絶対に勝ちたいショタVS絶対に下僕にしたい姫様 作:織葉 黎旺
「おれのターン、ドロー!」
丈がデッキから、勢いよくカードを引く。それを横目で見るとニヤリと笑って、音を立ててデュエルディスクにセットする。
「おれは、《マシンナーズ・ギアフレーム》を召喚!」
砂場の上に、細身で橙色のロボットが出現する。
ユニオン・効果モンスター
星4/地属性/機械族/攻1800/守 0
「効果発動! 召喚に成功したときに、デッキの《マシンナーズ》モンスターを手札に加えられる! おれはコイツをもってくるぜ!」
丈が見せたのは《マシンナーズ・フォートレス》。彼のエースカードだ。
「カードを二枚ふせて、ターンエンド!」
丈 LP4000/手札3枚/ギアフレーム、伏せ2枚
「ぼくのターン、ドロー!」
掛も負けじと、カードを引く。六枚になった手札を眺め、難しい顔をした。
『まずは盤面を固めていくことが大事じゃぞ。この手札だと──』
「──プラチナちゃん」
少年が、姫を諫めるように、後ろに伸ばした手のひらを広げた。
「これはぼくと丈くんのたたかいなんだ。だから、ありがとう」
『ラビュリンスのラの字も知らないガキンチョが、生意気な』
胸の前で腕を組んだ姫が、小さく鼻を鳴らして笑う。
『……頑張るのよ』
「ぼくは、《クリボー》を攻撃表示で召喚!」
クリクリ~と声を上げ、丸い毛玉のようなモンスターが出現した。
星1/攻300/守200
「カードを3枚伏せて、ターンエンド!」
掛 LP4000/手札2枚/クリボー、伏せ3枚
「ちょーっとまった! エンドフェイズ、伏せておいた《サイクロン》を発動するぜ! 破壊するのは真ん中の伏せカードだ!」
「ああっ!?」
「《奈落の落とし穴》か。何もけーかいせずに出してたら危なかったな」
先程サーチしていたエース……《フォートレス》を除外できればゲームをだいぶ有利に進められたものの、そう上手くもいかなかった。
「さすが丈くんだね、エンドフェイズにそれされると何にもできないや」
「へへっ、すごいだろ!」
得意げに鼻を擦って、丈は山札に触れた。
「おれのターン、ドロー!」
山札からカードを引いて、丈は掛を見つめる。
「おまえがそんな変なプレイをするはずがない……なにかねらってんな?」
「……ど、どうだろうね?」
目が泳いでいる。おもいっきり。「へっ、まあいいぜ」と、丈は手札2枚を見せた。
「手札から、レベルの合計が8以上になるように機械族モンスターを墓地へ送って──」
2枚のカードが、ディスク中央部の暗闇へと飲まれていく。そしてそこから、1枚のカードが舞い戻ってきた。
「──《マシンナーズ・フォートレス》を特殊召喚!」
戦車が変形して、手足が生えたようなロボットが、重火器を携えてフィールドに現れた。
星7/攻2500/守1600
「いくぜ、バトルフェイズ! フォートレスで、クリボーを攻撃!」
《マシンナーズ・フォートレス》の銃口がクリボーを捉える。
「リバースカードオープン! 《フェアーウェルカム・ラビュリンス》!」
掛が高らかに宣言する。同時に発射されたレーザーがクリボーに迫る──が、その実体は揺らいで消える。暖炉の熱で生み出された幻だったのだ。
「悪魔族モンスターがいる時、相手か自分の攻撃を無効にして場のカードを破壊できるんだ! ぼくは、フォートレスを破壊する!」
どこからか落ちてきたシャンデリアが、フォートレスの頭上に降り注いで砕け散る。スクラップになったフォートレスを見て、丈は目を丸くした。
「へっ……やるな! けど想定内だぜ! いけギアフレーム、クリボーを破壊しろ!」
「うわあ!?」
動き出したロボットの腕の一振りで、球体は爆散する。その余波が掛を襲った。
掛 LP4000→2500
「さらに、メインフェイズ2。手札から《マシンナーズ・カノン》を墓地へ送って──」
宙から降り注いだガラクタが、寄り集まって組み上がる。
「フォートレスを、復活させる!」
再び戻ったフォートレスが、重厚な腕を一振りした。
丈 LP4000/手札2枚/ギアフレーム、フォートレス/伏せ1枚
「おれはこれでターンエンド……っておい、おまえの伏せカード1枚増えてないか?」
「《フェアーウェルカム・ラビュリンス》の効果で、《強制脱出装置》をセットしたよ」
「なるほど、やるな。だがそのカード……おれのデッキにはあまり通じないぜ?」
《ギアフレーム》は召喚したときの効果を持っているため、あまり使い回させたくない。フォートレスはフォートレスで、もう一体機械族を握っていれば場に出し直されてしまう。この状況においては、一時凌ぎにしかならないカードだった。
「それでも、これしかないんだ……! ぼくのターン! 手札から、《
「ちょっとまったぁ! エンドフェイズ、《サイクロン》を発動するぜ! いま伏せたトラップを破壊だ!」
《ウェルカム・ラビュリンス》が、音を立てて崩れ去る。掛が苦い表情を浮かべる。
「に、2枚目……!?」
「昨日のうちに増やしといてよかったぜ!」
運がない、としか言えない。伏せが2枚ともサイクロン、しかもうち1枚を温存していたなんて。こういった
掛 LP2500/手札1枚/伏せ2枚
「おれのターン、ドロー! どうやらかける、おまえのデッキはどっしりかまえた防御型みたいだな!」
バレている。これだけ動きがないから当然かもしれないが、掛すらまだ理解しきれていない《ラビュリンス》のスタイルについて、丈は把握し始めていた。
「ならおれは、徹底的に攻めるだけだぜ! 手札から《グリーン・ガジェット》を召喚!」
星4/攻1400/守600
「さらに召喚時効果で、デッキの《レッド・ガジェット》を手札に加える! そして、手札からレッドとコイツ自身をすてて──こい、相棒!」
「に、2体目!?」
砂場に、2体のロボットが並び立つ。その威圧感に掛は思わず後退る。
「更にフォートレスAにギアフレームを
丈が勢いよく掛を指差して叫ぶ。
「バトル! フォートレスでかけるにダイレクトアタック!」
「罠発動! 《ガード・ブロック》! 戦闘ダメージを0にして1枚引くよ!」
攻撃から掛を守るように現れた壁が、砕けて集まり1枚のカードになった。
掛手札1枚→2枚
「だが2発目はどうだ!? いけ、フォートレスB!」
「《強制脱出装置》!」
フォートレスの足元から現れた発射台が、勢いよく空へと打ち上がる。体勢を崩したフォートレスは、そのまま丈の手札に戻っていき、合体していたギアフレームが分離して墓地にいった。
「さっき伏せてたやつか……! だがまだモンスターは残ってるぜ! いけ、グリーン・ガジェット!」
「くっ……!」
駆け出したロボットの拳が、ぽこりと掛の身体に激突する。
掛 LP2500→1100
「いのちびろいしたな、ターンエンドだ!」
丈 LP4000/手札4枚/フォートレス×2、グリーン・ガジェット
「さあかける、おまえの力をみせてみろ!!」
「………………」
伏せカードは使い切った。手札はたったの2枚。相手の場も手札も潤沢。圧倒的に不利な状況。ひっくり返すのなんて絶望的に見える。──それでも。
「──たのしい」
「な」
掛の呟きに呼応するように、丈がニヤリと微笑む。フッと息を漏らした掛は、山札に強く指を掛けた。
「丈くん──勝つよ」
「ああ、やれるもんならやってみろ!」
真昼の砂場に、少年の声が強く響く。
「僕のターン、ドロー!」