世界の変化に追いつけない   作:ありくい

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第五十二話

 

体の奥から、何かが沸き上がってきた。

それはとどまることを知らず、押さえ込むことすら出来ず、溢れ出た。

「好き」

ベルを失った喪失感。目の前の男女への恐怖心。怒り。すべてがただ一つの“想い”に塗り変えられる。留まることを知らないそれは、

 

 

彼女が持つ理性すら、塗り変えた。

 

 

 

「好き」

無限の想いに呼応するようにスキルは発動して、ステータスを押し上げる。それすら、止まらない。

「逃げるぞ!これはどう考えてもレイ案件だ!」

ヒカは、正確に明子の状態を認識し、逃げることを判断する。

「好き」

人類の許容量を超えたそれは形となって表に出る。

彼女の周囲では絶え間無く、魔法が発動していた。火、風、水、闇、光、そして、精神。周囲の物は燃えて、濡れて、倒れて。

「好き」

さらに、精神は生き物へと働く。

隠れていたゴキヤェロも、近くにいたゴブリンも、巡回していた自衛隊も、そして、隠れていた優さんも。溢れ出る想いに押し潰された意識に代わって、スキルがその想いに、願いに、望みに、答えるために最適解を選び出す。

モンスターは魔法の渦へ飛び込み経験値へとなり、力ある物は従わせ、無い物には、自身を悟られぬよう記憶をいじる。

「好き」

「好き好き」

「好き好き好き」

一つの“想い”に動きだす彼女を尻目に神の使徒とその協力者は、逃げることしか出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あははははは!ちょっと、ちょっと!面白すぎるでしょ!」

彼女の変化を見ていたベルは興奮したような様子だ。

ベルは始め、この世界の変化が始まったころ、面白い物を探していた。そして見つけたのが友井明子という少女だった。外見、思想といったものは普通の少女出会ったが、何よりも目を引いたのがスキルだった。そこから、ベルの行動は始まった。

まずは、こっそりと自身の権能である≪増幅≫を使用し、彼女の嫉妬や愛情など、適当に増やしてみた。そうしたら、よく分からないやばい人が出来てしまったことも、いっそうベルの興味を引き立てた。

最終的に彼女のスキルとして出現したベルは少しずつ、封印を弱め続けた。神の使徒の力と、悪魔の力はほとんど同格であり、封印くらいなら時間があれば、外せるのだ。しかし、なぜかうまくいかない。後、一つの大きなエネルギーが足りなかった。

神の使徒が気づいて近づいてきたため、負けないように情報を教え込む。そして、自身はわざとやられて、死の間際となった自身を素材として、封印を解除。最後にありったけの力をこめて、≪増幅≫を使用し、彼女の狂った原因でもある“想い”を増幅させた。

「まさか、こんなことになるとはねぇ~」

正直、ベルにとってはこの展開は想定外だった。理性は残ると考えていたから、彼女に授業のような物をしてスキルを解放した後、負けないようにしていたわけだし。力もあそこまで増大するとは思ってもみなかった。

「でも、面白いからこれでいい」

死ぬことであの世界にいられなくなったベルは世界の外から彼女を見て、笑っていた。

 

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