旭奇譚~和風ファンタジーな鬱エロゲーの名無し戦闘員に転生したんだが周囲の女がヤベー奴ばかりで嫌な予感しかしない件~   作:愛川蓮

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今回は遅れて申し訳ありません!


第十八話

 ………時は若干遡る事になる。

 

「哀しいのぅ……弱いせいで、何も守れずに死ぬのだから」

「が……!?」

 自身の腹から熱い痛みが走る。夜はそれが己の腹に槍を突き刺されたからだと理解した。

 

(畜…生……!)

「い、いやぁ! 夜さん、花さん!」

「喧しいわ」

「あぐ……」

 白が錫杖を持った天狗に殴られて気を失わされるのを見ながら、夜は意識を急速に失わせ……

 

「……この夢かよ」

 気が付けば、白に似た少女が黒い化け狐によって連れ拐われた後の場所にいた。

 

 半妖の姪を連れていかれた事で少しの間呆然としていた男だったが、やがてふらふらと姪の囮となった妹や義弟の妖が逃げた方向へと歩きだした。

 

 そして、そこでも絶望を味わうことになる。

 血塗れで倒れ伏した妹、上半身や頭部の消し飛んだ村人達や村人達が雇ったモグリやはぐれの退魔士の死体……純白の毛並みを今も流れる血で汚す虫の息の五尾の化け狐がそこにいた。

 

「おい……嘘、だろ……なあ、●●……目を、開けろよ」

「義兄上……申し訳、ありません。あれ、だけ……死なせないと言った…にも関わらず、結局、私は……」

「……いや、良いよ。俺も、■■を守れなかったんだからな……悪い、黒い化け狐に連れてかれた」

「……!? その、化け狐の…名前は?」

「……気紛れに名乗ったんだろうが、『狐璃黒麗(こりこくれい)』だそうだ」

 男がその名を告げると、狐は苦笑いをしながらこう言った。

 

「と、すると……■■の名前は、『狐璃白綺(・・・・)』に…変えられたんですかね?」

「……ああ。……って、なんでわかるんだ?」

「そりゃ、その…化け狐が、私の……『実の姉(・・・)』だからですよ。狐璃白綺(その名)は私が、捨てた…名です」

「なんだとぉ!?」

(はぁ!?)

 まさかの展開に夜と男は同時に驚く。

 

「私は……姉と殺しあいをしましてね…理由は、空亡が敗れた後でやって来た姉の勧誘を断った事です。昔から、人を食って力を増すよりも研究をするのが性に合ってましたから……」

「……そうか」

 狐の途切れ途切れの独白に、男は頷く。

 

「それが姉には気に食わなかったらしく……殺しあいになって、死にかけた時、薄れゆく意識の中で…思ったんです。何も残せていない、と」

 狐は何処か苦しげで、寂しげな様子でそう言う。

 

「だからこそ、あなたの妹に……妻にあって、あの子を残せた。生きていた『証』をこの世に残せた……それだけで良いんです。どんな形でも、あの子が……■■が生きているだけで良いんです」

「……俺は、良くねえよ。あいつは、俺の姪で●●の娘だ。完全な妖なんかにしてたまるかよ」

 狐は男の言葉を予測していたのか、苦笑いをしながら男に向けて話しかける。

 

「でしたら…私の魂を、取り込んで……下さい」

「いきなりどうしたよ?」

 狐の言葉に男は訝しげな表情になる。

 

「魂は妖気や霊力の塊です。下手をすれば、あなたは半妖になってしまいますが……運が良ければ……」

「霊力を得て、あいつを追える……か」

「運が悪くて何も得られなくても、恐らくですが子孫に受け継がれます。そうすれば……」

「子孫に丸投げかよ、くそったれめ……」

 男は狐の言葉に毒づくが、少し目を閉じて考えると……決意をした表情でこう言った。

 

「……でも、他に選択肢はないし……今更恐れる俺じゃねえよ」

「……感謝します」

 男の言葉に狐は微笑んだ後で目を閉じ、そこから溢れでた妖気の塊が男を覆い……

 

「そして、五百年後にお前らが産まれた訳だ」

 その言葉に夜が振り向くと、そこには微笑む男がいた。

 

「て、事は……花も同じ夢を見てるのか」

「ああ。で、アイツから説明を受けてる。お前はアイツの研究が形になった武具を、花はアイツの術を受け継いでるからな」

「そうかよ」

 夜がそう返事をすると、男は複雑そうな顔でこう言った。

 

「……悪いな、五百年前の負債を子孫のお前らに託してよ」

 その言葉に夜は笑いながらこう言った。

 

「なーに言ってんだよ。だいたい、大切な姪を救いたいって気持ちは伝わったからな。白の……あいつの親父さんの為にも、あんたの為にも……妖狐としてのあいつもこっち(人間側)に引きずり戻してやるよ」

「……ああ、ありがとうよ。んで、武具の説明だが……」

 夜は男にそう言った後、男から武具の説明を受け……そして、時は現在へと戻る。

 

 ────────────────────

 

「ば、馬鹿な……その、術に……籠手は……!?」

「俺の先祖やお前の親父さんに誓ったんだ……此処でお前を止めるぜ、狐璃白綺! いいや、■■よぉ!」

「あんたを止めて、この子と幸せに過ごさせる……それが、あたしの役目だ!」

 何故か愕然とする化け狐に純白の籠手を装備した夜と人になった化け狐を模した霊力で出来た衣を纏った花がそう宣言した……瞬間、槍を持った天狗と錫杖を持った天狗が二人に襲い掛かった。

 

「哀しいのぅ……その様なこけおどしを持っても死ぬのだからなぁ!」

「腹ただしい……死ぬが良い、死に損ないが!」

 そして、槍が夜の心臓を穿ち、錫杖から放たれた電撃が花を焼き尽くした……

 

「おらよ!」

「な……ぐばぁ!?」

「狐炎幻想・『花吹雪(はなふぶき)』!」

「馬鹿な……ぐああ!?」

 かと思いきや、後ろから現れた二人の攻撃が天狗達を吹き飛ばした。

 

「どうなってんだ……!?」

「知らない、わよ…今の内に白を、分け身を……」

 俺達は何故か致命傷を食らっても死角から現れる二人にがむしゃらに攻撃する天狗達と不愉快そうにそれを見ている化け狐を警戒しながら分け身を回収するために動こうとして……

 

「……そこじゃ!」

「うお!?」

「く……読まれてたのね……!」

 その瞬間、なにかを目敏く察知した化け狐が尾を振るうと……俺たちと同じく隠行で隠れていたのか分け身の近くにいた二人が慌ててそれを防御した。

 

「やはりな……! 狐幻も狐炎幻想も原理は違うが、共に術や武具のみを現実の物として使うことで相手に一人相撲を取らせ翻弄するもの……何処かに隠れていると思って警戒して正解だったわ……!」

 化け狐は憎々しげな目で二人を見ながらこう吠えた。

 

「しかし……それは、父上の物じゃ……! 父上が研究して、父上が完成させた物じゃ……! 一尾たりとも猿風情が使って良い物ではないわぁ!」

 そう言って、化け狐は咆哮と共に二人に襲いかかる。

 

「つーか、父上って……」

「原作と違って、あの化け狐を母親に孕ませた父親も一緒に生活してたのかよ……!?」

 俺達が原作の化け狐との違いに驚いていると、二人も化け狐に対して啖呵を切る。

 

「は! てめぇの親父が託しそうな相手がいるだろうが! たった一人な!」

「その様な相手な、ど……まさか、馬鹿な……いや、そんな……!」

「まさかでもなんでもないわよ! あたし達は、あんたをあんたの家族を唯一救おうとしたあんたの叔父さんの子孫よ! あんたを救うために、あんたを人の側に戻すために五百年もの間、その血が受け継がれていたのよ!」

「う、ぐ……(いな)! 否否否! 私は、妾は! 最早、過去など切り捨てた! 叔父など関係ないわぁ!」

「親父さんの事で拘ってる時点で破綻してるだろうがぁ!」

 そう言って、狐火を放つ化け狐に狐火を籠手で殴り落としながら夜が肉薄し……

 

「させるかよ……!」

「が……!?」

「あんたもよ!」

「馬鹿な……!?」

 夜達の後ろから襲いかかろうとした天狗達の心臓を突き刺した後、首を切り落とした。

 

「な……! て、てめぇら……! モブの癖に調子に……!」

「はぉ!?」

「な……ひぃ!?」

 そんな展開に原作尊守の転生者が怒り……それが自分の側に落ちてきた完全に干からびて皮と骨だけになった肋の浮き出た天狗を見て悲鳴をあげた。

 

「へ……! 俺ハ、これでも、呪術師、なん…ダゼ……! あれだけ、俺ノ、血を浴びてんだ……呪殺するには、充分……ダッタ、な……」

「て、てめえぇぇぇぇぇ! こいつら造るためににどんだけコストをかけたと……!」

 血塗れの状態でそう言うジェイと呼ばれた大男の言葉に地団駄を踏みながら原作尊守の転生者は怒ろうとして……

 

「種も仕掛けも……」

「楽しそうだのう! お主の自殺が……」

「あんたの死以外、ございませんってね」

「な……ぎゃあぁぁぁぁぁ!?」

「へ……?」

 その声に首を向けるとそこには二つの箱があり、その内の一つから猫と呼ばれた傷だらけの女が歩きながら出ると、無数の短剣がもう一つの箱に箱が隠れて見えないほど突き刺さり、箱が消えると全身中に短剣が刺さった八ツ手を持った天狗がどちゃりと崩れ落ちた。

 

「ば、馬鹿な……そんな……俺の俺の最高戦力が、四情天狗が、そんな……く、くそがぁ! 全員、動くな……「「「「えい!」」」」ぐべ!?」

 他の式神も旭衆や赤穂義姉妹、何故か鬼の兄妹も加わっての乱戦で蹴散らされている状況に完全に混乱したのか、分け身を人質にしようとした原作尊守の転生者の頭に忍び寄っていた半妖の孤児達が手に持った木の枝が一斉に降り下ろされ、ノックアウトされた。

 

「姐さん! もう横槍の心配はねえよ! 思いっきりやれ!」

「……『正々堂々を座右の銘にしてる』とかほざくお主の事じゃから、そうするとは思ってたわ」

 叩きのめした式神を足で踏みながらそんな風に言う男の鬼に化け狐は呆れた様にそう言った。

 

「……行くぞ!」

「ええ!」

「甘いわ!」

 化け狐と向き合った後で夜と花はそう言って走り出し、化け狐はそれを二つの尾を振って迎撃しようとするが……

 

「狐幻!」

「狐炎幻想・陽炎(かげろう)!」

「ちぃ……! がは!?」

 二人の姿がぶれて尾がそれを通り過ぎ、そのまま肉薄した二人の一撃が化け狐の脇腹と鳩尾に炸裂し吹き飛ばされる。

 

「ぐ……今の一撃、貴様ら……手加減したな!?」

「当たり前だ。お前を人側に引きずり戻すんだからな」

「死んでもらっちゃ困るのよ」

「ほざけ!」

 そう言って化け狐は狐火を広範囲にばら蒔くことで二人を牽制し……

 

「後、あんたたちも戦うの禁止!」

「体がボロボロみてぇだからな……それ以上は無理すんな。後、白を殺そうとしたことは秘密にしておいてやる

 援護に向かおうとした俺達二人を二人はやんわりと止め……つーか、夜にはあの時に会ったのが俺達ってバレてんじゃん……

 

「そもそも……! 猿の側に引きずり戻すとはどういう意味じゃ! 妾は生きるために、力を得るために猿どもを殺し、食らった……最早、人の側に戻るなど不可能じゃ!」

「それを決めるのは、お前じゃねえ!」

「あんたの親父も人を食ったりはしたけど……あんたの母親と会って、あんたを残す事が出来た……人を食った妖だからって、それを受け止めて前に進ませる人がいれば変われる事が出来るんだ! だから、あんただって……」

「減らず口を……!」

「……こ、黒麗御姉様の事がそんなに忘れられないの?」

 その言葉を聞いて、化け狐は額に青筋を浮かべてそれを問いかけた少女に殺意を向ける。

 

「貴様のような呑気な餓鬼に何が分かるか!!」

 狐璃白綺は叫ぶ。そうだ、弱い事は罪だ。この世は地獄だ。地獄よりも地獄だ。善人がおらず、悪人のみが落とされる地獄よりも余程に!! 

 

 だから……だからあの時私達は御姉様を……!! 

 

「……食ったのね。だからあんたは、九尾になれた」

「……姐さん」

「……そうじゃ。だから、だから……! 妾は高みへと至る! 御姉様との約束の為に!」

 その咆哮と共に化け狐は幾つもの狐火を夜と花に放ち、五つの尾を二人に槍のごとく放った。

 

「だったら……!」

「それも含めて、てめぇを引きずり戻してやるよ! 人の側で高みへと至りやがれ! そうすりゃあ、お前の御姉様との約束も果たせるだろうが!」

「ほざけぇ!」

「やば……」

「不味……!」

 尾の内の二つを回避し、前進する二人だがそれを見越したかの様な狐火の弾幕が二人を……

 

「首削ぎ丸!」

「影縫い!」

「なんじゃと!?」

「ごめん、ありがとう!」

「この礼は後で返すぜ!」

 焼き尽くす前に、その狐火の弾幕を赤穂紫が放った首削ぎ丸の捕食形態が食い散らかし、二人が回避した尾を白虎が影縫いで動けなくした事で二人は薄くなった弾幕を通って更に肉薄する。

 

「まだじゃ!」

 化け狐は未だに動く三本の尾を振るって二人を弾き飛ばそうとするが……

 

「飛んでけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

「ん、なぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

「ぶっ飛びやがれ、デぇぇぇぇぇス!」

「ひゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

「な……!?」

 その内の二本は鬼月旭とアリシアが投げ飛ばした鬼の兄妹が激突したことで狙いが狂い、二人の側の地面にめり込む。

 

 残りの一本は……

 

「ぐうぅぅぅぅぅ!」

「い、痛い……でも、前進しなさい!」

「あんたら……!?」

「行くぞ!」

「く……下人に雑魚風情がぁ!」

 俺と葛葉唯が力を振り絞って二人の前に立ち、その一撃を防いだことで完全に化け狐への道が開ける。

 二人は更に前進して止めの一撃を……

 

「げ……兄貴、これ……!」

「ああ、こいつ……幻術を……!」

「今度こそ、死ね……!」

 拳一つ分離れた場所に化け狐はおり、二人が最後の一撃を叩き込む為に振りかぶったところで狐火が……放たれる前に、複数の霊力が纏まった狐火が化け狐を押し込んだ。

 

「な……!?」

「そのひとたちを……ころすな!!」

 足を子鹿のように震わせて、耳と尻尾を丸めて怯えながら、仲間に支えられながら小さな半妖の少女は……白と呼ばれる狐璃白綺の根源たる少女はもう一人の自分に対して気丈にもそう叫んだのだった。

 

「あんがと、白! 狐炎幻想・焔纏(ほむらまとい)

「ぶち抜けぇぇぇぇぇ!」

「馬鹿、な……」

 様々な仲間に支えられ、その手助けを受けたその一撃は……化け狐の腹部に突き刺さり、化け狐の意識を奪い去った……

 

 ────────────────────

 

「白ちゃんの説得、成功すると良いっすね」

「……だな」

 あたいは鬼の兄妹の兄の方である黒角童子と話ながら、目を覚ました化け狐……狐璃白綺さんと白ちゃんが話しているのを見ていたっす。

 

 因みに、狐璃白綺さんの過去は白ちゃん経由で確認していて孤児院の子達は狐璃白綺さんの事も含めて白ちゃんを受け入れるって言ってるし、アリシアや紫姉とかは「人を食った事は受け入れられないけど、境遇は同情する(意訳)」って事であたいが提案したことは受け入れられたんすよね。

 

「ところで聞きたいんすけど、赤髪碧童子の名を出したら闘志が燃え上がってる時があったんすけど……あの鬼と何かあったんすか?」

 あたいが戦っている時に感じたことを聞くと、黒角童子は「あ~……」と呻きながらこう言ったっす。

 

「まあ、俺と妹……伊吹の復讐対象であるくそ野郎……百年前に俺達の母親を無責任に孕ませて、伊吹を孕んだ段階で『半妖を二人も産んだ奴の末路が見たい』って下衆根性で放り出した奴を殺したからだよ。復讐対象を取られたから、なし崩し的に狙うしかなかったんだよなぁ……それを知った時点では、他に生き方を選べなかったし」

「……赤髪碧童子は何が原因でその鬼を殺したんすかね?」

「俺達が捕まえてくそ野郎が死んだことを聞き出した妖の話だと通りがかりのある村で霊力をたくさん持ってたガキを殺して食おうとして、そのガキを必死に守っていた親父と母親を殺したところで怒り狂った様子でやって来た赤髪碧童子に一撃で撲殺されたんだと」

 あたいが疑問に思っている事を尋ねると、黒角童子がそう言って……唐突に、あたいは妙な記憶が甦ったっす。

 

 血塗れで倒れる男の人、沙世姉が持っていた首飾りと同じものが起こした閃光と共に消える女の人、そして涙を流しながらあたいを見る女の鬼……

 

「おーい、大将。どうかしたか~?」

「え、あ……ご、ごめん。ちょっとボーッとしてたっす」

(ええい、余計な事を……! 下手をすれば旭の3歳の頃の記憶が呼び起こされたかもしれないんだぞ……!)

(今のって、一体……)

 因みに、黒角童子があたいの事を『大将』呼びなのは黒角童子と伊吹童子の兄妹は自分達を殺しにくる人は殺してても、人を食ってはなかったんすよ(曰く、『そこまで同じところに落ちるつもりはない!』だそうっす)。

 

 だから、贖罪や監視の意味も含めて旭衆に誘って受け入れられたんすよね。

 

「あ、あの……旭様。終わりました」

「白ちゃん……で、結果はどうっすか?」

「……一応は受け入れてくれそうです」

「そうっすか……」

 あたいは白ちゃんの安堵した様子から提案が受け入れらたって予感はしてたんすよね。

 

 提案って言うのは、あたいの式神として狐璃白綺さんを調伏するってことなんすよ。

 本来、調伏って言うのはその妖の意識を完全に奪うものなんすけど……夕陽が術式に手を加えてくれて、意識を保ちながら式に出来る術式を作ってくれたんすよね。(夕陽曰く、『手間のかかる本道式の超簡易版』との事っす)

 

 ……まあ、それを使えるのが大妖以上(中妖以下だと基本的に自我を持ってるのが半妖以外いないんで……)だったんで今まで死蔵されてたんすけどね。

 

「後は朝廷に対する言い訳っすねぇ……無難に『危険だけど、うまく使えばすばらしい働きをしてくれる筈』って言って調伏を正当化するしかないっすね……」

(だな……)

 白ちゃんが自分を殴る蹴るしていた暴漢達から救ってくれた恩人って事で、伴部さんと唯ちゃんにお礼を言いに行くのを見ながらあたいは朝廷に対する言い訳を考えて……

 

「え……!? な、なんで縛られてんだ!? てか、此処何処だよ!?」

 孤児院の柱に縛り付けられた烏野が慌てながら変な事を言い始めたっす。

 

「ああ? てめえが物語が何だとか言いながらガキどもを妖に食わせようとしたからだろうが!」

「へあ!? お、俺……そんな事をしてねえよ! 大体、数ヵ月前にいきなり現れた変な奴に『俺の体になれよ!』なんて変な事を言われてから全然記憶がねえんだよ!」

 夜が拳を鳴らしながらの言葉にそんな事を喚く烏野……え? どういう事っすか? 

 

「……そろそろ外の方も終わってるだろうから、いれるね」

 そう言って白虎が戸口を開けて……

 

「いかん……! 白虎、開けるな!」

『この糞どもがぁぁぁぁぁ!』

「え……? きゃあぁぁぁぁぁ!?」

 飛龍さんが慌てて白虎を止めるけど、既に遅く何かが白虎を撥ね飛ばしながら入ってきたっす。

 

 それは……幾つもの狐の死体を組み合わせたかのようなグロテスクでおぞましい九尾の狐だったっす。

 

『くそモブにイレギュラーどもめ……! 覚悟しやがれ!』

「その声……あんたは!?」

「あ、あいつだ……! 俺の体を乗っ取った奴の声だ!」

 あたいと烏野が屍狐の声に反応すると同時に、あたいは咄嗟に薙刀を体の横に出して……腕と肋骨が折れる感覚と共に狐璃白綺さんの側に弾き飛ばされたっす。

 

(防御してこれって……!)

『狐璃白綺! そのイレギュラーを食って回復しろ! その間にお前の分け身も食って力を取り戻せ! 残りの雑魚やイレギュラー、ガキどもは俺が殺してお前に捧げてやるからよぉ!』

 あたいが恐らく狐璃白綺さんが従えていた残るすべての化け狐達の死体や妖気を無理矢理より集めたであろう屍狐の無茶苦茶な怪力に驚いていると、屍狐……多分烏野の体を憑依術で乗っ取っていた人間がそう言ったっす。

 

「……何故、妾にそこまで固執する」

『ああ!? てめえがこの物語で力を取り戻さなきゃ原作が……この先の物語が狂っちまうんだよ! でなけりゃてめえみてえな外道狐なんぞ誰が手助けするか!』

 狐璃白綺さんの静かな言葉に屍狐はそんな最低な事を言いながらバカ笑いをするっす。

 

「そうか……では、断る」

『……は?』

「貴様の言いなりになるよりも……こやつや黒角童子達に分け身……叔父上の子孫達と一緒にいた方が気持ちが良さそうだと、思ったからな……」

 狐璃白綺さんの言葉に屍狐はプルプルと震え……そして、殺意をあたいに向けるっす。

 

『この……! この糞イレギュラーがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! てめえなんぞ、此処で退場……』

「退場するのは……」

『うごぺ!?』

「貴方よ。妹を痛め付けてくれた代金は……」

『だがば!?』

「「貴様(貴方)の首で代用させてもらう(もらおうかしら?)」」

『がぎゃばあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?』

 その声と共に屍狐は吹き飛ばされたっす。雛姉の踵落としと葵姉の裏拳、最後に二人同時に放った掌底の一撃で空気を切る音を奏でながら孤児院の土壁が崩れる程の勢いで殴り飛ばされたっす。

 

「……み、見事な御手前で御座います。雛姫様、葵姫様」

「雛姉も葵姉も凄いっす! あたいも何時かはその領域に辿り着くっす!」

 ふらつきながらそう言う伴部さんと一緒にあたいは雛姉と葵姉を褒め称えるっす。本当に、何時かは二人の領域に辿り着きたいっす。

 

「あらそう。独創性の欠片もない誉め言葉有り難う。さて、貴方達には色々と言いたい事はあるのだけれど……まずは面倒な獣の始末からつけようかしらね?」

「ありがとう、二人とも……今は休んでていてくれ。この獣をすぐに始末してしまうから」

 まるでこの場の主役であるかのように優雅に扇を広げ、刀を構えた雛姉と葵姉は笑みを浮かべながらそう言ったっす。

 




次回もお楽しみに!

蛇足:『闇夜の蛍』に旭がいた場合の台詞集6『赤穂紫』編
※旭がいる場合の世界では旭と紫(ゆかり)がいるために死亡フラグは多少減少しています。

旭との模擬戦
紫「行きますよ、旭!」
旭「了解っすよ、紫姉!」

無自覚協奏曲
紫「えっと、あの……蛍夜環を見ていると、胸がなにやら高鳴るのです。病気でしょうか?」
紫(ゆかり)「私も時々ある。環の笑顔を見ていると、胸がキュッてなる」
旭「あたいもそうなんすよね~環君と話していると、こう……心が温かくなるんすよね~」
佳世(三人揃って恋心を自覚してないんですね……)

紫(ゆかり)ヤンデレ時の死亡演出
紫「ゆ、紫……?」
紫(ゆかり)「これで、私はあなた。あなたは私……」→己の刀で紫を突き刺しながら微笑みを浮かべる義姉と全く同じ装いをした紫(ゆかり)のCGが写る。

紫エンド(赤穂義姉妹同時攻略エンド)
紫「さあ、行きますよ環!」
紫(ゆかり)「これからは、宜しく。私達の旦那様」
旭「まさか二人と揃って娶るなんて思わなかったっすよ、環君」
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