「これないよね?」
『んー。なさそうだね』
これが最後の死体だ。血を垂らして原型を留めていない程までにぐちゃぐちゃになった顔はみるみると元に戻っていく。
「まあ、明らかに男っぽい服装だっもんね」
分かってはいたが、残念だ。いや、姉さんが死んでいなくてよかったと思うべきだろう。
姉さんを探すついでに僕らはすべての死体に血を垂らしていった。明らかに違うとわかるものもあったのだが、化け物共にぶつけたのは俺だから助けてあげている。
「それにしても、やっぱりこの人ら俺のこと純ってわかんないのかな?」
さっきからこっちを凝視する人はちらほらいるのだが、襲い掛かってくる者は一人もいない。見た目がかわったとはいえ、自衛隊なら分かると思うんだけどね。
『いやいや、純は、いや、私達は神の使徒になったんだからこれまでとはまったくもって別人だよ?』
「そう言うもん?」
『そういうもん』
「あの…」
レイと話をしているとこっちを凝視していた内の一人が話しかけてきた。
「あなたは何物なんですか?」
その目には好奇心と明らかな恐怖の感情が浮かんでいた。というか、他の人、それも、僕達が生き返らせた人以外は同じような視線を向けてくる。ちなみに、生き返らせた人からはどこか信仰じみた視線を向けられる。
消えた方が良さそうかな。
『そだね』
口に出さなくても反応してくれるから、怪しまれずに方針を決められるのは便利だ。
『あ、そうそう。代償強化の部位指定は右手使わなくてもできるよ』
へ~。早速試してみよう。対象は~歯でいいかな?
「≪代償強化≫」
同時に地面を蹴ってその場から離脱した。痛かった。
とりあえず人目のつかないところまで行けたから携帯を確認した。
「ふむふむ。ここか~」
ちゃんと正義からは避難場所の位置が送られてきていた。んでその場所は……
「真反対…!」
『純ツイてないね』
うっせうっせ。
正義にちょい遅れるとメッセージを送り、隠密を発動させてから目的地へと走りはじめた。
「ねぇ。代わってくれたりとかしない?」
『今、いいとこ』
アニメ見てやがる…!
着いた。だいたい1時間くらい走ったと思う。正義から指定された住所には、警察署があった。
「え、ここ?」
大丈夫だとは思うが、さっきまで警察(現自衛隊)に追われていたから少し入るのに勇気がいる。
『だいじょ~ぶ。最悪全部燃やせばいいよ。純に仇なすものは皆殺しだ!』
「なんでそんな過激なの」
皆殺しはいかんでしょ。生き返らせることができるとはいえ、あの苦しみを自分から与えるのはなんか嫌だ。これこそ、死んだことがあるからこそ言える言葉である。
『いや、罪無き善良な私達を殺そうとしてるんだから容赦はいらないでしょ』
そうなのかなぁ?
納得できないまま警察署に入ろうとするとピタッと首筋に冷たいものが当てられた。
速い。強化無しじゃ視認すら不可能な速さだ。また生えてきた歯をいつでも代償強化に使えるように準備しておく。
「誰だ」
殺気の篭った、聞き慣れた声がする。
「正義?」
「は?」
「いやいや俺だよ!純!深井純だって!」
「………」
沈黙が辺りを支配する。
「深井純は決してお前のような髪色をしていない。それに女だ。そんな男っぽい口調じゃないぞ」
「いやそれはちげぇよ!なら人違いだわ!」
不本意すぎてツッコンでしまった。
『今って女の子なのかな?男の子なのかな?』
あ、それは正直あれがないから大体は察してる。じゃなくて!
どうしようか必死に考えていると、ふと空気が緩んだ。
「マジで純なの?」
首に添えた剣はそのままに正義はそう尋ねてきた。とりあえずブンブンと首を振る。
「はぁ。なんでそうなったのかは知らないけど、確定するまで縛らせてもらっていい?」
良くねえよ!といいたいがこれで正義と殺し合いは勘弁なので俺は従うしかなかった。