旭奇譚~和風ファンタジーな鬱エロゲーの名無し戦闘員に転生したんだが周囲の女がヤベー奴ばかりで嫌な予感しかしない件~   作:愛川蓮

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第2章
第九話


「おおぉぉぉぉぉ!」

 雨が降る夜の路地裏で咆哮と共に放たれた拳が巨大な一角熊の式神の眉間に叩き込まれる。

 

『グオ……!?』

「ああァァァァァ!」

『グ……ガ、グオォ……オ』

 普通の熊にとっての急所である眉間に拳を打ち込まれた事で怯んだ所で更に連続で眉間に叩き込まれた事で遂に白目を向き倒れ伏した。

 

「なんとまあ……呆れた男じゃな。そんなやり方で『源武(げんぶ)』を倒すとはのう……」

「次は、てめぇの番だ……爺!」

 自身の腕の関節を強引に外し無理矢理リーチを伸ばした拳でカウンターを食らわせるという無茶苦茶な策を実行し、そしてそれを実際に成功させた目の前の青年に老人は呆れ果てた顔で言い、青年は殺意に満ちた顔で老人にそう吠える。

 

「……ふん、あの女の為に随分と気張るではないか。あやつに恩でも売って朝廷へのコネにするためか?」

「ちげえよ……俺みたいな無茶で無謀なガキを拾って、才能あるからとてめえの術まで教えて、ついでに俺の妹や仲間まで拾ってくれた特異なババアの……あいつへの恩返しの為だ!」

 老人の言葉に青年は殺意を滲ませながら歩みを進める。

 

「ババアの無罪を認めさせるために、ババアやてめえの実験のせいで半妖になったガキどもの前で土下座しながらくたばれや、爺ぃぃぃぃぃ!」

 咆哮と共に青年は突撃し…………

 

「ふん、やはりガキじゃな」

「あ、が……」

 老人が展開していた見えない針状の結界に自ら突っ込み、ほぼ全身から血を流しながら倒れ伏した。

 

「ふむ……激突寸前で気付き、咄嗟に結界を張ったか。この結界に突っ込んだにしては随分と血の量が少ないと思ったが……これは存外有望株だったのかもしれんのう……」

「あ、ぐ……が……」

「……まあ、放っておいても死ぬか。ほれ、源武……起きんか」

 老人は血塗れになって倒れ伏す青年を少しばかり驚いたような目で見ていたが、すぐに興味をなくし、倒れ伏している己の式神を起こすと何処かへと去っていった。

 

(……情けねえ、敵の実力も測れねえで何が……敵討ちだ)

 青年は徐々に意識が薄れていくのを感じながら自分の行動を自嘲する。

 

(ああ、これが走馬灯ってやつなんだろうな……俺の人生が、どんどん映し出されるじゃねえか……)

 自身が産まれ、霊力があるとわかって危うく妖への生け贄にされそうになり妹とともに必死で逃げた幼少期、都へ逃げ出し同じような境遇の少年少女と共にスリや乞食をして過ごし、養母に拾われた少年期、そして養母と修行をしながら過ごした今までの時間……

 

(おふ、くろ……みんな……悪い……い、な……)

「確か、こっちから霊力が……って、ちょっと! 大丈夫っすか!?」

 青年が意識を失う瞬間、誰かの声が路地裏に響いて……

 

「夜、起きろ」

「……ん? おお、朝か」

「ああ、起きるのはお前が最後だ」

 青年……夜は目を覚ますと、そこには金髪のカソックを着た青年……ローランと真面目そうな武人の青年『鳥谷(とりたに)有吾(ゆうご)』がおり今まで見ていたのが三年前の夢だったことを知った。

 

「にしても、今日で都には着くんだよな?」

「ああ。俺達が世話になる『逢見(おうみ)』家に挨拶してそれからは自由に行動して良いそうだ……まあ、『鬼月家の評判を落とすような真似はするな』と釘は刺されているがな」

「……そうか」

 夜はローランの言葉に頭をバリバリと掻きながら夢の内容を思いだし、都にいる養母と大切な友人達、そして養母が大切にしている半妖の家族達に思いを馳せ……同時にこうも思った。

 

「……どの面下げて帰れると思ってんだ」

「ん? 何か言ったか?」

「いや、何でもねえ」

 夜がそんな自嘲気味な言葉を言うと、有吾は聞き返すが夜はそれを何でもないという体で手を振りながらそう答えた……

 

 ────────────────────

 

 上洛……原作ゲーム『闇夜の蛍』ではゲームの進行のある時期までに規定の水準まで能力値を向上させる事で上洛に同行する事が出来る。

 

 この作品の舞台たる扶桑国は都を中核とした中央を帝と公家を中心とした朝廷が統治し、地方の統治は世俗を中心に治める大名と妖等の超常現象に対処する退魔士一族の二重権力で支配されている。

 

 上洛は朝廷が大名や退魔士一族に対して課す義務の一つである。三年に一度上洛した彼らは半年間内裏への参勤と都の守護を命じられる事になる。

 

 鬼月家もまた定期的に一族からの代表と手勢を率いて入洛しており、ゲーム中盤でこの上洛予定が来る事になっており、この際の主人公のステータスや友好関係、好感度によって上洛に同行するか否か、誰が上洛して留守にするか留まるかが変わり、それによってストーリーが大きく分岐する。おう、姉御様とゴリラ姫の姉妹の内、仲良くなった方が上洛して留守中にもう片方との好感度をカンストさせたら凄え修羅場が見れるぜ……?(白目)

 

(つまり、今回の上洛は原作スタートの丁度二年半前か……)

「ん……? 伴部さん?」

 上洛が三年に一度、主人公が鬼月家に引き取られてから上洛イベント開始まで半年である事を思えばゲームスタートまでの残り時間は明らかだ。

 

 ……とは言え、生きる上での仕方ない行動であったにしろ俺や鬼月旭のせいで既に僅かながらとは言え原作から初期設定や状況が乖離している。

 

「おーい、伴部さーん」

 このままゲームが素直にスタートするかは分からないし、スタートしたとしても殆んどがバッドエンドなルートをどう回避するか、あるいは利用して逃げるかが問題だ。上手く服従と監視の呪いから解放されても場合によってはこの国自体がぐちゃぐちゃになりかねない。本当にこのゲームの難易度は畜生だなおい。

 

「伴部さん、あたいの話を聞いてるっすか?」

「え? な、何用で御座いましょうか……?」

 突然かけられた声に俺は我に返り、能面越しに声の主に視線を向ける。

 

 部屋の隅で膝をついて控える俺の視界に映りこむのは畳の敷かれた広々とした部屋……その上座で正座する少女の直ぐ手元には和琴が鎮座していた。その弦に触れていた手を離して膝の上に乗せるオレンジ色の髪の少女は物凄く不満そうな顔で、その少女の仕えの黒髪の少女が『あちゃー』という顔で此方を見ていた。

 

「人が演奏してるのに他の事を考えるなんてちょっと失礼っすよ? なんか班長になってから伴部さんって、冷たくないっすか?」

「いえ、決してそのような事は。都での懸念事項等について愚考していただけの由で御座います」

 頬を膨らませて『怒ってます!』と主張する少女に俺はそれに対して当然のような内容を含めて謝罪の意を伝える。

 

 牛車(迷い家化済み)三両、その他に荷運び等の馬車が三両、退魔士は代表含み四人、彼らを世話する雑人は一〇名同行する。そして隠行衆が五名、下人一二名、薬師衆等その他衆六名、旭衆六人、臨時雇いの人足が三〇名余り……数だけで見れば下位の大名に匹敵する規模の隊列は霊力や異能持ちが多い事もあり、妖達にとってはご馳走だ。整備されているとは言え、特に山道は未だに妖が現れて商人や旅人を襲う。山賊だっているだろう。

 

「心配してくれるのは嬉しいっすけど……下人衆の班長とは言え、伴部さんがどうにか出来る範囲の事は多分、宇右衛門様や葵姉にあたいでも対処出来るっすからね」

(……この時期の都での懸念事項……やっぱり『狐児悲運譚』での出来事の事よね)

 目の前の少女はこそば痒い様なそれでいて感謝している表情でそう言って、微笑みを浮かべる。

 

 実際問題、俺の実力は所詮は下人である。目の前の年下の少女やゴリラ姫は当然として今回の代表たるあのデブい叔父相手でも戦う事があれば一ミリも勝機はない。そんな彼らが後手に回る内容を俺如きがどう出来ようか? そうでなくても凶妖でも出てこない限りは同行する退魔士によって道中襲ってくる化物なぞ即殺されている。お陰様で下人の班長たる俺は仕事もせずに目の前の少女の護衛兼お喋り相手兼琴の演奏の聴き手でいられる訳だ。

 

 尤も、それも都に入るまでの事ではあるが。この時期の都に訪れるなんて婉曲的な自殺行為だぞ……? 

 

(いや、どうにか出来なきゃ死ぬだけなんだけどな?)

(どうにかしないと佳世ちゃんや沙世さんが辛い目にあって、私も巻き込まれて死にそうになるかもしれないし……絶対に対処しないと)

「? 伴部さん、唯ちゃんも何を考えてるんすか?」

 原作ゲームや外伝の漫画・小説等の媒体に基づけば、今回の上洛のタイミングは非常に不味い。正確にはゴリラ様やデブ、鬼月旭や旭衆は強いので大丈夫だろうが下手すれば俺は巻き添えで死にかねない。そして何より問題なのはそんな魔境であると理解していても、あの書き下ろし小説を読んでしまえば都に入る以上は何かしなければ後味が悪すぎる事だ。

 

(問題は俺に自由な時間があるか、あったとしてどうすれば良いか、か……)

(私にはそれなりに自由な時間があるから、対処の為の準備は出来るけど……最悪、借りたくはないけど……道硯翁の手でも借りないと対処出来ないかもなぁ……)

「おーい、二人ともー」

『アイテム屋佳世ちゃん両親の脳味噌プリン案件』やら『新街の孤児院で起こる踊り食いパーティー』を知っている以上は無視するには罪悪感が強すぎるし、それ以上にストーリー上困る。ないならない方が良い案件ばかりだ。

 

 そうでなくてもあの『女狐(・・)』のゲーム本編での糞具合は鬼月家と良い勝負である。碧子も大概だがあっちは一応本編の範囲内ならヘイトは少ない……しかし糞女狐の外道さはゲーム販売時から既にヘイトの対象だった。性格が腐りきった悪女だった。一応少しだけ、本当に少しだけ擁護的な設定もあったがそれでは誤魔化しきれないくらいには畜生だ。殺せる時ならば(可能性が低くても)やってしまった方が良いかも知れないと考えてしまう。

 

 実際は、そう軽いノリで渡れる橋ではないのだがね……

 

「二人とも、何か考えてることがあるんなら聞くっすよ?」

「姫様、その………」

「あ、旭様……すいません」

「良いっすよ。……でも、誤魔化すのはなしっすよ? 伴部さんは能面越しでも何か悩んでる事が仕草でわかるし、唯ちゃんも何かを凄く心配してるのがわかるっすからね」

 そう言って鬼月旭は少し考えると、「二人の雰囲気がこれから都に行くのに『陰鬱』って感じなんすよね……本当に何が心配なんすか?」と何処か奇妙そうな様子でそう言った。

 まぁ、流石に都での生活にわくわくする事はあっても陰鬱になるものは珍しいだろう。人妖大乱の時代なら兎も角、この時代都程安全な場所は他にない。

 

「あたいに出来ることがあるなら、手伝うっすよ?」

「いえ、それは……」

「えっと……」

 鬼月旭の言葉に俺はつい黙ってしまう。こいつに手伝ってもらうのは俺も考えたが、こいつは姉御様やゴリラ姫に対して誤魔化しや嘘が下手くそだ。手伝ってもらうには俺の前世の事とかを話さないといけない(何故そんな事を知ってるのかと理由を言わなければならないからだ)。こいつ経由で姉御様やゴリラ姫……最悪の場合、鬼月家の長老衆に俺の事がバレた時の事を考えると二の足を踏まずにはいられない。

 

「「………」」

「ん~……言えない事があるならしょうがないっすね。誰だって秘密にしたいことの一つや二つはあるからっすね」

 俺の僅かな沈黙に、鬼月旭は『しょうがないなぁ』という顔で呟く。助かるには助かるが、同時に罪悪感がわくのも確かだ。

 

「あ、そうそう……宇右衛門様の許可は取ってあるから、二人とも向こうでは出来る限り自由行動をしても良いっすよ。……流石に鬼月家の評判を落とすような真似はダメっすけどね」

 鬼月旭は今思い出したという体で俺の単独行動の許可を出してくれる。

 

「御意に」

「仰せのままに」

 俺は深々と、感謝を込めて頭を下げた。俺を信頼してくれた鬼月旭のお陰で少なくない命が救われ、原作主人公の幾つかのバッドエンドが回避され、何よりも俺の生存率が上がったのだから……

 

「旭様、到着致しました。今から入門の準備に入ります」

 俺が謝意を示した時、丁度牛車の簾を上げて雑人が報告する。俺は能面越しに目配せすれば鬼月旭は頷きながらそれを認可した。

 

 一礼の後、俺は牛車の簾から外へと降りる。そしてそれが視界に映りこんだ。

 

 それは荘厳な城門だった。青々しく、秋になれば黄金色に染まるであろう豊かな田園を区切るように都正面に建てられた木製の大門。多くの牛車や馬車、人足等がその門へと長大な列を為して並び、都の近衛兵がそれを監督していた。羅城門……それ自体が幾重もの防護術式が付加され要塞化された城門である。

 人だかりが海を割るように別れていく。鬼月家の牛車と人の列はそれを当然のように享受して門へと向かう。名家たる退魔士一族が商人や出稼ぎ農民と共に門に並ぶなぞ有り得ない。俺もまた牛車の傍らで護衛として控えながらその列に続く。

 

「……さて、来てしまった以上はやるしかないな」

 俺は腹を括って覚悟を決める。危険ではあるが……その分のリターンが期待出来る以上はやるしかない。

 

 脳内で時系列を整理していき、まず最優先すべき事を俺は導き出す。

 

 この都で真っ先に行うべき事は分かっている。それは即ち忌々しいド畜生女狐の復活と強化を阻止する事である。即ち……新街の外れに存在する孤児院での踊り食い、そして院長たる元陰陽寮頭『吾妻(あがつま)雲雀(ひばり)』が人質を取られるという卑怯な手段によって無抵抗のまま食い殺される事を阻止する事だった。

 

 ……ただ、気になることが一つある。

 

「あの側仕えは何を考えてたんだ……?」

 何やら不安そうな顔をしていた葛葉唯の存在を思い出しながら俺は門を潜るのだった。

 

 ────────────────────

 

「……此処も変わらねえなぁ」

 夜は新街の雑踏を団子等を食べ、露店商を冷やかしながら歩く。

 

「……もう少しで孤児院なんだ、が……戻るか」

 夜はもう少しで里帰りをする……所で頭を掻きながら来た道を戻ろうとして……その声を聞いた。

 

『いたい……こわい……たすけて………』

「……悲鳴?」

 その消え入りそうな弱々しい声に夜は気付くと、即座に走りだし聞こえた路地裏に入るとそこには何かを庇う男女と向かい合うがらの悪い男達がいた。

 

「……おい、なにしてんだ」

「よ、夜……!? ああ、もう! 伴部さんと被って動揺してるのに更に面倒な事になる……!」

「ああ!? ……ひい!?」

「声をかけんな! 化物を庇う……げげ!?」

「よ、よよよ、夜!?」

「い、生きてたのかよ!?」

「此処までビビられるような事をしてたのかこいつ……?」

「おお、生きてたぜ」

「「「し、失礼しましたー!」」」

 夜が声をかけてきたのに気付いた男達はあっという間に逃げ散った。

 

「……んで、お前らはお前らで何してんだ?」

 そう言って夜は向かい合っていた男女に声をかける……何故なら黒い外套を羽織った男女はそれぞれ槍と刀を先程まで庇っていた頭から『狐耳(・・)』を生やし、臀部に『狐の尾(・・・)』を生やした白髪の少女に向けていたからだ。

 

「……彼女は後に災いを招きます。だからこそ、排除をしないといけません」

「ほー……そんな、『躊躇ってます!』みたいな感じの話し方をしてる奴がんなことを言っても説得力がねぇぜ」

 そう言って夜は拳を構え……「Uooooo!」その声と共に黒い影の拳が男女に向けて降り下ろされた。

 

「じぇ、『ジェイ』か!?」

「Oh! Brother!」

「肩借りるよ!」

「今度は『(まお)』かよ!?」

「!? あんた……夜!」

 夜はその肌の黒さから見世物扱いを受けていたのを助け出した南蛮生まれの友人の名を言うと、今度は悪質な手品師のもとでこき使われていたのを助け出した大陸生まれの友人が両手に持ったナイフを投擲し、男女を牽制する。

 

「猫、ジェイ! 無事か!」

「猫さん、ジェイさん!」

「おふく……ババアに『(はな)』かよ……」

「……夜か!?」

「うそ、兄貴!?」

「く……! 此処で来るなんて……」

「逃げるぞ! 後、お前の事も説明してもらうぞ!」

「あ、待ちやが……「この……馬鹿兄貴! 今まで何処ほっつき歩いてた!」ぐええ!?」

「待っ……くっ!?」

 夜が最も会いたくない養母と実の妹が走ってきたのを見て男女はその場から霊力を使った跳躍をして近場の家の屋根に着地しそのまま足音もなく、重さも感じられぬように屋根から屋根を駆けてその場から全速力で逃走する男女を追いかけようとした夜は少女……花の飛び蹴りをくらって地面に倒れ、養母……吾妻雲雀も彼らを追跡しようとしたが、思い直すと直ぐに彼女は地面で打ち捨てられたようにボロボロの服に、見える範囲で体中に痣を作って倒れ伏す子供の元に駆け寄る。

 

「てめえ、この……何しやがる!」

「うっさい! 勝手に敵討ちに行くような馬鹿兄貴なんてこれで十分だバーカ!」

「Stop、Stop! 兄妹喧嘩はヨクナイヨ!」

「ジェイ、こいつらはこれが平常運転だよ。いい加減に慣れな……本当に変わらないねこいつら」

 いきなり蹴られた事で遠慮をなくした夜は即座に妹の花に飛び掛かり、花もそれに応戦し殴りあいの喧嘩になってそれに慌てるジェイに呆れながらも懐かしい光景に猫が微笑む。

 

「夜、花。そこまでにしておけ……この子を孤児院まで連れていくぞ」

 そう言って吾妻が少女を背負うと、夜以外のメンバーは家路に着き夜は彼女達とは反対の方向に歩こうとする。

 

「兄貴……?」

「……今さらどの面下げて戻れるんだよ」

「夜……そうか。お前がそう思うならそれで良い」

 花が夜の言葉に複雑な顔になるが、吾妻はそんな夜に微笑みながらこう言った。

 

「お前が生きていて、良かった」

「……そいつの様子を見に、孤児院には行ってやるよ……またな」

 そう言って夜は逢見家の屋敷のある旧街方向へと歩き始めた。

 

「そういや、ありゃ誰だったんだ?」

 あの二人が誰だったのかを疑問に思いながら……




次回もお楽しみに!
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