世界の変化に追いつけない   作:ありくい

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第七十七話

 

父さんが死んで、遺体も残らなくて、悲しくて、悔しくて、泣いた。ずっと泣きつづけて、涙が枯れた頃、やっと気持ちの整理がついた。

父さんの死を受け入れて、悲しみは涙に流して消して、自身がどうしたいかを必死に考えた。

守りたい。

僕の大切を、大切な人を失いたくない。

これ以上、父さんのような人を作りたくない。

そこまで考えて、僕は前を向いた。目に映る景色はより明瞭に見えて、心はやけにすっきりとしていた。

「あぁ」

窓の奥には光輝く月が浮かんでいた。

 

 

「香菜」

「グスッ。ごめんなさい」

「何で泣いてるの?」

うずくまっていた香菜に声をかけると、鼻声で謝られた。

「いや、何でもないよ」

香菜はふるふると力無く首を振って、腫れた目を細めて、笑顔を作った。その笑顔はとても優しげで、悲しげで、そして安堵しているようだった。

「心配かけてごめん。でも、もう、大丈夫だ」

一度、言葉を整理するため間を開ける。

「僕は皆を守りたい。もう何も失いたくない」

それは、勇者としてどれだけ情けないのだろう。

「だけど、僕一人じゃ絶対に取りこぼしてしまう。そしてそれは後から拾える物でもない」

皆を守ると豪語しているのに、どれだけ情けないのだろう。

「だから」

男として、どれだけ情けないのだろう。

「支えてほしい。助けてほしい。一人じゃ何もできない僕と一緒に皆を守ってほしい」

でも、父さんのような犠牲を出さない為にはこうするしかないんだ。

「お願いします」

頭を下げた。

 

 

 

 

 

「仲間のいない勇者なんてありえないよ」

香菜は僕の手を握り、微笑んだ。

 

僕の世界を救う活動は、今、始まったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌朝。昨日あんなことを決めたはいいが、聖剣のレベルが上がらないと、どうしようもない。だから、今日もレベル上げに勤しんでいた。

「今日は鼬みたいだ」

「わっ。速いね~」

しゅびしゅび動き回る鼬。でも、

『フゥゥゥゥゥウ!』

聖剣の前では無意味だった。鼬は何度も何度も辺りを回った後、攻撃をしかけて来る。そして、飛び込んだ先の聖剣に斬られていた。

「これなら心配いらなそうだね」

「うん」

実際、どんな敵も聖剣が確実に倒してくれていたからほんとに僕等いる?と思ってしまう。

そんな時間が4時間ほど続いて、聖剣が声を上げた。

『終了しました。全ての機能が使用可能です』

「やったああ!」

「よっしゃ!」

長い長いレベル上げが終わって二人で喜び合う。必要な事とはいえ、暇だったのだから仕方ない。そして、近くにあった家の影から闇が溢れ出てきた。

「うわっ。ヒカさんが言っていた通りになったね。≪全天≫≪聖域≫」

「何回来るんだ…」

三度目の明子の襲撃であった。

 

闇が晴れ、目の前にはもう見慣れた魔法少女の服装を纏う明子がそこにいた。もう、無力化とかは考えない。全力で叩き潰さないとこっちがやられてしまう。

「≪聖剣≫」

召喚し、分裂させる。そうして準備を整えた僕達だったが結果から言えば、それは必要なかった。

「あれ?」

明子は何もしない。ただそこに立つ。動いているのは闇を放っている男だった。

その男の攻撃は≪全天≫を貫通しない。だから、一応香菜の近くにいながらも明子のみを警戒していた。

「待って正義君!周りが!」

そういわれて辺りを見渡すと、既に闇に包まれていた。

慎重に相手の出方を伺う。でも、結局何も来なくて、闇も晴れてきて、

「え?」

「あれ?」

僕達は、

「ここどこ…?」

どこかも分からない都市へと飛ばされていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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