世界の変化に追いつけない   作:ありくい

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第八十五話

 

「終わった?じゃあ投げるよ!」

逃げ込んだ先は路地裏で入口が一つしかないため≪光魔法≫→洗脳を解いた人を投げる→自衛隊さんが説明。というような方法で人々の洗脳を解いていく。ただ、一分ほど説明に時間がかかるので全天と聖剣で止めながら一人一人投げ込んでいる。やればやるほど人手は増えるから、いつかペースもあがるだろう。

そうして、二十人くらいの洗脳を解いた辺りで攻めて来る者はいなくなった。

「うーむ。余り減らせなかったなぁ」

いつか止まるとは思っていたが軽く四十くらいは超えてほしかった。

「まぁ仕方ないよ。むしろ二十人も助けられたんだから誇ろうよ」

「まぁそれは……」

視線の先で闇が膨れ上がる。

「あいつを倒してからだね」

聖剣を一本残して、距離を詰める。だけど闇には触れないように、包まれないように細心の注意をはらい、斬撃と火魔法で少しずつダメージを与えていく。

「ガァァァァァァア!」

もうこの叫びとともに広がる闇にも慣れた。すぐさま下がり、火魔法と聖剣で飛んで来る闇の針を捌いていく。そして、闇が晴れると無傷の男が立っていた。

今は、それでいい。ただただ、耐える。一番大事なのは僕が目立つことだ。全員の目に入ることだ。もし、彼等の、いや、明子の狙いが僕だとしたら……

隙を見て、辺りを見回す。案の定、さっきまで俺達を狙っていた自衛隊達も、一般人も、戦車もすべて俺を狙っている。もう、香菜への攻撃を仕掛けるやつはどこにもいない。

「よっし!」

狙いが全部僕に向いたので聖剣を手元に戻して一本浮かせた。そして、手に持った聖剣で飛び込んできた人の足を刺し、香菜の方向へぶん投げた。

そして、香菜は飛んできた人間を自衛隊さんが受けとり、出血した足を聖域で催眠と一緒に治療している様子が確認できた。これなら、さらに減らしていける。

聖剣を手元に呼び寄せ、同じことを繰り返す。足を貫くことに抵抗はあるし、飛び散る血でおかしくなりそうだが、耐える。ただひたすらに、僕は戦った。

 

 

 

十人ほど減らして行くと、さっきから闇でチクチク攻撃してきた男が動いた。

右手をあげる。それに沿う形で拡がっていた闇が男の右手に集約する。四方八方に闇は重なり男の右手は男の何十倍ものサイズにまで膨れ上がる。

どう考えても当たれば終わる。香菜が全天を何枚張っても耐えられるか分からない。しかも、男の正面は香菜の方向を向いているという状況だ。自衛隊達と違って仲間への配慮はゼロのようだ。だけど…

「闇がないなら、容赦はしない!」

全力で男の背後に回り込み、男の右腕を根本から切り落とした。

「あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!!!」

右腕に集約していた闇はぱっと離れ消えていく。そしてそのまま、香菜の方向へぶん投げた。僕も香菜の所に向かった。

「香菜!聖域お願い!」

「もうしてるよ!」

見ると、男の腕から噴き出す血はおさまり、体から噴き出す闇も消えていた。

「えっと、生きてるよね?」

いくらステータスがあったとしても肩を切り飛ばされ、そのまま空中を舞い地面に軽くたたき付けられたのだ。生きているのか分からない。恐る恐る脈を測るとしっかりとあった。

「意識がないだけみたいだ」

いや、腕は聖域では治しきれないので“だけ”というのはおかしいか。とはいえ、これで男に施されていた洗脳は解けただろう。

「じゃあ、仕上げといきますか」

一番厄介な奴もやれたし、後はそんなに苦労することないだろうと思っていると、声をかけられた。

「私達も手伝わせてください」

それは、これまで洗脳を解いた自衛隊達だった。もちろん、足を貫いたりちょっとだけ打ち所が悪くて腰をやったような人は座っているが、無傷の人たちはそうやって頭を下げた。

「え、でもここで説明とかしてくれてるじゃないですか」

そういうことではないのは分かっている。でも、危険に晒すわけには…

「私達はもともと洗脳されていたから分かるのですが、何故かは分かりませんが、洗脳を受けた人間はすべて貴方に対して憎悪を抱き、攻撃してしまいます。その攻撃の隙を狙って捕まえるくらいはやらせて下さい」

だけど、やっぱり危ないし…

「正義君」

声をかけられ顔をあげる。

「無理はダメだよ。一人じゃ取りこぼしてしまうんでしょ?」

 

ああ、そうだった。

 

「分かりました。お願いします」

 

そして、太陽が沈む頃には、残りのすべての人の洗脳を解ききれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、時間もないが、自衛隊の人達に明子を知ってもらうため聖域の効果範囲内でネットで拡散されている今日のニュースを見てみた。

「だれ?」

香菜がそう声を漏らした。それもそのはず、テレビに映っていた少女は明子では無かったのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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