「混ぜる…?」
意味が分からない。そもそも今の状態は混ざっていると言っても過言ではないだろう。
「そう!今の私達はね、半分混ざって半分独立しているような状態なんだよ。同じ体なのにステータスが違うのはそういう理由があったりするよ」
「でも、完全に混ざるとどうなるの?」
「いいことづくめだよ!私達のステータスが統合されるだけじゃなく、これまで此処じゃないと話せなかったけど話せるようになるよ!それに、私への交代もスムーズになっちゃうんだ!どうだい?」
嬉々とした表情で、彼女は俺にそうアピールしている。話だけ聞くならとても魅力的なのだが、それがどう姉さんを助けることに繋がるのか分からない。
「あ、美香を助ける方法だね?魔法と私の血を使うんだ!」
魔法と血?
「私と混ざることで君はとんでもない量の魔力と≪命中≫というスキルが使える。この命中は魔力を消費して攻撃を対象に確実に当てるって効果なんだ。魔力と命中と君の魔法を合わせれば乱戦でも化け物だけ殲滅出来るよ。そして死んでいても私の血を与えれば生き返らせることが出来るんだ。あ、今だと純のが中途半端に混ざってるから無理なんだよね」
それまでの説明を聞いて、それはものすごい魅力的な提案に思えた。そして、同時に疑問も浮かび上がった。
「ね?やらない?」
「デメリットは何?」
レイはできれば俺だけで戦い等は済ませて欲しいと考えていたはずだ。だからこれはもっと速くやるべきだろう。やらないのには相応の理由があるはずだ。
「………」
一度彼女は深く目をつぶった。
「速くしないと美香も死ぬよ?」
「じゃあ速く教えてくれ」
「……」
「……」
互いに見つめ合う。そして、先に口を開いたのはレイの方だった。
「今ってね。純は寿命を迎えると死んでしまうんだ。そうなると私は純と離れてしまうんだ」
「短めでお願い」
ゆっくりと語り出そうとしていたので忠告しておく。
「……そうなればまた、私は一人で死にに行くことになる。だからもともとこうするつもりだったんだよ」
「それがこれ?」
「うん。こうすれば君は完全に神の使徒となる。離れることも完全になくなる。一つになるからね」
「じゃあなんで初めにしなかったの?」
「これには同意がいるからね。ちょうど精神的に参ってたから今かな~?ってね」
まあ出会って間もないのにそんな提案呑まないよな。呑まないよな?大丈夫か?俺?
まあ大体はわかった。信頼があっただけに騙されそうだったのはちょっと悲しいな。
「ゴメンね。裏切るような真似して。私のことチョットは信頼してたでしょ?」
さて、どうするか。といっても、もう決まってるんだよなぁ?
「じゃあ、どうすれば混ざれるの?」
「え?」
呆けたような顔をして、レイが俺を見てきた。
「いいの?」
「いいよ」
正直、断る理由がない。姉さんが危ないのは事実だろうし、全員を救うには力が足りていないのは事実だ。こんな強化イベントをみすみす逃すわけなくね?
「これから何度も死ぬかもしれないんだよ?」
「そんなときは二人で慰めあおうよ」
実際、精神的に苦しいときは他の人の存在がありがたかったりする。それに片方が辛くなっても、もう片方が何とかでできる、そうでなくても休憩にはなる。
「絶対後悔するよ?」
「まあそうなればそうなったときに考えようよ」
「信頼してる人を騙そうとするゴミと一緒なんて嫌でしょ?」
「とってもかわいい命の恩人でもあるけどね」
困惑顔から一転。レイは朗らかな笑みを浮かべた。
「なら、これから十年でも、百年でも、千年でも、一万年でも、永遠でも!ずっとずぅっーとよろしくね!」
レイは目から涙を零しながら、こちらに抱き着いてくる。そして、静かに唇を重ねてきた。そして、スキルが、ステータスが、記憶が、性格が、レイのすべてが流れ込んできた。
「ぷはっ。これで純と私は一心同体。逃がさないからね!」
地獄のような戦場に真っ赤な火柱が上がり一瞬にして化け物を燃やし尽くした。炎は一点へと集められ、その一点には灰色の髪をたなびかせる赤と青の目を持つ少女が佇んでいた。