世界の変化に追いつけない   作:ありくい

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第九十五話

 

「えっと、まず純は死んだ人を生き返らせることができるのか?」

「うん。レイの力だよ。死んでから余り時間が経ってなかったらそれで治せるんだ」

「そっか」

時折、何かの叫び声が耳に入る。まあ、あっちは正義の聖剣がぶっ飛んでいった先であるから、化け物の悲鳴だろう。誰も何も喋らない沈黙の中で、しょうもないことを考え低ると、やっと正義が口を開いた。

「純はこの前言ってたよね。もう何度も死ぬような地獄は味わいたくないって」

所々違う気がするがまあ意味的には同じだ。

「そうだな。一瞬で意識が遠退く感覚、ジワリジワリと視界が霞み大事な物が次々と流れ出る感覚。どれももううんざりだよ。自分も嫌だし、お前らがそうなるのも嫌だ」

「じゃあ聞くけど、どうして殺したんだい?」

ピリッと空気が変わった気がしたが、答えは特に何の変哲もないものだ。

「そうした方が逃げられないだろ?」

生き返らせることができるのだから、一時的に殺した方が逃げられないし確実だ。そもそも生き返ってるんだから何の問題もないはずだ。

「それは、君の言う地獄を相手に見せているのと同じじゃないのかな?というか、逃げることに何か問題でもあった?」

え、だって逃げたら‥?

「純はさ、これまで人と戦うとき、どんなときでも至近距離から銃で急所を抜くなんてことなかったよね」

確かにこれまでは足を撃ってたけど‥‥

「もう一度聞くよ。どうして、純は人を殺したんだい?」

 

 

言われてみて、考えて、気づく。どうしてこんなことをしているのかなって。二度とあのような思いをしたくなくて、させたくなくて今日まで戦い、生きてきたのに今度は自分がそれを相手にしようとしている。

明らかにおかしい。矛盾している。いや、思考と行動が矛盾するなんてそうそう珍しい物ではないが、こればかりは違う。

そもそも、俺にとって奴等が逃げても何の問題もない。情報がー、とかそんなもの既に手遅れだろう。気にしてすらいない。皆の命が、正義と香菜と渚が死ななければいいのだ。

逃げたければ逃げればいい。俺達が無事ならそれでいい。だというのに逃がしたくないから殺す。必要のない行動だ。

どうして、なんで、どうして、なんで、どうして、なんで、どうしてなんでどうしてなんでどうしてなんでどうしてなんでどうしてなんでどうしてなんでどうしてなんでどうしてなんでどうしてなんでどうしてなんでどうしてなんでどうしてなんでどうしてなんでどうしてなんでどうしてなんでどうしてなんでどうしてなんでどうしてなんでどうしてなんで━━━━━

一体いつからこうなってしまったのか?

 

まとまらない。今だ目の前でこちらを伺う二人の顔が気になってしまう。

「ごめん。ちょっと整理させて」

「うん。いくらでも待つよ」

「私も」

「ありがとう」

そうして、そのまま横になり、目を閉じた。ちょっと相談しようと思ったんだ。

場所は真っ白なあの世界で、相手は俺の片割れの少女で。

 

 

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