「いやほんとだれ?」
まーじで見たことない。ただ、同性同名でどちらも魔法少女を名乗るとかあるのか?
「あれじゃない?気づいた人用のブラフとか」
「なるほど」
北海道の自衛隊のようにこの事態に気づいた勢力は他にもいるだろう。それ用の対策である可能性は十分にある。ネットに回っていた方の動画では明確に顔が分かったわけではないだろうからひっかかるのも出てくるだろう。
「とりあえず、写真は私達の携帯の奴使おっか」
「そうだね。ってか待って。偶然明子をからかうために作った画像とそっくりなんだけど。これで良くない?」
「え~?うわ。ほんとだね」
こんな偶然あるんだなと思いつつ、その写真を自衛隊さん達に送った。これで、テレビの少女が明子だと勘違いする人はかなり減るはずだ。
さて、一通りやることは終わったものの時刻は既に夜の9時を回っている。流石に今から再出発は視界不良なだけでなく、途中で日付が変わり新たな化け物が出ることもあり、無しということになった。純もまだ出れなさそうだしね。
と、いうわけで右腕を失いうなだれている闇を扱う男から話を聞くことにした。一応、念のために自衛隊さんに囲ってもらい、聖域も張っている。なぜか。こいつは風花ちゃんを襲っているからだ。危険人物には変わりない。そういえば風花ちゃんは大丈夫だろうか。まあ最悪ダンジョン内に入っているだろう。
「おい」
「ハイ」
相手が付け上がらないように一番がたいのいい自衛隊さんに尋問をお願いする。見事萎縮してくれている。
「貴様が友井明子について知っていることをすべて話せ」
「ワカリマシタ。ソレデハ」
「それはちょっと困るなぁ?」
男の背後から突如マスコットのような見た目をした鬼が出て来た。かわいらしい見た目とは裏腹に謎の威圧感を感じる。
「せっかく、あいつ……。確かベルがあんな面白いもの作ってくれたのに俺が台無しにしたらダメだよなぁ?」
その鬼は手に持った小さな金棒を振り上げて男に振り下ろした。
カァンと音がなり、ぎりぎり聖剣が間に合った。
「あっぶねぇ。ってかおっも…!」
体制が悪いのもあるがだとしてもあの小さな体からは考えられないほどの力を出している。というか、いったい何のつもりだ?
「ちっ。邪魔すんなよ。せっかく口封じしてやろうと思ってたのに」
「は、ハア?お、お前が俺をこんな風にしたくせに!」
「知るかよ。力を与えてやったのはそうだが、調子乗って見事に洗脳されたのはお前だろ」
どうやら仲間というわけではないらしい。しかし、力を与える?神の使徒のやっていることと似ている…?
「お前は神の使徒なのか?」
そう聞くと、一瞬ぽかんとしたあと、笑い出した。
「だははははは!!!!俺が神の使徒?違うわ!俺は悪魔だ」
「悪魔…?」
「そう!今暴れている魔法少女をあんなのにした奴の仲間さ」
まるで劇の悪役のように芝居めいた口調で鬼はそう言った。なるほど。ヒカの言っていたとおり、悪魔とは人に害を及ぼすものらしい。とりあえず、僕は鬼に向かって聖剣を振った。が、避けられる。
「勇者との戦闘は無理だな…。じゃ、この闇。返してもらうぞ」
「あ、止めてくれ!」
そう言うと同時に男から鬼へ急速に闇が移動していく。邪魔しようにも聖剣はすべて弾かれてしまう。
「じゃあな」
男から完全に闇が抜かれると鬼は闇に包まれて消えていった。
翌日。完全に何も出来なくなった男は現地の自衛隊に丸投げして、僕らは新たに調達したヘリコプターで移動しはじめていた。
男からはあの闇の能力について聞き出すことが出来た。あの闇を出すスキルの名称は≪怒りの深淵≫。基本的にあの闇は攻撃、防御、回復、移動と何でも出来るのだが、怒れば怒るほどその出力は大きくなる。攻撃なら火力があがり、移動であればより遠くへいける。どうやら、明子には精神魔法でずっと怒り狂わされ、操られていたようだ。そして、何よりも恐ろしいのは、あのスキルは悪魔から与えられたものらしい。それが何を意味するのか。
いつ、同じような闇を使う人間が現れてもおかしくないというだけではない。
明子が同じ力を手に入れても、なんら不思議はないと言うことだ。