旭奇譚~和風ファンタジーな鬱エロゲーの名無し戦闘員に転生したんだが周囲の女がヤベー奴ばかりで嫌な予感しかしない件~ 作:愛川蓮
「旭。今日から此処が、あんたの住む家だ。……多分だけどね」
そう言って、あたいを助けてくれたお婆ちゃんはあたいの手を引きながら大きなお屋敷に入っていく。
(これって、あたいが初めて鬼月家に来た時のっすよね? てか、お婆ちゃん……多分ってなんすか、多分って)
まあ、胡蝶様が自分を恩師だって思ってるかどうかもわからないし、あたいのお父さんが当主様の恩人だったからって(お母さんも関係者らしかったんすけど、どういう関係だったんすかね?)、受け入れてくれるとは限らないのはわかるんすけどね……
それで、当主様と胡蝶様に面談は叶ったんすけど……そこから先はドロドロした大人の話し合いだからと言うことであたいはお婆ちゃん達によって部屋から出されたんすよね。
何で、暇潰しに屋敷を見回ってたら……雛姉に出会ったんす。
「……誰?」
雛姉は深い絶望と後悔と、罪悪感に苛まれていて……このままだと壊れてしまいそうなほど儚かったっす。
「わた……ううん。あたいは、旭っす。ひょっとしたら妹になるかもしれないっす。……あの、どうしてそんなに……悲しそうなんすか?」
「お前には、わからないよ。好きな人に酷いことを言って、その人を苦難の道に引き入れてしまった私の気持ちなんて……」
「好い気味。彼を奪おうとした罰」
そう言って、雛姉は話は終わりだとばかりに離れようとして……あたいはその服の裾をそっと握ったっす。
「……離して」
「……だったら、あたいが側にいるっすよ」
「お前じゃ、あいつの……■■の代わりには……」
「うん。それは、良くわかってるっす。でも……何時かその人が帰って来た時にそんな悲しい気持ちを抱えたままだったら、お姉さんが壊れちゃうっすよ。だから、あたいが支えるっす。その時が来たら、その人に代われる様にお姉さんが壊れない様に」
「壊れちゃえば良いんだよ、そんな奴」
あたいがそう言うと、雛姉はあたいの言葉に目を泳がせつつも何処か泣きそうな表情でこう言ったっす。
「……本当に離れない?」
「うっす」
「掌も返さない?」
「? もちろんっす」
「私の『計画』とかも漏らさない?」
「当たり前っす」
そこまでを真剣に言って……雛姉は漸くあたいに向き直ったっす。
「私は……雛、鬼月雛。よろしくね、旭」
「了解っす!」
そう言って、あたい達は握手をしたっす。
(今思えば、凄い口約束をしたっすねぇ……)
にしても、『計画』ってなんなんすかね……?
あ、今度は鬼月家に入ってから……葵姉に薙刀の稽古でやっとこさ勝ったところっすね。
「……葵姉」
「……何? 貴方みたいな無才でバカの癖に、私に「孤独なんすね」なんて言ってくる様な子が私を馬鹿にしに来たの?」
「その子を馬鹿にするな人格破綻者」
涙目で凄まじい毒舌を言って、あたいの側から逃げようとする葵姉。
(今にして思うと、あれって当主様の愛情を得るために必死に頑張ってたのに普段からバカにしてるあたいに負けたせいで『嫌われる!』って思ってたんすよね)
実際には『あの人』、雛姉しか見てなかったわけっすけど。いや、あたいもあの人の真意を雛姉経由で知った時には愕然としたっすよ。因みに雛姉はその事を知った際に「私は貴方が嫌いだ! あいつを下人に落とした事も、旭を陥れた事も、そうやって私の気持ちを知らないで後継者争いを謀略で解決しようとしたことも……全てが、大っ嫌いだ! もう、私は貴方を父とは思わない!」って面と向かって罵倒したらしいっす。
「だって、孤独で……可哀想っすよ」
「まだ言うの!? 私は……」
「だって、誰もが葵姉の事を見てくれないんすから」
「え……」
あたいの言ったことに葵姉は呆けた表情になるっす。まあ、そうっすよね……自分の才能に目を焼かれて言い寄ってくる人ばかりしかいなかったから、だからあたいも『そういう人』だと思っちゃったんすよね。
「葵姉は色んな人に才能のせいで人を見るような目で見られて、それで疑り深くなっちゃったんすよね? だから、あたいの事も『そういう人』って思ったんすよね?」
「……そうよ。貴方は違うって言うの?」
あたいの言葉に葵姉は訝しげに、何処か見下したような視線を向けるっす。
「あたいが葵姉に何度酷いことを言われたって食いついたのは、こう言いたかったからっすよ。『世の中才能だけじゃない』って。だって、才能がないあたいでも頑張って、努力して色んな人に支えてもらって……そうやって、葵姉を越えられたんすから」
そう言って、あたいは葵姉の側に座って葵姉の手を握るっす。
「それに、あたいは葵姉の才能を素直に尊敬してるだけっす。あたいは、葵姉をちゃんと見てるっすよ……葵姉は結構意地っ張りで、毒舌で興味のない人を無視しちゃう様な人っすけど……本当は誰かに愛されたい寂しがり屋っす」
「そ、そう……」
あたいがそう言うと、葵姉はあたいを見た後でちょっと赤らめた顔を隠すように顔を背けてこう言ったっす。
「……ありがとう」
「やっと、葵姉の素直な言葉が聞けたっす」
あたいはにぱっと笑って葵姉に微笑んで……
────────────────────
「おや? 二人とも起きたのかい? お早うというべきかな? おっと……?」
あたいが目を覚ますと、そこには赤髪碧童子がいて……伴部さんが殆ど反射的に槍を打ち込み、それをスレスレで回避したっす。
「酷いじゃないか。起きてそうそう槍で突かれる謂われなんかないんだけどな?」
「貴様が鬼なだけで十分だな。そもそも記憶が怪しいがてめぇ、睡眠薬使ったな?」
「ところで、あたいは節々がちょっと痛いんすけど……」
「ああ、それは夕陽が旭を守る為に俺を攻撃してきたからね……身を守る為に戦ったから多分その後遺症だね」
う~ん……あたいを守る為に戦ったのなら、怒るに怒れないっすねぇ……
伴部さんは体をまさぐったりして、赤髪碧童子が『摘まみ食い』をしていないかどうかを確認してるっす。
「相変わらず用心深い事だね。そこまで信用がないのかい?」
「鬼を信用する奴なんているかよ」
「そりゃ、そうっすけど……この人は信用出来るっすよ? なんせ、『食べて良い』って言われても一宿一飯の恩で生け贄に捧げられそうになったあたいの御先祖様を……」
「おや、今日は良い天気だ」
また露骨に話題を逸らしたっすね……まあ、確かに霧は完全に晴れてるっすね。
「昨日の奴は旭の仲間の攻撃で大分痛め付けられてたからね。多分、まだ蹲ってるんだろうよ」
「そりゃ、良いことを聞いたっす」
昨日負わせた手傷が回復していないって事は、一気に攻めて畳み掛けられるっすからね。
「あの飛んできた剣は未だに刺さってるからね。俺が難易度調整の為に連れてきた狒々にも抜けないもんだから、かなり苛立ってたよ」
「やはり、昨日の大妖達は貴様の仕業か」
難易度調整って……あたいか伴部さんだけだったら、妖に蹴りを一発いれて援護してくれたんすかね?
「ああ。そうそう、君達の相手の妖は少なくとも人の形をしてなかった。それに動きも悪かったな。鈍過ぎて手下共に自分を運ばせていたよ」
「………」
「おいおい、疑うなよ? いくら嘘つきな鬼でも四六時中嘘を吐くかよ」
……まあ、確かに。っと、すれば……人の形をしてなくて、動きが悪くて重くて霧を吐く妖と言えば……『あれ』っすね。
「蛤……『
「あの化蛤が一番の候補か」
あたい達が成長して凶妖になれば霧で相手の親しい人や恐怖するものの幻覚を作って翻弄してくる厄介な妖の名前を言うと、にんまりと笑ってそれが正解だと示してくれたっす。
(綾姉の性格から考えて、伴部さんやあたいが行方不明の段階でそのまま置いていくなんて事はないっすね。それに、アリシアのフルンディングの『仕掛け』もあるっすし。綾姉は昨日は精細を欠いていたっすけど……それは、単独の任務だったからっすね)
あたいだって、旭衆と一緒にいなかったら緊張とかで精細を欠くかもしれないっすからね。
「まずは合流を……っ!?」
あたいと伴部さんは邪悪な気配を感じて慌てて岩の陰に隠れ、赤髪碧童子は楽しげな表情を浮かべて黒い妖気となって霧散するっす。
あたい達は慎重に音をたてないようにしながら顔を出して……頭を抱えたくなったっす。
「なんて間の悪い。そりゃ、貝だから水辺には来るかもしれないっすけど……」
洞窟の中を妖の軍勢が行軍していたっす。そして、その列の中央には一際特異で目を惹くシュコーと呼吸するかのように白い霧を吐き出す、突き刺さった剣を中心に殻がひび割れて中から青い体液を染み出るように流す大きな牛車程の大きさはあろう蛤とその側で用心棒の如く控えている大きな狒々がいたっす。蛤は多数の化物に背負われながら洞窟湖に向けてゆっくりと進んでいるっす。
(不味いっすね……)
あたいの構想としては、どうにか綾姉達と合流して探索。そっから退治っていう流れだったんすけど……これじゃあ、何時見つかるかわからないんすよね……
今目の前で百鬼夜行している妖の大名行列は、あたい達にとって余りに鬼門過ぎたっす。
(数は……三十頭位っすね。昨日のレーヴァンテインが効いたんすかね? ……奇襲で一気に倒すのも計算に入れるべきっすね)
あたいは蛤達にばれない様に息を潜めながら蛤達に従っている妖の数を数えると、あたいは自分達に出来ることを考えながら……
「ふん、臭うわい……臭い臭い
あたいと伴部さんは顔を見合わせて……即座に隠れていた岩の影からあたいは背中に背負った弓を手に取り、伴部さんは地面に置いた槍を持って左右に転がると……狒々が何時の間にか手に持っていた刀で岩を切り裂いたのが略同時だったっす。
「伴部さん! 狒々と雑魚はあたいが受け持ったっす! 伴部さんは蜃を! 玉鋼、呪印!」
「了解しました……!」
あたいは伴部さんに指示を出しながら、昨日は殆ど奇襲だった為に使えなかった玉鋼と呪印を展開して伴部さんのサポートをする。
「通すなぁ! 二匹ともぶち殺せぇい!」
「させないっすよぉ!」
狒々が手に持った刀をあたいに振り下ろしながら咆哮するけど、あたいはそれを回避しながら矢筒から取り出した矢をつがえて伴部さんの方に向かおうとした雑魚を撃ち抜くっす。
「ほらほら、美味しい餌は此方すよぉ!」
あたいは意図的に霊力を垂れ流しながら矢を連続で射る事で雑魚を引き付けると同時に、狒々に対して牽制を入れ……てえぇぇぇぇぇ!?
あたいは自分に向かって狒々が投げて来た鉄球を横っ飛びに回避すると、すぐに弓を構えようとするけど……狒々は肩にある『何か』から連続で鉄球を取り出すとそれを投げて来るっす。
「く、支援が……! うわぁ……」
「くかかかか……! あの化け猫めへの切り札として用意した急造の妖じゃったが……存外使えるではないか……!」
狒々はそう言うと人の顔がついた芋虫と言うべき妖から今度は槍を取り出して……
「はいっ!?」
「ちょっ……!?」
「む……? 何を……ぐへぇ!?」
あたいは蜃の取った行動を見たことで慌てて狒々の前から逃げ出すと、狒々は何がなんだかわからない感じだったぽいっすけど……次の瞬間、触手を地面に刺して大跳躍した蜃に吹っ飛ばされたっす。
……後で調べて知った事っすけど、貝って触手があるし、種類によっては跳躍能力凄いらしいっすよ。ましてや妖ともなればあの跳躍力も当然っすね。
「はぁはぁ、あの野郎、俺を挟み潰す気だったな……!?」
「多分、あたいも……げ!?」
あたいが伴部さんと合流して背後の蜃と壁に叩き付けられた狒々を見ながら武器を構え直すけど……蜃は貝のヒモに当たる部分にずらりと真っ黒な眼球で無機質な、しかし何処か怒りを湛えた黒眼の視線をあたい達に集中させていたっす。
「あれって、瞳術……!?」
「ひっ……!?」
瞬間、あたい達の足が動かなくなる。より正確に言えば途中で蜃の目からあたい達の目を逸らしたために瞳術による催眠が中途半端にかかり足だけが動かなくなっただけっすね。けどそこに伴部さんには蜃の触手による攻撃が、あたいには狒々が構えた槍が突き出されるっす。
「く、こんのぉ!」
「ぐ……おおお!」
あたいは手に持った矢であたいの足と伴部さんの足を突き刺すと、その痛みで催眠が解けて動ける様になった足でそれぞれの攻撃を回避するっす。
けど、伴部さんには触手による連続攻撃が、あたいには槍による連続突きが殺到するっす。
「ああああぁぁぁっ!!? 糞がぁ!!」
「く……がふ!?」
伴部さんは槍で応戦するけど幾ら強化していても数には勝てず槍を奪われて足を刺され、あたいは弓で弾きながら攻撃を防ぐけど狒々が攻撃に変化を加えて、柄での横凪ぎの攻撃を食らった事で壁に叩き付けられたっす。
「死ねい!」
「まだだぁ!」
あたいは跳ね起きながら繰り出された槍を回避して、狒々の顔面に矢を投げつけ目を潰すっす。
「ぎゃあぁぁぁぁぁ!? こ、この小娘がぁ!」
「ぎ……まだまだぁ!」
狒々は槍を放り捨てて、片手で潰れた目を庇いながらもう片方の手の爪で斬撃を繰り出して来てそれがあたいの脇腹を少し斬るっす。けど……こんな事で怯めるかぁ!
「くたばれい、餌風情がぁ!」
「人間……なめんなぁ!」
あたいは握り拳であたいを叩き潰しにかかる狒々の攻撃を避けて、少しずつ弓に溜め込んでいた霊力をつがえた矢に流してそれを狒々に向けて放ったっす。
「ば、バカなぁぁぁぁぁ!?」
至近距離から炸裂した矢は狒々の腹部を抉り取り、上下に分断して上半身は壁に吹っ飛び、下半身は地底湖に沈没して行ったっす。
(伴部さんは!?)
「人間なめんなよ貝風情が……!!」
あたいが伴部さんの無事を祈りながら蜃の方を見ると、そこには伴部さんが足に霊力を流しながらフルンディングに使われたアリシアの剣に蹴りを入れる事でアリシアの剣を通じて蜃に直接霊力を叩き込む光景が目に入ったっす。
「もう……いいから死んどけ……!!!」
そのまま肩まで傷口に入り込む程、短刀を更に傷口深くに捩じ込んだっす。
そうして少したつと……形容もつかない声で哭き、必死に暴れていた蜃はゆっくりと動きが鈍くなり……そしてぐたりと沈黙したっす。
「……なんとか、倒したっすね」
「ええ……此処からどうしましょうか」
あたいがふらつく伴部さんを支えると、伴部さんは溜め息を吐きながら目の前にいる残党達を見るっすけど……あ。
「伴部さん、もう大丈夫っすよ」
「は……?」
「「Kill、Freaks!」」
「「王家
「旭ちゃん、伴部さん!」
あたいがそう言うと、フルンディングに施されたマーキングを辿って来たであろうみんなが口々にそう言いながら残党達を殲滅したっす。
「旭ちゃん、大丈夫!?」
「大丈夫っすよ……ちょっと、脇腹とか足が痛いけど……」
「無茶をしちゃダメだよ! 急いで治療しなきゃ!」
「ああ、でもやらなきゃいけないことが……」
(殺った!)
そう言っていると、がら空きの背後から上半身だけになった狒々の一撃が……
「来ると思ってたっすよ」
「な……ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
あたいに来るけど、前回の大狼の件で学習していたあたいはそれを避けて抜いていた刀でその首を切り落とし、そのまま頭部を一刀両断にしたっす。
『ふふふ……合格おめでとう。また会おうぜ』
多分それを見ていた赤髪碧童子があたいと伴部さんにしか聞こえない言葉でそう言ってたっす……
────────────────────
「……痛いな」
「そりゃ、足が穴だらけっすからね」
あたい達は妖の死骸の処理をしているみんなを見ながら、伴部さんは傷の治療をあたいは狒々が連れていた人頭芋虫をあたいの式神として調伏していたっす。
「っ……!!」
伴部さんは噛み物で痛みを堪えつつ、同時に薬物(薬師衆が芥子から抽出した成分を秘伝の方法で依存性を抑えつつ濃縮したもの)でそれを誤魔化しながら、傷口を自分で縫い合わせていき、それが終わったら糸を切って、酒精を吹き掛けて消毒してから包帯を巻いていくっす。
「ん~……体感的には小妖ってところっすけど……貯蔵容量多いっすね~便利な式神を手にいれたっすね」
あたいはそれを痛そうな感じに見ながら人頭芋虫……『
「あ、あの大丈夫ですか伴部さん……?」
伴部さんの手術作業を心底不安そうに見ていた綾姉がそう尋ねたっす。
「問題はありません。化膿はしないように注意しましたから。それよりも迎えはそろそろでしょうか?」
「え? あ、はい。式神が戻って来たのでそろそろだと思います」
綾姉が戻ってきた式神を手に持ちながらそう言うっす。……本当に綾姉は面倒見が良いっすね。流石は夕陽の『伴部さんを大事にしてくれそうな人物の順位』で二位にあげられる事だけはあるっすね(因みに第一位は『ゆかちゃん』こと『
「それにしても、何か不思議ですね」
「何がでしょう?」
「お面がないので。下人衆の方々って常にお面しているので中々どんな人か分からなくて。伴部さんは結構印象的な事もあって分かるんですが……想像していたよりも若いんですね!」
「あ、それはあたいもそう思ったっす」
現在の伴部さんはお面を蜃に割られたせいで顔が露出してるんすよね……あれ? そう言えば、この目元の辺りとかどっかで……確か、旭衆の最初の仕事で訪れた『
「綾香様、到着しました」
「分かりました。どうやら来たみたいですね!」
あたいがそんな事を考えていると、今回同行していて生き残った下人の一人が報告してくると安堵した表情で綾姉はその出迎えを見やるっす。森の向こうから数人の供連れと共に近付いて来る牛車が見えたっす。どうやら仕事帰りらしいっすね。
「って、あの牛車は……」
あたいは牛車の出で立ちを見てそれが誰のものなのかを理解して、奇妙な縁を感じたっす。今回も一緒に帰ることになりそうっすね。
「此方の申し出、受け入れて下さって幸いです。姫様」
綾姉と残る下人達、そして旭衆のみんなは目の前で停車した牛車に向けて頭を下げてそう謝意を示すっす。
「怪我人が出たらしいな。宜しい、此方も仕事帰りだ。屋敷からそう遠くもない、怪我人と……旭だけならば運んでいってやろう」
その男勝りで端正な声はついこの前も聞いているっす。牛車から颯爽と降りた人影は木に横たわる伴部さんと木にもたれ掛かっているあたいの目の前に来ると、そのまま伴部さんを見下ろして口を開くっす。
「この前以来だな。今回も一緒に来てもらう事になりそうだな?」
「……情けない話でありますが、どうやらそのようです」
「あはは……なんか、ごめんす」
凛々しい黒髪のその人の言葉に伴部さんは下人らしく淡々と答える。その人はその言葉に目を細めてただ静かに伴部さんを、正確には伴部さんの怪我の具合を見定めていたっす。
まあ、誰だかは言わなくてもわかるっすよね? ……雛姉っす。
次回もお楽しみに!
蛇足:『闇夜の蛍』に旭がいた場合の台詞集1
自己紹介
「あたいは鬼月旭っす! よろしくっすよ、蛍夜さん!」
ちょっとしたデートイベント時での吐露
「あたいにとって、雛姉と葵姉は目標なんすよ……だから、頑張って二人に追い付きたいんす」
病んだ雛が旭を殺害した際の台詞
「え…雛、姉……?」
病んだ葵が旭を殺害した際の台詞
「葵、姉……どう、し…て……」