ダンジョンに潜ってはや三日。出られそうな兆しはなく、今日もダンジョンをさ迷っていた。
「づかれたー」
「私だって疲れているわよ」
潜ってみて知ったが、ダンジョンというのはほんとにキツイ。洞窟のような形状なので、前に進めばどこかに繋がると思いきや、まさかのもといた場所に戻ってしまう。洞窟の壁には1、2、3、4といった感じで扉が設置してあり、そこのすべての扉の中でダンジョンが指定するミッションをクリアできれば、進むことが出来る。そして一番厄介なのが、化け物がどこにいても襲ってくるという点である。
「ん?ゴブリン1にオーク4、ヘビ1ね」
「じゃあオーク3とヘビはやるね」
ステータスをかなり減らした姉さんではあるが、三日も経つととレベルがかなり上がってきた。戦い方もなかなか様になっていて動画でも人気だ。ちなみにこの動画。俺達の生命線だったりする。この三日間ずっと配信をしていて、スパチャ機能で有志の方々からご飯を分けてもらってるのである。
「あら、エムさんと勇者がまたスパチャしてくれてるわ」
「ほんとありがたいね。ありがとうございます」
勇者というのは正義の今のネットでの名前だ。すぐにこの状況に気づいてくれて、定期的に食料等送ってくれている。こりゃ頭があがらねえな。そしてエムさんはなぜか俺のファンであり、俺にだけ異常なほど物資をくれる。ちょっと怖いけど助かっているのでお礼しか言えない。ちなみにすべての物資は好きというコメントと共におくられて来る。
「あ、ヘビ」
「じゃあ今日の新規はヘビかな?」
そして、このダンジョン。外と同じように毎日、出現する化け物が増える。これは、コメントからの情報なのだが、ダンジョンには化け物が出なくなった地域に沸くはずだった化け物が沸いている、とのことらしい。ちなみにこの三日で増えたのは蛙、鼬、そして今日のヘビである。
蛙、粘液的な物でこちらの装備を溶かしてくる。サイズはかなり小さいので不意をつかれることは多いが、攻撃を受けても即死ではないのですぐに踏み潰せばいい。ちなみに女の時にこれを俺が受けるとコメントとスパチャが増えた。服をくれた正義君好き。
鼬、めちゃくちゃすばしっこい。基本体当たりして避けるといういわゆるヒット&アウェイスタイルだ。こいつはマジで攻撃が当たらないので火魔法の火のサイズを最大まで大きくして範囲攻撃で攻めている。ちなみにミッション部屋の中には魔法無しでこいつを倒せとか言うのがあり、5時間くらいかかってしまった。終わったときにはお祭り状態だった。
ヘビ、先に見つけることができればいいのだが天井に張り付いてシュルッと服の中に入ってくる。何がやばいってこいつは全身に毒がある。幸いにも始めの被害者は俺であり、男であったので容赦なく服を脱ぎ捨てヘビを引っ張り出して踏み潰した。皮膚は紫色に変色してしまい、これのせいでリスナーに俺が回復能力があるとばれた。なお、性別が変わることは姉さんのチャンネルで既に言われており、受け入れられるのは速かった。tsキターとかもあったらしいが、だいたいは心配してくれたらしい。
「じゃあいくわよ」
ダンジョンに入って8個目のミッション部屋だ。ミッション部屋は入った瞬間、頭に声が響き、ミッションが伝えられる。化け物を倒す系のときは容赦なく襲い掛かってくるので、心の準備が必要である。
扉を開けると、視界が真っ黒になった。そして、ミッション内容はゴブリンを暗闇の中で倒せ!であった。
「姉さん!」
「純!」
声を出して互いの位置を確認し、合流する。すぐさま背中を合わせて耳を澄ます。ゴブリン程度であれば、姉さんだったとしても攻撃を何度かくらおうと打撲程度ですむ。とは言え一体とは限らないのでくらわないに越したことはない。
足音を耳が拾うが、すぐさま別の足音に意識が行ってしまい位置を把握できない。
「純。火魔法はどう?」
「≪火魔法≫」
火は見えるが、それで周囲も見えるというわけではなかった。作り出した火はとりあえず前に投げておいた。
「ギャ!」
「あ、当たった」
ラッキー。しかし、足音が減った気はしない。
「なかなか多いわね。長期戦を覚悟する必要があるかも知れないわ」
「そうだね。じゃあ魔法をひたすら撃ってみるよ」
そういって火をどんどんぶん投げていく。ゴブリンも賢いのか、横から殴って来るがむしろ場所を教えてくれるので殴ってワンパンしていく。
かれこれ1時間程繰り返すと、ついに最後のゴブリンを倒すことが出来て、部屋が明るくなった。
「目がぁ。目がぁぁぁぁ」
これが一番つらい。
≪ダンジョンのすべてのミッションをクリアしました≫
≪ボスへ挑戦できるようになりました≫
部屋中に無機質な声が響き渡り、俺達は呆然とした。