旭奇譚~和風ファンタジーな鬱エロゲーの名無し戦闘員に転生したんだが周囲の女がヤベー奴ばかりで嫌な予感しかしない件~   作:愛川蓮

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第二十三話

「旭、なんで新街の方に来たんだよ? 今日は友人の佳世に呼ばれてたんだろ?」

 新街の裏路地を歩きながら白夜さんがあたいに質問をしてきたっす。

 

「ん~質問に答えると、近日中に来るように言われてて……それで来れるのが今日くらいだったんすよね。他の日は行事だとか、内裏の警備だとかの仕事があったんで」

「……呼んだのは、旭が後の日誌に『大切な戦友』と書いた赤髪碧童子の方? それとも、旭の親友って伝わってる松重牡丹の方?」

「前者っすね」

 ……あたいって、日誌に大切な戦友って書くくらいに赤髪碧童子さんを慕うんすね。と、言うことはあたいは赤髪碧童子さんを調伏に成功したんすかね? 

 

「しかし……この路地、『松重古書店』に通じる路地に似ている様な……?」

「マジで? いや、椿はあの場にいなかったし……」

 紫音さんの言葉に白夜さんが冷や汗を垂らすけど、すぐに気を取り直したっす。……白夜さんって、椿ちゃんをどう思ってるんすかね? 

 

「白夜さんって、さっき名前の出た椿ちゃんを嫌ってるんすか?」

「ううん。白夜も嫌ってはないんだけど……暴走特急並みに真っ直ぐ過ぎる椿の思いをもて余してるのよね」

「伴部さんが白虎の思いに戸惑ってるのと一緒すね」

 そうこうしている間に牡丹ちゃんと赤髪碧童子さんがいる古書店に到着……

 

「白夜様ー!!!!」

「ぐばぁ!?」

 した途端に白夜さんは鳩尾に牡丹ちゃんに似た髪色の元気な女の子の突撃を食らって近くのボロ家の壁に叩きつけられたっす。

 

「つ、椿!? お前、なんでいるんだ!?」

「愛の奇跡ですよ! 婚約者の白夜様を思う私の気持ちが、時空を超えたんですよ!」

「こ、婚約者じゃねえよ!」

「相変わらず照れ屋さんなんですから!」

「ちげえよ!」

 白夜さんが椿ちゃんを必死に押し退けようともがいてるけど……椿ちゃんが全力で抱きついているせいで引き離せないみたいっすね。

 

「椿、何をして……ああ、その男が旭の子孫を自称している男で、椿の婚約者ですか」

「お前の先祖にまで言ってんのかよ!?」

「だって、事実ですから!」

 そう言って元気に笑う椿ちゃんに白夜さんは困り顔になって「俺なんかよりもお前に相応しい奴は入ると思うんだけどなぁ……クロイツ家の『アルト』とかはお前とほぼ同い年だからお似合いだと思うぜ?」と言うと、椿ちゃんは頬を膨らませて更に強く抱きついたっす。

 

「まあとりあえず、白夜さんは一旦無視するとして……」

「無視すんなよ!?」

「牡丹ちゃん、赤髪碧童子さんは何処に……」

 あたいは白夜さんの抗議を無視しながら、牡丹ちゃんに赤髪碧童子さんの居場所を……! 

 

「そこ!」

「おっと……腕を上げたじゃないか」

 あたいが後ろを振り向きながら薙刀を振るうと、何時の間にか後ろにいた赤髪碧童子さんはけらけらと笑いながらそう言ったっす。

 

「い、何時の間に……!?」

「これが伝説に伝えられる凶妖の力の一端……!?」

 いきなり現れた赤髪碧童子さんに戦く雛子さんと紫音さん、未だに椿ちゃんに押し倒されている白夜さんを赤髪碧童子さんは品定めをする様な顔で見て……溜め息を吐くとこう言ったっす。

 

「悪くはないんだけど……旭や伴部と比べると劣るなぁ……」

「悪かったな! 俺達の時代では精々が大妖しかいないんだよ。しかも、大半が直接戦闘が弱いやつで戦闘力が高いのも若いし」

「古い武闘派の大妖はほぼ全員が俺達の時代では『第二次人妖大乱』と呼ばれる戦いで扶桑国の凶妖逹と一緒かそれから少し後に討ち取られ、国外のも扶桑国の外に遠征に出た旭衆と協力した諸外国に討ち取られたからな。俺達の世代では凶妖は殆ど伝説の存在だ」

 ふえ~そんな事が……って、あたい逹って扶桑国の外にも飛び出すんすか!? 

 

「ふーん……まあ、実力差があっても戦おうとするのは流石は旭やその姉逹の子孫ってところかな?」

 あたいが周囲を見ると、雛子さんは鍔に弾丸が入った変な筒を着けた刀を構えていて、紫音さんは扇と鋼線を、白夜さんは椿ちゃんを庇いながら小太刀を構えていたっす。

 

「三人とも武器を下ろしてほしいっす。赤髪碧童子さん、あたいを呼び出した理由を教えてほしいっすよ」

「ん? ああ、前に言ったろ? 『良いものをあげるからさ』ってさ。はい」

 そう言って、赤髪碧童子さんはあたいに向かって何かを投げ渡してきたっす。

 

「わっと! これは……お守り? てか、これ二つあるんすけど……」

「もう一つは伴部の分だよ。一千年も生きた鬼が思いを込めながら作ったお守りだよ。ご利益はあると思うぜ?」

「持ってたら鬼に変化するとか、そんな呪いはかかってないっすよね?」

「安心してください。その鬼が作っている段階でも旭が来る前にも呪いがかけられていないかどうかは確りと確認しましたので」

「やれやれ……そこまで怪しむのかい?」

 牡丹ちゃんがそう言うと、赤髪碧童子さんは肩を竦めながら苦笑いを浮かべてそう言ったっす。

 

「でも、怪しまずに受け取ったら受け取ったらで英雄に相応しくないって感じで殺すんすよね?」

「まあね」

(理不尽で気紛れのくそ鬼め)

 赤髪碧童子さんの悪びれない言葉に夕陽は不満げな声で毒づいたっす。

 

「ああ、そうそう。今、下水道には面倒な奴がいるから注意しときなよ?」

「? まあ、警戒はしとくっすよ」

 あたいはニヤニヤと笑いながらそう言った赤髪碧童子さんに首を傾げながら逢見家の屋敷への帰路についたっす。

 

 それから数日後、あたい逹は下水道の大掃除の為に橘商会に入ったっす。

 

 ──────────

 

「それにしても、此処まで集まるとは……」

「まあ、そうっすね……」

 俺の言葉に鬼月旭は頷きながらそう言った。

 

 現在、橘商会の旭衆都組に与えられた屋敷には旭衆都組の他にクロイツ家が呼び掛けた他の商会や公家逹が雇った傭兵逹が集結していた。

 

 実際、上下水道は都市にとってある種の生命線である。生活する上で水は必要なものであるし、大人口が一ヶ所で生活すれば当然廃棄される汚水の量は膨大だ。大量の汚水をただただ無計画に垂れ流せば疫病の元になるために如何にそれを都市部から離れた場所に浄化して捨てるかは現実の世界の都市でも重要視されていた。

 

 扶桑国の都はこの国で最も上下水道が整備されている。霊脈の恩恵もあって地下水と河川から安全な飲料水や生活用水を確保する事に成功している。それらは井戸や治水設備等の上水道によって都の全域によって供給され、都の内側に限定すれば銭湯が幾つも経営されていて庶民でも入浴出来る程に水資源は豊かだ。

 

 一方、廃棄する汚水については、此方の処理も意外にも進んでいる。都の地下には上水道とは別に鉛と石と煉瓦で造られた広大な下水道が整備されており、そこを伝って都からかなり離れた地に汚水は廃棄される。

 

 いや、『それ垂れ流しでは?』って突っ込みは無しだ。確かに部分的にかつ局所的には現代並みの技術があるにはあるがそれでも平均すればこの世界の、そしてこの国の技術レベルは精々が中近世レベルを越える事はない。高度な濾過・浄化技術は無い訳ではないが発展途上だ。正直ローマ並みの上下水道があるだけかなりマシと思うべきだろう。少なくとも歩いている時に上から汚水がぶちまけられる事はない。

 

 そしてそんな都の水道を管理するのはある種の利権でもある。

 

 井戸水の使用は街単位で税がかかり、銭湯もまた経営者と使用者双方に税がかけられる。というか公営の銭湯まである程だ。当然ながら公共の福祉のためではなく歳入にするためだ。水洗式の厠にかけられる厠税なんてものすらあり、この税収を増やすために朝廷は一時期都の厠全てを水洗式にしよう等という馬鹿げた計画を立てた程だ。水道管理は金の成る木だ。

 

 ……そして同時に広大過ぎる水道の管理は費用もまた膨大でもあった。

 

 現実の多くの中近世の非民主主義国家が夜警国家的な小さな政府であったように、扶桑国もまたどちらかと言えば小さな政府だ。というか国防や食料生産に予算ガン振りしないと化物共のせいで国が滅ぶ。民草の福祉なんて気にしてられないのだ………

 

 橘商会は幾つかある都の水道利権を朝廷から賃借した団体の一つだ。他の公家や商会と共に人足や傭兵を雇い、水道の管理運営を担っていた。問題はここ数ヶ月の間に何度か清掃や補修のために下水道の奥へと足を踏み入れた人足が戻って来なくなった事だろう。その後二回程クロイツ家と王家以外で構成された傭兵の一団を送り込んだが同じく連絡が途絶えた。

 

「だからこそ、何かが入ると考えた景季さんは旭衆都組と鬼月家に探索と、異変の原因が妖の場合には討伐を依頼したんすよね?」

「ええ。まあ、その後クロイツ家の提案で管理を委託されている他の商会や公家にも声を掛けて『大掃除』をする事になったんです」

「何故かクロイツ家は非戦闘員を除いた全戦力を動員してるんすよね……『アーサー』さんも下水道の掃除で、なんでこんなに燃えてるんすかね?」

(そりゃまあ……)

(クロイツ家の連中の『最終目標』を思うとな……)

 俺と葛葉唯は鬼月旭がクロイツ家の現当主がたかが下水道の掃除で何故一族の戦闘員を全員投入するのかわからないと言う風に首を傾げているのを見ながら密かに溜め息を吐いた。

 

 そう。俺逹は知っている。この案件の原因を。そしてその危険性を。それこそこの地下水道で行われているのはバッドエンド中のバッドエンドに関わる事案なのだから。

 

 原作のゲーム『闇夜の蛍』の都ルートにて、真っ先に参加可能な初期クエストでありながら、その実受けたら確実にゲームオーバーとなる確殺クエスト……それがこの地下水道の調査任務である。

 

「旭、貴方もいましたか」

「旭も参加するんだ」

「紫姉! ゆかちゃんも参加するんすか?」

「ええ。友である佳世や紗世が困っているのなら、それを助けないのは名折れです」

「義兄さん逹や義父さんには反対されたけど、出来る限り妖退治の経験を積みたいって言ったら聞いてくれた。……同時に何かあったら助けに来るだろうけど」

「相変わらず過保護なんすね……」

 俺達は赤穂家の義姉妹も参加しているのを見て内心で頭を抱える。

 

 先程も言ったとおり原作のゲーム『闇夜の蛍』の都ルートにて、真っ先に参加可能な初期クエストでありながら、その実受けたら確実にゲームオーバーとなる確殺クエスト……それがこの地下水道の調査任務である。

 

 そして同時に………この任務は人妖大乱において最も悪名を馳せた化物の一体であり、クロイツ家の獲物である『妖母』が直接その姿を現す数少ないイベントであり、赤穂紫にとって最も残酷なバッドエンドの一つである「妖化された上で家族に斬り殺される」という末路を迎えるルートがおこりえるクエストだからだ。

 

(因果関係かね? 佳世ちゃん逹と友達だからって、下水道に潜らなくても良いだろうに……)

(まあ、最悪の場合は赤穂紫のチートな家族が救援に来てくれるとポジティブに考えれば気が楽よ)

(なるほどな……)

 俺と葛葉唯は互いにアイコンタクトを取りながらこれからどうするかを考え……

 

「皆さん、静粛に。これより、『大掃除』の概要を説明いたします」

 声に気付いて顔を上げると、そこには眼鏡を掛けてカソックを着た金髪の優しそうな男が集まっている傭兵と俺達の前に立っていた。

 

 こいつがクロイツ家の現当主であり、アリシア逹の実の父親であるアーサー・クロイツだ。

 

「先ずは情報を纏めますと、下水道の奥には人を失踪させる『何か』がおりそれによって下水道の点検や清掃を行っている人足逹が行方不明になるというのが数ヶ月間も続いています。さて……これを踏まえて私が提案をするのは、各地にある下水道の出口全てから班に別れて侵入し各個に最奥を目指し、原因の特定と可能なら排除をする事です。我々で難しいなら、朝廷に討伐を依頼するように雇い主に掛け合いましょう。命は惜しいですからね」

 アーサー・クロイツの言葉に集った傭兵逹は少しばかり笑う。

 

「意見はありませんね? では、各班の班員ですが……」

 アーサー・クロイツは名を言って班を決めていくが……矢張と言うべきか各班には最低一人はクロイツ家の人間が存在していた。

 

 にしても……どうやって、クロイツ家は下水道に妖母がいるって悟ったんだ? 

 

 ──────────

 

「ローラン、アリシア、少しばかり話せませんか?」

「どうしました?」

「パパ……どうしたんデスか?」

 作戦会議が終わり、後は明日の実行日に備えて準備をするだけの為に解散するとアーサー・クロイツは末娘のアリシアとアリシアのすぐ上の兄のローランに声を掛けた。

 

「いや、我が家にとって重大な事実が判明したからね。話をしなければと思ってね」

「……旭」

「離れても良いデスか?」

「良いっすよ。何時もは離ればなれにさせちゃってるから、親子水入らずで話してほしいっすよ」

「感謝デス」

「わかった」

 そう言ってローランとアリシアは旭逹から離れると、父と共に橘商会から貰い受けたクロイツ家の屋敷に入ると……壮絶なまでの熱量が二人を覆った。

 

「こ、これは……」

「一体……!?」

 そこには久しく使っていなかった妖退治の為の本気の道具や武具を整備する鍛冶師や術師、瞑想をしながら猛る思いを深める者、本気の鍛練をする者や殺気をたぎらせながら模擬戦をする者逹など凄まじいまでの人員が戦意を高揚させていた。

 

「……妖母の最古の子供の一人にして我らの本家にとっての『裏切り者(・・・・)』が来たことが確認されました」

「!? それって……」

「本家の『ローゼンクロイツ家』の最高傑作と名高くも、戦友が本国の西方帝国の皇族や貴族の嫉妬で魔女の汚名を着せられて火炙りにされた事で絶望したが故に妖母の『転生』に自ら委ねたというあの……!?」

 アリシアとローランは驚愕すると、アーサーは頷きながらその名を言った。

 

「……二人の想像のとおり、絶望から吸血鬼へと変生し、帝国を内部から堕落させ崩壊へと導いた人間……『アリア・ローゼンクロイツ』です。五百年前の人妖大乱以降に妖母の死が確認されていない以上、彼女が来たのは母親を連れ戻すためでしょう。そして、彼女が最後に確認されたのは下水道の出口の前です。つまり……」

「下水道に奴は…妖母はいる……!」

「ええ。これは『聖戦』です。我らが先祖の無念をこれまでの旅路の成果を示す時が来ました」

「……!」

 アリシアとローランは父に向けて真剣な顔で居住まいを正す。

 

「……聖戦が終われば後は貴方逹の自由です。私は本家に報告をするために戻りますが、一族の者逹には自身で決めて自分の人生を過ごしてほしいです」

「パパ……」

 アリシアは父の言葉に寂しさを覚えるが、父の想いに己の居場所……淡い恋心を抱いた黒虎や親友の旭や牡丹、佳世と紗世の姉妹がおり、大切な仲間逹のいるこの国を離れたくないという想いを持ったが故にアリシアはこの地に留まることを決意していた。

 

(だからこそ……私の全てを賭けるデス)

 アリシアはそう思いながら、敬愛していた祖父によって背中に彫られた天使の羽と羽の中心を貫くように彫られた生命の樹の紋様に霊力を集中しながら絶対に勝つという決意をした。

 

 ──────────

 

「ぶえっくし!?」

「まあ、どうしました? 風邪ですか? ……でしたら、母が肌で暖めてあげましょうか?」

「……何百年も生きてるのに母上に甘えるのは下に示しがつかんし、結構キツいので……遠慮する」

「あら、そう? 母は何時でも待ってますよ」

 下水道で妖としての母と対面をしていた吸血鬼……『アリア・ローゼンクロイツ』はくしゃみをしたことで心配した妖母に顔を赤くしながら「こほん」と一息吐いた。

 

「それで、さっきの話じゃが……矢張、西方に戻ってきてほしいのじゃ。最近、其処らの魔女狩り狂いの騎士国家郡や植民地に逃げ去った腰抜けの亡命政府とは違う骨のある国が台頭をし始めておってな。国が小さな内に始末をしたいんで、ほぼ無尽蔵の兵力を供与出来る母上に来てほしいのじゃ」

「う~ん……可愛い娘の貴女の頼みなら二つ返事で受けたいんだけど、空ちゃんから頼まれた仕事もあるから……」

「むう……あの有名な凶妖の頼みなら、仕方がない……か」

 母の言葉にアリアは頭を抱えながら、目標を見付ける。

 

「む……母上、居ましたぞ」

「うふふふ、あらぁ。何処にいく積もりなのかしらぁ?」

 二人の目の前には刀を手に持ったモグリの退魔士がおり、二人を見て刀を構えるが……顔が絶望に染まり、刀を取り落とした。

 

「ふん。実力差をよーく、思い知ったようじゃな」

「アリア、そう言ってはいけませんよ? 貴女の弟になる子なんですから」

「母上の能力で妾に弟や妹が何人いると思ってるんじゃ……」

 アリアは母の天然発言に呆れながら完全に心をへし折られた男に近付いていく。

 

「うふふ、怖がらなくて良いのですよ? 大丈夫、大丈夫……さぁ、貴方も今日から私の愛しくて大切な家族、可愛い子供よ? さぁ、よしよし………」

 優しく、囁くような、それでいて妙に反響した声だった。耳の中に入り込み、脳を麻痺させるような甘ったるく、柔らかな声を響かせながら妖母はモグリの頭を豊かで柔らかい胸元に愛情一杯に抱き抱えられて頭を撫でられても、男は最早何も抵抗も、反応も出来なかった。

 

「か……ぞく………?」

「はい。そうよ? 貴方もこれから家族になるのよぅ? そうすれば怖くないわぁ。安心して、皆家族だから怖いものなんてないわよ? 何かあればお母さんがどうにかしてあげるわ。だから何も心配しなくて良いのよ?」

「かあ……さ、ん……?」

「無駄な事を……」

 男は虚ろな目で身動ぎをするが、そんな男にアリアは冷めた目で見つめる。

 

「大丈夫よ? 皆会えるわ。直ぐに会えるようになるわぁ。皆家族になるのだから、何も恐れる事も、怖がる事もないのよ?」

「みんな……?」

「えぇ、そうよ。皆、皆、今度こそは。だから……」

 優しく包容する妖母は男に向かって口元を吊り上げる。そして心底優しく囁いた。

 

「だから、貴方も私が産み直して上げるわね?」

 むしゃむしゃ、もぐもぐ、ぐちゃぐちゃと。むしゃむしゃ、もぐもぐ、ぐちゃぐちゃと。むしゃむしゃ、もぐもぐ、ぐちゃぐちゃと。むしゃむしゃ、もぐもぐ、ぐちゃぐちゃと。むしゃむしゃ、もぐもぐ、ぐちゃぐちゃと。むしゃむしゃ、もぐもぐ、ぐちゃぐちゃと………咀嚼音が辺りに響く。

 

「……相も変わらずに凶悪な能力じゃな。だからこそ、あの男が信じられんのじゃ」

 咀嚼音が響く中でアリアの脳内には『俺のお袋は、俺を股から捻り出してくれたお袋だけだ! てめえみてえな、化け物じゃねえんだよ……消えろ、お節介ババア!』と言って、母の能力を受けていながらそれを否定して斬りかかった乱暴に髪をうなじで括った『オレンジ色の髪』の男が浮かび……

 

「そして、同じものを感じたあやつとあやつの国も危険じゃと判断したのじゃ……新たなる西方帝国を作り上げる危険性のある、あの国を……な」

 同時に西方で建国された、只人も魔女も半妖も本当に善良な妖さえも受け入れると国の方針を定めた国王の姿を思い出しながら、そう呟いた。




次回もお楽しみに!

蛇足:『闇夜の蛍』に旭がいた場合の台詞集8『葵編』

旭に対する思い
葵「ちょっとお馬鹿だけど……大切な妹よ?」
旭「葵姉、嬉しいけど一言多いっすよ?」

傷だらけの少女
葵「あれは……私の罪よ」←傷だらけの旭の体をみながら辛そうな表情の葵のCGが映る

葵&旭エンド(旭メイン時)
旭「葵姉、環君……次は何処に行くっすか?」
葵「旭が決めて良いわ。貴女と環が選んだ所なら何処にでも行くわ」←笑顔で旭や環と歩く葵のCGが映る。

葵&旭エンド(葵メイン時)
「環、これからも旭ともどもよろしくね? 『私達』の旦那様?」
「あ、葵姉!? それって、どういう意味っすか!?」←葵の発言に葵に慌てて詰め寄る旭のCGが映る。
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