旭奇譚~和風ファンタジーな鬱エロゲーの名無し戦闘員に転生したんだが周囲の女がヤベー奴ばかりで嫌な予感しかしない件~   作:愛川蓮

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第十四話

 それは、平和そうな光景だった。

 

「あ、兄さん」

 そう言って、顔立ちの良い綺麗な女性がニコニコと笑って夜を受け入れる。

 

「よう、●●。◼◼と……あいつはいるか?」

「相変わらず、あの人は嫌ってるのねぇ……◼◼はあの人と一緒に本を読んでるんだけど……寝ちゃったみたいね」

(これ、俺視点の夢か)

 夜は勝手に動く口や体に困惑するも、直前に寝具の中に入ったのを思いだしこれが夢であると確信した。

 

「ああ、義兄上(あにうえ)。三日ぶりですね」

「やめろ。気性が穏やかな奴とはいえ、()に兄呼ばわりされる筋合いはねえよ」

「本当は認めてるくせに」

「うっせぇ!」

 そこにいたのは、白髪に狐耳を生やし、臀部から五尾の狐の尾を生やした穏やかな表情の青年が眠っている娘と思われる狐の半妖を膝に乗せていた。

 

「にしてもよぉ……お前、大丈夫かよ? ●●が◼◼を孕んだ際に尾を一本、無事に生まれさせる為に一本、俺や●●を助けるために二本……その分だけ妖気を消耗してんだろ? それに、妖怪も人間も食ってねえんだから……」

「ええ、徐々にですが妖気も消費しています。……ですが、私が生きていた『証』を……妖狐であった私を救ってくれた大切な女性との間に残せたというだけで満足なんです」

「ふふ……」

(仲、良いんだな)

 そんな、穏やかで大切な日々……夜はそんな三人(娘を入れれば四人だが)の関係に微笑み……場面が急変する。

 

 血塗れで倒れる青年、下卑た表情のまま飛んでいく上半身、それを唖然とした表情で見ている村人と思われる男達と半妖の少女……その視線の先には黒髪の狐耳を生やし、九本の尾を持つ化け狐がいた。

 

 化け狐が村人達を殲滅している隙に半妖の少女を抱き抱える青年だったが、即座に化け狐の狐火で足を焼かれてひっくり返る。

 

 何事かを話す化け狐や半妖の少女とそれを庇う青年。そして……

 

「おじさん、守ってくれて……ありがとう」

「よせ、ダメだ……」

「そして、さようなら」

「行く、な……」

(……おいおい、似すぎだろ)

 青年を救うために化け狐に着いていく事を選び、涙目で微笑んでいた半妖の少女は……あの日、夜が出会い養母達が連れていった半妖の少女に……ひどく、似ていた……

 

「……なんだったんだ、あの夢」

 夢から覚めて起き上がった夜は頭を掻きながら、水飲み場の水を飲む。そのまま、二度寝の為に部屋に戻ろうとして……ふと、誰かの喘ぎ声が聞こえた。

 

「ぜひー、ぜひー……み、水……」

「こ、小烏丸(こがらすまる)……? どうしたんだよ?」

 庭に倒れ伏しながら水を求めていたのは、旭衆の一人で烏天狗の半妖であり、主に伝令役を務めている人間だったからだ。

 

「ふぅ、生き返った……じゃない! 旭様にご報告をしなければ!」

「今、何時だと思ってんだ、おめえは」

 夜が差し出した水を飲んでスッキリとした小烏丸は思い出したように走り出そうとして……夜の脳天を狙ってのチョップを受けて地に沈む。

 

「うう……しかし、朗報なのですぐに報告しないと……」

「あん? ……そういや、お前って一の姫さんの牛鬼退治に伝令役として同行してたな……朗報って言うと、まさか」

「ああ、その……まさかだ」

「急いで旭の所に行くぞ。……静かにな」

「……うむ」

 二人はそそくさと旭の部屋に行って、彼女を起こして報告をすると……旭が大きな声で喜びを表現しようとしたために慌ててそれを止めた。

 

 そして、朝に旭の口から報告がなされ……逢見家では歓喜等の声が響いたが、桃色髪の少女だけは苦虫を噛み潰したかの様な表情だったという……

 

 ──────────────────

 

「ふっふのふ~ん!」

「旭ちゃん、ご機嫌ですね」

「そりゃあそうっすよ! だって、雛姉が討伐をしたのは牛鬼っすよ、牛鬼! 官位は確実だし、何より雛姉の強さが証明されたのが嬉しいんす!」

「その件で葵姫は苦虫を噛み潰したかの様な顔デシたけどね……」

 あたいは佳世ちゃんやアリシア達と一緒に夜の実家の孤児院に向けて歩いていたっす。当初は橘商会の牛車で行くって話になりそうだったんすけど……牛車でやって来たら、相手が「何事!?」と驚きそうだし何よりもそんな風に身分を見せびらかすような真似はしたくはないんで佳世ちゃん共々変装して歩きで向かってるんす。

 

 因みに案内人の夜なんすけど……

「……………………」

 さっきからずっと黙りなんすよねぇ……

 

「夜、どうかしたのか?」

「……ん? ああ、わりぃ。ちょっと考え事をな」

 そんな夜を心配したのか、佳世ちゃんの護衛役(並ぶと本当の姉妹みたいだから、便利なんすよ)として来ていたアリスさんが話しかけるんすけど……夜は何でもないように笑って誤魔化しながら歩みを早めたっす。

 因みに、アリスさんは夜に惚れてるっす。理由は……三年前の王家とクロイツ家の抗争未遂事件の際に抗争未遂の根本的な原因を探っていたアリスさんが殺されそうになった際に夜が助けたからなんすよね。

 その時にアリスさんが持ってきた資料と王家の人達から得た情報のお陰で、自分達の目的……都での大規模な抗争をネタに今も権勢を誇っている左大臣を蹴落とす為の口実にしようとしていた当時の右大臣と右大臣と結託して抗争を起こしたどさくさ紛れにクロイツ家を扶桑国に仕える退魔士家の一員にして、妖母の捜索と妖根絶の為の足掛かりにしようとしていた当時のクロイツ家の当主……アリシア達のお爺ちゃんが犯人だってわかったんすよね(それと共に抗争を大きくしようとしていたモグリもいたんすけど、逃げられちゃったんすよねぇ……)。

 

「そう言えば、沙世姉はどうなったんすか?」

「えっと、お父様もお母様も凄い怒ったんですけど……理由を聞いたらお父様が号泣して、お姉様を抱き締めちゃいました。……その後で私やお母様も抱き締めたんですけど」

「光景が目に浮かぶっすね」

 なんせ、景季さんって奥さんにも、佳世ちゃんにも沙世姉にもデレデレっすからね……正直に言うと、ちょっとキモいくらいに。

 

「それと旭ちゃん……その、お話があるんですけど……」

「伴部さんを『買い取りたい』っていうのは無しっすよ。あたいは人を売り買いするのってあんまり好きじゃないんで」

「違いますよ! お姉様と一緒に伴部さんと出掛けたいから、宇右衛門様とかけあってくれる様に頼みたいんですよ!」

「あ~……ごめんす」

「まあ、三年前に言ったのは失言でしたけど……」

 三年前、山賊武士団の団長の鳥谷さんは自分達の目的……北土土着の凶妖『なまはげ』の監視がなあなあになっていたり、それに関する不正や横流しの告発を握り潰し、あまつさえそれらを自分に擦り付けた主家のどら息子に対する報復となまはげの件を朝廷に訴える為の資金にするために佳世ちゃんを人質にして身代金を要求したんすよね。

 それであたいや伴部さん、アリシアや白虎達と一緒に佳世ちゃんを救出に向かって……山賊武士団の根城に出現した妖の群れの攻撃から伴部さんが佳世ちゃんを庇って、その際にお面が壊れて見えた素顔を見て佳世ちゃんは一目惚れしたんすよね。

 それであたいに「幾らで譲ってくれますか?」なんて事を言われたんで思わず平手打ちしちゃったんすよね。沙世姉が佳世ちゃんを諭してくれなかったら、折角出来た友達を失うところだったっすよ……

 

 因みになまはげの件は朝廷が握り潰される……様に見えたんすけど、北土の退魔士や大名の権威を下げるのに役立つと思ったのか、不正や横流しを行っていた郡司達の多くは罷免。郡司達から賄賂を受け取っていた大名家の重臣達は死罪もしくは島流し。監視をなあなあにしていた各退魔士家(鬼月家も含むっす……)には帝直々の御言葉(お説教)が賜れたっすよ。

 

「着いたぞ、此処だ」

「此処が夜の育った孤児院か……」

 っと、着いたっすね。

 

「それじゃあ、開けるっすよ」

「……ん? ああ、ちょっと待て……ババアの奴、結界の条件をちょっと変えやがったな? あいつらが招き入れなけりゃ入れねえ様になってる」

「え、じゃあ入れないんじゃ……」

「だったら……」

 あたいが門を叩くと、門が少しだけ開いて……夜を見た瞬間に一気に開いてあたいの顔面に門が叩きつけられたっす。

 

「ぶぎゃ!?」

「ちょっと、あんたら!? 誰かにぶつけ……兄貴!」

「夜、来たのか」

「来ちゃ悪いのかよ?」

「いや……良く帰ってきたな」

「「「「夜にいちゃ~ん!」」」」

「うおっと……久々だな、お前ら」

 あたいが鼻を押さえて踞っていると、夜に似た顔立ちの女の子と穏やかそうな女の人、元気な半妖の子供達が夜に向かってきたっす。

 

「花、猫とジェイは?」

「お仕事でいない。あたしは夜の任務があるから昼の仕事は休みなの」

「そうか……猫やジェイの好きそうな本や食い物を買ってきたんだがなぁ……」

「食べ物は生物じゃなければ後でも食べられるし、本は後で渡しておくわ」

「おう、頼むな」

「任せて」

「よ、夜! その親しそうにしている女は……!?」

 夜に似た顔立ちの女の子と親しそうに話している夜に焦りを覚えたのか、アリスさんが必死の形相で話しかけたっす。

 

「ん? ああ、こいつは俺の妹の花だ」

「そ、そうか……」

「ふ~ん……あたしは兄貴の妹の花です。これからよろしく」

 花さんはアリスさんにそう言った後、にやにやと笑いながら夜に向き直ると……

 

「つーか、兄貴……こんな綺麗な人にあたしと話した位で慌てられる様な関係なんだ?」

「うえ……いや、その……」

「? どういう意味だそりゃ?」

「お前な……!」

「アリス姉様……」

 そう言ってアリスさんの事を茶化す花さんに首を傾げる夜に気恥ずかしさで真っ赤にしていたアリスさんが今度は怒りで真っ赤になってそれをみたアリシアが呆れていたっす。

 

「んで、此方の……ババア、もう人の目がないんだから幻術は良いだろ」

「それもそうだな」

 そう言って、女の人が二、三言呟くと狸の耳と尾が現れたっす。

 

「こいつが俺の育ての親の吾妻雲雀。見ての通り、狸の半妖だ」

「ちょっと、兄貴! 師匠に向かってこいつは……」

「いや、良いんだ。あくまでも戻らないための口調だからな」

「……ちぇ、これだからババアはやりにくいぜ」

 吾妻さんの言葉に夜はぶっきらぼうにそう言ったっす。微笑ましいっすねぇ……

 

「あれ、あの子は……」

 佳世ちゃんが何かに気付いたのか、ある場所を見つめるっす。そこには、あたい達が持ってきたお菓子を食べようと集まっている半妖の子供達とはちょっとくらい離れた場所でそんな子供達を見ていたっす。

 

「ババア。あの狐って、あの時の……」

「ああ。ほら、(しろ)。お前も来なさい」

「……は、はい」

 吾妻さんの呼び掛けで白って呼ばれた女の子がおっかなびっくりに寄ってきて……

 

「あ……」

「あ……お、おい……いきなりどうした」

 夜を見た途端に涙目になったかと思うと、ぎゅっと夜に抱き付いたっす。

 

「白……? あたしの時も思ったけど、どうしたのよ?」

「あ……ご、ごめんなさい! なんだか、花さんと夜さんを見たら、懐かしい気持ちになってつい……」

「そ、そうか……」

 白ちゃんは顔を真っ赤にして夜から放れると、あたいが差し出した金平糖を手に持って食べだしたっす。

 

「あ……美味しいです」

「ふふ、どんどん食べて良いっすよ……!?」

 あたいがにっこりと微笑んだ白ちゃんに釣られて笑っていると……この微弱な、あたいにしか気付かせない様な感じの妖気って……! 

 

「……佳世ちゃん、ちょっとばかりこの孤児院の周りの警戒に行ってくるっす。あ、夜達には何も言わないでほしいっすよ」

「え、旭ちゃん……?」

 あたいは佳世ちゃんにそう言いながら、門を飛び越えて外に出たっす。

 

 ──────────────────

 

「……出てきて良いっすよ」

『おや、気づいていたのかい?』

 あたいがそう言うと、あたいの前に黒い霞……赤髪碧童子が現れてそう言ったっす。

 

「で、何の用っすか? 戦いたいって言うのなら、離れた場所でするっすよ?」

『おいおい……血気盛んなのは良いことだけど、まだまだ未熟な旭と戦っても英雄譚にはならないさ。今日は渡したいものがあってね』

 そう言って赤髪碧童子は一枚の地図をあたいに渡してきたっす。

 

「……これは?」

『旭の側仕えや伴部が地図の印のついてる地点に行こうとしているみたいだからね。旭が絡める様のサービスさ。……ああ、夜は連れていかない方が良いかもね』

「え? 何でっすか?」

『仇と関係がある人物のいる場所だからね』

「ああ……なるほど、良くわかったっすよ」

 確実に怒り狂って殴りかかるのが目に浮かぶっす。にしても……

 

「やっぱり、あんたって面倒見が良いっすね。確か、霊力があったから人妖大乱に参加したあたいのご先祖に訓練を……」

『それじゃあ、俺は此処で。お前や伴部の英雄譚の始まりを妨害した式神(ハエ)の本体見付けて潰さないといけないからね』

 あたいがそう言うと、そそくさと赤髪碧童子は何処かに行っちゃったっす。……むぅ、また話を反らされたっす。本当に恥ずかしがりやっすね。

 

 でも……

「なんで、あの式神達は邪魔をしたんすかね?」

 あたいは首を傾げながら孤児院に向かって歩きだしたっす。

 

 ──────────────────

 

「くっそ、があぁぁぁぁぁ! あんの糞下人にモブがぁぁぁぁぁ! 僕の佳世ちゃん(ヒロイン)にあんな熱っぽい視線で見られやがってぇぇぇぇぇ!」

「うるせえぞ、白鷺! 俺だって腸が煮え繰り返ってるんだよ!」

 そう言って、荒れ狂う陰陽師然とした青年を山伏然とした青年がイライラしながら押さえる。

 

「それより、このままだと狐璃白綺は復活出来ねえぞ。どうすんだよ?」

 実際問題、彼らが所属している一味の目的にとって今回の事態はイレギュラーなのだ。

 本来は狐璃白綺は橘商会の商会長夫婦や護衛の人間達、荷物を喰らいその後で孤児院にいる自身の分け身や孤児の半妖、吾妻雲雀達を喰らうことで原作の強さを持つ妖へと変貌するのである。

 それを旭や伴部、葵の参戦によって橘商会の襲撃は妨害され、配下や尾、足を失ったことでそれを癒すために妖気を多く使ったことで逆に弱体化してしまったのだ。

 

『由々しき事態だな』

「くそ、俺が唆した鬼も逃げたせいで実働戦力が『今の(・・)』体が使える陰陽術だけだ」

 蛍の式神の全然由々しく思ってすらいない言葉に気付かずに己の最後の戦力である式神達のいる札を並べる。

 

「こうなれば、仕方ありません。今は狐璃白綺を復活させることに全力を尽くしましょう。……数週間後の孤児院襲撃は成功させないといけませんね」

「ああ、絶対にだ。孤児やそれと幸せに過ごしていた分け身には悪いが、犠牲になってもらおう」

 そう言って、青年達はガシッと握手をする。

 

『…………』

 その裏で蛍……螢は凄まじく冷めた目でその握手を見ながら、こう思っていた。

 

(伴部に旭……だったっけ? 分け身や孤児達の事を頼むぜ。こんな奴ら(・・・・・)の仲間の俺が言うのもなんだが……それこそ、確定したイベント以外での死人なんざでねぇ方が良いからな)

 そんな事を考えながら、螢は戦略をねる烏と白鷺を見ながら二人の目の届かないところで溜め息を吐くのだった。




次回もお楽しみに!

蛇足:『闇夜の蛍』に旭がいた場合の台詞集5『赤髪碧童子』編

鬼と旭『序』
「旭。お前を見てると思い出すよ。鬼の俺を『友達』なんて言った女をな。特に目が似てる」
「そ、そうなんすか!?」

鬼の夢
「俺の夢はな、稀代の英傑と血を血で洗う死闘を繰り広げて最期は力及ばずその首を切り落とされる事さ」
「そんなの……そんなの嫌っす!」

鬼と人と旭
「悪いけど、環君も赤髪碧童子さんも死なせないっす。全員が生きている未来を作らせてもらうっすよ!」
「なら……やって見せろ!」➡嬉々とした表情で錨を振るう赤髪碧童子と決死の覚悟で薙刀を振るう旭がぶつかり合うCGが映る

赤髪碧童子(旭if)エンド時
「さあ、俺の英雄……命令を頼むぜ?」
「みんなで、平和を取り戻すっすよ!」➡片方の目を式札で塞がれている赤髪碧童子と旭、様々な仲間達と共に救妖衆との最終決戦に挑むCGで〆
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