旭奇譚~和風ファンタジーな鬱エロゲーの名無し戦闘員に転生したんだが周囲の女がヤベー奴ばかりで嫌な予感しかしない件~ 作:愛川蓮
暗くて、見慣れない場所だけど、何故か懐かしい感じのする場所にあたいはゆらゆらと浮かんでいたっす。
(此処は何処っすか?)
あたいは、アリア・ローゼンクロイツの一撃で気絶して……
「信じられないなぁ……もうすぐ私が母親になるなんて」
「毎度の事だけど、君達の一族ってなんで親になるとその反応をするんだろうね……」
(これ……赤髪碧童子さん?)
でも、あの値踏みをするような口調じゃなくて何処か呆れていそうな優しそうな声だったっす。って事は、もう一方の声は……
「ねぇ、
……あたいのお母さんの発言に赤髪碧童子さんが『ゴン!』と頭を何かにぶつけた音が響いたっす。
「あのさぁ……俺は鬼で、君の産まれる千年前位に恐ろしい凶妖として伝わっている妖だよ? そいつに我が子の名付け親になってもらおうとするって何を考えてるんだい?」
「え? 私は単純に碧を友達だと思ってるから名付け親になって欲しいんだけど? それに……」
呆れに若干の怒りを含んだ声でお母さんに質問をした赤髪碧童子にお母さんはあっけらかんとした口調でそう言いながら……
「私のお腹の中にいるこの子が碧の望んでいた英雄になってくれるかもしれないでしょ? まあ、私的にはそれを否定して一緒に戦ってほしいんだけどね」
「……君はどうして俺に死んでほしくないんだい?」
お母さんの言葉に疑問符を浮かべている赤髪碧童子さんにお母さんはさらに言葉を重ねたっす。
「だって、私達一族にとって碧はご先祖様の命の恩人だし、私にとっても碧は親友だもん。妖だろうとなんだろうと、親友に死んでほしくないのは人として当然でしょ?」
「……君達の一族って、本当に俺に対して甘いよね」
赤髪碧童子さんはそう言うと、小さな声で「……旭」っと呟いたっす。
「? 碧、なんて言ったの?」
「旭って言ったんだよ。名付け親になってほしいって言ったのは君だろ?」
「旭、旭か……ありがとう碧! 旭、早くお母さんやお父さんに顔を見せてね」
お母さんはそうあたいに声をかけて……
『旭、私もお父さんも貴女を見守っているわ。だから……五百年前のご先祖様がはね除けた『誘い』に負けないで』
あたいの意識はその声と共に目覚めて行ったっす。
──────────
「「っ!?」」
「雛姫様、葵姫様もどうしたの!?」
「ど、どうしたんですか!?」
突如として立ち上がって牛車を飛び出した雛と葵の二人に花と白の二人は慌てて二人を追って牛車を飛び出した。
「……伴部と旭に張り付けておいた式神との繋がりが途絶えた」
「え!? それってつまり……」
「下水道で問題があったって事よ」
その言葉に花は愕然としながら白に向けて指示をとばす。
「白、あんたは耳と尻尾を隠して陰陽寮に行って多々良さんって人に応援を要請してきて。旭の話だと、その人が一番話を聞いてくれそうだからね」
「は、花さんは?」
「私は姫様達と一緒に兄貴や旭、伴部さん達を助けに行ってくるわ」
「……わかりました。お気を付けて」
花の言葉にこくりと頷いた白は幻術で狐耳と尻尾を隠すと全速力で走って行った。
「……余計な真似をしてくれたわね」
「余計な真似でも戦力は多い方が良いでしょ? 伴部さんや旭を守る為にはね」
「そのとおりだな」
不満そうな顔をした葵を嗜める様に言った花に同意しつつ雛は刀を抜く。
「んじゃ、私が先行しますから姫様達は私についてきてください。白狐降霊戦衣、『
花がその名を告げると、花の周りを風が吹き荒れる。花は耳をすますと、そのまま走り出す。
「旭姫様と伴部さんの声が聴こえた……最短距離でそこに向かいますよ!」
「任せた!」
「そんなことを言って道に迷わないでね?」
花の言葉に雛はそれを信頼し、葵は茶化しながらもその先導に従い走り出す。
「今だ、殺れ!」
それを見て待ってましたとばかりに入り口で待ち伏せていたレッサーに率いられた妖達が……
「邪魔だ!」
「散りなさい羽虫が」
「どけぇ! 狐風楽想・『
「あべ……!?」
踊りかかった瞬間に雛に焼かれ、葵と花から放たれた風の刃でバラバラに切り刻まれた。
そのまま三人は大切な人間達を助ける為に下水道を走り始めた……
──────────
あたいが起きると、壮絶な妖気に少しばかり吐き気を催したっす。
そこにいたのはあたいと伴部さんを凝視する、深淵を見つめるような翡翠色の瞳を持った女の人。でも、その瞳は明確に狂気の色が垣間見えていたっす。
「あら、起きましたか? それは良かったわぁ。二人とも何時までも目覚めないものだからどうしようかと困り果てていたの。人間の皆さんって脆いのが多いでしょう? アリアが手加減し間違えたのかと思って心配していたのよ?」
「母上、妾がそんなへまをすると思うか?」
あたいや伴部さんの頬を心配そうに撫でる(妖のアリア・ローゼンクロイツといる時点で)十中八九妖の女の人にアリア・ローゼンクロイツは不満そうにそう言ったっす。
因みにアリア・ローゼンクロイツの後ろには滅茶苦茶不満そうな二人の吸血鬼があたいと伴部さんをみていたっす。
妖の容姿は優しそうで、一目見るだけで本能的に母性を感じさせる魅力的で包容力に富んだ美貌を纏っていたっす。その容姿に長い髪を垂らして上半身に一糸も纏わぬその姿は一見扇情的で背徳的でありながら、同時に神々しさも感じさせていたっす。だけど、その下半身を見ればそんな印象は一変するっす。
……女の人の下半身は巨大な肉の塊だったっす。肉饅頭のような肥大な肉の塊……そこからは出鱈目のように様々な生物を模した手足が生えていて、おぞましさを感じさせるその醜い姿は白く線の細い上半身との対照性も相まって一層不気味に思えてくるっす。
(夕陽、此処は?)
(恐らくだが、妖どもの秘密基地と言った所だろうな。……最悪な事にアリア・ローゼンクロイツの口ぶりからして、目の前にいる『こいつ』はクロイツ家が血眼になって捜している妖母だ)
身動きが出来ない上に、目の前には人妖大乱時の最大の標的の一人ってどんな状況……
「げ……」
あたいが何か出来ないかを探るために周囲を見ると、下水道そのものの異様でヤバイ光景が目に入りこんだっす。
壁中にぬめぬめとした何かが貼り付いていて、それには無数の卵が産み付けられていたっす。しかも……床だけじゃなくて、壁や天井にも、何百、あるいは何千か、心臓のように鼓動するそれ自体が生物のようなものから鳥類や爬虫類のような殻の卵に、あるいは虫のそれのようなもの、汚水溜まりの中には蛙の卵のようなものが無数に浮かんでいたっす。正直、見るだけで鳥肌ものの凄まじい光景っすよ……
「ここは…まさか………」
「ふふふ、ここはですね? 子育ての御部屋なのですよ。ここで可愛い坊や達を産んで、大切に育てあげているの」
あたいの側で拘束されていた伴部さんの殆ど独り言のような呟きに対して低く、何処までも優しい口調で女の姿をした人外の化物は答えたっす。
「旭様、無事だったんだな!」
「孫六……この状況でそれはねえだろ……」
「ひぃぃぃぃ!? た、助けてくれ!!? 誰か!! 助けてくれぇぇぇ!!」
あたいがその声に振り向くと、そこには孫六さんや案内役達が身体を半分程埋められて拘束されていたっす。
孫六さん達の近くには紫姉と白夜さんが同じように拘束されていたっす。此方もどうやら五体満足なのは良かったんだけど……意識を失っているようでぐったりとしていたっす。
……問題は紫姉と白夜さんに気がある吸血鬼が近くにいる事なんすよね。
あたいと伴部さんの近くには唯ちゃんと白虎、九恩さんが拘束されていて、三人は目覚めていてどうにか逆転出来ないかと周囲を探っていたっす。
とは言っても……
(拘束されてるんじゃあ……!)
あたいは左腕と右足以外を拘束している肉のような粘性の物質に内心で溜め息を吐いたっす。
(まあ、拘束をされていなくても逃げ出すのは至難の技だろうがな)
(そうっすよねぇ……)
凶妖であるアリア・ローゼンクロイツに妖母、凶妖級の妖気もある吸血鬼達に妖母が産んだと思われる妖達……逃げるにせよ、一矢報いるにせよ確実に袋叩きにされるっすね。
「んっ……こ、ここ……はっ……? ひっ!!?」
「マジか……」
あたいが最悪の状況に頭を抱えていると、さっきまで気を失っていた紫姉と白夜さんが目を覚まして、同時に事態を把握して紫姉は悲鳴を上げ、白夜さんは溜め息を吐くっす。紫姉は右左と首を動かして、あたい達の姿を見つけると一瞬安堵したような表情を浮かべ、しかし直ぐに絶望したように顔を青くさせるっす。
「こ、これは……一体……!? い、嫌っ……た、助けて……!! 嫌っ……!!?」
「落ち着けよ。俺達はこれから『家族』になるんだぜ?」
「あ……」
紫姉が悲鳴をあげていると……軽薄そうな吸血鬼が紫姉の顔を見つめ、紫姉の瞳が赤く染まるととろんとした顔になって動きを止めたっす。
「紫姉!?」
「ラール……珍しいな、お主が魅了の魔法を使うとは」
「……まーな、なんか気になるんだよなこいつ」
「ふーん……」
あたいが悲鳴をあげるとアリア・ローゼンクロイツの疑問に吸血鬼が頭をボリボリと掻きながら答え、それを羨ましいくらいに豊満な吸血鬼がニヤニヤと笑いながらそう言ったっす。
「もう、子供の大声は元気な証ですよ? それを魅了で無理やり落ち着かせるなんて……貴方達も、あの子みたいに元気で大きな声で鳴いてくれても良いのですよ?」
妖母からのあからさまに狂った善意の言葉混じりの言葉に伴部さんは無理やり笑顔を浮かべながら答えたっす。
「それは生きの良い獲物だと分かるからか? あんたは何者だ? まぁ、都の地下をこんな模様替えしている輩な時点で碌な奴では無さそうだが……?」
(時間稼ぎだな)
(でしょうね)
時間稼ぎをする事は賛成っすけど……このままじゃ食われる事を伸ばすくらいにしかならない……!
「口の聞き方を知らんようじゃな……!」
「アリア?」
「……」
「この子がごめんなさいね? 貴方も焦って沢山質問をしなくてもちゃーんと答えてあげますから。慌てない慌てない」
伴部さんの挑発に怒ったアリア・ローゼンクロイツが影から刃を出そうとしたけど、怒ってすらいない妖母の言葉で不満そうな顔をしながら影の刃を消したっす。
「……そうですね、やっぱり母親としては子供の元気な姿が一番ですからね。その意味では彼方の女の子はとても元気が良くて、私としてはとても嬉しいものです。それに比べて貴方達や向こうの三人は……少し静か過ぎて些か困りましたが、ちゃんとお話が出来る程には元気があるようで安心しましたよ?」
「ああ、そうっすか……」
あたいは妖母の言葉に呆れながら溜め息を吐くっす。
「さて、次の質問でしたか? えーと……あぁ、私が誰かでしたね? 見ての通り、私は貴方達の母親……「旭や伴部達にはお前みたいな気狂いな母親なんていらないんデス!」あら?」
いきなり『ダァン!』という発砲音が響き妖母の二の腕から血を流したかと思うと、右手に銃身の長い銃、左手に銃身の短い銃を持ったアリシアが妖母に向かって両手に持った銃を乱射しながら現れたっす。
あたいはあの三年前にあの2つの銃を持ったアリシアにボコボコにされたんすよね。確か、名前は……
「さあ、『
そうそう、そんな名前だったっす。能力はまるで時間を加速させたかのような超高速移動だったっすね。いや~……三年前の戦いの時は手も足も出なかったんすよね。
「貴様は!」
「まだまだ!」
そう言ってアリア・ローゼンクロイツはまた鞘に納められているエクスカリバーを横凪ぎに振るうとアリシアはそれを短い銃身の銃で受け流して、銃身の長い銃で手近な妖を撃ち殺したっす。
「悪いですが……」
「私もアルバもちょっとイラついてるから貴方を殺してストレスを解消させてもらう」
「くぅ!?」
続いてアリシアの両側から不満そうな顔だった吸血鬼達が襲いかかるけど、アリシアはそれに対して両手の銃を撃つことで牽制し、攻撃が遅れたのを利用して前に転がる事で回避するっす。
「旭、今行くデス!」
アリシアはそう言うと、襲い掛かる妖や攻撃を避けたり撃ち落としたり、受け流しながら接近するけど……なんであの高速移動をしないんすか!?
「悪いが……」
「アリシア、後ろ!」
「な……!?」
「後方不注意よ?」
あたい達まで後少しというところで紫姉達の側にいた吸血鬼達の攻撃がアリシアに直撃し、アリシアの右腕と左足が吹き飛んだっす。
「あ、アリシア……!?」
「ぐ、
そのままアリシアは妖の群れの中に消えて……今なんか変なことを言っていた様な……?
「任されましたよ、
その言葉と共に現れたのは綺麗な金髪を左右非対称の結び方で結び、赤と黒のドレスを纏い、左目が金色の時計の文字盤になったアリシアがアリスさんやローラン、アーサーさん達と一緒に突入してきたっす。
(……言っちゃ悪いけど、完全に『
クロイツ家の戦力があれだけいるなら、あたいが抜け出る隙も出てくる……筈! てか、どうにか右腕は出せたっす……
「貴様ら……クロイツ家の者達か! 此処で貴様らの旅路を全滅という形で終わらせてくれる!」
「終わらせるのは同感ですが……それは我々の全滅ではなく人類を裏切り、人々に恐怖を植え付けたお前とお前を産み出した堕ちた地母神の死によってです!」
「まぁまぁ……我が子同士がそんなに争うことはありませんよ、ね?」
互いの武器を向けあうアーサーさんとアリア・ローゼンクロイツの話にわって入った妖母から魅了の妖気が放たれて……
「リリシア!」
「了解……!」
アーサーさんの言葉と共にリリシアさんが他の魔術師の仲間と一緒に杖を地面に突き立てると、そこから光の線が現れてアーサーさん達を囲むとそれは光の壁になったっす。
「……あら?」
「……正直言って、二回か三回位しか防げない。早めに決めて」
「それだけで十分です! 総員、聖戦である! 堕ちた地母神、裏切り者とその一族の者達を討ち取れ!」
「母上の魅了を防げるとはな……だが、討ち取られるのは貴様らじゃたわけがぁ!」
妖母の意外そうな顔を見たアーサーさんの号令と共にクロイツ家の退魔師達は吸血鬼と妖の連合軍に襲い掛かり、相手の方もアリア・ローゼンクロイツの突撃と共に戦闘を開始したっす。
「早く此処から抜け出して援護をしないと……!」
「旭様。援護の前に一緒に捕まった他の人達も助けませんと」
「わかってるっすよ!」
あたいは伴部さんの言葉に返事をしながら抜け出そうとして……あいたぁ!?
「アリシア、助けるなら先に言ってほしいっすよ!」
「助けたんだから文句は言わないでほしいデス!」
あたいは霊力を纏った銃弾であたい達が捕まっていた粘液を破壊して助けたアリシアに顔面から叩き付けられたせいで痛む鼻を擦りながら……何かくる!
『シャアアァァァァァァ!!!!』
「あひゃあ!?」
「うお!?」
あたいと伴部さんはさっき産まれたと思われる妖母の産んだ妖の攻撃を避けて……はえ?
「………………………あ」
「げ……」
「坊や、食べてはいけませんよ? 食べ物は彼処にタンとありますから」
あたい達の目の前にいた妖母はあたい達に襲い掛かってきた妖にクロイツ家と吸血鬼達の大乱戦の方向を指差すと、妖は咆哮をあげながら走り去って……その後、妖母はあたい達をまじまじと見たっす。
(旭、飲まれるな!)
「貴方は……可哀想に。魂が絶望と約束に囚われて、壊れかけているのね」
夕陽の言葉で身構えたあたいは、妖母の言葉で凍り付いたっす。
「何を、何を言って……」
「隠さなくても良いのですよ? 母は子供の事をなんでも知っていますから」
あたいが反論を言おうとすると、妖母はあたいと伴部さんに近寄りながらそう言うっす。
「仮面をつけたこの子は逃げる事も、目を逸らす事も、逃避する事も出来ず、その上誰にも理解される事もなく、孤独に生きるしか出来ない子。対して貴方は幸せを奪われた絶望を知ったゆえに傷付き、それでも大切な人達との約束を果たす為にその傷を気付かないフリをして心を傷付けている子だと」
「う、あ……」
(一方は伴部だとわかるが……こいつの秘密は何なんだ!?)
あたいは妖母の言葉に心を揺さぶられ、その誘惑に必死に耐えながら蔵丸から武器を取り出そうとして……
「あ……」
「よしよし、二人とも良くこれまで頑張りましたね? もう良いのですよ? もう頑張らなくても、苦しまなくても良いのですよ?」
あたい達の目の前に立っていた『母』は先ず伴部さんを続いてあたいを抱き締めて頭を撫でたっす。
あたいは、染み渡るその言葉にゆっくりと心を『母』に預ける。
「旭、下人……それにのっては駄目です!」
「伴部、旭も駄目!」
「二人ともしっかりしなさいよ!」
「旭、しっかりするデス!」
「おい、待て……冗談だろ!?」
「不味いっておい!」
(旭、目を覚ませ!)
誰かがあたいに呼び掛けるけど……
「ふふふ、我慢しなくても良いのですよ? 甘えても良いのですよ? 泣いても良いのですよ? 感情に従うのは生き物として当然の、自然そのものの行動なのですから。そして『母親』として、私がどうして子供が甘えてすがり付くのを拒絶しましょうか?」
あたいと伴部さんは『母』の言葉に今まで必死に押し殺していた涙を流しながら『母』にすがり付くっす。
「あ……うぅぅ………ぐっ…………!?」
「う、ぁぁ……うう……」
「はいはい、大丈夫ですよ? もう大丈夫。もう何も心配しなくても良いですよ? 『母』はここにおりますから、ね?」
あたいはすがり付く『母』の温もりに身をゆだね……
「何を、あんな、『自称母』に……負けそうに、なってんだ……バカ子孫がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「ふぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
あたいはいきなり頬を殴られた衝撃に目を白黒させながら吹っ飛ばされて……あれ?
「こ、此処は何処っすか?」
「お前の精神世界だよ、バカ子孫」
「なにおう!?」
あたいが悪口に目を上げると、そこにはあたいと同じ髪色の髪を乱暴そうにうなじで括った男の人がそこにいたっす。
「あんたは誰っすか。あたいは、あたいはあの人に……「旭」「旭様」ふえ?」
あたいは『母』への思いを吐露しようとして……誰かがあたいを抱き締め、誰かがあたいの頭を撫でてくれたっす。
……これ、は。この声は……!?
「お母さん、『
死んだあたいのお母さんとあたいの初任務の際に大丈夫だと、助けてみせると言っておきながら死なせてしまった村人の女の子がいたっす。
「お母さん、お父さんは? それに小柚子ちゃんは、どうして……」
「あの人は今回は私とこの子に譲ってくれたの。『母』に対抗するなら実母しかいないって」
「私の場合は旭様を救えるのは私だけだと言われまして」
お母さんと小柚子ちゃんはそう言いながらあたいを見据えるっす。
「旭、あんな全ての親から子供を奪う自称母親に負けちゃダメよ? だって、貴方の親は私とあの人だし……何よりも碧を倒して救う英雄になるんでしょ?」
「死んだらいの一番に私の所に来て、一杯武勇伝を聞かせてくれるんですよね? だったら、こんな所で終われないじゃないですか」
「……あ」
あたいは二人の言葉にハッとしながら、『母』……じゃない、妖母の洗脳染みた言葉から解放されていくのを感じるっす。
「ごめんなさいっす」
「良いのよ。丁度、もう一人の娘も来たようだし」
「?」
「旭!」
あたいがその言葉を疑問に思っていると、あたいに対して呼び掛ける声に振り向き……納得したっす。
「夕陽……その、ごめんなさいっす」
「……寿命が縮んだぞ、馬鹿者が」
あたいが顔を真っ青にして走りよってきた夕陽に謝ると、夕陽は溜め息を吐きながらそう言ったっす。
「んじゃあ、お前達を送り返すぞ! あの化け物ババアに目に物を見せてやれ!」
「いや……」
「お前は、誰だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
あたいと夕陽はそう言いながら……意識が、急速に戻って……
──────────
「ふざけるな…………っ!」
「……!」
「あ、あら?」
戦場にいた誰もが唖然としていた。
完全に妖母に魅了され、後は食われるだけだった二人の人間……伴部と旭が突如として妖母を手に持ったそれぞれの短刀……伴部は幾重にも呪いを重ねがけされた鮮やかな桜の紋様が刻まれた金箔と漆の柄の短刀で旭もまた幾重にも呪いを重ねがけされた鮮やかな鳳凰の紋様が刻まれた金箔と漆の柄の短刀で刺していたからだ。
「ど、どうして……?」
怒りではなく、困惑と悲しみをもって呟くように尋ねた。それに答えるように、先程まで胸に抱き締められていた人間達はその顔をゆっくりと上げた。そして、口を開いた。
「ふざけるなっ!! 俺のっ……俺の家族の記憶を塗り潰そうとするんじゃねぇぞ!! 人の家族を奪うなっ………!!」
「あたいの家族はあたいを産んでくれたお母さんとお父さん……そして、雛姉や葵姉、胡蝶様に宇右衛門様、思水様に綾姉……色んな大切な人がいる鬼月家だけっす! それは、あたいの大切な家族は……絶対に奪わせない!」
涙に顔を濡らして、震える声で、しかし明確な殺意と憎悪と怒りを込めて青年と少女は叫んだ。そして……胸元と脇腹に突き刺した短刀を無理矢理に引き抜く。白い肌から吹き出す赤い血漿が青年達の顔を濡ら……す前に金髪のドレスを着た二人の『
「ば、馬鹿な……この光景は、『あの時』と同じ……!?」
「行かせるか!」
「「「行かせないデスよ!」」」
「ええい、どけぇ!」
アリアは完全に五百年前と一致した構図に呆然としながらも母と少女達の間に割り込もうとするが、アーサーとアリシア『達』はそれを必死に防ぐ。
そして……
「坊や達……? 一体何を………」
「母親面するな、化物がっ………!!」
「お前なんかが、『他人の子』を『他人の家族』を奪うお前なんかが……『母親』を名乗るなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
何も聞くつもりはなかった。次の瞬間、青年と少女によって振り下ろされた鋭い短刀の刃は、確かに堕ちた地母神の左目を突き刺し、喉を切り裂いていた………
次回もお楽しみに!
蛇足:『闇夜の蛍』に旭がいた場合の台詞集9『白編』
挨拶
白「ふ、ふちゅちゅか者ですが、よろしくお願いいたします!」
花「噛んでる噛んでる」
夜「まーた、背負う気かよ……お前も旭も背中の大きさはどうなってんだ?」
思い(恋)を自覚する時
花「白は、さ。環の事を好きなんだよ」
白「でも、私は……」
旭「元が凶妖がどうとか、関係ないっすよ。誰かを好きになるっていうのはそういう事っすよ」
過去を超える
白「私は、過去を……貴女(狐璃白綺)を超えます!」
狐璃白綺「やってみせろ、雑魚があぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」←五尾に成長した白と怨念から甦った狐璃白綺が激突するCGが映る。
白エンドafter『時を超えた場所で』
白「旭様、環さん……私と環さんや旭様の子孫達は今日も元気に過ごしてますよ……」←桜の下で遊ぶ子供達を見守る九尾の白が映るCGで〆