「ってひーちゃん?嫌だよ?働かないよ?もう疲れたし」
レイはそう言いきった。そうして俺を見つけると、あ、と声をこぼして布団に潜り込んだ。
「よーし、お前ら、特に深井 純。どういうことか説明してやる」
ひーちゃんは妙に大声で話しはじめた。
「まず、俺達の存在からだ。ひーちゃんこと俺の名前はヒカだ。そしてあいつはレイだ。俺達は神の使徒として、神が望む世界へと変わることをサポートするために来ている。サポートといっても具体的には一人、現地の協力者を見つけて、スキルと知識をあたえ、俺達の代わりにやってもらうだけだ。当然それをするなら、後は何をしてもいい」
一度言葉をきってレイを指差した。
「こいつと俺では使命が違う。こいつの使命はいわば保険だ。世界が今出現している化け物によって滅びそうになったときのためにな。だから、こいつは死なないようになっている。そうして、世界を滅ぼそうとしている奴をこいつが対応する。死なないからな、どれだけ強くても大丈夫ってわけだ」
「あの、じゃあヒカさんの使命は?」
「俺のはとりあえず置いておけ。悪いものじゃないが、良いものでもないし、知られたら面倒だからな。話を戻すが、レイは協力者を作れない。なぜならこいつが与えられるスキルは存在しないからだ。ところで、深井 純、お前のスキルの中に代償強化と不死があるだろう?」
「え、あるけど」
「それはな、レイのスキルなんだ。本来与えられないはずのスキルを協力者に持たせる。それには、方法が一つだけある。そう、相手を自分にしてしまえばいいんだ。それか、自分を相手にしてしまうか。神の使徒にはそれが出来る。要するに深井 純。お前はレイに吸収されたんだよ」
場の空気が完全に凍った。それでもヒカは話を続ける。
「一つになることで不死でも何でも持たせることが出来る。ただし、体が二つの体に耐え切れなくなり、一定時間で弾けてしまう。それゆえ、神の使徒は死んでしまうから使わない。だが、不死を与えたなら話が別だ。弾けても元に戻ってしまう。確証はないが、見た目がレイと深井 純でかわってしまうのは不死が復活させる対象が二つだからだろう」
この話が本当だとすると、夜の激痛が治ることはないということだろうか?いや、吸収ができるなら、その逆も?
「ちなみに元に戻すことは出来ないぞ」
「仕方ないでしょ!」
布団の中から、レイが大声を出した。
「私だって、悪いとは思ってるよ!でも、この役割のせいでさ、何度も何度も死なないといけないんだよ!神様はさ、面白そうだからとか言って、痛みになれることがないとか言う意味わからない制約を儲けやがったしさ!いっつもいっつも、君達は死なずに私だけ死ぬ。もう嫌なんだよ!辞めたいんだよ、こんな役割!」
何かを吐き出すように、叫びつづける。
「あの時はもう限界だったんだよ…。前回の仕事では体に杭を打ち込まれたり、四肢をもがれたり、溶岩で体を溶かされたり、首を切られたり、胸を引き裂かれたり、拷問されたり、体をすり潰されたり、毒を飲まされたり、散々だったんだよ…」
どんどんと声が小さくなっていく。
「そんなときにさ、気づいたんだよ。これを使えば押し付けられるんじゃないかって。藁にもすがる思いで試したらあらびっくり、痛みを恐れることがなく、人の記憶を見ることで、暇も潰せる。お菓子も食べれる。そんな夢みたいな空間に入れたんだから」
突然声が明るくなった。思い出しているのだろう。
「そっからはもう最高だったよ。純が見た映画はおもしろかったし、お菓子は変なのが多いけどだいたい美味しかった。天国だとも思ったね」
そこで一度言葉を切った。そして布団から顔を出したレイはこちらを睨みつける。
「私はこの生活を手放したくない。どうせ、この世界が終われば私はまた、別の世界で死なないといけないんだからこのくらいは許して」
そう言われたヒカはこちらを見てきた。
「それを決めるのは俺ではない。深井 純だけ残す。存分に話し合え」
ヒカがそういうと、姉さん達の意見に耳を傾けずに姉さん達ごとすぐさま消えてしまった。
レイの気持ちはわからんでもない。おそらく俺がハイオークにやられた時のことを何度もやられているのだろう。それには同情してしまうし、俺は不死に何度か命を助けられている。どちらかというと譲歩してあげたいが、だからって毎日あの痛みは辛い。せめて二日に一回は変わってもらえないだろうか?
考えをまとめ終わり、レイの方向を見る。
「担当直入に言わせてもらう。頼むから、ずっとは辞めてくれ」そういって土下座した。