世界の変化に追いつけない   作:ありくい

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第五十一話

 

「お~お~怖いねぇ怖い怖い」

おどけたような様子でベルは男へと声をかけた。

「今度は何だ。何をした」

「な~んにも。強いていうならちょこっと“想い”を強くしてあげただけだよ。僕ってえら〜い」

男はため息をつくと、女に命じた。

「やれ。あの犬を優先しろ」

そうして一息つくと、

「そっちがそうするならこっちだってやらせてもらう」

男がそう言うと、女の持つ刀が黒く光った。

「明子~これはね、何でも切れる剣だよ。あの神の使徒が手を貸すと何でも切れちゃうんだ。まるで豆腐のようにね。防ごうとか思っちゃダメだよ」

ベルは私に相手の行動について教えてくれる。切りかかってくる女を裁きながら、いや、少しずつ押されている。先程私への刀を防いだ針はスパッと切られ、役に立っていない。ふわふわと掴みどころのない動きで刀を避けているが、相手の目が慣れてきたのか浅く切られることが増えている。

「ベル!」

助けるため、魔法を撃ち込む。でもこっちを見ることなく、切られてしまう。ダメだ。気を逸らすことすら出来ない。

「ダメだよ~。ちゃんと隙を伺うんだ。例えばこっちの方に意識を向けていないところを狙うとかね」

やけに私へ授業をしてくる。そんな暇ないはずなのに。でも、

 

周囲を見回す。女の死角へ回るために、女が一番反応しづらい場所に。探すが、そんな場所はない。ベルと女はひたすら動きながら戦っているからだ。

どこか、どこか、はやくしないとベルが…!

あの、男は?ずっと動かない。いや、ベルと女の戦いを睨んでいる。女はやけに男のことを信じているような、いや、依存しているような感じがする。なら、

「≪火魔法≫」

そこで始めて女の隙が生じた。バッと後ろを振り向いて、男の方を見つめている。男に到達した火は燃え上がって男を飲み込んだ。

「いいね!よく出来ました!」

ベルが腕で女の頭をぶったたいた。鈍い音が鳴り響いて女はのけ反る。

「糞が…!悪魔も、お前も、今のうちに始末してやる!」

取り乱した様子の男が火の中からはい出てきた。服もなにもかも何もなかったかのように真新しい状態だ。女は安心したのかベルとの戦いを続ける。 

男はそれを一瞥すると、私の方へと手を突き出した。

ブワッと体が浮かび壁にたたき付けられる。肺が圧迫され、呼吸が苦しくなる。休む暇なくそれは繰り返され、いつしか口からは血が出てきて、赤い水溜りが出来た。

「それ以上はダメだよーっと!」

男の足元から針が突き出す。それが、足を貫くことは叶わなかった。しかし、それが頭に来たのか、男の攻撃対象はベルへ移った。

女の剣と、男の物を動かす力。それが、見事な連携でベルへと襲い掛かる。ふわふわと何度か避けていたベルだが、長くは持たず、男によって空中に縫い止められ、女の刀が胴体へ振り下ろされた。

「ベル!」

そんな叫びも虚しくベルの体は上下に分かたれた。

「ハッ!ザマァねぇな!」

「ふ、ふふ」

上半身となったベルがゆっくりと浮かび上がり、笑った。

「いいねいいね。明子!もうちょっと生きていたかったが仕方ない!君のそれを外してあげよう!」

そういうと、どんどんベルの体が薄くなっていった。既に下半身は消えている。

「これで君の封印は外れる!さあ!君は君自身の望みを叶えるためにそれに従うんだ!そうすれば!いづれ君の望みは叶えられる!」

封印?どこかで聞いた覚えのある言葉だ。でもそんなことよりベルが!

「最後に一つ!プレゼントだ!!」

その言葉を最後に、ベルは消えた。瞬間。私の頭に声が響いた。

≪スキル、≪望みのために≫の封印を解かれました。強制的に発動します≫

 

 

 

 

 

 

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