「は?え、何?」
突然の声にあたふたしていると、姉さんが来て
「やったの?逃してないよね?ってどうしたの?」
と尋ねてきた。
「いや何でもない。ヤツは倒したよ」
とりあえずヤツをテイッシュにくるんで捨てた。リビングに戻ると、テレビが突然ついた。
『緊急速報です!こちらの虫に注意してください!』
そうして映し出された写真にはさっき倒したヤツと同じ見た目をしている虫が映し出されている。
『この虫はスプレーなどを使用せずに物理的な衝撃などで倒すと、その後死亡するようです!見つけた場合、倒そうとせず、その場を動かず通報してください!繰り返しますーー』
頭が真っ白になった。
「ねえあれってさっきの虫よね?」
姉さんが震えた声で尋ねて来る。
「何かあったんですか?」
優さんが料理の手を止めこちらへ来る。
「うわぁ、これは怖いですね。何かの菌が原因だったりするのでしょうか?。ってなぜそんなに青ざめているのですか?」
「いやさっきあれみたいな虫がいて、ゴキだと思って、純に殺して貰ったんですが…」
「え、それってもしかして、純さんは…」
優さんの顔も青ざめる。
その時、妙な声がしたことを思い出す。レベル、職業選択、そして道連れの呪い。まるでゲームのようだ。ラノベならスキルとかを使えば何か助かる手段があるのではないか。呪いなんだ。僧侶とか聖職者なら解呪的なものはないのだろうか。そう考えていると、頭に文字が浮かんできた。
(お?)
名前 深井 純
ステータス
レベル 10
攻撃 20(直接10 間接10)
素早さ 20
防御 20(直接 10 間接 10)
魔力 20
職業 なし
スキル なし
状態異常 道連れの呪い
称号 ???? 解析度 1/10
「ねえ!純!大丈夫なの?死なないで!」
姉さんの声が聞こえるが一旦無視して文字に意識を向ける。
気になるところも多いがとりあえず道連れの呪いという明らかに何かに関わってそうな文字に意識を向けると、詳細が現れた。
≪道連れの呪い≫
ゴキヤェロを直接倒した時、倒した生物に付与される。ゴキヤェロの死因と同じ死に方をする。2分以内に解呪するか、ゴキヤェロの体を完全に無くせば消える。
残り時間3秒
あ、終わった。
体に強い衝撃が走る。ベチっと地面に叩きつけられ、考える暇もなくもう一度体に衝撃が走った。体が潰れ、あたりに血が広がっていく。
どうやらこれでは死ねないようで、意識がまだ残っている。血の匂いと叫び声が響く中で痛みに苦しむ。
そして体が見えない何かに包まれ、潰された。
━━━━目が覚める。
体を起こし、生きていることを実感する。視界にはうずくまる姉さんと優さんが入ってきた。
「姉さん!どうしたの?」
まずはかけよってうずくまっている姉さんに声をかける。
「え、純?生ぎでるの?」
姉さんは目を赤く腫れた目を擦りながら俺に問い掛ける。
「うん」
「っ…良かった」
ひどく安堵したように息をはき、笑顔になる。だが、すぐに焦った顔になり、
「純!服に血がついているけどほんとに大丈夫なの?それに体戻っているわよ?」
姉さんに言われてとっさにスマホで確認する。そこには血だらけてしわくちゃの服をきたいつもの俺がいた。動かした感じ何か傷があるわけでもない。
「うん。大丈夫だよ」
ひとまず姉さんは大丈夫らしい。
次は優さんだ。さっきから何かぼそぼそと聞こえてくる。
「優さん。大丈夫?」
「嫌々嫌々嫌々嫌々嫌々嫌々嫌々嫌々嫌々嫌々嫌々嫌々嫌々嫌々嫌々嫌々嫌々嫌々嫌々嫌々嫌々嫌々嫌々嫌々嫌々嫌々嫌々嫌々嫌々嫌々嫌々嫌々嫌々嫌々嫌いやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤ」
どう見ても大丈夫ではなかった。
「どうしたの!優さん!」
「イヤイヤイヤーーーー」
狂ったようにブツブツ言い続けている。何これ。怖い。
「姉さん!どうしよう!原因とかわかる?」
「これはあんたが潰れるのをみて、SAN値が削れたのね。めちゃくちゃグロかったから」
「SAN値って何!?」
「正気度のことよ」
そこで職業を思い出す。あの文字達はゲームに似ていた。何かあるかも知れない。脳内で職業について考えてみる。
≪次の職業につくことが出来ます≫
学生 害虫駆除業者 スパイ
これどうしようもなくね?ってかスパイって何だよ。害虫も俺はゴキしか○してねえよ。どういう基準何だろうか。そんなことを言っている間に優さんの独り言は悪化していく。そんな中右隣でスマホをいじっている姉さんが目に入った。
「姉さん。一回職業って考えてみてよ」
「はぁ?何言っているの?」
「いいから。もしかしたら優さんを救えるかも知れないし」
「えー分かったわよ。うーん…あ、なんか浮かんできた」
「なんか選べない?」
「えっと、配信者、学生、ゲーマー、演者ってあるわね」
なんでそんなプロゲーマーみたいなラインナップ何だろうか。
「どうしよう。優さん戻せるかな?」
「そんなんするよりあんたが女の子の姿になればいいんじゃない?」
「無理だよ。気づいたら女の子になってて、そんで元に戻ったんだから。ん?」
少し思いついたことがあった。
「姉さん。演者ってのを取って小さい女の子とか演じれない?俺の方にはスパイってあるから変装とかないか調べてみるよ」
「分かったわ」
俺はすぐにスパイを選択してみた。
≪スパイに職業を設定しました。≫
≪職業スキルが追加されました。≫
ステータス
名前 深井 純
レベル 10
攻撃 20(直接10 間接10)
素早さ 20
防御 20(直接 10 間接 10)
魔力 20
職業 スパイ
スキル 変装 隠密
称号 ????解析度 5/10
「姉さん!≪変装≫あったよ!そっちはどうだった?」
「こっちには≪声真似≫と≪演技≫ってあったわ」
「じゃあ俺があの女の子の姿に変装するから、姉さんが声を当ててみてよ」
「それはいいわね!でもほんとにできるの?」
「やるしかないよ」
覚悟を決め、女の子の俺を思い浮かべながら変装を使ってみた。
「変装」
体が光に包まれる。妙に派手なエフェクトのあと、俺の姿はあの女の子の見た目へとかわっていた。
「行けた。姉さん!」
「分かったわ。任せなさい!≪声真似≫、≪演技≫!」
姉さんは深呼吸し、スキル名を叫ぶ。
「姉さん。いくよ!」
「優さん?大丈夫?」
姉さんの声とは全く違う、女の子の俺と同じ声が出る。
「どうしたの?いやことあったの?」
姉さんは何かになりきっているのか、俺の声で甘ったるい声を出す。何をイメージしているんだ?
「女の子…じゅるっ」
声はおさまり、優さんの目に光が戻る。ついでに口元が光っている。なんかやばそう。
「なんでもしてあげるよ。」
姉さんはさらに油を注ぐ。やり過ぎではないだろうか。
「姉さん!もういいと思っ」
ギュウウ~~~~~~~~~
めちゃくちゃ強く抱きしめられた。顔が胸に埋められて息ができない。そのまま体中をまさぐられる。完全に体をつかまれているので抵抗が出来ない。
「あっあ、、んっ」
姉さんが言う。ほんとに何のキャラを演じてるのだろうか。
「ハア、ハア」
荒い息が頭にかかる。恐怖を感じ暴れても効果はなく、息も限界がきて、俺の意識は落ちていった。
ゴキブリ怖い