「嘘でしょ」
流石にそれだけでそうとは分からないだろう。そのはずだ。そうであってほしい。
「いや、精神魔法が使えるなら出来てもおかしくない。そもそも魔法はレベル10までいくとかなりおかしくなるからな」
突然の新情報だ。
「何ですかそれ。詳しく教えてもらえますか?」
優さんが少し早口になって問い掛ける。焦るのも仕方ないと思うくらいこの情報は鍵になる気がする。
「そんなに難しく考えなくていい。火を地面から出したり龍みたいに固めたり檻を作ったりと、自由度が広がるんだ。精神魔法の場合、映像にそれをかければウイルスのようにどんどん広がっていく。まあ魔力次第で限界はあったりするがな」
「止める方法は」
「ない」
だとすると、どんなメディアも聖域内か近くに光魔法を使える仲間がいないと見ることに危険が伴うということだ。
「なら、外で安易にテレビとかスマホを見るべきじゃないってことですね」
「そういうことだ。後、まあ友井明子次第にはなるが、自衛隊も政府も陥落される恐れがあるということは知っておけ」
あぁ、そうか。
「そういう人たちは絶対メディア見ますもんね…あっ」
「正義君?」
そういって一つの可能性にたどり着いた。そういえば、俺の母さんは元警察で現自衛隊。最近自衛隊に入った渚。これが敵に回る恐れがあるということに。
「そういえばそうだったね…。でも、光魔法と聖域で何とかなるよ!正義君光魔法覚えたでしょ!」
一度下を向いた香菜であったが、すぐに光魔法のことを思い出して声を上げた。確かに、今回のレベル上げ(聖剣)で覚えることが出来たのでそれを使えばいいかと安心する。同時にもっと速く使えていればと後悔が襲ってくるが心に秘めて笑顔を作る。
「それもそうだね。なら大丈夫か」
「横に友井明子がいれば聖域じゃないと無理だと思うぞ?」
「え?」
突然そんなことを言われた。どういうことだ?
「すぐさまかけ直されるだろうし、烈火正義への対抗策とも言えるその二人に回す魔力のリソースはかなり多いだろう。光魔法で治せるかも怪しいぞ」
「魔力の話なら聖域でもダメなんじゃ?」
「聖域は魔法とは少し違うから大丈夫だ。魔力云々を無視するからな」
なんというか、香菜が明子キラー過ぎる。
「じゃあ私と正義君はずっと一緒にいなきゃだね!渚君や正義君のお母さんを守るためにも!」
「まあ、そうなるかな?」
香菜の父親でもいい気がしたのだが、全天のことも考えるとそうでもなさそうだし、何よりもここでそれを言うのはダメな気がするから黙っておいた。
「えっ。それ香菜さんのお父さんでもいi………」
ものすごい殺気が香菜から出てきた。ほんとこの人は…。
呆れた視線が優さんに突き刺さり、この話が終わった。
「ねえ、正義君」
寝る時間が近づいて来て、部屋の片隅に簡易的な寝る所を作っていると、香菜が話しかけてきた。
「どうしたの?」
「えっと、その。ごめんなさい」
そうして頭を深く下げる香菜。何なんだ?
「あのね、実はさ、一部の場所で雨が降ってたり、炎が燃えていたりね。遠くから見ていたんだ。そして、急いで助けにいこうとしてた」
何のことか分からなかったが、すぐに明子との初めての戦闘のことだと思い至った。そして、気づいた。
「頑張って走ったんだけど、間に合わなくてね、とっても大きな火の柱が上がったときに見えちゃったんだ」
やめてくれ。
「正義君のお父さんが正義君にナイフを向けているのを」
頑張って忘れようとしてたのに
「その後に…」
「もういいよ」
「…」
「そうだよ。父さんは死んだよ。だから何!?香菜には関係ないでしょ!」
声を荒げてしまう。何とか心に封じ込めていた悲しみか、怒りが、どんどんと沸き上がって来る。
「こっちは気を使って黙っててやってたのにさ!何でそっちから言うの!?」
「だって、正義君。ずっと悲しんでるから」
は?
「そうだよ。悲しいよ!でもさ、不幸自慢なんて意味ないでしょ?そんなの自己満足だし気を遣わせるだけで何の得もない。だから黙ってたんだよ!我慢してたんだよ!」
こんなの言ったって少し他人の気持ちが重くなるだけ。デメリットしかない。
「でも、見てて辛そうだったし」
「そりゃ辛いよ!当たり前でしょ!父さんは仕事が忙しい母さんに代わって僕を育ててくれた!大事な大事な家族なんだ!それがっ…」
視界がぼやける。ずっとせき止めていた何かが溢れ出そうとしていた。
「泣いてもいいよ」
「泣いたらっ」
「私はそれを知っているから、気にする必要はないんだよ」
ダメだ。止められない。
「ごめんなさい。私がもっと速く行ければ、助けられたと思う。だから悪いのは私だよ。正義君じゃない」
「そ、れは、」
「自分のせいにしないで、悪いのは全部私だから」
ちがう。そうと分かってる。でも…。
「そうだよ。香菜がもっと速く来てくれたら…」
言っちゃダメだ。
「助かったのに!」
助けられた分際で何を言っている。
「香菜が全部悪いんだ!」
ああ、もういいや。
「ごめんね」
そう謝り続ける香菜を前に、僕は泣くことしか出来なかった。