールタイムが終わっている隠密を使い、音の方向を見る。
そこには見覚えのある一回り大きいオークがいた。
戦うか、逃げるか、しかし、俺が奴を倒したときに使ったであろうスキルを俺はまだ使っていない。ぶっつけ本番はまずい。名前からして、痛みを伴うのは確実で、その痛みが原因でまた、あの地獄が始まる可能性がある。
隠密が切れないうちに、俺は全力で逃げ出した。
かなり走って、民家の屋根にのぼり一息つく。オークもゴブリンも屋根にいたことは一度もない。安全地帯と言えるだろう。
どうせなら自衛隊を見ておきたいので姉さんに遅れると連絡を送ってから、ステータスを確認した。
名前 深井 純
ステータス
レベル 42
攻撃 84(直接42 間接42)
素早さ 127
防御 84(直接 42 間接 42)
魔力 84
職業 エージェント5 転職 昇格 可能
スキル 変装2 隠密8 不死 鑑定1 言語翻訳 代償強化 投石3
称号 神の祝福
まさかの職業以外のスキル追加である。ちなみに投石はこうだ。
≪投石≫
ものを投げるときの威力が上がる。 レベル3速度 威力が1.3 倍
なかなか悪くないな。そして隠密がかなり上がっていた。今だと効果時間が10分となり解除も可能。さらに自分を含め二人までかけれるようになった。それに比べ変装は1しか上がっていない。どうやら使う時間というより使う回数が大事になってくるようだ。しかも何も変わっていなかった。
しかし、職業を完全に忘れていた。もったいない。転職、昇格を確認すると次の通りだった。
≪転職≫
職業を変更できる。学生、害虫駆除業者、ゴブリンハンター オークハンター モンスターハンター
≪昇格≫
上位職になれる。 ベテランエージェント
名前…。モンスターハンターも気になるが上位のほうがステータス的にもおいしいと学んだのでベテランエージェントを選択する。
≪職業がエージェントからベテランエージェントになりました≫
≪スキルが追加されました≫
追加されたスキルは≪武器召喚≫と≪収納術≫だった。
≪武器召喚≫
手元に銃を召喚する
≪収納術≫
空間に入るものの量を増やす
武器召喚はゴブリンハンターと同じ感じのようだ。ただ銃を使ったことがないし、絶対警察に見つかるので今は使えなさそうだ。そして、収納術はもっと投げものを増やせるのでありかもしれない。
スキルの使い方に思いをはせていると、エンジン音が響いた。
「車?」
そういえば車があったな。車なら安全に移動できそうだ。まあガソリンスタンドはあいていないが。
エンジン音はドンドンと近づいてきて、俺の前を通過した。
「どこへ行くんだ?」
あっちは大きなオークのいた場所だ。車は速度を緩めず、むしろ速度をまだまだ上げている。そして、
バアアアアアアン
大きな音がなり、明らかに人ではないものが吹き飛んだ。あれは………
「オーク?」
ひしゃげた車の先には大きなオークがぶっ飛んでいた。