【あらすじ】
攫われたレウスの助ける為に、二ウェス村の者達と謎のライダーの基地へ攻めるリオ達。
ナビルーとアンジャナフがサファンとギエナを拘束し、リオはその内に基地へ潜入。
ついに囚われていたレウスを解放したリオはライドオンを果たし、謎のライダー達に反撃を決行。
アング達は一方的に攻撃し圧倒。
サファン達は牽制からの反撃で張り合って来たが高火力のブレスで形勢逆転し、絆技のスカイハイフォールで見事撃破。
しかし勝利を喜ぶのも束の間、当然現れた巨大嵐がエムス山全体を襲う。
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第十一話 紅い咆哮
【エムス山 謎の前哨基地】
ビュオオオォォォ!!
竜巻が生み出す大きな風圧は、戦闘で満身創痍のリオ達の体勢を簡単に崩す。
周りが白い吹雪で覆われ、数メートル先にまで視界距離が狭まってしまった。
「まずい! レウス、踏ん張れ!」
「グォォ……!」
「ヤバい、サファンとギエナの姿が見えなくなったゾ!」
◇
雪で視界不良になったのはサファン達も同じだった。
凍てつく吹雪と強風がなんと氷の扱いに長けていたはずのサファンとギエナすらも蝕み、生命力を削っていく。
「なんて寒さなの……もう私達でも耐えれそうにないわ……」
「ギィェェ……」
少しでも吹雪から主人を守ろうとギエナが翼でサファンを覆おうとする。
が、ここで翼膜を開いて守ろうとすれば強風に煽られ飛ばされてしまうだろう。
「もう無理ね……諦めて運命を受け入れてましょう……」
力も残されていない上に実質翼膜も封じられた状態なので、ギエナは主人を守る事も飛ぶ事も出来ない。
完全に八方塞がりの状態となっていた。
「『貴方を守る』と誓ったのに……情けないこの主人を許して……ギエナ……」
「ギィェェ……」
絶望のあまり涙を流して続ける。
『せめて最期も共に』と寄り添い合う。
◇
その時、風圧が更に強まりリオ達もサファン達も足が地面から離れてしまう。
「ぎゃあぁぁ!!?」
「うわぁ〜ん!?」
徐々に薄れていくリオの視界には宙を舞うタイガとサス。
「グォァァ!!」
「ブゥァァン!?」
そして、人によりも遥かに大きいレウスやウルクまでもが風圧で吹き飛んでいく光景が映っていた。
「うわぁぁぁ!!」
「ニャーーッ!? もうダメだぁ、吹き飛ばされる〜〜!?」
十数秒ぐらい全力で踏ん張っていたリオとナビルーの足も地面から離れてしまった。
「(まずい……このままではサファン達を……逃がしちゃ……う……!)」
竜巻の風に襲われて宙を舞ったリオは十秒も経たずに気を失い、視界は真っ暗となってしまう。
_
◆
気付けばエムス山の雪崩に襲われた時と同様に暗い世界に来てしまった。
「(なんだこれ……あの時と同じ……)」
あの赤黒い光や蒼いリオレウスの影は見えない。
しかし、今度は少女の声がリオの頭に響き渡る。
「――ま、大丈夫ですか!?」
「(ん……誰の声だ……?)」
「きっと――まは、この天空の――」
「私は――になって――」
不思議とこの声を聞いたリオの心が温っていく。
聞き覚えの無い声のはずだが、少なくとも不穏なものではなかった。
「(誰なんだ……? もしかして……お前は……)」
◆
しばらくすると、心だけでなく凍えていた身体まで暖まっていく感覚が。
あの少女の声はもう聞こえず、代わりに聞こえてきたのは相棒の叫び声だった。
「ウワァァァ起きろリオォォォ!!!!」
「うわぁっ!?」
耳に飛んできた叫び声に驚いたリオが飛び起きる。
まず目に飛んできたのは形容し難い凄まじい顔のナビルー。
「エ、本当に起きた。もしかして生きている?」
次に飛び込んできた光景は暖炉で休むタイガとサスだった。
「だから言ったじゃねえか! 『リオは死んでねぇ』って!」
「ナビルーちゃん〜、幾ら何でも心配しすぎだよ〜」
「イ、イヤァ〜。今までピクリとも動かなかったからさぁ〜……」
どうやらリオは助けられてのか、今は村長の家で治療を受けていたようだ。
一気に目が覚めたリオが冷や汗を掻いて飛び上がった。
「あっ! そういえば、レウスは!? 他の皆は!? サファンは!?」
「大丈夫だゼ! オマエのオトモン達もニウェス村のライダー達も無事だゾ!!」
「……あぁぁ! 良かった!!」
安心させるようナビルーが笑顔で生存を語り、途端にリオの緊張が解れる。
しかし、反対にいきなりナビルーの顔が曇る。
「でも……嵐が消えて皆が気がついた時はサファン達は居なくなっていてな……。逃げられたか、あの嵐にヤられちゃったか……」
レウスの奪還こそできたが、結局謎ライダー達の正体と目的は分からずじまい。
「うん、そうか。まぁ皆が無事なら良いんだ!」
◇
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一方、その頃……。
【エムス山 謎のキャンプ】
「サファンの姉御! サファンの姉御ぉぉ!!」
リオが目覚めて同時期。
サファンもアングの大声で目を覚ます。
「ううっ……どういう事……。私は、生きているの……?」
未だに身体が凍えており、上にはポポの毛皮が敷かれている。
「ただ今、ホットドリンク持ってきますんでぇ!! おいてめぇら。早く調合しろやノロマがぁ!!」
「「は、はいぃ!!」」
横に目をやると、ボロボロな姿の部下達が調合書を見つつ唐辛子とにが虫をすり潰し液状にしている。
◇
治療を受けてホットドリンクの耐寒効果も得たサファンは、気を失っている間の出来事を部下に聞く。
サファンは嵐の後にエムス山の麓で倒れていたらしく、急遽設営されたキャンプに運ばれたらしい。
「……助かったわ。貴方達もたまには役に立つじゃないの」
「「「…………」」」
アングも他の部下も気まずそうに口を閉じている。
しばらくするとアングが頭を地面に付け、他の部下も遅れて土下座をした。
「「「す、すいやせん姉御!! 俺達が役立たずなせいで、例のリオレウスは逃げられてしまいましたぁ!!」」」
しかし、部下達の耳に以前のような怒鳴り声は響いて来ない。
「こ、このアングが今すぐ取り返しに行くんで!! もうしばらく待ってくだせぇ!!」
代わりに聞こえてきたのは力の無い声。
「馬鹿言わないで。消耗し切った今、攻めても返り討ちに合うだけ」
「で、でも。どうすれば!」
アングが頭を上げる。
顔は汗だらけで、完全に冷静さを失ったと分かる。
「ここで回復した後に撤退するに決まっているじゃない」
◇
「そう……プケプケに乗っていたあの子は結局帰って来なかったと……」
「残念ながら……。もしかしたら調査した先で誰かに……」
「っ、なんて事……」
誰から見ても、サファンの心が無念で一杯だと伝わる。
しかし食いしばって何かを堪えた後、ゆっくりと口を開った。
「……ギエナの方は?」
「あ、あぁ! なんでか分かりやせんが、こんな寒いってのに外に出てから動かなくて……」
「そう……っ、ちょっと見てくるわ」
激痛走る己の身体に鞭打った彼女が、震えながら身体を起こす。
完治していないにも関わらず、動いた彼女にアングも部下も大慌てだ。
「「「あぁぁ!? まだ安静にした方がぁ!?」」」
「お袈裟ねぇ。大丈夫よ!」
しかし、苛立った彼女の気迫に部下達はすぐに黙り込む。
部下の心配を他所に、彼女は外へ向かった。
◇
【エムス山 見晴らしの崖】
アングの言う通り、ギエナは見晴らしの良い崖に一体で佇んでいた。
「そこにいたのね。ギエナ」
「ギィェ」
悲しそうに座り込んでいたギエナだったが、主人に話しかけられると心配させないよう翼を羽ばたかせる。
そして、サファンは青く薄い翼膜に包まれ、ギエナは彼女にそっと寄り添った。
「うあぁぁぁん……!」
部下の前では強気だったサファンだが、相棒と二人きりになると、今まで溜め込んでいた感情が涙となり溢れ出す。
「何が『大馬鹿な貴方達』よ、サファン!! 自分のオトモンも碌に乗りこなせない。仕事も出来ない。そして、”部下も守れない”……。大馬鹿はどう考えても貴方の方よ!!」
自分の不甲斐なさと周りへ迷惑をかけた罪の意識に、彼女は号泣して自分を責め始めた。
「ライダーにとって絆が最大の力となる。常識なのに、”あんな目に”逢ったから認めたくなかった……」
「ギェェ……」
相棒は悲痛な叫びをあげる主人にも動じず、大きな翼でゆっくり抱きしめる。
頭を上げた主人の目には優しい笑みを浮かべる相棒の顔が映った。
「……ありがとう、ギエナ。いつも私の弱音を聞いてくれて」
「ギェェ!」
相棒の励ますような笑顔が彼女の心の傷を癒やてくれる。
「そうね。これからは誰にも負けないぐらいの絆を結ば直さなくてはね。”いなくなった部下”の為にも、今度こそ部下と協力してレウスを手に入れてみせるわ!」
「ギェェン!」
相棒に元気づけられてサファンは立ち直り、二人は再びリオ達に挑む覚悟を決めた。
「お〜い、サファンの姉御達! 料理できましたぜ! 風邪をひく前にこっちへ来てくだせぇ〜!!」
二人を心配したアングがサファンへ呼びかけてくれた。
「(……あの子達の為にも、上司の私がしっかりしないと!)」
「姉御〜。聞こえてますかい?」
「今、行くわ」
サファンがゆっくりとキャンプに戻ろうとしたその時。
「ぶわぁ〜ん……!」
「プゥケェ……」
「「「!!??」」」
突然、弱々しい泣き声が聞こえてくる。
声の主は行方不明となっていたプケプケと少女ライダーだった。
「うお!? てめぇら生きていたのか!?」
「貴方、今まで何処へ行っていたのよ!?」
「ぐすっ……。”おっきい化け物”に、追いかけて回されぺぇ……」
サファンは心配させた部下に一瞬怒鳴りそうになったが、ぐっと堪えて穏やかに声をかけてあげた。
「……まぁ、貴方に怪我が無いならいいわ。今回は撤退するわよ」
黒星を喫した謎のライダー達だが、奇跡的に構成員は全員生存。
再びサファン達は”リオとレウスへの挑戦”を決意した。
……。
「てか、お前。なんか濡れてね?」
何気ないアングの質問に少女ライダーが顔を赤らめ、更に泣いてしまう。
「うああぁぁ……! ぐすっ、替えの下着と防具ある? 化け物が来た時、そのっ、”出ちゃってぇぇぇ”……!」
余程遭遇した化け物が怖かったのか、少女ライダーの下半身が水浸しになってしまっている。
「げっ……」
やや情けない少女に、その主のせいで気まずそうなプケプケ、引き気味のアング。
一瞬だけ場の空気が凍てついた。
「…………最っ低。早くキャンプで着替えてきてくれる?」
皆と『絆を結び直す』。
先程そう誓ったはずのサファンとギエナだったが、情けない部下にまた冷ややかな目を向けてしまうのであった。
◇
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【二ウェス村 宴会場】
「ようやく来たかぁ。村のみんなぁ、”英雄リオ”の登場だよぉ」
「あはは、英雄ってそんな大袈裟な」
あの巨大嵐が姿を消し、オーロラが夜空に浮かぶ頃。
ニウェス村外れの一際大きな館では、村長主催の祝会が開かれていた。
一度は遠慮するるつもりだったのが、『お礼をさせてくれ』と聞かず、英気を養い明日に備える為にも言葉に甘えさせてもらう事に。
「グォウ、グォウ!」
「グアウ!」
「ギャァ!」
「ブゥゥン」
リオとナビルーだけでなく、レウスを初めとしたリオのオトモン達にタイガも招待してくれた。
三体ともジューシーで柔らかいポポノタンを口一杯に頬張り、隣ではウルクが上質なキノコを平らげている。
「この飛竜がリオレウスかぁ。燃えるような色の甲殻がかっこいいな!」
「アンジャナフも初めてみたぞ!」
「成程。隣の地方にはギアノスと近縁関係のランポスというモンスターがいるのですね」
基本的にニウェス村のライダー達は雪山地帯のモンスターしか知らないようで、森林地帯のスカス地方から来たオトモン達に興味津々だ。
サスがリオとナビルーの元に料理を持ってきてくれる。
「ありがとう、サス!」
「どういたしまして〜。そういえば目的のレウスは取り戻したよね? 後はお家へ帰るの〜?」
「いや、レウスは取り戻したけど”紅力化”の方は解決していないから、仲間と一緒に旅を続けるよ」
「イア〜、ヘッイイヒョウアオホフウエホウホウアホンウアアイヘウアウオオオッエイアエオ、ホンアオオアアアッアア!!」
隣の席ではナビルーが白いドーナツ”アイルーミルク”を頬張っていた。
「……ナビルー。口の中が無くなってから喋れ」
リオに呆れた目で見られたナビルーが噛んだドーナツを飲み込み口を開く。
「ウグン、もう一回言うゾ? 『イヤ〜、てっきり調査の途中で紅力化モンスターに出くわすと思っていたけど、そんな事はなかったな!』」
「喉詰まらせるなよ……? でも、確かに見かけなかったなぁ〜」
思い返せばこのエムス山では、山賊のタイガにフルフルに謎のライダー達に……。
何度も激戦が繰り広げられたが、紅いモンスターは影も形も無い。
しかし、リオはとある場面が引っかかっていた。
「なぁナビルー。あの巨大嵐はなんだったんだろうな? まさか、あれも紅力化と関係あるんじゃ……?」
「どうだろ? 紅力化は”モンスターが紅くなって暴走する現象”なんだし、関係ないと思うゾ?」
「そうか。前触れも無しに一瞬で発生したし、村長も『出てきたと思ったら、すぐ何処へ消えた』って言ってたから変だと思ってさ……」
「エッ……??」
リオの一言にナビルーの表情がこれまでになく引きつった。
「ん? ナビルー、何か知っているのか?」
急に顔色が悪くなったナビルーに気付いたリオだが、彼はすぐに笑顔になる。
「そっ、そそ、そうなのか〜〜。マァ、少なくとも直接関係はないと思うゾ〜〜?」
ナビルー自身は隠しているつもりだろうが、余りにも言動が不審すぎる。
「……おい、ナビルー。何か隠してないか?」
「ウッ……まぁな。でも、ココでは言いたくないんだ。次はハンターズギルドに行く予定だし、ソコで話すよ」
「お、おう……?? まぁ気になるけど、今は宴会を楽しもう!」
リオは曇るナビルーの発言が全く理解できなかったが、一旦は信じる事にした。
「お〜い!! なに深刻そうなんだよリオ達よぉ!!」
不穏な空気を変えたのはリオの切り替えと、タイガの大きな声。
タイガが両手で二、三人前ぐらいのポポノタンのホットシチューを抱えており、三人が少し引いてしまった。
「ニャッ!?」
「……タイガ。そんなに食えるのか?」
「がぁっはっはっ! こんなの腹五分にもならねぇ!!」
◇
「もう一回予定を確認するけど、レウスは無事に取り戻せた。今度は紅力化を止める情報を探す為に、平原のハンターズギルド”カリトモニ”に行く。そこでビオンと合流しよう!」
「どんなハンターになっているか楽しみだゼ!!」
ビオンの再会に心躍る二人とは反対に、タイガとサスは眉を顰めていた。
「はぁ?? おめぇ、ハンターになりてぇ奴と仲間だったのかよ?」
「リオくん〜。ハンターってライダーを差別する奴って知っているの〜? ニウェス村にハンターが来た時も大騒ぎになったし、わたしは関わらない方がいいと思うけど〜……」
スモス村で聞いたレスフ村長の話の通りだった。
一部のハンターはライダーを差別しており、逆に一部のライダーもハンターに対して信用をしていない。
互いに理解しきれてない様子が二人の反応から伝わってきた。
「あまり外に出ていない俺達ライダーよりも、クエストとして各地に出向いているハンターの方が紅力化に詳しいと思うゾ!」
「あそこには生態系を研究する団体もいるらしいし、どうしても行きたいんだ。タイガ、同行を考え直すなら今だぞ」
「いぃや、俺様は言った事は曲げねぇ。変わらず着いていくつもりだ!」
彼はハンターと関わる事を嫌がる素振りをみせていたが、それでも『強くなる』事にこだわり続けていた。
「そうか、ありがとう。ただその前に雪山をもう一回調査したいな」
「ニャ、早くカリトモニに行かなきゃだろ? なんでまた行くのだ?」
「あのサファンとギエナとの戦い、後一回でも判断を間違っていたら負けていたかもしれない。もしかしたらあいつらは紅力リオレイアと同じかそれ以上の強さか……」
「アア、間違いなく今までの敵で一番ヤバかったゾ」
「だから、できればここで新しい仲間を迎え入れたいんだ。あの過酷なエムス山にも適応しているモンスターはきっと強力な味方になってくれるはずだ」
『新しい仲間』。それは正式なライダーを目指すタイガにとってとても胸が躍る言葉だった。
「おおぉっ、タマゴ探しか!! 俺様も早く相棒を決めねぇと!!」
◇
_
【二ウェス村 村長の家】
宴会が終わった後、明日に向けてリオ達は村長の家で寝泊まりさせてもらった。
「(グヌヌ。確かに予兆も無しに巨大嵐が現れて不自然だった。本当は説明した方がイイけど、周りがパニックになるかもしれないしなぁ。)」
しかし、ナビルーだけはリオの発言が気になってなかなか寝付けない。
「(あの嵐の正体、”アイツ”じゃないとイイけどな……)」
オオォォォォン……!!
ベッドの上でひたすら考えていると、低い音が響いているような気がする。
「(……ン? ナンの音だ?)」
感覚的にかなり遠くから音が届いているのだろうか。
と、思ったその時。
ドドドドドッ!!
「エッ、ナニナニィ!?」
ドオオオォォォォォン……!!!!
「ニャーーッ!?」
「うわぁっ!?」
二ウェス村全体に轟音が響き渡り、起きていたナビルーどころか先程まで就寝していたリオまで飛び起きる。
「ナビルーっ、今の音は何!?」
「わ、分からない! 外で鳴ったゾ!?」
「んあぁ?? んだようるせぇな?」
豪胆なのかよっぽど熟睡していたのか。
あくびをあげながらタイガも遅れて起きる。
「リオ、タイガ! また謎のライダーが来たかもしれない!! 早く外へ出るゾ!」
「お、おう。行こう!」
「あ? 何があったんだよおめぇら??」
【二ウェス村】
「「「!?」」」
外で見た驚きの光景にリオ達は目を疑う。
謎のライダーを撃退し平和を取り戻したはずの二ウェス村が、今度は大量の雪で埋め尽くされてしまっていたのである。
「「な、なんだこれ!?」」
「リオく〜ん、ナビルーちゃ〜ん、大変だよ〜〜!!」
疲弊した様子サスがこちらへ向かってくる。
彼女が来た方向の奥には狼狽えている村人達が映った。
「サス、どうしたんだ!?」
「急にデカい音鳴ってビックリしたゾ!!」
「うぅ〜『どうした』ってこっちが聞きたいし、『音鳴ってビックリした』ってこっちだって耳が壊れそうだったしぃ〜……」
◇
「“雪崩”だって!?」
リオはすぐにタイガに襲われていた時を思い出した。
どうやら自分達を襲ったあの雪崩はエムス山では頻繁に起き、その都度村人達も怖がっていたらしい。
「山賊やっていた時に気づいたんだが、あの山って雪崩が多すぎんだよなぁ」
「で、でもでも! 長らくこのエムス山近くに住んでいたけど、村にまで雪崩れ込んできたのは初めてだよぉ〜!!」
今までは山の方面で轟音が鳴っていただけだが今回は規模が大きかったらしく、遂にニウェス村に被害が出てしまったようだ。
「タイガ、お前は山賊をやっていた時にエムス山に住んでいただろ。何か知ってないのか?」
「な訳ねぇだろ? んまぁ、強いて変だと思った所を言うなら、雪崩が起きる前に『グォーン!』っつう音が鳴るぐれぇだな!」
確かにタイガに襲われていた時、雪崩の予兆として妙な音を鳴っていたのをリオは思い出す。
「待てよ。もしかしてタイガの言っている音はモンスターの鳴き声なんじゃないのか?」
「「「!」」」
「俺もその音が聞こえたけど、普通は山で聞こえるような音じゃなくて『変だな』って思ったんだよ。今考えると、”誰かが叫んでいるような”感じだったと思う」
「ムムム? 雪崩を起こすモンスターかぁ……。そんなモンスターいたっけかなぁ??」
リオの考えに納得した一同。
しかし、モンスターに詳しいナビルーでもいまいち誰が犯人なのか掴めていない。
「ナビルー、レウスに乗って見に行ってみよう! もしかしたら強いモンスターとそのタマゴがいるかもしれない!」
「オーウ! ナビは任せろ!」
「おいリオ! 俺様も忘れんなよ!!」
やや無鉄砲と言えるタイガが再び戦う気になってしまう。
彼は決して無力な訳ではないが、今回の敵は雪崩を起こすようなモンスター。
リオは今だにオトモンがいないタイガをそんな危険な敵の元へ連れて行くのには抵抗があった。
「まぁいいけど、無茶だけは止めろよ?」
しかし、自分の意見を曲げない彼に『何を言っても無駄』と思ったリオは、仕方なく連れて行く事に。
「へへっ、何回もうるせぇな! 今度こそ俺様はあの雪山で活躍し……て……??」
戦う意志を見せて山を指差したタイガ。
その闘志に溢れる表情が固まり、次第に目が見開いていく。
「ああ? な、なんか。雪山の上が”紅く”なってねぇか??」
「「なんだって!!??」」
リオ達が目をやると、寒々しかったエムス山の上空が炎のような紅色に染まっている。
空を見たリオとナビルーはすぐに例の災厄だと気づく。
「テンチの森でも見た紅い空……! まさか、山の天辺に雪崩を起こせる紅力化モンスターがいるのか!!」
「マズいゾ、リオ! ただでさえ村が雪崩でボロボロなのに!」
「ニウェス村に侵攻される前に紅力化モンスターを止めるぞ! ライドオン、リオレウス!」
「グアアァァ!!」
ニウェス村の厩舎から赤い飛竜が颯爽と駆けつけ、リオとナビルーとタイガがライド。
追加で購入したホットミストを地面に叩きつけ、赤い霧がリオ達を暖める。
「これでよし。レウス、エムス山の天辺へ行こう!」
「グァァ!!」
元気良く返事をしたレウスが大翼を広げ、一気に上空へと舞った。
◇
_
「うおぉぉ!? た、たけぇー!?」
かなり高度飛行に普段は肝が据わっていたタイガも冷や汗を掻いている。
「アッ!? 見ろよ、リオ!」
「な、ポポが……!?」
雪山の上空を飛んでいる時、ナビルーが下の異常に気づく。
何者かに殺されたポポが雪山のあちこちに転がっていたのである。
「謎のライダーはもういないし……。タイガ、お前がこんなに乱獲したのか!?」
「ち、ちげぇ!! 確かにポポは狩っていたけど、ここまではやってねぇぞ!?」
タイガがポポを狩っていた事を思い出したリオが後ろの彼に問うが否定される。
そうなると怪しい者は……。
「どうみても捕食の痕跡に見えるし、ポポを乱獲したヤツは紅力化したモンスターだと思うゼ! この数を狩ったという事は相当強いモンスターかも!」
遠目からでも凄惨さが伝わる血を撒き散らした死体。
ナビルーは犯人が武器を持つ人間などではなく”大顎を持つ大型竜”と推測した。
◇
【エムス山 頂上】
レウスは乗っている三人の重量も吹き荒れる低音の気流も物ともせずに飛び、あっという間に山の頂上へ到着。
最初にエムス山に来た時は強風や日の光が届かないエリアがあったが、まるであの時の過酷な環境が嘘のよう。
飛行できるオトモンならば、地上の敵も複雑な地形も無視する事が可能で、一気に旅の安定度が上がるのだ。
「リオ、着いたゾ!」
「やっぱりこのエリアも紅く染まっている……!」
リオとナビルーの予想通り、山の頂上は異様な紅い光に包まれていた。
「はぁぁ?? なんだよここはよぉ!?」
砂漠から雪山へ旅をしてきたタイガもこの光景は初めてみるようで、驚きの叫びが止まらない。
「リオ! アソコに絆原石があるゾ!」
ナビルーの指差した先にはテンチの森のものとは別の絆原石が。
やはりここの絆原石も周囲と同じく紅色に染まっており、常に炎のような光を放っている。
「前みたいに近くに紅力化モンスターがいるかもしれない。周りに気をつけろ、みんな!」
「オウ! 戦闘のナビも任せろ!」
「よくわかんねーけど、こいつぁやべぇな。相当歯応えある獲物がいるぜ!」
グォォォン……!!
「「「!」」」
ドドドォォォン……!!
再びあの”声”が響き渡った後、山の下方から轟音が。
「またか!!」
すぐにリオは雪崩の音だと察する。
「グルルゥ……!」
敵の気配をいち早く察知したのか、鋭く目つきになったレウスの闘志が燃え盛る。
グオオオォォン……!!
ドドドドォォォン……!!
またもや轟音。
そして、電流が走ったように身震いしたナビルーのヒゲが真っ直ぐに伸びる。
「ニャッ……さっきの音。ココから近いゼ!? そろそろ来るゾ!!」
◇
ドォン!!
「グオオオオオ!!」
岩を破壊しながら遂に轟音の主が姿を現す。
「コ、コイツは!?」
太い牙が並ぶ大顎に、発達した前脚と退化したけた翼膜と巨大なナイフに似た爪を持つ四足歩行の大型飛竜。
「知っているのか、ナビルー!」
「ご、轟竜”ティガレックス”!? 突進で敵を蹴散らす凶暴な”絶対強者”だゼ!! 本来は黄色と青の縞模様なんだけど……」
『本来は黄色と青の縞模様』というナビルーの話に反し、そのティガレックスは紅いオーラに包まれており、生物というよりはまるで悪魔のような形相を浮かべていた。
「でも、飛べないアイツに対してレウスは飛べるし、空から豪火球で一方的に攻撃すれば——」
しかしナビルーの思いとは反し、レウスは着陸。
「いや、二人は降りろ! ナビルーは遠くへ避難。タイガは俺とレウスと連携してくれ!」
「エッ、なんでだよ!?」
「接近戦でアイツを包囲して、ニウェス村に侵入させないようにする! あいつを下山させるな!」
「へっ、出番があるみてぇだな! そう来なくちゃ面白くねぇ!」
リオもタイガもライドを解除し、それぞれのアイアンソードと骨塊を抜刀。
すぐに戦闘態勢になり、興奮するティガレックスと対峙した。
いつもはナビルーの前に乗っていたリオが降りてしまう。
この状態でレウスが奴と戦えば、無防備なまま上に乗っているナビルーに流れ弾を飛ぶ危険がある。
「グヌヌ、かなりアブナい作戦だな……! 二人共、絶対ヤられるなよ……!」
ナビルーも遅れてレウスから降り、戦場から距離を置く。
可能な限りリオ達の近くにいたかったナビルーだが、包囲戦をする都合上で彼は遠くから見守るしかなかった。
◇
_
「ガアァァ!!」
荒い声をあげる紅力のティガレックスが、大顎を開けながら地を蹴る。
一歩進むごとに落石のような騒音を鳴らす奴は、恐ろしい速度の突進を繰り出した。
「うっ、速えな!!」
「あの突進を食らったらまずい。避けろ!!」
「グァァ!」
巨体からは想像できないような豪速の突進に、前もって身構えていたリオ達も圧倒される。
しかし、ある程度の余裕をもって回避し、隙をついたリオとタイガとレウスが敵を囲む。
「グル!!」
周りを威圧するよう睨み回すティガレックス。
三方向の敵に包囲された奴の興奮は加速し、上体をあげて大きく息を吸った。
◇
「あの動きはマズいゾ!? 皆、離れろーー!?」
遠くのナビルーが大技の予兆に気づき、リオ達に警告するが時すでに遅し。
◇
「グオオオォォォォ!!!!」
「うわぁ!?」
「ぬわぁ!?」
「グオァゥ!?」
三人を襲ったのは轟音と衝撃波。
訳も分からず三人が後ろの壁に叩きつけられる。
◇
「き、気をつけろ! ティガレックスは凄まじい音量の咆哮でコッチを吹っ飛ばしてくるゾ!!」
◇
「くっ……」
リオはナビルーの発言を疑う。
今まで耳を塞ぐ程の咆哮を放つモンスターを見てきたが、声量そのものを攻撃に転用するモンスターは初めて見たからだ。
ドドドドォォォン……!!
リオの耳に雪崩の轟音が届く。
「アイツの咆哮で起きた振動が、雪崩の原因だったのか!」
予想通り、雪崩の犯人は紅力化モンスター。
雪崩を止める為にもニウェス村の安全を確保する為にも、早くこのティガレックスを狩らなくてはいけない。
「やぁぁぁ!!」
リオが力を込めて大剣を振り下ろすが、紅く染まった頭部には歯が立たない。
「ガァ!!」
ティガレックスがお返しと言わんばかりに前脚を振り下ろすが、幸いにも大振りな動作だったので回避成功。
「くっ! 殆どのモンスターは頭が急所なはずなのに!」
見たところ頭の甲殻が発達しているようではないはずだが、頭部には掠り傷一つしか付いていない。
続けて太い牙が並ぶ口が、リオを噛み砕こうとする。
「この野郎!!」
タイガが渾身の溜め攻撃で頭部を殴打し、噛みつきを阻止。
「グォォゥ!!」
「タイガ!」
しかし、ティガレックスは溜め攻撃を受けても怯む程度で済んでいる。
「あの甲殻は予想以上に強靭だ。俺達の武器は効かないかもしれない!」
「グゥゥ!!」
ティガレックスが地を張っている身体を捻り、回転攻撃を繰り出す。
「うわあ!」
「ぬわあ!」
大きな全身を活用した豪快な攻撃が、二人を容赦なく吹っ飛ばす。
「グアア!!」
吹っ飛ばされたリオに大きな前脚が襲うが、咄嗟にリオが大剣を盾にしてガード。
大爪と金属を激しい音を立ててぶつかる。
ミシ……ミシ……!
「くっ!!」
両手で大剣を支えているリオがある事に気づく。
爪の攻撃を受け止めている大剣から不穏な音が鳴り、大きなヒビが入ってしまった。
「っ!? まずい。壊れそうだ……!」
紅力のティガレックスは鉄製の武器の攻撃を弾き、逆にこの武器はあちらの攻撃を防ぐ事すら厳しい。
リオはヒビを見て”装備が力不足”だと確信した。
「うぅ、うおぉ!!」
「ガァゥ!!」
全力で爪を弾き、瞬時に距離を置く。
「食らいやがれ!!」
タイガが怯んだ際の一瞬の隙を突き力を溜めながら接近。
今度は腹を横殴り。
「ガォウッ!!」
全力の打撃でようやく効いた素振りを見せており、苦しそうな声を吐いた敵が動きを止める。
距離を取った二人は包囲を止めて固まる。
「タイガ。俺の大剣はもう壊れるかもしれない。包囲戦も無理かも……」
「つーかよ! 吹っ飛んだお前のレウスは何しているんだよ!」
戦いに夢中で気が付かなかったが、レウスが全く戦いに参加していない。
「グォゥゥ……」
◇
そして、異変に気付いたナビルーが顔を青くして叫んだ。
「リ、リオ!! レウスの様子がオカシいゾ!?」
◇
「「!?」」
二人がエリアの端に目をやると、咆哮で吹き飛ばされていたレウスがいる。
頑丈な甲殻のおかげで大した傷は負っていないはずだが、とても苦しそうな声をあげて蹌踉めいていた。
「っ、レウス!? どうした!!」
「あいつ全然動いてねぇじゃねぇか!? 何かあったんか!!」
「グアアォォ!!」
「「「!?」」」
突然立ち上がったレウスが大きな咆哮を上げ、低い唸り声を鳴らしながらティガレックスを睨み据える。
「レウス。まさか、また……!?」
鬼の目つきを見たリオは、すぐにスモス村で紅力のリオレイアと対峙した時に見た”暴走”だと気づいた。
◇
「なんでアイツは紅力化モンスターの近くにいると暴走してしまうんだ……。紅力化を発症してないのに暴走するモンスターは初めてみるゾ……」
遠くで見ていたナビルーは、今回も含め二度の暴走の原因が紅力化モンスターと確信。
「グッ、どうすれば……! 今ティガレックスに対抗できるのは、同じ大型飛竜のアイツだけなのに……!!」
◇
「グァァ!」
防戦一方だった空気の流れが一気に変わる。
大地を蹴って走ったレウスが、ティガレックスの首に噛みつく。
「ガアォォ!?」
油断していた所に飛んできた速い噛みつきに対応できず、大きく態勢が崩れる。
その隙を逃さなかったレウスは一瞬でマウントを取り、力強く毒爪を食い込ませた。
「グ……ガアア!!」
ドン!!
「グォゥ……!!」
ティガレックスが必死に前脚を叩きつけ、レウスの拘束から逃れる。
しかし、レウスは引っ掻かれたもののダウンはせず。
「グアァ!!」
ボゥ!!
休まずに大翼を羽ばたかせ豪火球を放ち、豪速の火球は敵へ目掛けて着弾。
赤赤と光る炎はあっという間に広がり、ティガレックスとその周辺を爆炎が焼き払う。
「グアァァ……!!」
「す、すげぇ!? やっぱおめぇのレウスって強ぇんだな!!」
タイガも目を見開いて観戦していたが、反対にリオは俯き汗が流れている。
「駄目だ……。早く止めないと!!」
暴走による敗北。リオの頭には村が襲撃された時の悪夢が蘇っていた。
「あ、何言ってんだ? こっちが有利だからいいだろ?」
「今、レウスは暴走している。あの状態ではどんなに傷を負っても構わずに敵に向かってしまうし、俺の命令も聞かなくなってしまうんだ!!」
「は、はぁぁ??」
「ガァァ!!」
空から突撃してくるレウスに、紅い火だるまと化した奴が力を振り絞って爪を地面に食い込ませる。
地面を切り出し押し出された岩が、レウスの方向へ飛んできた。
ドゴォン!!
「グォウ!!」
岩が命中し鈍い音が鳴る。
しかし砕けた岩の破片から勢いを殺されてないレウスが飛び出し、ティガレックスにぶつかった。
「ガァァッ……!!」
「グルルアア!!」
ただひたすらに轟竜の痛々しい悲鳴と火竜の狂った怒号が辺りに響く。
◇
「ヤバい!? レウス、やめろ! 無茶するなー!!」
遠くから見ていたナビルーは一瞬だけこちらが優勢に見えていたが、よく見るとレウスは身体中から血を流していると分かった。
このまま流血させたまま戦わせれば、間違いなく命に関わる。
◇
_
「ガアアアアアァァァ!!!!」
暴走したレウスに押されていた紅力のティガレックスの眼が充血。
文字通り目の色を変えた奴は腕まで真っ赤に染め、大音量の咆哮を放つ。
「うっ、今までの攻撃は本気じゃなかったのか……!」
「やべぇぞ!? あの野郎、完全に頭にきてやがる!!」
◇
「気をつけろ、ティガレックスが怒ったゾ! もっと攻撃が激しくなる!」
◇
「ガァァァ!!」
先程とは比べものにならない速度の突進。
「ぬおっ、速ぇぇ!!」
「レウス、避けろ!」
ガッ!
滞空したレウスは両脚で豪速の突進を受け止めようとするが、本気の突進は止められず地面に叩きつけられる。
「グゥォォ……!」
「レウス、大丈夫か!! くっ!?」
急に方向を変えたティガレックスはそのままリオ達に突進を仕掛けてきた。
「リオ、散らばるぞ!!」
「くそぉ!」
それぞれ外側へ移動した瞬間に、殺気を放つ巨体が横を掠める。
何度も猛攻に晒され、徐々にスタミナを削られていく。
前転回避をした後は立つ事もままならない。
「包囲も纏まる事も無理。距離に気をつけないとまともに攻められない……!」
敵の遠距離攻撃は岩飛ばししかできないが、強大な筋力から繰り出される肉弾攻撃と周囲を吹き飛ばす咆哮のせいで、近接戦ではあちらが有利。
「馬鹿っ!? 前を見ろ!!」
「えっ?」
突進を避けたリオは疲弊していたのもあって完全に油断してしまっていた。
ティガレックスは急に方向転換し再びリオに突進していたようで、気づいた時は目の前に大きな顎が……。
「うわぁ!?」
キィン!!
顎を咄嗟の大剣で受け止め、再び鍔迫り合いが始まった。
「くっ、くそったれ!! このままじゃあ、リオが食われちまう!!」
しかもタイガまで疲労が溜まって助太刀に出遅れてしまった。
ミシ……ミシ……!
一回突進を避けたと思い、完全に油断していた。
早めの回避ができなかったせいで、壊れかけの大剣でガードせざるを得なかった。
「うぅぅ、もう限界なのに……!!」
なんと満身創痍ながりも力を振り絞るリオは、ティガレックスとの力比べで一瞬だけ拮抗。
しかし、体格でもスタミナでも不利な状況なのですぐにティガレックスが優勢となってしまう。
パキィィィン……!!
「うああぁぁ……!!」
恐ろしい咬合力は分厚い鉄を真っ二つに。
旅立ってからリオを支えてくれたアイアンソードが、遂に壊れてしまったのだ。
尻餅をついて無防備になったリオにティガレックスがじりじりと近づく。
「くそったれ!! 待ちやがれぇ!!」
また背後から攻撃を仕掛けようとしたタイガだが……。
ドォン!!
「ぐわぁ!!」
しかし、二度は効かない。
気配を察知したティガレックスが尻尾の一振りでタイガを吹っ飛ばす。
「ぐぅぅああ……!!」
あれほど逞しかったタイガが力尽きて地面に倒れ伏す。
「グォォ……」
反撃をもらい血まみれのレウスも動く事すらままならない。
◇
「リオォ!? 早く逃げろーー!!」
電力が回復し切っていないナビルーも助けに行きたくても行けない状態。
暴走したレウスのおかげで形勢逆転できたかに思えたが、怒って全力を出したティガレックスの猛攻によって一気に劣勢の状況に戻されてしまった。
◇
『遂に仕留めた』。
そう確信したティガレックスが前脚でリオを抑え込む。
「うああぁぁ!!」
前脚の重量に押しつぶされそうになるリオが悲鳴をあげる。
意識が遠のいていく中、鉄をも噛み砕いた大顎が迫ってくる様子が映る。
「レウス、助けてくれ……!! 頼む……!!」
「……!!」
レウスの目が見開き、スカスの森での出来事が脳裏に浮かんだ。
◇
リオに近づき、クチバシでトドメを誘うとするイャンクック。
『レウス……頼む、力を貸してくれ……』
◇
勝手に行動したせいで再び主人が危険に晒させれしまう。
完全にあの時と同じ状況だった。
「グル……!」
早く動かなくてはリオの命が無いのに。
肝心な時に動けない自分が許せず、怒りが込み上げてくる。
_
ドォォン!!
「ガアアァァ……!?」
戦場を照らす紅い光弾がティガレックスを吹き飛ばす。
「グオオオオオアアアアア!!!!」
「「「!!??」」」
三人共、自分の目を疑った。
大きな咆哮をあげ激昂したレウスは眼が紅く光り、同じく体色が紅みがかかる。
そして、眩く光る口からは真紅の業火が際限なく噴き出ていた。
「レウス……??」
先程まで体力が減って動けなかったのが嘘かのようにリオの近くに佇んでいる。
◇
その燃えるような紅色は間違いなく紅力のオーラだった。
「ウソだろぉ!? レウスまで……!?」
頼みの綱であるレウスが紅力化し、これまでに無いほどにナビルーの顔が青ざめる。
◇
「グオア!!」
恐ろしい形相の紅いレウスがリオを見つめる。
「俺を襲うつもりか……! 待ってくれ……!!」
紅力化した相棒の口から刃のような牙がみえ、死を覚悟したリオの涙が頬を伝う。
……。
しかし、リオは襲われない。
それどこらか彼はリオを守るように仁王立ちしたのだ。
「レウス……!? まさか理性が残っているのか!?」
主人への方へ振り向いた彼は、初めてライドを許したあの時と同じ覚悟を決めた顔をしている。
「レウス……!!」
◇
信じられない光景の数々にナビルーの動揺は止まらなかった。
「ど、どういう事なのだ!!?? レウスは紅力化したわけではないのか!?」
紅力化はモンスターが暴走する現象なはずだが、レウスはそのような状態になっていない。
むしろ感情を制御したような落ち着きを取り戻していたのだ。
◇
「ガァァ……ガァァァ……!」
先程の一撃でティガレックスも限界を迎えたのか、足を引きづりながら山を下っていく。
「おい、リオ。大丈夫かぁ!!」
「なんでレウスは紅力化して大丈夫なのだ?? 紅力化しても理性を保っているモンスターなんて初めて見たゾ!!」
敵の撤退を見計らったナビルーがタイガに回復薬を飲ませ、二人はリオ達の元へ駆け寄ってきた。
「俺も分からない。もう何がなんやら……」
「グアア!!」
『早くあいつを追うぞ』と言うかのようにレウスは三人を叱喝。
「ア、早くティガレックスを追わないとヤバいゾ!!」
「そうだったな。レウス、俺達を乗せられるか?」
レウスは無言で頷く。
ナビルー以外の全員が傷を負っている状態だが、荒い息を吐いて足を引きずっていたティガレックスももう瀕死と見れる。
「ライドオン、リオレウス!」
「グアアアアア!!」
このチャンスを逃す訳にはいかない。
リオ達はレウスにライドし離陸。
雪山を荒らした紅力のティガレックスを討伐すべく、空へ飛び立った。
◇
……。
「ティガレックスの足跡が続いているゾ!」
ナビルーが指差した先に奴らしき足跡があり、それが洞窟の中へと続いている。
「ニウェス村の方へ行った訳じゃあなかったみてぇだな!」
重傷を受けた興奮で村が襲われると危惧していたが、その心配は杞憂に終わった。
ひとまずニウェス村へは侵攻されないと知り、リオは胸を撫で下ろした。
「きっと中にティガレックスの巣があるんだ! レウス、あそこへ向かってくれ!!」
「グァァ!!」
リオの指示を受けたレウスは山頂近くの洞窟へ急降下。
「エッ待てよっ、ニャ〜〜!?」
「おめっ、いきなりスピード上げんじゃねぇーー!? 酔いそうだぁ〜〜!!」
◇
冷たい断崖にぽっかりと開いた大きな洞窟。
奥からティガレックスのものらしき大きな足音と荒い息遣いが聞こえてくる。
「ニャァ〜〜……」
「ま、待てや……! 宴会で食ったご馳走を戻しちまいそうだ……!」
「二人共。早く行かないとティガレックスの傷が癒えちゃうよ。もうちょっとで倒せるから、力を振り絞ってくれ!」
「「うぅ……」」
リオ達は自分の身体に鞭を打ち、回復薬を口に流し込む。
そして、意を決して極寒の洞窟へ足を踏み入れた。
【ティガレックスの巣】
グチャア……グチャア……!
洞窟の最深部は意外にも広い空洞になっており、何かを食べている奴の姿が遠くにみえる。
「ライドオン、リオレウス!!」
「グアアアアア!!」
「グルルゥゥ……!」
掛け声に気づいたティガレックスがゆっくりとこちらに振り向く。
「タイガ。あいつに接近して隙を作ってくれ。絆技の狙いが定まったら、退避させる合図を送る」
「はん、ここが踏ん張り所か。やってやるぜ!!」
第二回戦を始める前にリオは紅いレウスにライドをしておき、タイガも戦闘態勢に入っていた。
「オレはまだ電気が使えないから、ここから見守っているゾ。もう回復薬もないし、絶対に無茶はするなよ。特にタイガ!」
「うるせぇな? 俺を舐めんじゃねぇぞ!」
バサァ!!
リオとレウスがティガレックスの上空を飛行。
幸いにも翼を広げて飛ぶスペースは十分あり、狙いを定める余裕もある。
「レウス、スカイハイフォールを絶対に当てるぞ……!」
「グォォ!!」
敵はもう瀕死だが、限界が近いのはこちらも同じ。
もしここで絆技を外してしまったら討伐は困難となる。
「おらぁ!」
「ガァァ!!」
タイガがティガレックスが動かないように、囮として戦っている。
ガッ!
「ぐわぁ!!」
しかし、とっくに限界を超えた状態でティガレックスの相手にするのは無理がある。
ティガレックスが容赦なくタイガを追い詰め、鋭い爪が左肩に刺さってしまったのだ。
上を飛んでいたリオの目にも赤い血飛沫が映る。
「タイガ、無茶をするな! 一旦引け!!」
「まだだ。俺様の力はこんなものじゃ……っ!?」
「ガアアアアアァァァ!!!!」
ティガレックスが怒号を放つと共に紅い光の輝きが増す。
「ガアオゥッ!!」
濃い紅色のオーラを放つティガレックスがタイガに飛びかかり、全身で叩き潰そうとする。
ドオオオオオン!!
「ぐああぁぁっ……!!」
周囲の岩盤が軽く隆起するほどの恐ろしい飛びかかり。
ボーン装備が完全に破壊され、完全に力尽きたタイガがその場に倒れ伏す。
このまま絆技を放ったら、無防備な状態のタイガまで巻き込んでしまう。
「ママ、マズいゾ! なんとかしてタイガをティガレックスから離さないと!!」
見兼ねたナビルーが急いでアイテムポーチに手を突っ込んでおると、いきなり指に鋭い痛みが走る。
「イテッ、なんか刺さっちゃった……。アッ、コレは!」
「グルル!!」
目の前の獲物を食い殺さんと大顎を開くティガレックス。
「タイガぁ!! 今行くぞ!!」
もう迷っている暇はない。
リオとレウスが絆技を中断し、タイガを助けようとする。
その瞬間。
ザクッ!!
「ギアアン!!」
突然ティガレックスが悲鳴をあげ、口から鮮血が噴き出る。
「あれは前に買っておいた投げナイフ!」
「リオ、タイガは助けたゾ! 絆技で決着をつけるんだ!!」
「ああ、分かった!」
リオとレウスの絆が最大まで極まる。
ギィィィィィン……!!
「っ! これは!?」
しかし、リオの絆石が放った光の色はいつもの青白い色ではなく、なんと真紅色。
「グアアァァァ!!」
レウスが大きな翼を広げ、空気すら切り裂く大咆哮を上げる。
リオ達は凄まじい速さで急上昇。
ゴオオオオオォォ!!!!
紅い炎を纏いながら脚を突き出して急降下するリオ達。
輝く隕石と化したレウスは劫炎のキックを紅力のティガレックスに食らわせた。
ドオオオオオオォォン!!!!!
「ガアアアァァン……!!!!」
上へ突き出す劫炎の巨柱は、ティガレックスを巻き込みながら洞窟の天上を突き破った。
_
ドォォォン……!!
空から息絶えたティガレックスが降り、地面に叩きつけられる。
既に紅い光は消え、本来の黄色と青の縞模様へと変わっていた。
「なっ、なんなのだあの紅いスカイハイフォールは……!? 威力も規模も格段に上がっている……!?」
元々瀕死まで追い詰められていたとはいえ、たった一撃で紅力のティガレックスを倒し切り、巨大な洞窟の天井を丸々破壊する衝撃的な攻撃力。
更に生じた劫火はエリアの雪や氷を余す事なく溶かし尽くし、洞窟の大部分を破壊してしまった。
明らかに今までスカイハイフォールとは違う技と分かる。
「はぁ……はぁ……。よく分からないけど、頑張ったな。レウス!」
空から紅い火竜が降りてくる。
「グァゥ……!!」
「うわぁっ!!」
しかし、着陸した瞬間にレウスの体勢が崩れ、リオが投げ出されてしまう。
力を使い果たし倒れたレウス。
その身体は真紅色ではなく、いつもの赤色に戻っていた。
「リオ、レウス。大丈夫なのだ?」
「俺は大丈夫。それよりレウスが弱ってて……!」
「グォォゥ……」
怪我を負っていた状態から謎の覚醒をし、極限まで戦ってくれたレウス。
幸いにも死には至らなかったが、今度こそ限界を迎えたのか苦しそうに息を吐いている。
「三人共、よく頑張ったな! オレが近くに薬草とアオキノコがないか探してくる!」
「分かった。俺は倒れているレウスとタイガを守っているよ」
◇
「グォォ……」
「うっ、悪りぃ。また足を引っ張っちまったな……」
ナビルーが採取してくれたアイテムで回復薬を調合。
服用した瞬間にレウスの出血もタイガの傷も塞がっていく。
「良かった、本当に無事で! ナビルーもナイスサポートだったよ!」
「イヤ〜、近くに薬草が生えてなかったら本当にヤバかったかもしれないゼ」
すると、リオが何かを思い出す。
「あっ、そうだ。ナビルーが治療している時に、ちょっとこの巣を調査していたんだけど……気になる物があったから来て欲しいんだ」
「ニャッ? 一体何があったのだ?」
「タイガとレウスはどうする?」
「動けるようになったから気にすんな。早く見せてくれ」
回復薬のおかげで二人とも歩ける程度に回復したようだ。
「分かった。着いてきて」
◇
「ニャッ……!?」
リオが見せたある物にナビルーが絶句。
先程のティガレックスに食べられ、無惨な姿となったタマゴが数個散らばっていたのだ。
「んあ、なんだこれ? ティガレックスつうのはタマゴを盗んで食う奴なんか?」
察せていないタイガと対照的にナビルーの顔が恐怖で引き攣っている。
「違うゾ、タイガ。ティガレックスはタマゴを盗んで食べる習性なんかない。コレはたぶんジブンが大事にしていたタマゴだゼ……」
「はぁっ!? じ、自分の子供を食ったんかよ!?」
人の視点から見ればとても残酷な行為だが、厳しい自然で生き抜く為に共食いをするモンスターは珍しくはない。
しかし、リオは前のリオレイアの行動と合わせて違和感を覚えていたのだ。
「前に村を襲ったリオレイアは肉食なはずなのに畑の野菜まで食べていたし、今回のティガレックスもわざわざ子供を食べてまでお腹を満たそうとしていたんだ。これも紅力化による異常行動なんじゃないかな?」
「確かに妙だけど、こんな事までしてエネルギーを溜める理由はなんなのだ……?」
「ナビルーも分からないかぁ。これは謎を解く大事な手掛かりになるかもしれないし、メモをとっておこうぜ」
このエムス山の調査が終わったら、次はハンターズギルド”カリトモニ”へ行く予定。
この情報をギルドの者達に提供すれば、紅力化の解決に近づくかもしれない。
「アァ、そうだな。……アレ、まだタマゴのイイニオイが?」
その時、いきなりタイガが大声で叫ぶ。
「おいリオとナビルー!! あそこにまだ割れてねぇタマゴあるじゃねぇかよ!?」
「「!!」」
タイガの指を刺した先に、ティガレックスのものらしき黄色と青の横縞模様のタマゴが。
ティガレックスが自身の巣を漁っている時に転がり落ち、奇跡的に食われずに済んだのだろうか。
「おお! これがティガレックスのタマゴか!!」
リオが割らないようにタマゴを優しく抱き抱える。
「やったな! ティガレックスは新しい戦力として心強いゼ!! アッ、でもタイガのオトモンはどうしよう?」
「へん、今回は弱いせいで足引っ張っちまったからそいつは譲るぜ! タマゴは俺の実力で勝ち取ってやる!!」
欲深いはずのタイガの反応は意外なものだった。
彼は自身の強さに強い拘りがあるらしく、今回の戦いの結果に納得がいっていない様子。
「……」
「ム? リオ、そんな悩んでどうしたのだ? さっさとタマゴを持って帰ろうゼ?」
「え? ああ、帰ろう。でも、その前に絆原石を確認しておこうな」
◇
【エムス山 頂上】
山の頂上は初めに訪れた時と変わらず、紅いエリアのままだった。
リオが左腕の絆石を掲げる。
キィィィィィン!!
白いフレームが展開し顕になった青い絆石が光輝くと共に、頂上エリア中の紅い光を吸収していく。
……。
光が収まった後に映ったものは紅色の地ではなく、白い雪に紺色の夜空に青緑色の美しいオーロラという美しい光景。
そして、雪山の絆原石も血のような紅色ではなく煌びやかな黄色へ変わっていた。
「やったなリオ! これでもっと強い絆を結べるはずだゼ!」
リオの絆石が紅力を吸い尽くしパワーアップ。紅力が消え、何度も飛び跳ねて喜ぶナビルー。
その時、そばで見ていたタイガがとある変化に気づいた。
「んあ、リオ? お前の絆石の色って元から紫だったっけか?」
「え?」
よく見ると紅力を吸収したリオの絆石が空のように澄んだ青が紫色へ変化している。
「あれ? ナビルー、前に『厄災の力を吸収してパワーアップした』って言っていたけど、本当に吸わせて大丈夫なんだよな??」
「イヤ、前の相棒の絆石は厄災の力を吸っても何も問題は起こらなかったゾ?」
大事な絆石の変化に戸惑うリオだが、確かに今の所は壊れているような様子は無い。
「そうか。ならいいけど……」
少し気になるが体力を消耗した状態で狩場に長居するのは危険なので、とりあえずレウスに乗って帰還する事に。
◇
_
【二ウェス村 村長の家】
激闘を終えたリオ達は村長の家へ戻って休み。
次の日、三人は今回の件と今後について話し合う事にした。
「なるほど。『本来ティガレックスは砂漠のモンスターだけど、雪山まで遠征する程にポポの肉が好きなモンスター』なんだな」
「そうだゼ。タイガもある程度狩っていたけど、ポポが極端に数を減らしていた最大の原因はアイツで間違いないな」
得意げにナビルーがモンスターの情報を話していた。
「よし、ナビルーとタイガ。色々合ったから、ここで整理しようか」
まず、何よりも気になる点は紅いレウスと絆技。
これについて紅力化を知っているナビルーとリオが口を開く。
「紅力化は”モンスターが紅く光って暴れ回る現象”で、今は治療法が分かってない。発症したモンスターは場合によっては討伐を視野に入れなきゃいけないんだ」
「そうか。でも、俺のレウスは紅くなっても暴走していないし自然に治った」
明らかに今までの話とは違う謎の紅力化。
こんな例はナビルーも見た事がないと言う。
「でも、治った後にレウスを観察していると、凄く具合が悪そうなんだ……。傷を負ったというのもあるけど、なんというか”心身共に疲れている”感じだ」
「リオのレウスが特殊な個体なのか、何か法則があるのか……。早くカリトモニに行って情報を交換し合わないとな」
次にリオはティガレックスのタマゴの話題に移る。
「さて、ティガレックスのタマゴの事なんだけど……」
その言葉を聞いた瞬間、タイガの目が爛々と光る。
「おお、遂にこの目で孵化の瞬間が見れるんだな! 俺様も相棒を向かい入れる為に参考にするぜ!!」
「いや、やっぱりこのタマゴはタイガに渡したいと思う」
「……あ?」
「そして、やっぱりお前はこのニウェス村に残ってほしいんだ。村長から許可は取っているし、村の人達もお前がここに残る事を希望している」
なんと新しいタマゴに喜んでいたリオだったが、突然のそれをタイガに譲ろうとしたのだ。
それどころか旅に連れて行くのではなく、村に留まらせる方針にタイガの動揺が止まらない。
「はぁぁっ!? ど、どういう事なんだよ!?」
申し訳なさそうな表情でナビルーがゆっくり喋る。
「ライダーにとっては強くなるにも生き延びるにも絆が必要不可欠なんだ。リオは『タイガが強さに拘りすぎている』と思って、復興中のニウェス村を守りつつライダーの基本を村人から学ばせようと……」
「だ、だけどよリオ!! そうするとしたらお前の新しい戦力はどうなるんだよ?」
「それはまた考えるよ。今は容態が悪くなっていくレウスの為に早くギルドへ行きたいんだ」
……。
自信に溢れていたタイガにとって辛い宣告だった。
しかし、確かに彼は絆による連携よりも単なる強さを優先していたのは事実。
『無茶をするな』と釘を刺されたにも関わらず、”強さを示したい”という考えでティガレックスに隙を突かれた為、彼は反論が出来ない。
「分かった。村が復興するまでに俺様は絆を知って一人前になってやる!」
彼の覚悟を受け取ったリオ達は笑顔を見せてドアを開けた。
「ああ、ニウェス村を頼んだぞ! じゃあ、祭壇にいってタマゴを孵化させよう!」
「ティガレックスの幼体。どんな見た目なのか楽しみだゼ!」
◇
【ニウェス村 聖の祭壇】
村の中にある洞窟内の祭壇では、既にニウェス村の村長とサスが儀式の準備を済ませていた。
「あ、村長〜!」
「おや来たかタイガァ。タマゴは持ってきたかい??」
中心には台座があり、それを囲むように複数の篝火が周りを照らしている。
「おう。ここにあるぜ!」
「そこに起きなぁ。絆あわせ儀を始めるよぉ」
タイガがティガレックスのタマゴを台座に置くと、サスが黄色い絆石を差し出す。
見た目はサス自身と同じ牙と爪を模った黄色と青の縞模様のフレームだ
「ライダーとモンスターを絆で通じさせる”絆石”だよぉ。大事にねぇ」
「よっしゃあ!」
タイガが喜んで絆石を左腕につける。
「ここの村の絆石は俺のものと見た目が違うんだな」
「オマエのはスモス村の絆石で、アイツのはニウェス村の絆石。ライダーの文化の数だけ、様々な見た目の絆石があるってことだゼ」
サスが儀式を邪魔しないように歩きながらリオ達へ近寄る。
「この村の絆石はエムス山の主を模して作られたんだよ〜。昔から『絶対強者』と呼ばれてる暴れん坊で恐れられていたらしいんだ〜」
「ニャッ??」
「あれ、その主ってもしかして……?」
◇
儀式の流れを把握した後、絆あわせの儀が始まった。
「ふぅん……! ふぅん……!」
普段は落ち着いているニウェス村の村長だが、今回は杖で地面を突く力強い踊りを披露してくれた。
スモス村でのレスフとはまた違った絆あわせの踊りだ。
「我が名はタイガ」
タイガがこれから行動を共にするタマゴに挨拶をし、続けて村長が踊りながらタマゴと絆石に呼びかける。
「聖なる絆石よぉ。タイガと眠りし御霊の絆を結びたまえぇ」
そして、村長が目を見開き大声で叫んだ。
「いざ、新生の時ぃっ! 目覚めよぉ!!」
ピキ……ピキ……パリンッ!!
タマゴの黄色の殻が割れると同時に白い光が辺りを照らし、勢いよく弾けた。
「クアァァァ!」
黄色と青の縞模様の甲殻に原始的な肉食竜の顔、横向きに生えた大きい前脚と爪、小さな後脚の太く長い尻尾。
「あらぁ、あんた達!! 雪山の主からタマゴ取れたのかいぃ?」
「え〜〜っ!? リオ君達凄すぎ〜〜!!」
生まれた轟竜”ティガレックス”は、幼いながらも紅力化した親に負けぬ迫力を放っていた。
「一緒に名を轟かせようぜ!! ティガレックス!!」
タイガがティガレックスを抱きしめる。
「そういえばタイガ。リオみたいにオトモンに名前は付けないのだ?」
ナビルーの一言にタイガが固まる。
どうやらオトモンに名前を付ける予定だったが、すっかり忘れてしまっていたようだ。
「強そうな名前にしてえからなぁ……。おし、おめぇの名前は”レックス”だ!! 分かりやすくていいだろぉ?」
「クァァ!」
◇
【ニウェス村 門】
村の雑貨屋で回復薬三個とホットミスト二個と熱血サプリ一個と投げナイフ二本を購入。
村から食料も頂き、旅の準備を終える。
「謎のライダーと山の主を退けてくれてありがとうねぇ」
「リオ君、ナビルーちゃん〜。元気でね〜」
こちらに暖かいもてなしをしてくれたニウェス村ともお別れの時が。
ニウェス村の村長とサスを始めとする村の住人達が見送りに来てくれた。
「リオ! 村が復興し終わって離れられるようになったら、絶対お前達と旅させてくれ!! めちゃくちゃ強くなって驚かせてやっからなぁぁ!!」
「クアア!!」
村人の中にはタイガとレックスの姿も見える。
「ああ、皆またなーー!!」
「よーし、ホットミストを使って行こうゼィ!!」
さっそくホットミストの耐寒効果を得た一行。
「グォォ」
「グァァ!」
「ギャギャギャオ!」
アンジャナフとドスランポス、そして連れ戻したレウスと共に二人は村の外へ歩み出した。
一つの大きな目標”レウスの奪還”を果たし、サファン達と紅力のティガレックスという大きな壁を乗り越えたリオ達は、次の目的地であるハンターズギルド”カリトモニ”へ向かった。
続く
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●今回のおまけ
ティガレックス︎
別名:轟竜
種族:飛竜種
レア度:★6
属性・状態異常:無属性
主な生息地:雪山、砂漠、森林、密林、高山、沼地、火山
雪山で猛威を振るい、“絶対強者”と呼ばれる大型の飛竜種。
黄色と青の縞模様の甲殻に原始的な肉食竜の顔、そして横向きに生えている脚が特徴。特に前脚は後脚の二倍ぐらいに大きく、爪も通常のモンスターに比べてかなり大きく太い。
体内に”大鳴き袋”という特殊な器官があり、それのおかげで衝撃波が生まれる程の咆哮が可能。更に非常に発達された筋力から繰り出される突進や飛び掛かりも強力。
怒りで興奮状態になると目や前脚の血が赤く充血し、更に激しく速い攻撃で相手を捩じ伏せる。
厳しい環境に対しても適応し、広い範囲に生息している。食欲もかなり旺盛でなんと『ポポ肉の味を知ったティガレックスが、本来の生息地ではない寒冷地に遠征してきた』という驚きの報告もある程。
力も強くとても凶暴なのでオトモンとして乗りこなすのはかなり難しい。
耳に響く咆哮や振り落とされかねない突進攻撃も、乗りこなす難易度を高くしている。
逆にティガレックスに受け入れられ乗りこなせるライダーは、一流ライダーを名乗って良い実力者だ。
◯主な技
⚪︎暴走突進
全力の突進で相手を吹き飛ばす。急に曲がれないので外れることも多いが、当たれば大ダメージを狙える。
⚪︎突進コンボ
素早い突進攻撃。ドリフトからの再度突進で連続で当てる度に、更に大きいダメージを与えられる。
⚪︎岩飛ばし
巨大な爪で地面を押して抉り、岩を飛ばす技。威力は抜群だが飛ぶ方向は制御できず、どの相手に当たるかは分からない。
⚪︎ロックオン
暴走突進など外しやすい攻撃を命中させるよう、相手に狙いを定める。
⚪︎ブレイククラッシュ
パワフルな攻撃技。あまりの威力に相手の装甲を破壊し、守りを崩せる。
◯絆技
⚪︎ティガインパクト
崖の上で大きな咆哮をあげたティガレックスは荒々しく駆け降り、崖から思い切りジャンプ。
落ちる時にライダーが絆石をつけている片方の腕を構えるとその絆石が光り出し、ティガレックスも同様に腕を構える。
着地と共に片方の前脚で地面を砕き、その亀裂から出た光る衝撃波が相手を襲い、大ダメージを与える。