世界の変化に追いつけない   作:ありくい

83 / 137
第八十三話

 

「あの、今日って軍事演習あったりします?」

「正義君!ふざけない!」

おこられた。でも、これは僕が悪いね。だって演習なわけないもんね。テレビに黄色い服着た人映ってるし。

瞬間、聖剣がひとりでに動く。そして、視認できない速度を出す砲弾を弾いた。

「え?はっや!」

「≪全天≫」

香菜はすぐさま全天を張って次に備える。

「香菜。どのくらい全天張れる?」

「いくらでもいけるよ!魔力はたっぷりとあるからね!」

その直後、砲弾が全天に弾かれた。

「自衛隊さん!今すぐ飛び立つ準備をしてください!それまでの時間は稼ぎますし飛んでからもなんとかできます!」

「…了解しました」

何か言いたいことはあるだろうが、何もいわずにやってくれる。

「?!≪全天≫≪全天≫≪全天≫!」

それを聞いて、すぐさま振り返る。そこでは何百人もの自衛隊が全天の壁に群がっていた。時折割れるがそのたびに張りなおしている。

のんびりとする時間はない。一歩踏み込んで聖剣をよこなぎにふるい、自衛隊をはじき飛ばした。が、何人かは空中で体制を整えてすぐさま距離を詰めて来る。受け身を失敗したものですら、起き上がる。

「頑強すぎるだろ…」

一人、二人が耐えるとは予想していたがまさか全員とは。全員の練度とステータスの高さが伺える。

「倒せなくても、時間は稼ぐ!」

聖剣のアイテムボックスから北海道で拾っておいた砂を取り出す。それらすべてに≪投石≫は適用されるのだ。振りかぶり、砂をばらまく。一部は地面をえぐり取り、砂煙を、そしてその他多くの砂粒が自衛隊の足を奪った。

「ちょ!正義君!何も見えないよ!」

「大丈夫。香菜はそのままね」

文句の声が上がるがこの聖剣は見えていないものですから防ぐ。それをヘリコプター近くにも置いてきたから攻撃が見えずに当たることはないはずだ。それに、

「集団行動は防げるはず…!」

まとめてかかって来ても、一度や二度ならなんとか出来るが、こちらの手札を見られたなら見事な連携力でそれらを無効化されるだろう。一人一人なら種が割れても大丈夫なはず。

そして、再度砂を出しタイミングを見計らう。そんな中、風が前から吹き荒れた。砂煙はこちらに流れ、大きな足音が響く。だけどそのくらい予想済み、再度砂を投擲した。先ほどの音声がリピートされる。一方こちらは全天を砂は貫通できない為、被害は無しだ。

「終わりました!乗ってください!」

その声を聞くや否や、香菜を抱えてヘリコプターに跳び乗……運転席の自衛隊さんを無理矢理引きずり出して跳びだした。直後、ヘリコプターがあった方向で凄まじい音が響く。

全速力でそこから距離を取って、砂煙が晴れるときを待った。いや、待つまでもなかった。だって余りにも大きく、真っ黒なハンマーが振るわれていたのだから。

それはすぐに蒸散して、一点に集まる。そして、その一点には、いつものといっていい、あの男がいた。

「またあいつか…!」

「あれ?明子ちゃんは?」

言われてみればどこにもいない。何故だ?ここしばらく、だいたい二人一緒に出て来ていたというのに。

「とはいえ、まずい」

逃げ出すための乗り物が壊れてしまった。そして、今の間で自衛隊員の傷はすべて治っているようだ。おそらく、回復出来るような人がいるのだろうが、厄介極まりない。

どうする。回復役がいるとするならそれから狙えばいいが生憎、四対四というわけでもない。おそらく、回復役を狙えるときには既に他を全滅させている。そうでないと、あの連携をくぐり抜けれるとは思えない。

一応、一撃で自衛隊の意識を奪えればなんとかなる。回復はあくまでも外だけだろうし。中まで治せないはずだ。だけどそれは、少しのミスで人が死ぬ。それはダメだ。

だから、

「逃げる!」

「分かった!」

僕と香菜は自衛隊さんを抱えながら町中の住宅街に逃げた。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。