ひしゃげた車のドアから出てきたのは自衛隊服を着た人だった。地面に落ちたオークが死ぬのを確認すると、車を片手で引きずって移動をはじめた。おそらく、あのオークを倒すために派遣された自衛隊員だろう。情報を得るために接触してみる。
「あの…何をしていたのですか?」
変装をして、女の子の姿で話しかける。声は裏声でカバーだ。初対面だし、大丈夫でしょ。
「君!こんな時間に何をしているのですか!」
どうやらこの自衛隊員は女の人だった。
「いや…、あの突然大きな音がなって…その」
「なるほど!音に驚いて外に出たと言うことですか!それでしたら見逃してあげましょう!ですが!それでも!外は危ないので次はないですよ!」
「ごめんなさい」
「何をしてたかですが、ハイオークと呼ばれる今日確認されはじめた化け物を倒していたのです!現在、自衛隊のほとんどは一箇所に集まっていますので、下っ端の私が出たわけです!」
聞いていないことまで話してくれる。もう少し聞いていみよう。
「えっと、どうして車なのですか?」
「あのハイオークはとても強いですが、攻撃を避けようとする意識が低いようなのです!私は自衛隊の中ではレベルが低いので車のほうが威力が出るんですよ!」
なるほど、一発目から最大火力というわけか。
「でもひしゃげてましたよね?」
「問題ありません!これでもレベルは50あるのです!車が潰れるくらいの火力がなら大丈夫です!」
50?下っ端で?自衛隊はそれに加えて武器も揃っている。いつでも革命が起こせそうだ。
「それで弱いほうなんですか?」
「はい!さあ、立ち話もここまでです!危ないので私が送りましょう!」
そう言うと、ひしゃげた車を端によせた。
「いや、一人でも」
ついて来られるのは困る。家から出てきたと言ったにしては、家から少し遠いことを不審がられてしまう。断ろうとすると、
「さあ、行きましょう!どこですか!」
「…」
ちなみにここから家まで徒歩10分だ。絶対不審がられる。うーん。はっ
「まあわかりました。でも先に家族に連絡してもいいですか?」
「どうぞ!」
歩いて2分くらいで着いた家には烈火という表札がかかっている。
ピンポーン
ピンポンを押すと背の高い男性が出てくる。
「はい」
「どうも!自衛隊です!お嬢さんが外にいたので送りに来ました!なるべく家から出ないように、出るとしても複数人で、警察の目の届くところにしてください!」
「これは、これは。すいませんでした。ありがとうございます」
「それでは!」
自衛隊のお姉さんは帰っていった。
「純、どうしたの突然。ありがとうねお父さん。対応してくれて」
「それはいいが、正義から話は聞いていた通りの姿だな。本当に純君なのか?」
「はい。清志さん。といってもこれは変装っていうスキルを使ってるだけです」
「うおっ。その姿でその声は笑えるな」
この人は正義の父親の烈火 清志さんだ。ちなみに普通のサラリーマンだ。
「で、純。なんで?」
「それがね~かくかくしかじか」
正義とは幼なじみであり、清志さんとも第二の親くらいには長い付き合いなので包み隠さず話そうと思ったが不死については濁す。こいつ、お人よし過ぎるので粘着されると吐いてしまう。悪いことをすると、だいたい正義が耐え切れず、バレて一緒に怒られていた。なので、これからのために~ゴキヤェロとか、ゴブリンでレベルも上がっていたので~と少し、想像で埋めながら話した。
「なるほど。そんなことが。大変だったな」
そういいながら頭を撫でてくる清志さん。正義がたまにクラスの女の子を落とすのはこの人の教えの賜物だろう。
「純。俺もついて行っていい?」
正義がそういってきた。
こいつはかなりのチート野郎だ。おそらくまだ、ゴブリン一体でもレベルが上がるんじゃないだろうか。それに馬鹿見たいにステータスが上がる。確かに一緒に行っても足手まとい所かむしろメインになりそうだ。
「俺はいいけど、清志さんは?」
許可は必要なのではないだろうか?と思い尋ねる。
「いいぞ。正義が行きたいならな」
まさかのオッケーがでた。
「なら、明日の朝そっちのここに迎えに行くから起きててくれ」
「わかった」
「じゃあ帰るわ」
「大丈夫か?」
「はい。見つからなくなるスキルがあるので」
「気をつけてね」
正義と清志さんに見送られ、俺は隠密を使いながら全力疾走で家に帰った。