モンスターハンターストーリーズ 紅玉の絆石   作:ルークス

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新話お待たせいたしました!遂にこの小説も記念すべき第十話目!
実は今週の金曜日から原作のメインシリーズ新作「モンスターハンターワイルズ」が発売されました。
プレイすればこの小説ももっと楽しめるかも?

それともう一つ。
設定集の回についてお問い合わせした所、自分の勘違いだったようで『設定のみの作品を投稿するのは違反』で、『一つの回として設定集を投稿するのは問題無い』と運営の方から教えてくれました。
なので、”今までの設定をまとめた回を作るか”を検討したいと思います。
第十一話と設定集共にしばらく続報をお待ちください。

少し長くなってしまいました。
それでは本編をお楽しみください!


第十話 レウス

【あらすじ】

 仲間になった山賊の少年”タイガ”の証言から、レウスを攫った謎のライダー達の拠点を突き止めたリオ達。

 リオ達とタイガに加え被害を受けているニウェス村のライダー達からも協力を得て、ついに前哨基地への攻撃を開始。

 

 ニウェス村のライダーが敵を門側へ引き寄せている内にリオとナビルーは後ろ側から基地へ侵入したが、勘の鋭いサファンとギエナに見つかってしまう。

 空を飛ぶサファン達をナビルーの雷で撃墜し、アンジャナフが拘束に成功。

 そして、ナビルーはリオに”二人で抑えている内にレウス救出へ行く”よう提案した。

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【挿絵表示】

 

第十話 レウス

「くっ……!」

 相手は時に一つの広大な狩猟地を支配する大型飛竜。

 ライドした状態でも苦戦していた相手に、今度はナビルーとアンジャナフのみで戦わせなければいけない。

 レウスを救う絶好の機会である事は分かっているが、リオはナビルー達が心配で脚が動かせなかった。

「オレ達の心配はいらないゾ! リオはレウスを助ける事に集中するんだ!!」

「……あぁ、分かった! 頼んだぞ!!」

 しかし、今は判断する時間すら惜しい状況。

 ナビルー達の覚悟を受け取ったリオは基地へ全力で走り出す。

 

「グァオン!!」

 力を振り絞ったギエナが蹴りでアンジャナフを突き放し、即座に体勢を整える。

 気づけばギエナに乗っているサファンの麻痺も完治していた。

「リオを逃した…貴方達、やってくれたわね……!」

 動けるようになったサファンが静かながらも鋭い殺気を放ち、格下の蛮鄂竜にマウントを取られ屈辱と感じたギエナも同様に殺気を放つ。

「ゲェ!? もう動けるのか!?」

 全力の放電を放ったつもりだったが僅かなダメージしか入らず、拘束も一瞬で終わってしまった。

「ギエナ!! 今すぐにリオを追いなさい!!」

「ギェェ!!」

 叫ぶサファンに答えたギエナが大きな翼を羽ばたかせる。

「アッ、ヤバい!!」

 ここでまた離陸されてしまえば攻撃が届かない高度を飛ばれ、リオにすぐ追いついてしまうだろう。

 しかし、撃墜手段であるナビルーの電力は既に底を着いていた。

 

「グアア!!」

「ギェェ!?」

 羽ばたいた隙を狙ったアンジャナフが『行かせまい』とばかりに、ギエナの尻尾に喰らい付く。

「放しなさい!! 私のギエナに、穢らしい口で噛みつくんじゃないわよぉ!!」

 サファンが金切り声をあげながら、レイギエナの素材で出来た弓”ファーンライク”の弦を引く。

「グゥ……グォアア!!」

 射撃の予兆に気づいたアンジャナフは強引に空から引きずり下ろし、何度も地面に叩きつける。

「ギェエン……!!」

「嫌ぁ!?」

「ナイスだゾ、アンジャナフ!! そのまま時間を稼ぐんだ!!」

 

「この……この……!!」

 サファンの額から汗が止まらない。

 彼女は確保したレウスが、リオに奪い返される事をとても恐れていた。

 もし再会した主人のライダーとオトモンがライドを果たしたら、”そのまま逃走”されるか”手痛い反撃”のどちらかが……。

 

 しかしアンジャナフが全力でギエナの尻尾を引っ張り、飛行からの追跡を許さない。

 アンジャナフも仲間を救出する為に必死だ。

 

 ドォン!!

 

「ゥギェェ……」

「きやぁ!!」

 振りかぶって地面に強く叩きつけた後、後脚でサファン諸共踏みつけ拘束する。

「くっ、うっ! (檻を移動させたのはいいけど、このままじゃ”檻がある隠し場所”が見つかるのも時間の問題だわ……!)」

 

    ◇

 

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【謎の前哨基地 内部】

 裏口から前哨基地に入ったリオ。

 中は暗い色の木製でそこかしこに刃物や弾丸の弾が置かれており、不穏な雰囲気が漂う。

「裏口から入れたのはいいけど、どこにレウスはいるんだ……」

 意外に規模は小さく一階の部屋は調べきったが、レウスは影も形もない。

 二階もオトモンを隠せるスペースは見当たらず、またもや行き詰まってしまう。

「もう一回、真ん中の部屋を調べるか!」

 

 真ん中の一番大きな部屋には、大きなテーブルとその上に世界地図が広げられている。

 おそらくここは作戦を考える会議室だったのだろう。

「どこにいるんだ……それとも、もうレウスは……」

 “レウスは他の場所へ連れ去られた”か、それか”謎のライダーの手によって……”。

 一瞬だけ最悪の展開が、リオの頭の中で過ぎる。

 

 グオァァ……!

 

「っ!? レウス!?」

 その時、レウスの声が部屋に響いたような気がした。

 しかし、辺りを見回しても姿は見えない。

 

 グオアァァ……!

 

「違う、やっぱり気のせいじゃない!! レウス、どこにいるんだ!!」

 

 グアアォォォ……!!

 

「えっ? まさか!?」

 リオがその場で伏せて床に耳を近づける。

 すると、スモス村で何度も聞いたあの鳴き声が床の下から何度も聞こえてきたのだ。

 よくみたら床には”何かを引きずったような跡”がテーブルの下へ伸びている。

「ここなのか! くっ、うっ!」

 急いでテーブルを退かし絨毯を捲ると、大きなハッチが現れる。

 

 ギィィ……。

 

 こじ開けた中には、なんと地下へ続くスロープが。やはりあの声はこの奥から響いている。

 絨毯の掛け方が雑だった所をみるに、こちらの侵攻がわかった時、急いで檻に閉じ込めたレウスを隠したのだろう。

 

    ◇

 

【謎の前哨基地 地下】

「レウス……今、行くからな!!」

 暗いスロープの中を下ると、ついに大きな扉が見えてくる。

 

 ゴォォォン……!

「レウスーー!!」

 

 力を込めて重々しい扉を開く。

 その先に待っていた者は、かけがえのないあの赤色の飛竜。

 ようやく見えた相棒の姿にリオの目頭が熱く——。

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「あれぇ!?」

「グアア♪」

 

 

 リオの目に飛び込んできたのは主人の姿を見て”とてもご機嫌なレウス”と、”予想していなかった光景”だった。

 広い部屋の中は念入りに清掃されたのかフンが見当たらず、周りには餌と思われる生肉。

 床は転んで怪我をしないようにポポの毛皮が敷かれ、葉で作られた寝床まで作られていた。

 

 これが他人のオトモンを強引に奪うようなあの悪党が作った部屋である。

 てっきり鎖で縛られたり拷問されたり、最悪命に関わる仕打ちを受けていたと思っていたリオは面食らったのである。

 そして、”それ以上に驚くべき点”がリオの目に飛び込んできた。

 

「グアアァァ!!」

「えぇ〜〜!? デカくなっている!? お前、本当にレウスか!?」

 過去のレウスは全長が三メートル、全高が一・ニメートルぐらい。

 小型モンスターの中で大柄なアプトノスや大型モンスターより体格の劣るドスランポス、それらの野生個体と同じくらいだった。

 そのレウスが他のオトモンの例に漏れず急成長し、一回りも二回りも大きく成長していたのである。

 一目見ただけでも大型飛竜であるサファンのギエナと同等。下手をすればそれ以上のサイズかもしれない。

 

 しかし、元気一杯な声に鮮やかな赤と濃い黒の美しい発色の甲殻、鋭い翼爪を持つ大きな翼。

 そして決定的な特徴としてスモス村で作られた紅と紺の鞍を付けており、リオがオトモンにしたあのレウスで間違いない。

 

 気になる情報が多いが、リオはまずはレウスの安否を確認した。

「レウス、大丈夫か!? あいつらに何かされていないか!?」

「グアア!」

 かつて傷つけられて強引に攫われたレウスだが、その後に治療を受けたようで傷は完治している。

 翼を軽く羽ばたかせ、前と変わらず元気な声をあげた。

「変だなぁ?? まぁ、無事ならなんでもいいや。レウス、このまま俺と一緒に逃げようぜ! ナビルー達にも知らせないと!」

 目的のレウスを奪還できた以上、ここに長居する理由はない。

 戦っている仲間に奪還できた事を知らせ、このまま逃げる予定だ。

「グアア!」

 レウスもリオと共に帰りたがっている。

 

 しかし、少しスロープをあがってすぐにリオが立ち止まる。

「……いや、待てよ。別にお前は怪我している訳じゃないよな?」

「グルル?」

「それどころか大きく成長している…………よし! レウス、”予定変更”だ!」

「グルゥ……?」

 

    ◇

 

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【謎の前哨基地 門側】

「ジャナフ、ぶっ飛ばせ!」

「うわぁぁぁ!!」

 門側ではアングを乗せたジャナフが、ニウェス村のライダー達とタイガに対し猛威を振るう。

 初めこそ二ウェス村側がドスジャクラスのライダー達に優勢だったのだが、アングがサスをダウンさせた後に他のライダーまで襲い出したのだ。

 

 タイガの屈強な体力も猛攻に晒される度にすり減り、身体中から赤い血が滲んでいる。

「はぁ、はぁ……。やべぇ、あのピンク野郎が暴れるだけで、一気に分が悪くなりやがった……!」

 ポポとドスファンゴとドスギアノスのライダー達は立つ事もままならず戦闘不能。

 サスとウルクに至っては最初の攻撃だけで完全に気を失ってしまった。

 

「ギャギャギャギャオ!!」

 リオのドスランポスが傷だらけになりながらも、アングのジャナフに向かって走る。

「ジャナフ、バーニングファングだ!」

「グォォ!」

 ジャナフの炎揺らめく高熱の牙でドスランポスを噛み砕こうとするが、ドスランポスは自慢のスピードで後ろへ回り込む。

「ギャア!!」

 ドスランポスが大地を蹴ってジャナフに飛びつくが、有効打にならない。

「あぁ、ちょこまかとうぜぇなぁ!! 振り落とせ!!」

 ジャナフの太い尻尾が力強くしなり、張り付いていたドスランポスを地面に叩きつける。

「ギャァァァオ!」

 強靭なタフネスと容赦ない暴力の数々。

 何度も激戦を突破したドスランポスの攻撃も効かず、逆に一回の反撃でダウンしてしまった。

「チビが手こずらせやがってよぉ! ジャナフ、さっさとトドメを刺せ!」

 指示を聞いたジャナフが涎を垂らしながら大顎を開き、ドスランポスににじり寄る。

 

「おいピンク野郎ぉ!! 待ちやがれ!!」

「あぁん?」

「グル?」

 アングが怒号が聞こえた方向を見ると、骨塊を構えたタイガが猛烈な突撃でアング達に迫る。

「うおおぉぉ!!」

 

 ガァァン!!

 

 渾身の溜め攻撃がジャナフの頭に直撃。

「グアアォン!!」

「ぐわぁ!?」

 硬い骨のハンマーから繰り出される打撃にジャナフの意識が飛ばされ、朦朧とした彼はたまらず転倒。

「おい、何やってんだジャナフ!? 早く立て!! くそがぁ!!」

 鞍に乗っていたアングも体勢を崩し怒声をあげる。

 気絶したジャナフはがむしゃらに脚を動かすが、打撃のダメージが響いたのか上手く立ち上がれない。

「まだまだぁ!」

 『絶好のチャンスを逃さまい』とタイガが骨塊を構えて再び力を溜めるが……。

「ん?」

 背後の影に気付いたタイガが攻撃を中断し回避。

 後ろから攻撃してきた大きな影が立ちはだかった。

「はっ! 追撃なんてさせるかよぉ?」

「グワワワワァ!」

 負った傷が癒えたドスジャクラスとライダー四組があっという間にタイガを囲む。

「く、くそったれ! あとちょっとだったのによぉ!!」

 

「がはは、命運が尽きたなぁ??」

「っ! おいまじかよ……!?」

 ドスジャクラスの後ろで、桃色の巨体がゆっくりと起き上がる。

 タイガが部下のライダー達に包囲されている内に、アング達が体勢を立て直したのである。

 青筋を浮かばせ顔面を真っ赤に染めたアングと、鼻骨を展開し高熱の鼻息を吹くジャナフ。

「うぅ、畜生めぇ……!! (あのピンク野郎が完全にキレやがった……!)」

 蛮鄂竜と四体の賊竜がどんどん距離を詰めてくる。

「くそぉっ。今度こそ、終わりかもなぁ……!」

 

    ◇

 

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【謎の前哨基地 後方】

 ドン!

「グァァォン!」

 鋭い爪による強烈な蹴り。

 謎の前哨基地後方では、サファンとギエナがリオのアンジャナフの拘束から逃れていた。

「大丈夫か、アンジャナフ!?」

 

「きぃああぁぁぁ!! 私をこけにしといて……ただで帰れると思わないことねぇ……!」

 鬼の形相を見せるサファン。

 見下していた彼らの攻撃がよほど屈辱だったのか、今までの冷静さが消えている。

「二度と立てないよう、ねじ伏せてやる!! ギエナ、殺れ!!」

 怒りの感情に支配されたのか、もはやリオを追おうともしない。

 それどころかギエナに攻撃命令を言い放ってきたのだ。

「ギィエェェ!!」

 すかさず離陸したギエナがコールドブラストを発射。

「グアアオオ!!」

 見切れない速さの反撃でアンジャナフが転倒。

「リベンジアイスドリル!」

「ヒョアア!!」

 間髪入れずにギエナが氷の結晶を纏い、ドリルのように突撃。

 

 ドォォォン!!

 

「アンジャナフーー!!」

 戦闘力が皆無で電力もアイテムも尽きてしまったナビルーには、もうどうする事もできない。

 アンジャナフが一方的に蹂躙される光景を、ただ眺めるしかなかった。

 

「グォォ……」

 横たわったアンジャナフの胴に痛々しい風穴が空いており、そこからじわじわと凍傷が広がっていく。

「そんな……凍傷が治せる熱血サプリがもう無いのに……!」

 血が止まらない風穴にスタミナを奪う凍傷。このまま時間が経てば間違いなくアンジャナフは死んでしまう。

「せめて、回復薬で傷口を塞げば……ニャッ!!」

 重傷の彼からナビルーを遠ざける無慈悲な風。

 目の前には青い女性と飛竜が。

「はぁ……はぁ……! 今度は貴方の番よ。”醜いアイルー”!!」

 サファンとギエナの怒りはまだ収まらない。

 翼が花弁のように広がり、再び鋭い氷の結晶を纏い出した。

 

「うぅぅ……!」

 恐ろしい飛竜の姿が涙で見えなくなり、鋭い風の音だけが耳に響く。

 

    ◇

 

_

 

 

 ドオオオン!!!!

 

 

「……っ!? な、基地が!?」

 氷の結晶は飛んで来ず、爆音と共に風漂竜の風切り音も鳴り止んだ。

「ニャ……? 今の音は……まさか、”ブレス”!?」

 目を擦って音の方向を確認すると、なんと前哨基地の二階が跡形も無く消し飛んでいる。

 黒い煙が立ち込める中、一つの赤い巨影が飛び出した。

 

    ◇

 

【謎の前哨基地 門前】

「アングさぁん!? あれは一体!?」

「はぁぁぁ!? な、なんで急に基地が吹っ飛んでんだよ!!??」

 タイガに総攻撃を仕掛けようとしたアング達だが、突然後方で発生した爆発に度肝を抜かれる。

「けほっ……いよぉーし、とりあえず”目的は達成”できたな」

 “村の侵攻を牽制していたら基地が爆散”。

 訳もわからずアング達はただただ狼狽えていた。

「てめぇ!! いってぇ、何仕掛けやがったんだぁ!!」

 アングがタイガを指差し怒号をあげるが、その右腕は小刻みに震えている。

 一目でその指差しと怒号が、恐怖を紛らわす為の強がりと察せる。

「あれが”リオレウスの炎”かぁ。とんでもねぇ火力だな」

「は……? 『リオレウスの……炎』?? ま、まさか、今の爆発はぁ!!??」

 

「グオオオォォ!!」

 

 大きな咆哮が戦地に響くと同時に、とてつもない速さで赤い飛竜が基地の門側へ飛来。

 勿論飛竜の正体はレウスとそれにライドしたリオのタッグ。

 鋭い四つの目がアングとジャナフに刺さり、彼らの顔から滝のように汗が流れる。

「確か『アング』と『ジャナフ』って名前だったか? 前はよくもやってくれたな!!」

「グアアァァ!!」

 

「うううぅ!!??」

「グオゥ!!??」

 王の威圧的な咆哮に、アングは耳を塞ぎジャナフも大きく怯む。

 レウスの暴走でライドできなかった以前とは違い、今回は優秀なライダーのリオと大型飛竜のレウスがライドで力を合わせている。

 生態系の中層に位置する蛮鄂竜と生態系の頂点に位置する火竜とでは、完全にリオ達の方が上だった。

「ま、待てよ!? 俺は頼まれてやっただけなんだ!! 俺は悪く——」

 

 ドォン!!

 

「「ぐあぁぁ!!」」

 問答無用でレウスの毒キックが飛び、ジャナフの巨体があっさりと倒れ……。

 

 ボオオオォォ!!

 

「「ぐわああぁぁ!!!!」」

 倒れたアング達が高熱の火炎放射で焼き払われ、赤い一閃が当たりを照らす。

「ぐふぁ……!」

 あれだけ屈強だったアング達が、圧倒的な攻撃の数々に抵抗すらままならない。

「掴め、レウス!」

「はぁっ!?」

 リオ達はまだ攻撃を止めない。

 鋭い脚爪を食い込ませジャナフの身体を完全に拘束。

 

 バサァ、バサァ、バサァッ!!

「う、うわわああ!?」

 

 なんと下手な大型飛竜をも超える体格のジャナフを、脚で掴んだまま飛翔。

 あっという間にアング達は空高くへ連れてかれた。

「村を襲った罰だ! 落ちろ!!」

 リオの指示と共にレウスが、ジャナフを地面に向かって豪快に投げる。

「うわああぁぁ!!??」

「グゥアアァァォン!!??」

 

 ドオオォォン!!!!

 

 投げられた桃色の巨体が凄いスピードで落下。

 飛べる翼を持っていないジャナフは当然何もできず、全身を地面に打ち付けた。

 

「ぎゃあーー!? アングさーーん!?」

「うわぁ!? あんな高ぇ所から落とされたのはやべぇぜ!?」

 辺りの地面に大きな震動が広がり、敵達の体勢が崩れて片膝をつく。

「うおわぁ!? リ、リオぉ??」

 リオとレウスから繰り出される怒りのコンボに、タイガも痛みを忘れてただただ圧倒されていた。

 

「ぐふぁぁ…………」

「グゥオォォォン…………」

 

 流石のアング達もこのコンボに耐えきれず、完全に力尽きる。

「や、やばすぎるぜ!」

「もう駄目だぁ!? 逃げろぉ〜〜!!」

「グワァォン!?」

 敵達の戦意も消えたようで、各々パニックになっているドスジャグラスに逃走の指示を出す。

「あ、くそ! あの黄色い奴ら逃げやがった!!」

 タイガが強引に脚を動かし、咄嗟に敵を追おうとするが……。

 

 ズキッ!

 

「ぐぅあ!!」

 足の激痛が、敵から受けたダメージの大きさを物語っている。

 他の味方と同じく立ち続ける事も厳しい。

「タイガ、無理をするな!」

「くそぉ……っていうかリオ、話がちげぇじゃねぇか! 確か『レウスを助けたらすぐ逃げる』って話だったろうがよ!?」

「ごめん、予定が変わった。レウスが万全の状態だから、このままレイギエナのライダー達を倒す!!」

 

 バサァ!!

 

 今度はナビルー達を助ける為、飛翔したリオ達は前哨基地の後方へ飛び立った。

「あぁ!? おぉい待てよ!! まじであいつらをぶっ倒す気か!?」

 幾ら頭回らないタイガでも、大型飛竜のレイギエナの相手にするのはとても危険と分かる。

 しかし、闘志を燃やすリオ達に引き止めようとする声は届かない。

 脚を怪我して後に続く事も出来ないタイガは呆然としていた……。

 

「あっ、やべぇ忘れてた! あいつらは大丈夫か!!」

「タイガくん〜……とりあえずわたし達は無事だよ〜……」

「ブ、ブゥゥン……」

「ギュォォ……」

 一瞬だけ重傷を負った味方を心配したが、サス達がよろめきながらもこちらに歩いてきている。

 どうやらリオのドスランポスも怪我こそ負ったが、大事には至らなかったようだ。

「ああ。良かったぜ!!」

 ニウェス村のライダー達は回復薬を持ち込んでいたようで、ビンを傾けて緑の液体を飲み干している。

「ちょっと待って。今タイガ君の分を渡すよ〜」

 

    ◇

 

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【謎の前哨基地 後方】

「門側でも爆発が……まさか、あの子らがやられたの!?」

 二階が爆破された後、門側から爆音と部下の悲鳴が聞こえてくる。

 

「サファン、ギエナ!!」

「グアァァ!!」

 空から雄々しくも鋭い怒鳴り声が響く。

「っ!?」

 息を荒くしていたサファン達の前に、リオとレウスが飛来。

「リオォ!! レウスを助けられたのだな!!」

 さっきまで絶望の涙を流していたナビルーの目から歓喜の涙が滲み出ている。

「ナビルー、お前は無事か!」

「あぁ! でも……アンジャナフが!」

「っ!!」

 サファン達の後ろに息も絶え絶えのアンジャナフが倒れている。

 

「サファン!! お前がやったのか!!」

「ふ、うふふふ……こんな下等なオトモン、口ほどにもなかったわ……!」

 恐れていたタッグが眼前にいるが、プライドの高い彼女は強気の姿勢を崩さない。

 しかし、彼女の嘲笑はリオとレウスの逆鱗に触れてしまう。

「お前らは絶対に許さないぞ!! レウス、全力で蹴り飛ばせ!!」

 リオの指示でレウスはサファンの元へ急降下しながら力を込めたキックをかます。

 

 ドォォン!!

「きぃぁぁ!?」

「キィェェェン!?」

 

 サファン達が後ろへ吹き飛び、アンジャナフへ接近ができるように。

「ナビルーはアンジャナフを治療してくれ。俺はあいつらを倒す!!」

「エッ!? 『このまま逃げる』って話じゃなかったのか!?」

 

「レウスが万全の状態で、敵の部下達もいない今がチャンスだ! ここで逃したら、また悪さをするに違いない!」

 誘拐に対する怒りと人を襲った蛮行に対する正義感がリオの闘志を燃やし、それに意気投合したレウスも同じく闘志を滾らす。

「相手は生態系の頂点を務めることもある大型飛竜なんだゾ!? 大丈夫なのか!?」

「任せろ。絶対に勝つ!!」

 

    ◇

 

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 一直線に飛行したリオ達は、ついに追い詰められたサファンとギエナの青い姿を捉える。

「はぁ……はぁ……。その恩知らず火竜は”レウス”というのね。誰が貴方をここまで育てたと思っているのかしらねぇ……」

「ふざけるな! 元々俺のオトモンだったし、レウス自身もそれを認めてくれていたんだぞ! 俺とレウスの絆は誰にも引き裂けれない!!」

 

「ふふふ、堅い”絆”を結んでいるのね。想う力が貴方をここまで導き、レウスも私達よりも貴方を選んだと……」

 劣勢にも関わらずサファンは不気味に笑っている。

「あぁ、忌々しいわ。絆というものは、いつも私達の邪魔をする……」

 鬼のような歪んだ表情こそ鳴りを潜めていたが、依然として眼光は鋭い。

「そっちがその気なら、本気を出してみようかしら。そして……」

 

 

「貴方達を滅ぼし、私達が”絆の力を以てしても超えれない壁”という事を照明してあげる!! “絆がどれだけくだらないものか”を身を持って知りなさい!!」

 

 

「グオオアア!!」

「ギエェェン!!」

 炎を吹き出し牙を向ける火竜と、氷を胸に纏い冷たい眼を向ける風漂竜。

「行くぞ、レウス!!」

「ねじ伏せてあげなさい、ギエナ!!」

 

 ドォン!!

 

 敵意と興奮で力を解放した両者が猛スピードで飛行し接近。

 剣の鍔迫り合いのように黒い爪がぶつかり合う。

 

    ◇

 

「ニャッ、なんて一撃だ……! 重みも速度もとてつもないゼ!」

 アンジャナフに回復薬を飲ませ終わったナビルーが、遠目でも伝わる攻撃の激しさに驚愕した。

 

「「お〜い、ナビルー!!」」

「ニャ?」

 基地の門の方向からタイガとサス達が走ってきた。

「オー、みんな無事だったのか!!」

「リオはレイギエナに乗った青女と戦ってんのか!!」

「す、凄く大きい飛竜と戦っているけど〜……?」

 大型の飛竜の迫力にサスが圧倒される、

 過酷な環境に住むライダーでもあそこまで大きい飛竜はなかなか見れないのか、目を見開いて驚いていた。

 

「アイツは風漂竜”レイギエナ”。花弁のような翼膜で風に乗り、身体から放った氷の結晶や脚爪で獲物を狩る大型飛竜だ! 台地地帯では生態系の頂点に立つする事もある!」

 “生態系の頂点”の言葉を聞いた瞬間、サスの身の毛がよだつ。

 一つの地帯に住むモンスターは大まかに分けて上層、中層、下層に分類され、上層の中でも最も影響力が大きいモンスターは『頂点』と呼ばれ畏怖の対象となる。

「リ、リオ君は本当に大丈夫なの!? わたし達も回復したし加勢した方が〜……!」

「そうだぜ!! 幾らレイギエナだろうと数で押しゃあいけるだろ!!」

 

「リオレウスにもレイギエナにも言えるけど、頂点を務められるモンスターは強さのレベルがまるで違うんだ……。オレ達は足を引っ張らないよう、ここで見守るしかない……!」

 森林の頂点として知られるリオレウスと、台地の頂点として知られるレイギエナ。

 この二体の争いは、もはやリオレイアやアンジャナフすらも比較にならないハイレベルの争いが予想される。

「そ、そんなぁ!」

「くそったれがぁっ!! 力が足りてねぇ自分が憎いぜ……!!」

 リオに対する心配と加勢できない悔しさで、三人は歯を食いしばっていた。

 

    ◇

 

「リベンジアイスドリル!」

 ギエナが冷気を纏いながら錐揉み回転突撃をするが、レウスの巧みな飛行でいとも容易く回避。

「レウス、毒キック!」

 一瞬の隙を見逃さずリオが反撃の指示をし、レウスが黒光りの爪で引っ掻く。

 

 ザァン!!

 

「ギエェ……!」

「ギ、ギエナ!!」

 ギエナの身体に付いた三本の切り傷から、紫色の液体が滲み出ている。

 リオス科が持つ出血性の毒だ。

「な、なんてこと……!!」

 悲痛な叫びをあげたギエナが滞空を維持できず、地面に叩きつけられる。

 

「(ん、なんで飛行をやめたんだ……?)」

 突然、ギエナが弱々しく膝をついたと同時に口から毒液を吐き出した。

 その様子からすぐにリオはレイギエナの弱点に気づく。

「(分かったぞ。あいつは毒に弱く、侵されている間は飛べないのか!)」

 素早い飛行で苦しめてきたギエナが飛べない今、攻撃をしない手はない。

「チャンスだ! レウス、豪火球!!」

「グアァ!!」

 レウスの口から大きな火球が放たれ、煌めく赤い光球がサファン達に突っ込んでいく。

 

 ドォォォン!!

 

「ぎぃやあぁぁ!!」

 飛べなくなった二人が豪速の火球を避けれるはずもなく、着弾と共に広がった爆炎が青い身体を真っ赤に染めていった。

「どうだ!!」

 あっという間に黒煙が着弾地点を包み込む……と思いきや、今度はその黒煙を白い冷風が切り裂く。

「まだよ! ギエナ、お返ししてやりなさい!!」

「ギエェェ!」

 陸にいるギエナの胸から生成されて氷の結晶が刃となり拡散。

 無数の氷の刃が閃きながら、恐ろしい速さで向かってくる。

「レウス、溶かせ!」

「グアァッ!!」

 見切ったレウスが反射的に炎ブレスを撃ち、氷の矢はレウスに直撃する寸前で霧となる。

 

 しかし、冷えた向かい風と共に一本の鋭い弓の矢が霧の中から飛び込んできた。

「なっ!?」

_

 

 ザクゥッ!!

「グオァァ!!」

 

 気づいた時にはレウスの右肩に一本の矢が深々と突き刺さっており、傷の周りが凍結で蝕われていく。

 霧が消えた先でサファンがファーンライクを左手に持ち、右手で次の矢を取り出している。

 ギエナを侵していた毒も自然回復してしまった。

「(パワーではあちらが上で、属性も毒が使えるあちらが有利。普通に戦っていたら勝ち目はない!)」

 このままでは不利だと感じたサファンが攻め手を変え、背中に背負っていた武器を使用。

 レイギエナの弓”ファーンライク”は、素材元と同じく氷を纏わせた矢を射る事が可能だ。

 

「大丈夫か、レウス!!」

「グオォ……!」

 主を心配させないようにレウスが吠えるが、少なくとも『大丈夫』ではない。

 アンジャナフの外皮よりも遥かに頑丈な火竜の甲殻すら、サファンが射った強力な矢を完全に防ぐ事ができない。

 更に極寒の環境が氷属性の矢に味方をしたようで、火竜の甲殻を氷がじわじわと包んでいく。

 このまま戦いが長引けば、敗北もありえるだろう。

「レウス、豪火球だ!!」

「グォォォン……」

 早く勝負をつけようと火力の高い豪火球を放つが、レウスの口から炎が出てこない。

 凍傷によって発生した氷がレウスのスタミナを奪い、ブレスが封じられてしまったようだ。

 

「ギエナ、上昇!」

 そして、一瞬で敵が高く上昇したと同時に、無数のトゲつぶてがリオ達に降り注ぐ。

「うわっ……なんだ!?」

 上からサファンが力を溜めて矢を射っている。

 その矢は空中で炸裂し、内蔵していたつぶてをばら撒く。

 

    ◇

 

 特殊な矢の攻撃に、遠くのタイガが戦慄。

「なんだありゃあ!? おかしな矢を使いやがって!!」

「ぐぬぬ……“曲射”か! 本来は放物線を描いて射つ矢なのに……!」

 特殊な矢の登場に知識が豊富なナビルーも思わず唸っている。

「そっかぁ。放物線を描くと着弾に時間がかかるけど、高い所から直接狙って命中率を重視しているんだねぇ〜」

「曲射をあんな有効に使えるヤツは初めて見た。アイツ、弓の扱いと牽制がかなりウマいゾ……!」

 

    ◇

 

「リベンジアイスドリル!!」

 ドォン!

「うわぁぁ!!」

 無数のつぶてで一瞬怯んだリオ達にギエナのリベンジアイスドリルが飛んでくる。

「グゥゥ……」

 そうしている間にもレウスの凍傷は更に悪化し、右の半身が氷に覆われてしまった。

「まずいっ、凍傷が酷くなっていく!」

「これで終わりじゃないわ。はぁぁっ!!」

 続けてサファンが数本の矢を連射。

「くっ!」

 力を振り絞ったレウスが翼を羽ばたかせ全ての矢を回避。

 回避後の隙を突いた風に乗ったサファン達は、即座に強力な一矢を射る。

「この”剛射”で、地に堕ちなさい!!」

 

 バヒュンッ!!

 

「うっ! 見切れ、レウス!!」

「グ……グォォ!!」

 全力で放たれた矢がレウスの翼に目掛けて飛んでくる。

 

 パキィンッ!!

 

 サファンの耳に聞こえたのは、肉が貫かれる音ではなく何かが割れる音。

 『今のスタミナでは回避しきれない』と判断したレウスは少しずれて飛行し、敢えて矢を頭に命中させた。

 強力な剛射がレウスを蝕んでいた頭の氷を壊してくれたのだ。

「いい判断だ、レウス! 頭の氷さえ無くなれば、ブレスが使える!」

「ふん、やるじゃないの……」

 

    ◇

 

「威力も速度も優れた”剛射”まで使ってきた……! アイツ、牽制や連撃で隙を作らせ、矢で撃ち抜くつもりだゾ!!」

 

    ◇

 

「前も言ったわよね? 諦めなさい。どれだけ抵抗しても勝てない。早くレウスを渡して楽になった方がいいわよ」

「まだ諦めないぞ……! 皆の為にも、俺はお前に勝つ!!」

「グオオ!!」

 再び警告されたにも関わらず、リオ達は屈しようとはしない。

 二人の眼の中には未だに燃える闘志が揺らめいていた……。

 

「もういい、手荒な方法で行くわ。翼を完全に貫いて、”二度と”飛べなくしてあげる……」

 今までのサファンとギエナの連携が二人の繋がりを深め、左腕の黒い絆石が赤黒く光り輝く。

「まさか、絆技か!!」

 

「貴方は”狩られる側”。どんなに抗おうと無駄なのよ!!」

「ギエエ!!」

 猛スピードで飛行したサファンとギエナがリオ達を囲うように旋回し、凍てつく氷を放つ。

「っうあ!?」

「グォウ!!」

 囲んできた氷がリオ達を拘束し、それと同時にサファン達は錐揉み回転しながら空高くへ舞う。

 急浮上したサファンとギエナが優雅に腕を広げると同時に無数の氷柱が生成された。

「まずいぞ! レウス、豪火球だ!!」

 

「華麗なる氷よ、奴を狩りなさい! “アイシクルイリュージョン”!!」

 激情を魅せるサファンの号令と共に氷柱の群勢が、身動きの取れないリオ達に降り注ぐ。

 

 

 ガガガガガァァァン!!!!

 

 

 何度も轟音が響くと同時に、鋭い氷の結晶が辺りに広がっていく。

 遠くから見ていたナビルー達にも、その音と凍気が伝わってくる。

「リオォォォォォ!? レウスゥゥゥゥゥ!?」

 あまりの音にナビルーが叫ぶが、轟音が鳴り響く戦地には届かない。

 しばらくすると真っ白い冷気が戦地を包み込み、不気味な静寂が訪れる。

 

 空高くから風評竜が舞い降り、乗っている主は狂った高笑いをあげた。

「あぁぁぁっはあっはあっはあっ!! これでもう動けないでしょうねぇ?? ギエナ、このままレウスを捕らえるわよ!!」

「ギェェ!!」

 

    ◇

 

_

 

 ボオオオゥゥ!!!!

 

 サファンが勝利を確信した時、眩い炎が白い冷気を全て吹き飛ばし、あっという間に辺り一帯が熱気に塗り替えられていく。

「ギエェ!?」

「っ!? な、何!?」

 

 炎の中からリオと雄々しく翼を広げるレウスが姿を現した。

 レウスの口から太陽のような輝きと豪火が留まらずに溢れ出ている。

 あまりの高温なのか、蝕んでいた右半身の氷もみるみる内に溶けていく。

「嘘……でしょ……?? 今の絆技は、私達にとって最強の攻撃だったのよ……!! な、なんで、”軽傷”で済んでいるのよぉ!!??」

 

    ◇

 

 ライダー最強の攻撃である”絆技”。

 本来は戦局を大きく変えるはずの絆技をほぼ防ぎ切ったリオ達にサファンとギエナ、見ていた三人も驚愕した。

「まじかよ!? あの沢山の氷を”ブレスの熱気”で溶かせたのかよ!!??」

「オーッ、やるな! ギエナの氷は鋭いけど、細かくて威力には乏しい。それをレウスの高火力・広範囲で押し返すつもりだゼ!!」

「なるほどねぇ〜。”量より質”でかぁ。力技な気もするけど、効果あるようだね〜」

 

    ◇

 

「油断したな! いっけぇぇぇ!!」

「グアァ!!」

 ただでさえ威力に優れた豪火球が高出力で放たれ、とてつもない速さでサファン達に飛んでいく。

「ギエナ、早く避けて!!」

「ギィ……ギェェ……」

 しかし、もうギエナに攻撃を避ける力は残されていない。

「な、何やっているの!? 早く——」

 

 ドォォォン!!

「きぃやああ!!」

「キィェェェン……」

 

 サファンとスタミナがほぼ尽きたギエナの身体が、大炎上しながら地面に落ちる。

 風漂竜の最大の弱点である毒と高威力の豪火球で体力を減らされた上に、長時間飛行している。

 筋力のみで三日休まず飛べると言われるリオレウスと風を利用して飛ぶレイギエナでは、スタミナに差があった。

 

 一瞬の意思疎通で絆技を防いだリオとレウスの絆が最大まで極まり、今度はリオの絆石が青白く光輝く。

「いくぞ、レウス!!」

「グアァァ!!」

 レウスが大きな翼を広げ、空気が張り詰める程の咆哮を上げる。

 とてつもない速さで飛行したリオ達が一気に急上昇。

「この一撃で勝つ! “スカイハイフォール”!!」

 

 

 ボオオオォォ!!!!

 

【挿絵表示】

 

 

 

 炎を纏いながら脚を突き出して急降下するリオ達。

「あ……あんなもの、防いでしまえば……ギエナ、は……やくしなさい……」

 大規模な絆技を避ける力は、もう二人には残されていない。

 彗星のように輝いた尾を引きながら、レウスは業火のキックをサファン達に食らわせた。

 

 

 

 ドオオオォォォン!!!!!

「ぎぃやあぁぁん……!!」

「ギィエエェェン……!!」

 

 

 

 天高くまで突き出す業火の巨柱が、周囲の雪を一瞬で蒸発させる程の高熱を放つ。

 

 ドォォン!!

 

 リオとレウスが着地した瞬間、吹き飛ばされたサファン達が強く地面に叩きつけられた。

 猛威を振るっていた二人のライドがようやく崩れ、戦闘不能となる。

 

「「「やったーー!!」」」

 歓喜の声をあげながら三人がリオ達の元へ駆け寄ってきた。

「流石、オレの相棒だゼィ!!」

「おめぇぇ、やるじゃねぇかぁ!! はっきり言って諦めてたぜぇ!!」

「ふ、二人共凄い怪我じゃん〜! 早く帰って薬を飲んだ方が〜!」

 

「みんな待てよ。あいつはまだ動けるみたいだ!」

「「「えっ?」」」

 

 フーッ……フーッ……!

 

 なんと渾身の絆技を受けたにも関わらず、サファンは力を振り絞って上体を起こす。

 スカイハイフォールに耐えきれず大きく損傷していたギエナ装備だが、ある程度ダメージを肩代わりしたおかげで力尽きずに済んだのだろう。

 

「ニャーーッ!?」

「おあぁっ、なんだよあの青女!? 細ぇ身体の癖にタフすぎんだろうがよっ!?」

 完全に余裕が無くなったサファンは、獣のような恐ろしい表情を浮かばせながら唸っている。

 

 その表情にも一切に引かずにリオは詰め寄って、目的を問う。

「もう逃げられないぞ。村を襲ってレウスを攫ったと思ったら、今度は世話をして。お前達は何がしたいんだ。目的を言え!」

「はぁっ、わざわざ敵に情報を……くっ、教える大馬鹿が……どこに、いると思っているのよ……!」

「リオ君〜、とにかくその人とレイギエナを縄で拘束しとこうよ。また暴れられたら大変だよ〜」

「ああ、そうだな」

 サスが持ち込んでいた長い縄を渡してくれた。

 

「くぅ、ううっ。もう私の運は……尽きたようね……」

「ギェェ……」

 悔しくて堪らないのか、ギエナの涙が止まらない。

 つられたサファンも黄色い眼が潤っていく。

 

_

 

 ビュオオオォォォ!!!!

 

「「「「「!?」」」」」

 突如現在のエリアに強風が入り乱れ、凍えるような吹雪を身体に打ち付けてくる。

「ニャッ!? な、なな、なんだコレはーーっ!?」

 上を見上げると先程まで一面白かった空が黒く染まっている。

 

    ◇

 

【二ウェス村 村長の家】

 

「村長ーー!? 大変ですーー!?」

 

 村長の家の扉が強く開けられ、青ざめた村人が飛び出してきた。

「うわぁ、驚かさないでよぉ。もぅ、どうしたんだぁい? リオちゃん達に何があったのかしらぁ?」

「ち、違うんです。窓を見てください! エムス山が……」

「『エムス山が?』 どれどれぇ……あらぁっ!? あれは何かしら……!?」

 二ウェス村の村長が窓から見たもの。

 それは……。

 

 

 

 巨大なエムス山を完全に包み込む”暴風の嵐”だった……。

 

 

 

 続く

_

●今回のおまけ

 

【挿絵表示】

 

サファン

年齢:二十三歳

性別:女

職業:謎のライダー(上級)

容姿:レイギエナの二つの突起を模した青と白色の髪型「ギエナシャギー」。鋭く黄色い目。うっすらと黒い口紅。

 

謎のライダーの一人。気高く冷酷な性格をしており、周囲の部下からは頼れる上司であると共にかなり恐れられている存在。

 

相手の攻撃を牽制した後に、鋭い攻撃をお見舞いする戦法が得意。

 

何者からの命令で、紅力のリオレイアがスモス村を襲った際に負傷していたレウスに横槍を入れて誘拐。

しかし、後を追ったリオ一行と二ウェス村のライダー達の反撃により奪還され、ライドを果たしたリオとレウスにギエナ共々敗北する。

 

◯武器

⚪︎ファーンライク(弓)

「大空を優雅に漂う風漂竜の弓。銀花の矢先に射貫かれ、辺りは白銀と化す。」

 

青い花弁のような風漂竜の翼膜が取り付けられた鉄の弓で、射る矢は氷属性を帯びる。

素材元が飛ばしてくる氷の刃のように、氷の矢を連射する刺突攻撃が得意。

サファンはこの弓で、刃向かってきた弱者も力を示す強者も等しく”二度と動けない氷像”へと変えていったらしい……。

 

◯防具

⚪︎ギエナ装備

「風漂竜の翼に覆われたかのようなレイギエナ装備。孤独な戦士かと思わせる風貌。」

 

攻撃を受け流す銀の鎧に、獲物を追う狩人のような俊敏さを得られる風漂竜の翼膜を使用した防具。

相手の攻撃を防ぎ素早く反撃をお見舞いする戦法を可能にし、空にも海にも似ている美しい青色。

性能面でも見た目の点でもサファンが一番気に入っている防具である。

 

◯オトモン

⚪︎ギエナ(レイギエナ)

昔からサファンと行動を共にしているらしい風漂竜”レイギエナ”。

冷酷なサファンと同じく気高く、自身が認めた者以外には冷たい。

しかし、どういう訳かサファンに対してはこの上なく信頼しているようだ。

 

安い肉を寄越す者はすぐ蹴り飛ばし、一度機嫌を損ねるとラフィノスの高級ネックをサファンから与えられるまで直らない我儘さ。

それでも大型竜も凍てつかせる力は強大で、主人とその部下からとても頼られている。

 

 

【挿絵表示】

 

レイギエナ

別名:風漂竜

種族:飛竜種

レア度:★6

属性・状態異常:氷属性、特技封じ

主な生息地:高山、雪山

 

『華麗なる大空のハンター』の異名を持つ大型の飛竜種。

猛禽類のような嘴と二つの突起を持つ頭、全身を包む黒と青と白のグラデーションをしている皮、翼には花を彷彿させる翼膜に脚には長い爪、横に大きく広がる膜を持つ細い尾と、流線型になった翼竜のような外見。

翼膜を使って風に乗る事で速い飛行が可能で、全身の分泌腺から細かい氷の刃を飛ばす他、嘴や爪で刺してくる。

 

台地地帯を支配するような実力者で基本的に単独でいる事が多いが、生態系の変化が起きた際に『群れをなして飛行し”渡り”を行った』との報告もある。

因みに台地の小型翼竜”ラフィノス”が好物で、大規模な群れも恐れず襲撃する。

 

この報告から高い戦闘力と仲間意識を持つので絆を結ぶオトモンとしては適切だが、タマゴの入手も相応の難易度を誇る。

翼膜はデリケートな上に風の強さで飛行が左右される欠点こそあるが、素早い飛行と優れた制空能力は並のオトモンよりも遠征に適している。

 

◯主な技

⚪︎コールドブラスト

横回転しながら離陸し、胸の分泌腺から氷の結晶を一体の敵に放ち、少し氷属性ダメージを与える。

 

⚪︎リベンジアイスドリル

氷の結晶を纏い飛行、ドリルのように回転しながら相手に突撃する。

反撃に向いている技で、自身の体力が少ないほど威力があがる。

たまに相手に凍傷を負わせ、スタミナを奪う寒さで特技を封じる。

 

⚪︎フリーズバースト

横回転しながら離陸し、胸の分泌腺から氷の結晶を拡散するように放ち、氷属性ダメージを与える。

複数の相手を一掃する事も可能。

たまに相手に凍傷を負わせ、スタミナを奪う寒さで特技を封じる。

 

◯絆技

⚪︎アイシクルイリュージョン

風に乗った素早い飛行をし、旋回しながら相手を氷の結晶で囲う。

優雅に錐揉み回転をしながら急上昇したレイギエナは、下方の動けない相手に氷の結晶を雨のように降らせ、大きな氷属性ダメージを与える。

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