純達が出ていって、私は優さんがいるから動こうにも動けないもどかしい時間を過ごしていた。こっそりと、純の部屋に忍び込むくらいしかやることがない。
「呼ばれず飛び出るじゃじゃじゃじゃーん!」
「ベル」
純のベッドでごろごろしていると、どこからかベルが出てきた。
「さぁーて明子よ。暇だろうから、精神魔法について教えてあげよう」
精神魔法。純の中にいるあれを消すために必要な魔法。万全を期すため、手に入れたらすぐに使うわけではないが、いちいちベルに聞くのももどかしい。
「じゃあ、お願い」
そこでベルの授業が始まった。精神魔法だけなはずが、話は闇魔法やまだ持っていない光魔法へとうつっていった。時間潰しのつもりが気がつけば1時間は経過して、かなり魔法への理解が深まった。
ピーンポーン
チャイムが鳴り響いた。
「ごめんなさ~い。ちょっと手が離せなくて、出てもらえますか~」
優さんの声だ。これで無視も不自然だろうし、出よう。
「え、どちら様?」
玄関にいたのは男女の二人組だった。男の方はかなりの美形だ。純の方がカッコイイけど。
「お前、悪魔を知らないか?」
突然そんなことを言われた。悪魔。思いつくのは称号の悪魔の呪い。しかし、何故そうなったと言われれば分からないし、向こうが望む答えが出来るとは思わない。と、いうより、出合い頭にそんなことを言う人間がまともな訳がない。少し警戒しながら、答えた。
「知らないです」
男の方はその答えに落胆したのか一度頭を掻きむしると、一言。
「やれ」
と呟いた。
「ごめんね。ひーちゃんがそう言うから仕方ないよね」
といって、突如手元に現れた刀を振りかぶってきた。警戒していただけに避けることは出来た。しかし、反撃することは叶わない。狭い空間、相手は武器を持っていて、こちらは持っていない、相手の技量もあいまって、どうしても避けることしか出来ないのだ。
「≪変身≫」
姿をかえ、ステータスをあげる。先ほどのよりかは、多少余裕が出来た。それでも劣勢なのは変わらない。容赦なく命を奪う一撃を放つ女の攻撃をかい潜り、魔法をうちこんだ。
「≪火魔法≫」
即興で生み出された炎は、私への攻撃のついでとばかりに切られた。
「え?」
「ごめんね。魔法は切れちゃうんだよね」
信頼していた魔法が切られる。それもあっさりと。ならばと、手数を増やして行く。炎、水、風、ひたすら下がりながら魔法を撃ち続ける。
それらは全て切られてしまって、でも、最後に放った盲目の闇魔法がヒットした。
いける。これなら…!しかし、女は以前変わらず私の方へと詰めてくる。
これは、当てたんじゃなくて、わざと受けた?
それに気づくいた頃には女の刀は私の首へと、吸い込まれるように降られて━━━━━━
地面から生えてきた太い針がそれを防いだ。
「やらせませーん。せっかくの新しいパートナーなんだよ?」
人の前に出ることのないベルが現れて、そういった。
男は、整ったその顔を大きく歪めると
「悪魔が……!」
と憎々しげに呟いたのだった。