冷たい感触を頭に感じながら目を開ける。
「あ、おはよう」
香菜がすぐさま気づき反応する。って俺は何を…。ああ、確か熱がでたんだっけ。よっこらしょっと体を起こすと、せき止めていた水が流れ出すように痛みが襲ってきた。
「うっ…」
「ああ!ダメだよ。安静にしなきゃ。もうすぐ薬が出来るみたいだからさ。まだ寝てよう?」
「くすり…?」
くすり、くすり…薬か。ただの解熱剤であるなら効くのに数時間といった所か。ああ、まだ東京まで時間がかかりそうだなぁ。
「あ、何か食べたいものある?」
何言ったってあるかわかんないのになーと思いつつ、一つお願いする。
「じゃあ純のとこにこれ送って」
そういって、手元に聖剣を召喚してアイテムをだす。これは、食料ではあるが、自衛隊の下にいるならそんなに必要ないと判断したうえでの行動だ。
「分かった」
そうしてしばらくすると視界の端にちらっと見えていた物が消え去り、香菜に感謝する。
「ありがとう」
「いいからいいから、さっさと寝なさい」
「はーい」
目をつむると、すぐに意識は沈んで行った。
家族が、信者さん達が危ないと知って恐怖で頭が真っ白になった。
お父さんはもうわたしに残された唯一の家族だし、信者さん達も古くからの付き合いでほとんど家族のような物だった。それが失われると思うと胸が痛くて仕方なかった。
そんな私を、正義君は引っ張って自衛隊と話しはじめた。ほとんど覚えていないが、頑張ってくれてたんだと思う。気づいたときには、この日のうちに帰れるように話を付けていた。
そこで、彼の顔を見た。ぱっと見、何の変哲もない顔であった。だけど、規則的な呼吸が乱れているのに目が行った。すぐに手を掴んで確信する。熱だ。それもかなり重症の。
彼は明らかに気づいていない様子だった。そこで私の中で葛藤が生まれた。
家族か彼か
だけど、結論が出るのにそうそう時間はかからなかった。すぐさま頭に浮かんだのは、私のために動いてくれる彼の顔。必死で、不調すら気にしないほどの激情で動いてくれた彼だった。
もちろん、それだけじゃない。明子ちゃんは正義君には明確な殺意を持っていた。でも、彼のお父さんへの殺意はなかったように思われる。ただ、正義君を殺すためだけの材料だといわんばかりだった。それなら、まだお父さんも信者さんも希望があるはずだ。それに、正義君は信者さんも含めて私の知っているかぎり一番強い。将来的に見ても彼を残すのが合理的だ。
言い訳を頭に浮かべながら、私は口を開いたんだ。
「ねぇ。正義君」
そんなことを思い出していると、自衛隊の人が一人の白衣を纏った女性を連れてきた。おそらく、彼女が薬を作ってくれる人だろう。来るのに半日かかったのだから、相当優秀なはずだ。
「まずは見ていきますね」
「はい。お願いします」
頭を下げながら、私は聖域を発動した。流石に光魔法は浴びてると思うが、念のためだ。
「はい。それでは━━━━」
ほんとに彼女は優秀なようでとんとん拍子に診察は済み、正義君に渡された薬を飲ませると、スキル産なのか即効性でみるみると顔色がよくなった。
「あ、痛くない」
正義君も驚いている。まあでも、副作用ですぐに眠ってしまったが。彼が倒れてから、既に一日が経過している。さっき確認した純君の配信では今日はヘビが追加されているらしい。
「この感じだと、帰れるのは明日か明後日かな?」
気持ち良さそうに眠る彼を見ながらそう呟いた。
チクリチクリと胸が痛んでいた。