世界の変化に追いつけない   作:ありくい

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第六十四話

 

そこはまさに地獄であった。

人間の集団と化け物の群れがぶつかった時、初めは自衛隊によって化け物が殲滅されていた。当然だ。統率が取れていてステータスの高い自衛隊が連携なんて知らずに攻める化け物に遅れを取る訳がない。

でも、それは崩れてしまった。それも味方であるはずの物達によって。そう、一般人の介入によってだ。自衛隊から数分遅れて到着した彼らは化け物達の恰好の餌となった。自衛隊が化け物達を倒す速度以上に化け物は一般人を減らしていった。

もちろん、自衛隊も一般人を助けようとしていたのだが、大量の人を殺した化け物は普通の化け物のように簡単に倒せる訳ではないのだ。地面にひびが入る程の力で殴られれば自衛隊でも潰れてしまう。それだけじゃない。空や離れたところからの銃の攻撃は乱戦となっていたこの場では同士討ちを警戒して使えなかったのだ。

 

そんな中、阿鼻叫喚となった戦場を作った張本人である俺は非常にまったりとした時間を過ごしていた。化け物達が周りを囲んでいる建物の中で爆睡していた。

「スャァ」

「ほんとにそれでよかったの?」

気付けば真っ白で何処までも続きそうな空間にいた。

「何が?」

「いや、かなり外やばいことになってるんだけどね」

そうしてテレビをつけると俺が寝ていた建物から見える光景を見せてきた。真っ赤な液体が飛び散り、時折体と首がお別れしている。

「なんでそんなの見せるのさ」

不愉快な映像に思わず眉をひそめてしまう。

「純さ。ほんとに後悔しない?」

レイは何を言っているのか。向こうは俺の命を狙って来るんだ。慈悲などない。

「彼らが操られていても?」

だから何だというのだ。そもそも、あそこまで統率が取れていた集団が全員操られてるとかありえない。

「あの中に美香が入っているかも知れないのに?」

「………え?」

「だって、今や美香も敵でしょ?」

逃げることを妨害された事を思い出す。

「でも、姉さんは足がそんなに速くないから…」

「美香のことだし先回りとかしてそうだよね。特に化け物と挟まれる形になってくれるこの場所とかね」

いや、それはないだろうと思いつつ、それでも不安が心に深く絡み付いた。もしほんとに先回りしていたら?そして、自衛隊の攻撃に巻き込まれたら?生まれた不安はどんどんと膨らみ続ける。

「どうする?」

そう言われても何かできるはずがない。俺はどちらからも命を狙われる。

「そんなん言ったってもう手遅れだよ…!」

敵を一瞬で殲滅できれば、親しい人の位置が分かれば、時間を戻せれば、こんなたられば並べてもできないものは出来ないのだ。

「レイなら、どうにかできるのか?」

縋るようにそう尋ねる。彼女の答えは淡々としたもので

「無理だね」

絶望する俺を見ながら彼女は続ける。

「流石に乱戦の中で人以外だけ倒すのは時間がかかってしまうし、サーチなんて使えないし、時間だって戻せないよ」

心を読んだかのような例のあげ方だ。

「でも、方法がないわけではないよ?」

「え…」

絶望の闇の中に一筋の光が入ってきた気がした。彼女は何処か取り繕ったような笑みを浮かべて、こちらに歩み寄る。

 

 

 

「私と君を完全に混ぜてみないかい?」

 

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