世界の変化に追いつけない   作:ありくい

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第七十一話

 

「うーんこれ私要らないよね?」

「何なら俺も要らないね」

目の前ではスパスパと化け物を切り捨てる聖剣があった。とりあえずダンジョンの効果範囲まで運んでやると勝手に動き出したのだ。

「これが独りで動けるなんだね」

「便利だな。それにしても随分と荒ぶってるな」

ゴブリンやオークを消えるまでめった刺しにする剣を見ながらそう言った。

「お菓子食べる?」

「ありがとう」

香菜がお煎餅を取り出したのでそれを貰った。なんで持ってきてるんだ。それも煎餅。待ってこの子お茶飲みはじめた。もうおばあちゃんみたいじゃん。

「正義君。今思ったことを正直に言って?」

「ナニモオモッテナイヨ」

流石に怒られることを察知したので誤魔化した。その間も聖剣は化け物を切り刻んでいた。

それから、これまでのことを話したりしていると声が響いた。

『とりあえず喋る機能は解放できました』

「お、だいたい2時間くらいだ」

「うーん。結構時間かかるね」

もう3時を越えそうになっている。後7つだから最低14時間くらい掛かるだろう。

『お願いがあるのですが、この聖剣を上に投げて、10秒程で再召喚してまた投げて召喚してというのを何度も繰り返して頂けますか?あ、効率重視のため、これが終われば喋りません』

「ん?分かったよ」

なぜ、と思ったがやることがないので何も言わずにやってやる。

「ほい!」

とりあえず20メートル程高く上げてみる。すると聖剣は二つに別れて別々の方向へ落ちていった。

「おー!これが増えるって奴か!どっちも勝手に動いてくれるんだな」

「すごいねー。…あ、10秒だよ!」

そういわれたので手元に引き寄せると一本だけ帰ってきた。そして上に投げるとまた二つに別れた。

「これカンって音して気持ちがいいね」

そう。この聖剣が二つに別れるときカンっと心地のいい音がするのだ。

「確かに。ずっとやっていられそう」

まぁ、4時間もやれば飽きるけどね。

 

 

 

 

 

 

 

時計が7時を回ったので一旦家に帰ることにした。聖剣を投げ続けてくたくたになった腕を香菜は持ち、隠密の効果に便乗している。

「ん。ここからだね。化け物が出なくなるの」

「そうだね。でも、今は普通の人すら信じにくいから隠密は解除せずに行こう」

明子の手によって自衛隊の人ですらどうなっているか分かったもんじゃない。

「分かった。ってあれ?」

香菜が不思議そうな声を出した。目線の先を追うと曲がり角でその先から僅かな光が漏れている。あそこは確か商店街ではあるものの化け物騒動のせいですべての店が閉じたはずだ。

「行ってみる?」

「…うん」

そうして、曲がり角を曲がった先にはいつもの風景があった。そう、いつものである。

充分に先が見通せる程の明かり、シャッターを上げた店の数々、買い物袋を片手に持った笑顔の人々。何度も見てきたその商店街はいつもの風景を取り戻していた。

「わあ。すごいね!」

「そう…だね」

「え、どうしたの?久しぶりにこんなの見れて私は嬉しいよ?」

少し目を輝かせる香菜を見ながら思う。

 

どれだけ賑わっていて、

 

どれだけ人々が楽しそうで、

 

どれだけ僕達が望んだ風景であっても、

 

 

 

 

僕は偽物としか思えなかった。

 

そうとしか見えなかった。

 

どこまでも、どこまでも、どこまでも

 

 

気持ち悪かった。

 

 

 

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