世界の変化に追いつけない   作:ありくい

54 / 137
第五十四話

 

「ボスってなに!?教えて下さい!」

正気に戻った俺達が最初に取った行動は、情報を集めることだった。これも、配信であるからできることであり、視聴者がコメントで教えてくれるのだ。

このコメントはパソコンやスマホから送られているはずなのに圏外のダンジョン内まで届くのはさすが、スキルといったところだろう。

ちなみにコメントは視界内に入れるか、適当な端末から見るか選べるのだが、充電が持たないので視界に映るようにしている。感覚としては右下にボックス的なのがあって、そこにコメントが流れて来る感じだ。動画に出ている人にも共有できるので、俺も見れるというわけだ。

そんなこんなで、一件のコメントがきた。

 

『ボスには二種類ある。一つはダンジョンの一層一層ごとに配置されているボス。倒すことで次の階層に行くことができる。もう一つはダンジョンクリア目前に出るボスで、ダンジョンを作った人のステータスに近いものが出る』

 

「あら。ボスとかまさにファンタジーって感じね」

「この感じだととりあえずやり合うしかないのかな?」

今の目標はダンジョンを出ることなのでさっさとボスは倒したい。というか速くでないとどうなるか、最悪物資をくれる人もいなくなるかもしれない。目の前には明らかにボス部屋という雰囲気を醸し出す扉がある。

「そうね。行きましょう」

扉を開けて、中に入った。

 

「がああああああ!!!!」 

部屋に入った瞬間大声が響き渡った。うるさすぎて耳を塞いでしまう。

「ゅん…純!」

姉さんの声を何とか拾い、前を見ると唖然としてしまった。前にいるのはゴブリンだ。いつもの、片手間で倒せるゴブリンとほとんど同じだ。ただ一つ。大きさが比べものにならないことを除いたら。

そう。目の前には高さが10m程もあるゴブリンが大声をあげていたのだ。

「デっか…」

「≪場作り≫」

驚きとともに緩んでいた警戒が再び締め上げられたかのように上がる。おそらく姉さんのおかげだろう。ありがたい。

「フッ!」

全力で足を殴りつける。が、足は動かない。しかし、痛そうな叫びをあげるゴブリンを見るに、効いていないことは無いはずである。

「純!上!」

姉さんの声に反応してすぐに後ろに引く。すると、さっきまで俺がいたところにゴブリンの拳がめり込んでいた。

「うっわ。くらったらひとたまりもなさそう」

ちょうど手があるので、そこに火魔法をぶつけてみる。理想を言うならこれで火傷して使えなくなってほしい。

「ぐうううううう!!」

手に火が当たるとものすごい速さで手を引いた。余りの速度に火は鎮火してしまい、火傷も期待は出来なさそうだ。

しかし、攻撃は遠くから見ている姉さんのおかげで避けることができるため、そこからヒット&アウェイでゴブリンを攻めつづけた。ダメージはしっかりと蓄積しているようで、所々足の皮が裂けたりしている。

しばらく攻撃を続けていると、ゴブリンの手元が光った。

とりあえず離れて、様子を伺う。ゴブリンの手元に注目していると、そこからは杖が出てきた。

「純!こっちに来て!」

「わかった」

姉さんの指示に従い、近くに寄って様子を見ていると、火が飛んできた。もともとのゴブリンがかなりでかいだけに火魔法も大きくなっている。

「やっぱり!純。おそらく今のゴブリンは魔法使いよ!私にも飛んで来るはずだから指示が出来なくなるかも!」

「了解!できるだけこっち狙うようにするね!」

すぐに離れて俺は近寄り、姉さんは離れる。俺はできる限りゴブリンを見上げながら攻撃をして、注意を引き付ける。

「純!また光ってるわ!」

上を向くと、確かに手元の杖がなくなり、手元が光っている。

「殴れるだけ殴るから武器教えて!」

正直ゲームであれば守らず、攻撃もして来ないためチャンスタイムであるから無駄にしたくない。危険を承知で殴る。

「斧!」

斧?ということは近接か?だとしたらまずい。手元に銃を召喚しながら上を向く。案の定斧が俺に向かって振り下ろされていた。避けようにも間に合わないと判断し、銃で受け止める。

「ぐっ…!キッツいなこれ」

少しずつ押されてしまう。

「純。引き金引ける?足を撃ったら何とかなるかも知れないわ!」

それだ!と思いはするものの銃の反動が少し怖い。クッソでかい斧を目の前にしながら右腕に左手を少しずつ伸ばしていって強化を使う。何とか体制を崩さずにやり遂げると、少し楽になった。強化が切れないうちに引き金を引く。

銃口から発射された弾はきれいにゴブリンの足を打ち抜き、踏ん張りのきかなくなったゴブリンは

 

俺の方向に倒れてきた。

 

「え、え?」

やっばい!やっばい!全力で横に向かって走り出す。しかし、ぎりぎりで間に合いそうにない。潰されるのを覚悟したとき、目の前には姉さんの手があった。掴み、一気に引き寄せられる。おかげで何とか潰されるのを回避できた。

「ありがど~」

めっちゃ怖かったので泣きながらお礼を言う。

「まだよ。終わってないんだから━━」

≪ボスの討伐に成功しました≫

≪次の階層に移動します≫

どうやら、倒せていたみたいだ。

そして、一度視界が暗転し、次に目に入ったのは海であった。所々には船が浮かんでいる。

≪第二階層に移動しました≫

≪残り2階層です≫

まだまだ、ダンジョンは終わらないらしい。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。