自衛隊は明子の脅威を完全ではないが、分かっているようだった。どうやら、他国でそのような能力があることが分かり自衛隊に警戒が促されていたようだ。それを受けて全国の自衛隊では光魔法を常備することが義務化し念のための検診がされていたようだ。
洗脳と判断された自衛隊員の行動を洗って、絞り込まれたのがこの動画であり、実際に光魔法の使い手を近くにおいて実験もしたらしい。しかし、既に被害は計り知れずこれを公にするのも難しかったようだ。
「それで何を知りたいんですか?」
できる限り手短にするために先に条件を絞り込む。
「何でもいい。ただ最低でもこの人物の名前と今分かっている範囲でいいからスキルと被害を教えてほしい」
「分かりました」
出来るだけ手短に。でも聞き返されないようはっきりと。頭をフル回転させながら言葉を選び説明していく。それでも時間はかかってしまい気付けば日は暮れていた。
「もうそろそろどうですか…?」
疲れと焦りから苛立ちが滲むような声を出してしまう。やらかした。これで拗れたら面倒だ。
「すまない。こちらが不甲斐ないばっかりに…」
いいからはよ終われやぁ!と叫びたいのを我慢する。というか、香菜は聖域を張ってからまだ一度も喋っていない。
「ねぇ。正義君」
「何?香菜」
やっと口を開いた香菜に対してなるべく笑顔で相手をする。もちろん、不安を抱かせない為である。
「そんなに急がなくていいよ」
「え?」
たっぷりと間を開けてしまうほど予想外の言葉だった。
「考えたんだ。もし今から行ったとしても既に明子ちゃんのやりようによっては手遅れだと思う。そして手遅れじゃないんだったら多分、今日どころか明日も明後日も生きれるはずだって。だって洗脳するだけなら多分私達に向けて使うと思うからね」
香菜の言うことはよくわかる。だけど、それを言う香菜の顔色がおかしい。台詞には似合わないほどに真っ青だ。
「いや、でも」
「いいから!無理しなくても大丈夫だから…!」
「えっと。これは…」
自衛隊の人も突然の展開に困惑顔だ。
「別に無理なんか…!」
「してるよ!だって正義君ものすごい手が熱いんだよ?頭だってクラクラするはずでしょ?聖域じゃどう頑張っても病気は治せないの!」
そう言われて、初めて体の不調を意識した。確かに頭はいたいかもしれない。でも、このくらいならたまにある程度だ。
「失礼!……すぐに安静に出来る場所を確保しろ!」
自衛隊の人が頭を触って来る。そしてすぐにそんなことを部下に指示した。
「別に体調がちょっと悪いだけだよ!こんなのたまにあるだろ!?」
周りの様子に少し不安を覚えてしまう。でも、そこまで不調ではないのは確かなのだ。
『いえ、現在限界突破を使用しています』
場が凍る。そして香菜が叫んだ。
「今すぐ解除して!」
『しかし、このままではすぐさま倒れてしまいます』
「うー!」
少しいらいらしたように地団駄を踏む。
「体温計です!」
自衛隊の人の部下さんが持ってきてくれた体温計を奪うように取った香菜は僕の口に全力で突っ込んできた。
「ほら!」
香菜が見せてきた体温計には40.5と表示されている。こんな数字初めて体温計で見たかもしれない。と呑気な事を考える。
「ベッドが用意できました!」
「運べ!」
「もう解除していいよ」
『そのようですね。承知しました』
一連の会話の流れを聞いて、ものすごいけだるさが体を、頭痛と吐き気が意識を蝕む。そして、視界は暗転した。