今日から本格的にこの小説の作成を再開します!
もし面白い所がありましたら、モチベーションになりますので感想を是非…。
【あらすじ】
緑が美しいスカスの森に、タマゴと共に川に流れ着いていた記憶喪失の少年”リオ”。リオは青年”ビオン”に助けられ、怪我の治療の為にモンスターと共に生活するライダーの村”スモス村”へ案内される。
ライダーはモンスターを仲間にしている為に過去に奇異な目で見られた上、スモス村に至っては過去の事件が原因でよそ者を拒むようになった。
ビオンは”ハンターになって世間に奇異な目で見られるライダーを理解してもらう事”、”よそ者のリオを受け入れ村に住まわせる事”を提案。
そして、リオはひょんな事で出会った不思議なアイルー”ナビルー”を相棒にし、村でライダーを目指すことになる。
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第二話 運命の出会い
「よし! 村の周りを十周だ! 行くぞー!」
「おーー!!」
「腕立て、腹筋、ストレッチをそれぞれ三十回!」
「お〜〜」
「模擬刀で俺と五十分間戦闘訓練!」
「お、おぉぉ……」
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リオがライダーになる事を決意し、ビルとライダーになる為の訓練が始まってから、三週間後……。
【スモス村 朝】
「……」
身体の震えが止まらないリオ。
「緊張しているのか? リオ」
俯いて震えているリオの顔を覗き込むナビルー。緊張しているリオを心配しているようだ。
「正直な……。今日がライダーになる日。あのタマゴを孵化させる日だから……」
ビオンは震えが止まらないリオを安心させるように肩に手を置き、とびっきりの明るい笑顔を見せる。
「大丈夫だ! ビルも『お前はライダーの技術に対して飲み込みが早くてびっくりしている』って言ってただろ? リオならできる!」
「……ああ、やってみせるよ!」
「よし、早く祭壇に行こうゼ!」
ナビルーが急かしながらドアを勢いよく開け、外の暖かい光が部屋を照らした。同じくリオの心も明るくなり一歩を踏み出す。
「おう……って、ナビルー〜! 待てよ〜!」
……ナビルーも村に住んで一か月も経ったので流石に迷いはしないが、相変わらず先に飛び出す癖は治らないようだ。
◇
【スモス村 聖の祭壇】
三人は村の奥にある洞窟へ行く。洞窟の光源は松明と光蟲が入っている籠のみ。
暗い洞窟とは打って変わって、最深部には天井が空いた明るい場所となり、陽光が美しい滝と石製の祭壇を照らしている。
そして、そこにはリオ達を待つビルとレスフ村長の姿が。
「ついにこの日が来たな。リオ!」
「タマゴを持ってきたという事は覚悟が出来ているようじゃな」
村長の言う通り、リオの顔は決意に満ちていた。
「はい。”絆あわせの儀式”。よろしくお願いします!」
村長はリオの覚悟を受けとると、白いフレームに青色の透き通った石のアクセサリーを差し出す。
「これは”絆石”。ライダーとモンスターを絆で通じさせる特殊な石じゃ。ライダーとして生きるなら、この絆石は必須。大事にするのじゃぞ」
「はい!」
リオは元気よく返事し、自分の絆石を受け取り左腕につけた。
「おー、これがスモス村の絆石か! 綺麗だな〜!」
「ナビルー。リオはこれから大事な儀式をするから、静かに」
「あ、そうだったな。ごめんごめん」
ビオンに注意されたナビルーは軽く謝り、村長が静かになったのを確認すると鈴がつけられた杖をそっと持つ。
リオは祭壇の中心の台座にタマゴを置き、深呼吸で気持ちを整えた。
「では、絆あわせを始める!」
村長が一言叫んだ後、シャラン……と杖の鈴を鳴らしながら、全身を使って踊り始めた。その神妙な踊りが気になるのか思わずナビルーはビオンに聞く。
「ヒソヒソ……(なぁ? あれは何をやっているんだ?)」
「……(あれは絆あわせの踊り。相棒となるオトモンの誕生、そして無事に絆を結び共に成長できる事を願う踊りなんだ)」
ビルが滝の水を器で掬いリオの絆石にそっと掛け、絆石を清める。
踊りに合わせて心地よく鳴り響く杖の鈴。緩やかだった鈴の音と踊りは徐々に激しく力強くなっていった。
「むぅぉぉぉぉ!! さぁ、リオ!」
村長の合図にリオは頷くと左腕の絆石を掲げた。
絆石の白いフレームが開き、透き通った青い石から青白い光を放たれる。
「「「……」」」
その眩い光はとても美しく、周りの心まで癒し落ち着かせるほど。
「我が名はリオ」
リオがこれから行動を共にするタマゴに挨拶をし、続けて村長が踊りながらタマゴと絆石に呼びかける。
「聖なる絆石よ、リオと眠りし御霊の絆を結びたまえ」
二人の言葉に反応するかのように絆石の光が強くなっていく。
眩い光は洞窟を明るく、優しく照らした。
そして村長が踊りを終えると同時に力強く叫ぶ。
「いざ、新生の時っ! 目覚めよ!!」
ギィィィィィン……!!!!
「「「「「!?」」」」」
踊りの終えた時。突如リオの絆石が炎のような紅い光を放つ。
「な、なんだ!?」
「あ! 見ろ、リオ!」
ナビルーが指差したタマゴ。白い殻のタマゴは真っ赤な色に変わっていた。
ピキ……ピキ……!
タマゴの殻にヒビが入り始める。タマゴの中からも絆石と同じ紅い光を放っている。
「……生まれる! 頑張れ、生まれてくれ!」
リオの言葉に答えるようにヒビが大きくなり始めた。
パリン!!
「「「「「!!」」」」」
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「クアアアア!!」
大きな割れた音と共に小さなオトモンの影が現れ、小さくも力強く咆える。
徐々に紅い光が収まり、ついにオトモンの姿が明らかになった。
鷹に似た黒い嘴に全身を覆う赤と黒の刺々しい甲殻、翼爪が付いた大きな翼、鋭いトゲがある尻尾。
幼いながらもその飛竜は雄々しい王の威厳を放っていた。
「やった……! 生まれたぁぁぁぁぁ!!」
手を挙げて大喜びするリオ。ビオンはその生まれた飛竜にただただ驚いていた。
「凄いゾ! 火竜”リオレウス”だゼ!!」
火竜”リオレウス”。もはや知らぬ者がいないと言われる飛竜の代表格。
別名の通り強力な火球を口から放ち、その非常に優れた飛行能力と戦闘力から『天空の王者』の異名を持つ。
「やったな、リオ!」
「わ、急に乗るなよ!」
嬉しさのあまり、リオに飛び乗るナビルー。幼体のリオレウスは首を傾けながら、丸い目でリオ達を見つめていた。
「……俺のオトモンになってくれ!! “レウス”!!」
「クアアア!!」
仲間だと認識したレウスはリオの命名を受け入れ、レウスは再び元気そうに咆え頭を擦り寄せる。突然の命名に乗っていたナビルーが不思議そうにリオに聞く。
「ん、『レウス』? この子の名前か?」
「ああ、リオ”レウス”からレウスを取ったんだ!」
“レウス”。リオの命名にハンターを目指すビオンも感慨深そうに微笑みだした。
「いい名前じゃないか! ハンターの間でもリオレウスはレウスと略して呼ぶらしいしなぁ!」
囲んでレウスをまじまじと見る三人。その後ろで眉を顰めながら二人が話していた。
「村長。さっきの紅い光は?」
「……分からん。長年、絆あわせの儀式をやっていたわしでも初めてみた」
「見たところ、レウスに異常は無さそうですが……?」
「むむむ……そうじゃな。少し気がかりだが、今はレウスの誕生を祝おう。そしてこのまま様子を見てみるぞ」
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【スモス村】
「まずは初めてのオトモンの孵化。おめでとう!」
「ありがとう、ビル先輩!」
三週間訓練させた後輩の早い成長に、ビルもついに笑みが溢れてしまった。しかし成長が早いからこそ舐められないようにと、表情を戻し声を張り上げる。
「しかし、あくまでスタート地点に立っただけだ。これから更に厳しい訓練が待っているぞ!」
「はい!」
狩猟やライドの練習が待っていると思っているリオ。しかし、ライダーになって最初の訓練は……。
「よし。昼まで厩舎で作業をしてくれ。丁寧にやれよ」
「えっ? 厩舎?」
「掃除とか餌の準備とかやるんだ。始めてだから不安か? 大丈夫。厩舎に担当のアイルーがいるから、そいつの指示に従うだけでいい」
「はい。わかりました……」
ビオンと共にレウスを厩舎に預けてきたナビルーが戻ってきた。
「二人で何を話していたのだ?」
「あ、ナビルー。ライダーになって最初の訓練が厩舎の作業だって……なんか思ったのと違ったなぁ」
「まぁ、厩舎はレウスのお家でもあるんだからな。これもオトモンと絆を深める為だ。頑張れ!」
ビルから課された地味な訓練に少しガッカリしてしまったがナビルーの言う通り、レウスの為にも絶対にやらなくてはいけない事だ。
「そうだな。よし、行ってくる!」
◇
広場の奥にあるスモス村のオトモン厩舎。基本オトモンは大きな身体を持つ為、厩舎もかなり大きく設計しなくてはいけない。
「ニャ、リオ! ここに来たという事はライダーになったのかニャ?」
二足歩行で立つ猫のような獣人族”アイルー”。ヒトの言葉を話せる為、人間社会に馴染んでいる種族。
この麦わら棒と水色のオーバーオールを着た厩舎アイルーもその種族の一匹だ。
「ああ! なんとかタマゴの孵化もできたよ!」
リオがライダーになったと知ると、ニコニコ笑みを浮かべながら喉を鳴らす。そして、全身で喜びと祝いの気持ちを表現してくれた。
「ニャ〜、おめでとうだニャ〜。じゃあ、早速厩舎の作業をしてもらうニャ」
【オトモン厩舎】
「失礼しま〜す?」
古ぼけた厩舎。中はオトモンがリラックスできるようにか暗く、窓から陽光が優しく射している。
村のライダー達のオトモン達が休む厩舎。獣臭いだろうと思っていたが、予想以上に臭いがきつい。というのも最初の作業は……。
「まずはオトモンのフンを掃除するニャ。クサ〜いけど我慢するニャ」
「うげ〜……。いきなりフンの掃除?」
「誰だっておトイレはするし、家が汚かったら嫌な気持ちになるニャ。さぁ、この道具で取り除くニャ」
鼻を容赦なく襲う臭いに耐えながらリオと厩舎アイルーは、フンを取り除く。
「うげぇ、く、臭い……」
「それはアプトノスのフンだからまだマシな方だニャ。草食よりも肉食のオトモンのフンの方がもっとキョーレツな匂いだニャ」
終わる頃には臭いにやられてしまったのか、リオの顔は土気色になってしまっていた。しかし休みたい気持ちも虚しく次の作業に取り掛かる事になる。
「次はオトモンを洗ってもらうニャ。ここのオトモンはやんちゃで狩りの任務もするから、すぐ泥だらけで汚れてしまうニャ」
「ふぅ……お、オトモンをお風呂にだね? まずはこのクルルヤックからか。行こう」
掻鳥“クルルヤック”。ユニークな大嘴と赤と白の羽根、器用に物を運ぶ前脚を持つ中型モンスター。比較的大人しいモンスターで、その温和な性格からこの村でも初心者向けのオトモンと認識されている。
「クアア」
……。
「どうしたんだ? 早く行くぞ?」
「言い忘れてたけど、お風呂を嫌うオトモンもいるみたいニャ」
「え〜……少しだけだから、行こう。ね?」
「クルル……」
このクルルヤックは特に濡れるのを嫌うのか、風呂の時間と分かると微動だにしなくなってしまった。
「ほら、早く。他のオトモンも待っているか〜〜らっ!」
リオがクルルヤックを後ろから押して無理やり風呂場に連れて行く。
「クエエーー!!」
クルルヤックの悲鳴とびちゃびちゃと激しく跳ねる水の音。そして、今度はリオの悲痛な叫びが聞こえる。
「うわー!! ちょっと、暴れるなぁぁ!! 俺まで濡れるって!!」
「う~~……。次はレウスだ……。ほら、レウス」
「ギャウ!」
ガブッ!!
レウスは首を傾げると思いっきりリオの手に噛みついてしまう。
「いってぇぇぇぇ!!」
やんちゃなレウスを風呂に入れると再び水が跳ねる音が響く。
「ギャウ、ギャウ!」
「ちょっと、レウス!! 暴れるなって!」
生まれて初めて見る水。透明で照らされると光り、掴めそうで掴めない不思議なものにレウスは大興奮だ。
しばらくして……。
「ニャ!? リオ、大丈夫かニャ〜!」
全てのオトモンの風呂が終わる。ドアを開けてきたリオは全身が濡れていて、跳ねていた赤い髪も濡れて潰れてしまっている。
「う〜……。ずぶ濡れ……」
「やれやれ。風邪をひくから早く着替えて来てニャ」
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「酷い目にあったよ……」
「最後だから頑張るニャ。オトモンに餌をやるニャ。お風呂ですっきりした後だから、きっと喜ぶニャ」
「う〜〜い……」
またまた休みも無しに次の作業。思ったよりもハードな厩舎の作業に、リオはすっかりげんなりしていた。
「ほら……レウス。ご飯」
「ギャアア!!」
クチャクチャ!!
皿に嘴を思いっきり突っ込み、茶色いオトモン用の餌を食べ始める。生まれたばかりにも関わらず、かなりのがっつき具合だ。
「ちょ、ちょっと! 餌をこぼさないで! また服を替えなきゃならなくなる!」
「ギャウ、ギャウ!!」
生まれたばかりとは思えないがっつき具合。案の定、飛び散る茶色い餌がいくらか服についてしまった。
「も〜……ん?」
「ギュウウ……」
何やらレウスがこちらをまじまじと見ている。
「お、美味しかった?」
また噛まれるのを覚悟で、リオが手を差し出して撫でようとしたその時。
「ギュウウ!」
「えっ?」
レウスはお礼と言わんばかりにリオの手に擦り寄って来た。目を閉じて完全にリラックスしている。
「はは。可愛いなぁ」
「そのレウスはリオにどんどん懐いてるニャ。どうだったニャ? 大変そうだったけどニャ?」
「まぁね。でも、最後の懐きで疲れが吹き飛んだよ。やってよかった!」
丁度厩舎の作業が終わった時。ナビルーが厩舎のドアを開けて様子を見にきた。
「おーい、リオ! 終わったか〜?」
「ん、ナビルー?」
ナビルーが手招きをしてリオをやたらと急かす。
「ビルが良い物をくれるらしいゼ。早く早く!」
「え、なんだ?」
【スモス村 広場】
スモス村の広場にはビルと布に被せられた大きな物が。よく見るとビルが何故かニヤけている。
「おう、リオ! 無事に厩舎の作業を終えたようだな。お前に渡したい物があるんだ」
「ビル先輩、渡したい物って?」
「それは……これだ!」
ビルが勢いよく布を捲ると、そこには鉄製の両刃大剣と赤と黒色の装備があった。
「あ、これは!」
「俺が用意したライダー装備だ! 武器のアイアンソードも新品の物を用意したぞ!」
突然のプレゼントにリオの心は更に高まる。”これからは本格的にライダーとして生きる”。そう言われているようで、同時に気持ちがこの上なく引き締まった。
「わぁ! ありがとう、ビル先輩!!」
「おお、プレゼントって装備だったのだな! なんだかハンターも使うレウス装備に似ているけど……?」
「スモス村の伝統のライダー装備なんだが、昔に本で見たリオレウスの装備に似ているなと思ってな。飾りをつけたりレウスの色に着色をしてみたんだよ」
炎のような赤色と黒い模様は、確かにオトモンにしたレウスにそっくり。
「これからいよいよ本格的な訓練だからな。ビオンの家で装備した後、村を出てすぐの”スカスの丘”へ来いよ!」
「分かった! 準備してくる!」
【ビオンの家】
スモスのライダー装備は激しいライドにも耐えられるよう軽くて衝撃に強い素材で作られている。
これとアイアンソードを装備しただけで、なんだか一気に強くなった気がする。
「どう、ビオン?」
「ははっ。とても似合っているぞ! これからスカスの丘に行くんだな? 怪我には気をつけろよ?」
「ああ、行ってくる!」
リオは装備をしっかり身につけた後、急いで幼体のレウスを抱えてスカスの丘へ向かった。
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【スカスの丘】
「ビル先輩。最初にやる事は?」
「最初の訓練は”採取”と”調合”だ。この先、色々な依頼やモンスターとの戦闘をこなす事になる。その為に植物を採ったり、調合してアイテムを作れるようになるぞ」
「はい!」
「うん。良い返事だ! では、調合器具をやる。早速この辺にある”薬草”と”アオキノコ”を採取し、”回復薬”を調合しろ」
すぐ近くにあるクローバーのような緑草の”薬草”、そして木の下に生えていた”アオキノコ”を傷つけないように丁寧に取った。
「え〜っと……」
調合のやり方を書いてある調合書をしっかり見ながら、調合器具で薬草とアオキノコを液状になるまですり潰し、ビンにこぼさないように注ぐ。
ハンターにとってもライダーにとっても大事な緑色の薬液”回復薬”の完成だ。
「よし、失敗せずに出来たな! 回復薬は外に出るには必須級のアイテムだ。何度も練習して素早く調合できるようになれよ」
「はい!」
元気よく返事し、回復薬をアイテムポーチにしまう。返事を確認したビルはすぐに次の訓練の説明をし始めた。
「次はいよいよ狩猟だ! まだ生まれたばかりのレウスは今回は観戦で学んでもらうぞ。最初は簡単な獲物で訓練だ」
「はい!」
◇
「あれだ、今回はあのアプトノスを狩るぞ。臆病な奴だから逃げる事も多い。出来るだけ素早く大剣で狩れ。パワフルな反撃にも気をつけろよ」
灰色の体色を持つ四足歩行の竜”アプトノス”。ずっしりした身体と角を持つので一見物々しく見えるが、のんびりと親子共々草を食べておりその光景はどこか微笑ましい。
「……」
一回り小さい幼体のアプトノスが親と思われる個体に甘えるように擦り寄り、親も答えるように優しく頭を擦り寄せた。
もう一頭のアプトノスは身体を地面につけ、陽光を浴びながら休んでいる。
「緊張しているのか? 勇気を出さないとライダーにはなれないぞ!」
「ま、まぁ。行ってくるよ……」
レウスとビルに見送られながら、アプトノスの群れに向かっていった。
ゆっくりと群れに近づくリオ。周囲の音や気配に敏感なアプトノスはリオにすぐ気づき、目線を合わせ警戒し出す。
「っ! やあああ!!」
一気に距離を詰めアイアンソードを抜刀し、幼体のアプトノスに斬りかかる。
「……って、おわっ!?」
いくら模擬刀で訓練したとはいえ、今回扱うのは身の丈程もある鉄製の大剣。上手く振るえず攻撃を外してしまう。
「ブオオ!」
パニックになった一体のアプトノスはのそのそと逃げ出すが、もう一体の親のアプトノスはこちらに迫ってくる。
「やばい! くっ!」
「ブオオ!!」
納刀し態勢を立て直すリオ。完全に敵だと認識したのか、親が幼体の前に立ちはだかり精一杯の威嚇を繰り返す。
「仕方ない。目をつぶれ、リオ!」
「えっ!? は、はい!」
ボォン!
「ブオオ!?」
思わず目を瞑った瞬間、炸裂音と共にアプトノスの悲鳴が聞こえる。
二頭のアプトノスがふらつきながら辺りを見渡していた。
「ビル先輩……」
「閃光玉で視界を奪った。今がチャンスだ!」
「は、はい!」
力を振り絞ってアイアンソードを構えるリオ。そして近くの幼体に大剣を振る。
「……!」
しかし、目の前にいたはずなのにまたもや外してしまう。リオの一瞬の曇った表情をビルは見逃さなかった。
「それではライダーにはなれない……いや、この世界では生きてはいけないぞ!」
「うっ……」
「さぁ、狩るんだ!」
珍しく後輩に険しい顔を見せ叫ぶビル。焦ったリオは今度こそとアイアンソードを振り下ろす。
ザァン!!
ようやく当たったリオの一撃。
「ブォォン……」
大剣の一撃を幼体のアプトノスが耐えれるはずもなく、その場に倒れて力尽きる。
「ブォ……ブォォ!!」
悲痛な叫びを上げながら、親のアプトノスは全力で逃げ出した。
……。
先ほどの出来事が嘘かのように静まり返る丘。ビルは険しい顔を崩さずリオに近づいてきた。
「ごめん、ビル先輩。わざわざ助けてくれて……」
「お前、あいつに同情しちゃったんだな?」
「え!?」
完全に心を読まれたリオは驚いて俯いていた顔を上げる。複雑なのかそれとも困っているのか、ビルの険しい顔は曇った顔に変わっていた。
「ああ……。なんか最初は戦いを楽しみにしてたのに、いざ生きている獲物を見ると、手が思うように動かなくて……」
「やはりな……。まぁ一旦村周辺まで戻るぞ。この狩場に長居は一応危ないからな」
「はい……」
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【スモス村周辺】
木の幹の腰掛けに座り、生肉を焼く二人。リオは”訓練で失敗した”と完全に落ち込んでしまっていた。
「グルル……」
レウスは状況こそ理解はしてないものの、主人が落ち込んでいる事は分かっているのか励ますように顔を擦り寄せる。
「まぁ、お前が狩ったのは事実。アプトノスの生肉も手に入った。失敗を気にする事はない」
「はぃ……」
まだ落ち込んでるリオを見て、ビルは一つの問いを掛けている。
「お前は生きる為にはどうすればいいと思う?」
「えっ?」
突然思いもよらない問いにリオは少し驚き、慌てて頭に手を当てて答えを考える。
「えっと……なんだろ?」
「毎日欠かせない事だぞ。朝もやっただろ?」
朝やった事。毎日欠かせない事。思い当たるのはやはり……。
「……食事?」
「そうだ。食事には肉や野菜、魚が欲しいな? つまり元気に生きる為には”命を頂く”必要があるんだ」
「命を頂く?」
その時、リオはハッとする。この村に来た時もこんがり焼いたサシミウオを食べていたし、五香セロリのスープも飲んでいた。
「いきなりだが、元々この村は村長の指示でアプトノスの肉は禁止していたんだよ。『モンスターと共存する村だから』ってな」
確かに最初に村に来て、しばらくはビオンがアプトノスの肉料理を出さなかった。
そして、肉料理を食べれるようになったのは本格的にリオがライダーになる為の訓練を初めてから。
「お前が来た後の日。ビオンがハンターの話を語り続けてから、村長も考えを改められたんだ。『命を頂く事は悪ではなく、むしろ必要なこと』『普通の魚や植物とモンスターで区別して、これは食べていい・これは食べるのは可哀想と決めつけることは愚かだった』と。そもそも植物も魚もモンスターも同じ”命”なんだからな」
ビルは焼いている生肉がコゲないか慎重に確認しながら、語りを続ける。
「様々な食べ物を得て、命を頂く事のありがたさと大切さを知ったんだ。村長も村人達も徐々にハンターに対する考えが変わってきている」
「ビオン……」
自分の知らない所で、ビオンが村を変えようと頑張っている。やはりビオンの”ハンターに対する尊敬”と”村への悩み”は大きいようだ。
アプトノスのこんがり肉を平らげた二人。気づけば空は真っ赤な夕焼けに変わっていた。
「今日は疲れただろう。後片付けは俺がやる。お前はビオンの家でゆっくり休むといい」
「ビル先輩、ありがとう!」
「そうだな。お前もビオンの話を聞いた方がいいかもしれない。きっと考えがガラリと変わるはずだ」
「分かった。また明日も訓練をできる?」
「お、意欲的だな。いいぞ! 早く寝て明日に備えろ!」
【ビオンの家】
「あ、ビオン。帰ってきたゾ!」
「お帰り、リオ!」
トラブルもあったが、ビオンの家に来たら一気に気持ちが和らぐ。
ボロついた家具や雑に道具が詰められたアイテムボックスも見慣れ、もはやここが実家と言ってもいいだろう。
「ビオン、夕飯が終わったら話があるんだけど……」
よく見るとテーブルには複数の油がついた皿や野菜のヘタが置かれている。
「ああ。二人も夕飯を済ませていたのか」
「デザートとしてガーグァのタマゴのスフレを作った。それを食った後に聞くよ」
「スフレを持ってくるから待っててくれ!」
ナビルーが猛ダッシュでキッチンに向かう。この丘には飛べない小型の鳥竜種である丸鳥”ガーグァ”が生息しており、そのタマゴで作るスフレは絶品だ。
「はは、前みたいに転んでぶち撒けるなよ〜」
ビオンが意地悪そうに微笑む。少しのんびりしすぎている所もあるが、料理も釣りも調合もできるビオンにリオはいつしか尊敬の念を抱いていた。
◇
「「「ごちそう様でした!」」」
甘く柔らかいスフレを三人はあっという間に完食。スフレの満足感が一日の疲れを一気に吹き飛ばしてくれた。
「で、話ってなんだ?」
「ビル先輩から聞いたよ。ハンターの話で村を変えようとしていたって。その話で狩りや命を頂く事の大切さを知ったんだ。なんでビオンはそんなにハンターに憧れているんだ?」
リオの質問にビオンは目が開く。その後、柔らかい笑みに表情が変わっていった。
「少し長くなるぞ? ”あれ”は村のルールの制限がまだ緩い時の出来事だったな……」
_
◆
緑が美しい森と丘、スカス地方。そこのライダーの村であるスモス村で育った俺は当然、最初はライダーを目指して生きていた。
【スカスの森】
ある日、俺は外とモンスターへの好奇心から村の外へ出掛ける事にしたんだ。
勿論、『子供を一人で出す訳にはいかない』と大人達に言われるから、門番が目を離した隙にこっそりな。
「結構奥まで来たな……あっ! これって!」
スカスの森の奥に、モンスターの巣が。薄暗い洞窟の中からは迫り来る四つの光。
「ギャギャギャオ!」
「ハオオ!!」
徐々に近づいてくる光。光の正体は二体のランポスの目だったんだ。
「あっ……あ……!」
モンスターを遠くで観察するだけつもりが、縄張りにうっかり入ってしまった。『食われる』『もう終わりだ』と思って恐怖で一瞬動けなかったよ。
「うわあああああ!!」
勿論森の中を全力で逃げたが、相手は素早く駆けて獲物を狩る肉食のモンスター。
簡単に逃げれる訳がない。
「……!? ああ!?」
振り返って追ってくる獲物を見ながら走っていたから、濡れた地面に気づかず滑ってしまう。その時に足を挫いてしまった。
「ギャオ!」
完全に追い詰めたと確信した一匹のランポスが飛び掛かって止めを刺そうとした時。
「でぇや!!」
ザァン!!
「ギァアアオ!?」
脇道の草から突然ハンターが現れ、骨製の大剣でランポスを斬ってくれたんだ。
「ギァアオ!」
不意打ちに驚いた二匹のランポスは後退りした後、巣の方向へ帰っていった。
「あんた、大丈夫か?」
確か……スキンヘッドのおじさんだったな。
「た、助けてありがとう……」
「子供一人で森に来るなんて危険だ。リーダーのドスランポスまでいたらどうなっていたことやら……ひとまず、安全なエリアを知っているからそこに案内しよう。立てるか?」
「足を挫いちゃった……」
「しゃーねぇなぁ」
そのおじさんが俺を担いで移動する事になった。リオ、お前を助けた時みたいにな。
しばらくするとハンターが作ったと思われるキャンプに着く。
◇
【スカスの森 ベースキャンプ】
「回復薬の効果はどうだ? 足の傷が治っているはずだ」
「あっ、歩ける! ありがとう、おじさん!」
はは、確か『おじさん』と言ったらしかめた顔になってた。
「何言ってんだ。まだおじさんじゃないぞ」
『せっかくだから』と肉焼き機でアプトノスの肉を焼いて振る舞ってくれた。その時のおじさんの安心感ある微笑みは今でも忘れてない。
「ふん。美味しいか」
「美味しい! おじさんはハンターなのか?」
「そりゃあ、ハンターに決まっているだろ。他にこんなデカイ武器を持っている奴がどこにいる?」
「あっ、そうか(ライダーもそんな大きな武器持っているけどね……)」
村のルールの制限が緩い時期とはいえ、やはり外の人にライダーの事を明かすのは禁じられていたし、自分が何者か話す訳にはいかない。
俺は早くおじさんから距離を取ろうとしたが……。
「ご、ご馳走さま! そろそろ行かなきゃ!」
「おいおい。こんな森を一人で帰るのか? また奴に襲われるかもしれねぇぞ?」
「うっ……」
「しゃーねぇ。一緒に行ってやるよ。坊主、お家がどこか分かるか?」
ハンターに村を見せる訳にはいかない。しかし、確かにまたモンスターに襲われる可能性はゼロではないので、仕方なくこの男と同行する事になった。
◇
【スモス村 門の前】
「おし、ここか」
外に出ることが少なかったので、意外と見る機会がなかった村の門。この先にいるオトモンはなんとしてでも隠さなくてはならない。
「あっ。ここで待って、おじさん!」
「あっ? なんでだ?」
「えっと……入るのに許可が必要だから!」
「ああ。分かった」
俺は村人達にオトモンを隠させる為、おじさんを門の中で待たせる事にした。
「ビオン! 何処へ行っていたんだ!」
「ご、ごめん。それより! よそ者が来るからオトモンを隠して!」
「なんだって!?」
「ああ、もう! いっつもトラブルを起こすねあんたは!」
しばらく門の前で話をし、村人はそのおじさんにお礼を渡ししばらくしておじさんは帰ることになった。
「本当にありがとう、おじさん!」
「気にするな。人助けが出来なけりゃハンターなんてなれないからな」
すると、おじさんが誰にも聞かれないようにこっそり喋りだした。
「もしかして、ここはライダーの村か?」
「え!?」
「悪い。少し気になって門から覗いていたんだよ」
最悪だ、まさかバレていたなんて。このまま報告されてしまったり、迫害されたらどうしようと思った時。
「お前らのような凄い奴が、隠れなきゃいけないなんて世知辛いの世の中だよ」
「えっ?」
「まぁ安心しろ。別に言いふらしたりしねぇよ。人助けする奴がわざわざ嫌がらせをすると思うか?」
「……?」
「じゃあな。今度は無茶はするんじゃねぇよ。”この自然の中で生きるなら”尚更な」
安心させるようにニッコリ微笑んだ後、そのおじさんは去っていったんだ。
◆
_
「それ以来、俺はハンターに憧れるようになったんだよ」
「そうだったんだ……」
ビオンの人生を変えた大切な思い出。その思い出はハンターの中にもライダーを理解してくれる者がいる可能性を示していた。
「ライダーも凄いけど、ハンターもシビれるゼ!」
「いつかハンターになれるといいな。ビオン」
「ああ、村長が許可させてくれればな……」
『ハンターになれるといいな』。リオの何気ない言葉にビオンはらしくない不安そうな顔にさせてしまった。
村の者がハンターに対する意識が変えてきているとはいえ、ハンターになる事まで許可させてくれるとは限らないからだ。
「まぁ、今日はもう遅いから寝るぞ。特にリオ。明日もライダーの訓練があるからな」
「ああ、そうだな」
ビオンやビルの話を聞いてすっかり立ち直ったリオ。”明日の訓練はどんなものなのか”。心が気合いとやる気に満ち溢れたままベッドに向かう。
「おやすみ」
「「おやすみ〜」」
暗くなり、月の明かりだけ照らしてくる部屋。
「(今頃、レウスは厩舎で何しているんだろう)」
今日から別の場所で寝ることになったリオとレウス。リオはオトモンのレウスの事を想うとなかなか寝付けなかった。
◇
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【スモス村 朝】
再びスモス村全体に暖かい陽光が射す。起床時に迎えるその光景は、もはやリオからしても見慣れている。
「ふあぁ……早く厩舎に行かなきゃ」
朝にやることはまず厩舎の作業。リオはレウスに会いたい気持ちから、小走りで厩舎に向かった。
◇
【オトモン厩舎】
「レウス、おはよ~……って、ええぇっ!?」
「グアァ!」
リオはレウスを見て一瞬自分の目を疑った。
あんなに小さかった幼体のレウスが、なんとたった一日で立派なサイズに成長していたのだ。
「れ、レウス!? なんで!?」
「遅刻もせず早い行動だニャ」
「偉いゾ! よしよし」
声に気付き、後ろを振り向くと厩舎アイルーとナビルーも厩舎にやって来ていた。
「ねぇ、レウスがもうこんなに!?」
「それは分かっているニャ。オトモンは専用の餌、そしてライダーの絆という幸福を受けてすぐの乗れる程のサイズに早く大型化する習性があるんだニャ」
「そ、そうなんだ」
分かったような分からないような……リオの困惑の感情は収まらない。
「このレウスはまだ小さい方だぞ。きっとこれからもっと大きくなるはずだゼィ!!」
確かに大きくなったとはいえ、レウスはまだ小型モンスターのアプトノスと同じくらいのサイズ。よく知られるリオレウスはそれこそ巨体と言えるほどのサイズなはずである。
「あっ! と言うことは、もうライドできるということか!」
「ニャ。そういうことニャね」
”ライドオン”。ライダーがオトモンに乗る事を指し、練度が高ければライダーの優秀な知性とモンスターの強力な力が合わさった一身一体の動きや戦闘を可能とする。
「おー! ついにリオのライドが見られるのか! 楽しみだ!」
「よし、レウス。外で訓練するぞ!」
「グアァ!」
レウスが返事として咆え、リオ達はビルが待つ外に向かう。
◇
【スカスの丘】
外に出ると暖かい陽光と清々しい風がリオとレウス、ナビルーを迎えてくれた。
初めてのライドオンに相応しい天候と丘。
「ビル先輩! 早くレウスにライドしたい!」
「まぁ、慌てるな。ライダーが気持ちはオトモンにも通じてしまう。まずはお前が冷静になれ」
「ん、分かった。スー、ハー」
目を閉じて深く息を吸い、深呼吸。そして覚悟が決まると目線を合わせレウスに話しかける。
「レウス、ライドオンさせてくれ。ライドオン! リオレウス!」
「グアア!!」
……。
「アレレ? レウス、何やっているのだ?」
ピクリともしないレウスにナビルーが疑問を持った。というのも、普通オトモンはライドの為に呼ばれたら自ら寄ってくれるものだからだ。
リオは首を傾げながら仕方なくリオ側から歩み寄り、乗ろうとする。
「……」
ジロリとリオを見つめるレウス。
「……! 待て、リオ!」
「グアア!!」
「え、レウス! ……うわぁ!」
乗り掛かった瞬間、リオを振り落とそうと思ったのか暴れだすレウス。振り落とされたリオは当然尻餅をついてしまった。
「いってー!!」
「だ、大丈夫か!? リオ!」
予想外のレウスの行動に、ナビルーは驚きを隠せない。
慌ててビルもリオに駆け寄る。
「だから待てと言っただろ。明らかにレウスの表情がおかしかったぞ!」
痛みが走る尻を擦りながらリオは立ったが、あまりの痛さにまだふらついてしまう。
「な、なんで暴れるんだよ! レウス!」
心配そうに小走りで寄るナビルーが、しばらく目を閉じて考えてみる。
「レウス、何か気に入らないんじゃないのか? 心当たりは?」
「うーん、幼体の時はなついていたのに……。やんちゃだったけど」
”やんちゃ”。その言葉にビルが反応した。
「あぁ。もしかしたら成長したのが原因かもな」
「えっ?」
「幼体の時よりも力も身体も強くなったから、更にやんちゃで暴れん坊に変わってしまったのかもしれない……。別の後輩もこの事で悩んでいたんだよ」
「そんな……。乗せてくれないのか、レウス?」
「グアア!」
まだレウスはライドオンを理解していないのか、乗られる事を嫌がってしまう。
『やめろ、急に何をするんだ』と言いたいのか、リオに軽く吠えだす。
「た、大変だー!!」
急に丘に大声が響き渡る。村の方向から村人が慌てるように走ってきた。
「ん、どうしたんだよ?」
「はぁ……はぁ……それが近くの森でイャンクックが暴れているんだ! 方向的にもう少しで村に来てしまう!」
「何、あのイャンクックが!?」
妙に大袈裟に驚くビル。その焦り様を見て不思議そうにリオは話しかける。
「イャンクックってそんなやばいモンスターなのか?」
ナビルーが話に割って、得意げに説明をし始めた。
「なんだ、イャンクックを知らないのか? 大型モンスターの中では比較的小柄で、全体的に見ればそこまで凶暴ではないが、新米ハンターには十分脅威になる鳥竜種だ! 本来臆病な性格なんだけど、そのイャンクックが暴れているとはただ事ではないなぁ」
「や、やけに詳しいなナビルー。『ただ事ではない』ってどういうこと?」
「そのモンスターが異常な行動を起こした時は、大抵生態系にも何かが起こっているということだ。例えば外敵がいなければイャンクックも暴れるわけがないからな」
どうやらビルは何か恐ろしい脅威が森にいると推測しているようだ。
考え込む余裕もないのか、村人がビルの判断を急かす。
「なぁ、ビル! あんたとドスランポスで追っ払ってくれよ! アオイとアシラは村の警備を担当するらしいからさ」
「リオ。お前が行け」
「「えっ!!」」
ビルの突然の指示にリオとナビルーは驚きを隠せない。
「ライドオンが出来ないのに、いきなり戦うのか!?」
「むしろこれはチャンスだ。この本格的な戦いでレウスとの絆を高めるかもしれない。それに、今のお前が狩りをしっかり出来るかも気になるからな」
レウスを孵化させてから一日しか経ってない。にも関わらずいきなり中型モンスターではなく大型モンスターと戦うことになり、一気に緊張感が増してきた。
「飛竜のリオレウスがオトモンだから、イャンクック程度なら心配いらないが……まぁ、安心しろ。仮にまずい状況になったら俺とドスランポスが加勢する。まずはやってみる事だ」
◇
【スカスの森】
いつもに比べ静かな森。ランポスどこらか多数生息しているアプトノスすら、イャンクックに怯えているのか姿を消していた。
「あっ、いたゾ。アイツがイャンクックだゼ」
ナビルーが指した方向に大きな影が蠢く。
しゃくれた大きな嘴にこれまた大きなエリマキ、桃色の甲殻、翼に青い翼膜と、とてもユニークな見た目の少し大型の鳥竜種の怪鳥”イャンクック”がいた。
どうもドスランポスやドスファンゴに比べれば、そこまで凶暴な印象は受けない。
「もう前のような失敗はしない! いくぞ。レウス!」
「グルル……」
明らかに力が籠っていない鳴き声にリオはレウスはやる気を出していない事を悟った。
しかし、村に向かっているとなるならもはや一刻も猶予はない。アイアンソードの柄をしっかり握り、慎重にイャンクックに近づく。
「……!? クエエエ!!」
しかしエリマキのような耳は敏感なのか、わずかな足音ですぐに気づかれてしまう。
リオを見るなり、鳴き声を上げながら火球を口から吐いてきた。
ボゥ!!
「うわああ!!」
「ニャニャニャッ! リオ、しっかり!」
想像以上の威力。ボゥと大きな音と共にリオは吹き飛ばされる。
「グアア!!」
「クエエエエィ!!」
主人が吹き飛ばされてレウスも驚いたのか、威嚇の声を上げた。
本気ではないとはいえなかなか威圧感のある鳴き声だが、それでもイャンクックは全く引く気配を見せてくれない。
「クエエ! クエエ!!」
それどころかレウスを見てパニックになり、更に暴走気味になり始める。
鳥竜種よりも遥かに生態系の位が高い飛竜種。思わぬ場所で強敵と遭遇したので、強い興奮状態になってしまっている。
「くっ! うあっ!」
倒れている内に暴れるイャンクックに何度も踏みつけられてしまう。
やはり大型モンスター。重量がかなりあるので、踏みつられるだけでもリオにとっては十分攻撃になっていた。
「流石にまずいゾ! ビル、早く助けようゼ!」
離れた崖でナビルーを声を張り上げる。
「待て。もう少し様子を見るぞ」
「で、でも!」
「グアア!!!」
レウスも主人を踏みつけられて危機感を感じたのか、イャンクックに近づき追い払おうとする。
「クエ! クエエエ!!」
ゴッ!!
更にパニックとなり暴れるイャンクック。バタつく動きが激しくなり、その拍子でリオを蹴飛ばした。
「ぐっ……」
「!」
放物線を描いて吹き飛ぶリオ。リオは攻撃を受けすぎて、いつの間にかボロボロな身体になっていた。
「レウス……頼む、力を貸してくれ……」
「!!!」
再びリオに近づいたイャンクックは大きなクチバシでトドメを刺そうとしている。
ドォーンッ!!
その時、突如森に光と轟音が広がる。レウスの口から放たれた球状の炎ブレスがイャンクックを襲い、一撃でダウンさせた。
「クエエエエッ……!?」
そして、リオの前にはついに覚悟を決めたレウスが立ちはだかっていた。
「レウス、ありがとう……!」
「グルル!」
優しい表情でリオを守るレウス。その表情は幼体の時を思わせる暖かい顔だった。リオもそれに応えるように立ち上がり、絆石を構え……。
「ライドオン! リオレウス!!」
「グアアアアア!!!」
リオは絆石を光らせ、レウスの鞍に乗った。
初めてのレウスにライド。しかし初めてとは思えない程、レウスへの安心感や魂の繋がりを感じる。
「おー!! ついにレウスがリオを乗せてくれたゾ!」
「行くぞ、レウス!! ……っておわ!?」
「グアアアアア!!!」
リオの絆石が光り輝くと同時に、レウスが大きな翼を広げ、空気が張り詰める程の咆哮を上げる。
そしてそのまま急上昇。空高くへと飛んで行った。
その美しい絆石の輝きにナビルーが思わず叫ぶ。
「ああ!? あれはまさか!!」
ボオオオォォ!!!!
炎を纏いながら脚を突き出して急降下するレウス。急降下していくレウスの炎は彗星のように輝いた尾を引きながら、そのままイャンクックに爆炎のキックを食らわせた。
ドォォォォォン!!!!!
天高くまで突き出す爆炎の巨柱。レウスが着地した瞬間、吹き飛ばされたイャンクックが強く地面に叩きつけられた。
「クエェ……」
流石にイャンクックがこの大技に耐えれるはずもなく、そのまま力尽きた。
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「やったー!! もう”スカイハイフォール”を使えるなんて、さっすがー!! 最高にシビれたゼ!!」
飛び跳ねながら喜ぶナビルーがそのまま飛びついてきた。
「今のはなんだ!?」
ビルがゆっくりと歩きながら近づく。その顔は今までに見せたことのない笑顔。
「今のは”絆技”。ライドしたライダーとオトモンの絆が高まった時に放てる強力な必殺技だ! あの大技をこんな早く使えるようになったライダーは初めて見たぞ!!」
「そんな技が……すげぇな、レウス!」
「グゥゥ……」
手でレウスを優しく撫でると、レウスがそっと傷口を舐め始める。
「レウス?」
「ん〜。これはたぶん、レウスが謝っているんじゃないかな? 暴れたり戦闘で動かなかったりとか」
レウスの目は悲しそうな目に変わっていた。せめて血が出ないようにと一生懸命リオの全身を舐め始める。
「あはは、くすぐったい。いいんだよ。レウス。これからもっと絆を深めような!」
「グアア!!」
主人の無事を確認をすると、安心したのか元気よく咆えた。
「うーん……」
「どうしたんだ? ビル先輩」
さっきまで笑顔だったビルだが、息絶えたイャンクックを見て、深刻そうに考えている。
「やはりこのイャンクックは異常な程に怯え、暴れていた。一体何が……?」
「むむむ〜、村の方向へ一直線に行っていたらしいけど、何かから逃げていたとかなのかもしれないな」
やはりモンスターに詳しいナビルー。いつもは変なアイルーだが、妙に知識が豊富だ。
「もしかして、近くに危険なモンスターが……」
何やら不穏な事態。
レウスにライド出来るようになったリオだが、ただならぬ脅威の予感に不安の表情を隠せなかった。
◇
【とある森】
とある森にある飛竜の巣には、タマゴを大事そうに守る飛竜が。
一生懸命産み、外敵から死守したタマゴ。『我が子はいつ生まれるのか』と飛竜は胸を躍らせていた。
「グルル?」
ふとすると飛竜は周りの気配を感じ取る。
しかし、周りを見ても誰をいない。何か違和感を感じ、空を見上げていると空が徐々に紅く染まっていく。
「グオォ……」
不気味な紅い空から火の粉のように降ってくる紅い光の玉。それと同時に飛竜は”何か”に身体を支配されていく。
「グオオオオオアアアアア!!!」
そしてその飛竜は苦しそうに唸り初めた後、やがて紅い光を放ちながら、周辺を揺るがす程の恐ろしい咆哮を上げた……。
続く
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●今回のおまけ
リオ
年齢:十二歳
性別:男
職業:スモス村の新米ライダー
容姿:リオレウスを模した後ろ向きにはねた髪型”レウススパイキー”。朱と青みがかった黒の髪色。青色のややつり目、キリッとした黒い眉毛。眉毛も黒髪の毛と同じく青みがかっている。
好きなもの:レウス、こんがり肉
説明:スモス村のライダー。
明るく元気一杯な性格で、仲間やオトモンを大事にする心優しい少年。
川に流れついている所をビオンに助けられた。
記憶喪失らしく、自分が何者だったのかも故郷も親も分からず、ビオンの提案からスモス村のライダーとして住む事になる。
◯武器
⚪︎アイアンソード(大剣)
ライダーも護身用に使用する、大剣の基礎を詰め込んだ一品。強烈な一撃を放つことが可能。
身の丈程もある刀身はかなりの重量があり、自在に振るうには力と技量が必要。
◯防具
⚪︎ライダー装備
スモス村のライダー達の装備。
激しいライドにも耐えられるよう軽くて衝撃に強い素材で作られている。
リオの物はレウスシリーズに似た装飾や配色で、本来はもっとすっきりとしたデザインで配色も違う。
ビルがプレゼントする際に、オトモンのレウスに似るよう村の加工屋の者に改造を依頼したようだ。
◯オトモン
⚪︎レウス(リオレウス)
共に流れ着いていた白いタマゴから孵った火竜”リオレウス”。
主人のリオに似たのか、元気いっぱいで心優しい。幼体の時はかなりやんちゃだった。
リオレウス
別名:火竜
種族:飛竜種
レア度:★6
属性・状態異常:火属性、毒
主な生息地:森林、火山、沼地、高山
『天空の王者』または『空の王者』の異名を持つ大型の飛竜種。
鷹を思わせる嘴を持つ顔、全身を覆う赤と黒めの甲殻、立派な翼と脚、横に棘がついた尻尾など、刺々しいスタンダードな翼竜のような見た目をしている。また火竜の雄個体でもある。
異名の通りの驚異的な飛行能力を持ち、空から業火のような炎ブレスを吐く上、脚の毒爪で引っ掻くことも。
雄々しくも恐ろしいモンスターだが、幼体の頃は親に愛情をたっぷりと注がれ、逆に子育ての時は番と幼体に愛情を注ぐ一面もあり、オトモンのリオレウスも信頼と愛情を得れば強い絆を結べるはずだ。
タマゴを手に入れるのは困難。しかし無事オトモンにし絆を深めた時は、立派な一流ライダーに成長していてリオレウスも最高のパートナーになっていることだろう。
絆を結んだリオレウスにライドして飛行すれば、素早く移動でき障害物も軽々超えられる。
◯主な技
⚪︎豪火球
通常の炎ブレスよりもかなり威力が上がった大きい火球を吐く技。着弾すると爆炎が炸裂する。
⚪︎毒キック
飛びながら出血性の毒を含んだ脚爪で思いっきり引っ掻く。相手を毒に侵す。
⚪︎炎ブレス
大きな火球を吐く。威力もなかなか高い。
⚪︎回避の構え
自慢の飛行能力で攻撃を回避する。
◯絆技
⚪︎スカイハイフォール
咆哮した後、高速で飛行し雲を越えるほどに上昇。特大の炎を纏いながら急降下蹴りし、地を爆砕する。
相手は巨大な火柱に吹き飛ばされとてつもない大ダメージを食らう。
アプトノス
別名:不明
種族:草食種
レア度:★1
属性・状態異常:無属性
主な生息地:森林、砂漠、密林、沼地、火山、雪山、洞窟、高山
主に緑豊かな地に多数生息している小型モンスター。
戦闘能力が低く数も多いので小型モンスター扱いだが、一応体格はドスランポスよりも上。外見はずっしりとした四足歩行に灰色の体に上に身体に沿った黒い模様があり、頭にはトサカに似た角、尻尾には棘が付いている。
とても温和で人間に家畜として飼い慣らされる事もある。実は絆石無しで人を受け入れるモンスターは珍しい。
野生の親の危険度の低さやそして元々絆石無しでも人にある程度慣れる事もあって、タマゴ入手もオトモンとして育てるのも他のモンスター比べて楽なので、駆け出しのライダーの最初のオトモンにする地域もあるようだ。
残念ながらオトモンになっても戦闘力は最低レベル。
しかし、アプトノスは癒しの咆哮で味方を回復したりと意外な能力を持つ。狩猟笛の音色のヒーリング効果と似たようなものだろうか。
◯主な技
⚪︎観察
相手を観察し弱点などを見抜く。元々アプトノスは遠くの外敵を察知できるほどに感覚が鋭い。
⚪︎道草採取
その場に生えてた薬草を食べ自身の傷を少し癒す。
⚪︎山菜採取
栄養のある山菜を食べ、状態異常を治す。毒などに侵された味方を心配し山菜をあげて治療する事も。
⚪︎癒しの咆哮
ヒーリング効果のある咆哮で味方を癒す。
◯絆技
⚪︎スリッピングダイブ
敵に猛突進しようとするアプトノス。しかし盛大につまずき縦回転しながら滑べってしまう。ライダーは振り落とされ、アプトノスは敵に向かって真っ逆さまに落ち、ダメージを与える。
アプトノスは勿論、ふくよかな身体の下敷きになった相手も思わずダウンする。