世界の変化に追いつけない   作:ありくい

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第六十一話

 

「えっと、え?木じゃないよね?」

なんかの超常的なパワーで木の前に瞬間移動させられただけじゃないの?と、思ったのだが目の前ですぐに元に戻った。

「そんなわけないでしょ」

一瞬で木は純の姉へと戻った。え?怖くね?何処で見られてるのかわかったもんじゃないな。めっちゃ犯罪に悪用されそう。

ま、私には関係ないか。

「じゃあ行こうか」

「わかったわ」

そうして、私達は扉を開いた。

 

 

 

扉の奥は教会の内部のような造りだった。十列ほど並べられた長椅子と奥の壁にあるステンドガラス。そして、ある像の前に一人の少女が祈りを捧げていた。黒の像と光の少女。それはどちらも同じ顔をしていた。

「風花ちゃん?」

風花。確かダンジョンを作った奴だったか。その少女はこちらを振り返って、喋った。

『私達はボスです。倒すことでこのダンジョンのクリアとなります』

「喋った…!」

「さっきの木と同じだろ」

そんなことより、私達というのが気になる。向こうにはどう見ても白い少女一人しかいない。と、思いきや、後ろの像が動き出した。

ズズズと引きずるように台から黒の像、いやボスが降りてきて閉じられていた目を開いた。そして、目が光り━━━

「あぶない!」

純の姉の方にビームが放たれた。演出に目を奪われていたらこれだ。咄嗟に腕で受けるもののかなりの威力なようで骨にまでそれは届いた。

「チッ」

「大丈夫!?」

「気にするな」

久しぶりに感じた痛みに舌打ちしつつ、赤いオーラを纏ってから地面を蹴り上げる。遠距離は面倒なので先に黒い少女へ攻撃する。先ほど引きずっていたことから足が遅いのは分かっていたためなすすべなく攻撃をくらって砕けた。

「うっわ。びっくりした」

人が目の前で砕けるのは驚いたがそんなこと気にせずにもう一人も狙う。

『蘇生』

「は?」

もう一人が呟いたその言葉によって砕けた少女は破片が集まるようにして生き返った。これではいくら黒い少女を倒しても意味がないので白い少女へ接近した。接近された白い少女はこちらへと接近戦をしかけて来る。しかし、今のこちらは防御力も攻撃力も目の前より圧倒的に高いのでステータスの暴力で攻めると一瞬で砕けた。

『蘇生』

そして、黒い少女によって蘇生された。

「うわ、同時撃破系かよ」

これは純がやらなくて良かったなと自分の判断を褒めつつ、時折飛んで来るビームと突っ込んでくる白い少女を対処しながら対策を考える。

向こうは黒い少女が遠距離で鈍速で白い方が近距離で俊足。でも、白い少女は私より僅かに足が遅い。で、あるならば。

白い少女を一旦無視して黒い少女の方へ向かう。飛んで来るビームは流れ弾で隠れている純の姉に当たるのもなんなので全部受ける。でも、傷はつかない。

そして、黒い少女に接近したら壊さないように優しく体を抱き抱えて、白い少女に突っ込んでいった。

『…!』

白い少女はこっちの狙いに気づいたのか全力で逃げはじめる。黒い少女もビームをひたすら私に撃って逃げ出そうとする。

「ま、意味ないけどね」

どれだけ逃げようが、どれだけ足掻こうが速度も負け、火力の足りない二人ではどうしようもないのだ。

最終的に白い少女は追い付かれて、黒と同じく抱き抱えられる。

「まって、かわいい」

二人とも必死にもがく姿がものすごいかわいい。やばい、殺りづらくなる。いや、落ち着け、私。心を鬼にするのだ!

右手に白い少女、左手に黒い少女を持って、全力で地面にたたき付けた。そして、辺りに白と黒の破片が散らばった。

 

≪ボスを討伐しました≫

≪すべてのボスを討伐したので入口へと戻ります≫

 

 

 

 

 

 

 

気付けば、路地裏…純達がダンジョンに迷い込む前の所へ着いていた。瓦礫の山の上にまがまがしい裂け目がある。

「わ。戻ってきたのね」

「そうみたいだな。じゃあ私はもう純と代わるよ。ちょうど起きてるし」

そういうと白い髪の少女の赤い目が青くなった。

「お帰り。純」

「ただいま。それにしても久しぶりの外だーーー」

ぐっと伸びながら純はそう叫んだ。その様子に笑みを浮かべながら、

「じゃあこれで配信を終わりますね。ありがとうございました」

そういって配信を切った。そして、純へと手を伸ばし、言った。

「帰りましょうか」

「そうだね!」

 

 

 

笑顔で手を握った。そうして二人は路地裏から出るために歩き出した。

「ダンジョン。ほんと疲れた」

「お疲れ様」

「いやいや、姉さんもだよ。……?なんか賑やかだね」

「ああ、ダンジョンのせいで化け物が出ないからかしらね?」

「あー!なるほど!ということはお店なんかやってたりしてね!」

その言葉通り、路地裏から見える範囲でもお店が開店していて、人が賑わっていた。テンションが上がって純が通りに出た瞬間、辺りが静まった。

「…え?」

「どうしたの?じゅ…」

お店の前に立っていた店員も、仕事の電話をしていた男性も、遊んでいた子供でさえも、すべての人が行動をやめて、

 

 

 

 

 

 

 

 

無言で

 

 

 

 

 

 

 

 

 

無表情で

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

純を見つめ続けていた。

 

 

 

 

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