モンスターハンターストーリーズ 紅玉の絆石   作:ルークス

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大変長らくお待たせしました。
衝撃展開の第三話公開です!

感想、お気に入り、評価はモチベーションが上がりますので良かったら是非……。


第三話 襲来する厄災

【あらすじ】

 リオがライダーになる為の訓練をしてから三週間。タマゴを孵化させる絆あわせの儀が行われ、ついに白いタマゴが孵化。

 生まれたのは『天空の王者』の異名を持つ火竜”リオレウス”。そのリオレウスは”レウス”と名付けられ、リオのオトモンになった。

 その後、ライダーとなったリオは厩舎の作業や初めての狩りで、オトモンを育てる事や命を頂く事の重みを知り成長していく。

 

 イャンクック戦ではレウスが言う事を聞いてくれず苦戦をするが、傷つけられたリオを見てライドオンを受け入れる。

 そして、レウスの絆技”スカイハイフォール”で見事イャンクックを狩猟した。

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【挿絵表示】

 

第三話 襲来する厄災

【スカスの丘】

 心地良い風が吹く丘。

「ブオ……フォム」

 外敵がいないと思ったアプトノスの二頭が、今日も生きる為に草を頬張る。

「ブオーン」

 それはスカスの丘や森ではよく見る穏やかな光景……のはずだった。

「……!? ブオオ!!」

 一匹のアプトノスが”何か”を察知し、仲間達に警告の声を上げる。

「ブオ!」

「ブオオ!」

 次々と別のエリアに逃げようとするアプトノスの群れ……その時。

 

 ボオオオオオ!!

「ブオオオオ!!」

「ブォォォン……」

 

 穏やかだった緑の丘を焼き尽くす赤い炎。二頭のアプトノスが拡散する炎の餌食になってしまった。

「ブォォ……」

 丘の奥から現れたのは大顎を持つピンク色の大型竜。その上には小さなピンクの少年ライダーが乗っていた。

 先程まで共に生きていた仲間が焼け死んでしまった。しかし一頭になったアプトノスは怒る事ができず、残っていたのは恐怖の感情だけ。

「ブオオン!!」

 せめて仲間の分まで生き延びようと全力で走るアプトノス。

 

「ふふ、逃げられると思った?」

 

 丘に響く”肉が潰された音”。アプトノスの想いも虚しく、空から舞い降りたハンターの鋭い爪に潰され、群れは全滅した。

 空からのハンターの正体は華麗な飛竜と女性ライダー。飛竜の青く美しい身体は返り血で一部が赤く染まっている。

 

「丁度、こいつらも腹が減っていたんだよ! 姉御、食いましょうぜ!」

「そうね。長旅で食糧も尽きてきたしね」

 

    ◇

 

 二人のライダーとオトモンはアプトノスの肉を食すと、再び丘の端へと向かう。

「ここにライダーの村があるって聞いたんですけどね〜」

「……おかしいわ。グリフ曰く、スカスの森でライダーに会ったらしいし、近くにライダーの村もあるはずなんだけど」

「もうかれこれ二週間、この地方で”例のブツ”を探しているけど、ぜーんぜん見つからないですぜ。もう諦めます? 姉御」

「……その『姉御』って言い方、やめてほしいのだけど? まぁ、まだ端の方は探していないわ。そこも調査するわよ」

 

    ◇

 

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 スモス村の先輩ライダー達の中でも特に優秀な二人である、ランポスモヒカンという赤と青の髪型のビルと、アシラモヒカンという青と黄の髪型のアオイ。

 

 ビルはスモス村の頼れる先輩ライダーの男性。オトモンは赤いトサカと青い身体と黄色い嘴を持ち、二足歩行で駆ける鳥竜種”ドスランポス”。

 二人はなかなか長い付き合いで、戦闘での素早い連携は群れで狩りを行うランポス種の生態を彷彿させる。

 

 アオイは少し豪快で食いしん坊なライダー。オトモンは青い甲殻と黄色い毛並みを持つ牙獣種の青熊獣”アオアシラ”。

 彼女はオトモンの”アシラ”と共に攻防の強さが評価されていて、ビルが二十一歳に対しアオイは十三歳という若さで先輩ライダー達と同格の位置にいる。

 

「ゴクゴク……」

 いつ見てもアオイは黄色の飲み物を飲んでいる。謎の飲み物が気になってリオはつい見つめてしまった。

「……さっきから何見てんら、リオ」

「アオイっていつも飲み物を飲んでいるよな。それはなんだ?」

「……プハァー。これは自作のハチミツ茶ら。あたしの故郷では人気な飲み物で毎日のように飲んでいたら」

 

 まるでスモス村が、故郷ではないような発言に違和感を覚える。

「えっ。アオイはここが故郷じゃないのか?」

「違うらよ。ここからちょっと遠い”ジンライ村”出身ら」

「ジンライ村ってどんな所?」

「そうらね~。紅葉が綺麗らし、温泉もあるらし、旨い飯もハチミツもある最高の村ら!」

 ……随分と適当な説明。しかし指摘すると怒って面倒な事になると思い下手に喋らないようにする。

「へ、へぇ……良いところなんだな。でも、なんでアオイはここにいるんだ?」

「……まぁ、色々あって出ていく事になったんらよ。そして空腹で倒れそうな所を、まだよそ者に寛容な時だったスモス村のライダー達が助けてくれたんだら」

「そうだったんだ。『空腹で倒れそうな所を』ってナビルーと似てるな」

 

 アオイはナビルーの事を信用していないらしく、似てると言われた途端に怒りだす。

「あんな胡散臭いちんちくりんと一緒にするな!」

「おい、そんな悪く言わなくても……」

「……ごめんら。てかあいつ、何かを解決しにここに来たって行っていたら。あの話は結局どうなったんら?」

 

「”紅力化”の原因を解決する為に来たんだゾ」

「「!」」

 

 二人が振り替えるといつの間にかドーナツを頬張っているナビルーが立っていた。

 

「ああ。そうだったら」

「て言うか、『胡散臭いちんちくりん』ってなんだよ! まだこのナビルー様の伝説を信じてないのか!」

「だって見た目が変らし、『世界一のライダーと共に世界を救った~』とか『世界を救った力を持っている~』とか、そんな凄いアイルーには到底見えないら。後、見た目が変だし」

「本当だってば! 後、なんで『見た目が変』を二回も言ったんだよ! ぐぬぬ~いちいちムカつくヤツだな!」

「ま、まぁまぁ二人とも」

 またヒートアップする二人をリオがなんとか抑え、二人の距離を少し離させれる。

 

 怒りの感情を抑えたナビルーが、今度は困り顔に変わってしまう。

「それにしても、全然紅力化の情報が無いな~。この辺りなら、”凄いライダー”がいるって聞いたんだけどなぁ」

 腕組みしながらぼやくナビルー。突然言ってきた凄いライダーとはなんだろうと思ったリオがナビルーに質問する。

「凄いライダー?」

 

「情報が少なすぎるし本当かも分からないけど、ここに『天から舞い降りる絆』……だっけ? とにかく凄いライダーがいるって聞いたから来たんだよ。知らないか?」

 『とにかく凄いライダー』。曖昧すぎる情報に二人も思わず困ってしまう。

「なんじゃそりゃ、嘘臭いら。『天から舞い降りる』って神様じゃあるまいし」

「うーん、そもそも俺は昔の記憶がないし……」

「ムムム、どうしよう。紅力化モンスターも見かけないし、いっそのことビオンのオトモアイルーになって他の場所に連れてってもらおうかな~」

「えっ! どこかに行っちゃうのか、ナビルー」

「悪いな、リオ。こうしている間にも紅力化の脅威が広がっているかもしれないし、オレの仲間達もあちこちで解決しようと情報を探しているんだ」

「そんな……」

 せっかくできた相棒の突然すぎる別れ。聞いたリオは当然落ち込んでしまった。

「ヘヘッ、心配すんなって! 他の仲間達と負けないぐらいリオと絆は固く結んだゾ。一度結んだ絆は絶対に切れないからな!」

「……あ、ああ」

 ナビルーが落ち込ませた事を察しありったけの笑顔を見せるが、リオの曇った表情は消えない。

 

「ま、まぁ。とりあえずリオ。ライダーの特訓の時間ら」

「わかったよ……」

 うつむきながら訓練所に向かうリオ。『これは言うべきだったのか』と悩むナビルーも重い空気に困るアオイも慌てて着いていく。

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【スモス村 訓練所】

 スモス村の下の丘には広々とした草原の訓練所がある。そこではビルとドスランポス、アオイとアシラ、ライダー装備を着た新人ライダー三人とそれぞれのオトモンが立って待っていた。

 

「待っていたぞ、リオ! さぁ、今日はライダー同士のバトルの訓練だ!」

「えっ、ライダー同士で?」

「ライダー同士のバトルはライダーとオトモンのタッグで戦いだ。今回は俺とお前ら後輩ライダーとで戦うぞ。武器は使用禁止にしようかな」

 

 初めてのライダー同士のバトルに落ち込んでいた気持ちが一気に引き締まる。

 

    ◇

 

「では、順番に掛かってこい! まずはノスからだ!」

 一番目はアプトノスの棘のあるトサカを模した髪型の少年”ノス”。

「頑張ろうね、アプト」

「ブオオ?」

 

「よーい、始め!」

 アオイが合図を出すと共に、訓練が始まる。

 

「ライドオン、ドスランポス!」

「ライドオン、アプト!」

 

「えっと、えっと……うわぁ!」

 アプトノスにライドオンするノス。だが、アプトノスが突然のライドオンに驚き暴れだす。

「いけ、ドスランポス!」

 

 ドン!

 

「うわぁ!」

 勝負は一瞬でつく。ライドにもたついているノスをビルのドスランポスが突き飛ばした。

「うぅ……僕のアプトと先輩のドスランポスで、なんでここまで違うんだ……?」

「君の場合は単純に練習不足だ。この前も戦闘の練習を怠っていただろ?」

「うぅ……」

 

     ◇

 

「はい、次はヤクル!」

 次はクルルヤックの白い羽根と赤いはねた羽根を模した髪型の少女”ヤクル”。

「クルル、行くよ。ライドオン、クルルヤック!」

「クルアァ!」

「おっ。この子はライドを受け入れているな。関心関心!」

 

「よーい、初め!」

 

「クルル、まずは守りを固めるよ! ロックシールド!」

 クルルヤックが前脚で地面を掘り、岩を構える。

「さぁ、これで手も足も出ないでしょ?」

「ドスランポス、強襲蹴り!」

 岩を構え少し強気になるクルルとヤクル。岩を盾にし攻撃を受け止めようとする。

 

 ザァン!

 

「キャア!!」

「クルアァ……」

 しかし岩を盾にしたにも関わらずドスランポスの蹴りの威力に耐えきれず、クルルヤックはノックアウトされてしまった。

 

「な、なんで守ったのに……」

「盾で様子を見て、隙をつき急所を岩で殴ろうとしたな? お前はちょっと消極的すぎだ。不安なのは分かるが、ライダーの感情はオトモンにも伝わってしまうだぞ?」

「うぅ、グス……」

 

    ◇

 

「はい、次はブラク!」

「ライドオン、ドスファンゴ!」

 次はドスファンゴの曲がった大牙や茶色と白の毛を模した髪型の勝ち気な少年”ブラク”。

「ブウゥ!」

「見た感じ、お前のオトモンは結構鍛えられているな」

「俺様のドスファンゴは他のオトモンとは違うぜ!」

 

「よーい、初め!」

 

「ファンゴ、ガンガン攻めるぞ! 必殺タックル!」

「ブィィ!」

 ドスファンゴの全力の突進。ずんぐりとした身体からは想像もつかない程のスピードでドスランポスに迫ってくる。

「避けろ、ドスランポス!」

 ビルの指示を聞き、ドスランポスはバックステップで避けた。

「ふん、まだだ!」

「ブィィ!!」

 狙いを定め再び突進。

 

 ザァン!

 

 しかし今度は横に避けられ、即座に爪の反撃を食らわせられる。

 

「ぐっ、なんで! 当てろ、ドスファンゴ!!」

「ブィィィ!!」

 いくら先輩ライダーと言えど、ドスファンゴの必殺技タックルが当たればひとたまりもない……はずなのだが、全て簡単に避けられてしまった。

 

「くそっ、なんで当たらない! ファンゴ、もう一回だ!」

「ブ、ブゥゥ……」

「お、おい! どうした、早くしろ!」

「隙あり! ドスランポス、はやての一撃!」

 

 ザァン!

 

「うわぁ!」

「ブモォォ……!」

 ドスランポスの素早い一撃が急所に入ったのか、ドスファンゴは倒れ、少年は振り落とされてしまった。

 

「くっ、くっそー! 強い技を使ったのに!」

「むしろそれが敗因だぞ、ブラク」

「んっ?」

「お前は強い技に過信しすぎているし、そんなに連発したらオトモンは疲れてしまい隙が生まれてしまう。強い技こそ、ここぞという時に使うんだ」

「く、くぅーっ!」

 

     ◇

 

「残念ながら、お前ら三人は訓練失敗だ」

「「「うぅ~……」」」

 

「しかし、三人共バトルへの意欲はよかった。この失敗で落ち込まず、むしろ経験として次の訓練に活かすんだ」

「「「……はい」」」

「最後はリオだ。三人共、優等生のバトルを手本としてしっかり見とくんだぞ!」

「へへ、優等生ってそんな。手本になるよう頑張らなくちゃ」

 

 

「よーい、初め、ら!」

「ライドオン、ドスランポス!」

「ライドオン、リオレウス!」

 

「ギャギャギャオ!」

「グアアアアア!!」

 

 訓練所全体を揺るがす咆哮。思わず耳を塞ぐ程の声量に、さっきまで余裕を見せていたビルとドスランポスの目付きが鋭く変わる。

 

「レウス、力で押せ!」

「グアア!!」

 巨体を持ちながら軽やかに空を飛ぶ火竜。その脚のナイフよりも鋭い爪が黒光りしている。

「(あの爪、まともに当たったら一撃だな……)」

「食らえ、パワー攻撃だ!」

 ドスランポスに飛来し、全体重を乗せて上から引っ掻こうとする。

 

「ドスランポス!」

「ギャア!」

 

 ダッ!

「何!?」

 ビルの指示を聞くなりドスランポスは全力の走り、飛び付いて爪をかわしレウスを噛み付いた。

 しかし、レウスの赤い鱗はドスランポスの歯を全く通さない。

「くっ! 効いてない!」

「グアア!」

 噛みつかれたレウスが力一杯ドスランポスを振り落とし、地面に叩きつけた。

「ぐっ!」

 

 体制を立て直し猛スピードで噛みつこうとするドスランポス。

「レウス! 尻尾で牽制しろ!」

 指示を聞き、即座に横回転で尻尾を叩きつけた。尻尾のリーチで勝ったのかドスランポスが吹き飛ばされる。

「っ! (くっ、攻撃を読まれている! 攻め手を変えるか!)」

 ビルの指示でドスランポスが走り、飛び掛かって全体重を乗せた爪で引っ掻こうとしたが……。

 

「グアオ!!」

「何!?」

 今度は素早い噛みつきで隙を突かれてしまう。

 

「グオオ……」

 辛うじて受け身を取ったが、連続のダメージを受けたからか今にも体制が崩れそうだ。

 

「(力に差があるし動きも読まれている。正面では勝てないという事か……!)ドスランポス、翻弄しろ!」

 左右に跳ねながらリオとレウスに近づく。しかし、その不規則な動きにもリオは動じない。

 

「そこだ! レウス、豪火球だ!」

 レウスの特技”豪火球”。

 跳ねたドスランポスの位置を完全に読み、赤々と煌めく炎ブレスがビルとドスランポスに一直線に飛んでいく。

「ま、まずい!」

 

 ドォーン!!

「ぐああ!!」

「ギャアオ!!」

 

 相手に当たった瞬間に爆炎が炸裂し、ドスランポスとビルが放物線を描いて飛んでいく。

 

 この強力な炎ブレスこそが、リオレウスが別名”火竜”と呼ばれる由縁だ。

 

    ◇

 

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「様々な手で攻めてくる俺達を適切に対処し、攻撃を押し通するとはな。とてもいい戦い方だぞ、リオ!」

「流石オレの相棒だゼ! 翻弄する動きをパワーで捻じ伏せたり、力を込めた一撃をスピードで隙を突いたり、素早い攻撃をテクニックで牽制したり……」

「あ、うん! ビル先輩、そしてナビルー。ありがとう!」

「グアア!」

 レウスも誇らしげに吠える。

「うんうん。レウスの攻撃も見事だったゾ! 特に豪火球は凄かった!」

 

「やっぱリオレウスって凄いオトモンなんだね!」

「私もリオレウスをオトモンにしたい~」

「いいな~。俺様もそのぐらい強くなりてぇ」

 

「あぁ、あはは……」

 皆から誉められているにも関わらず、曇った表情が消える様子がないリオ。

「……」

 ベテランのビルはその顔を見逃さなかったのか、ひっそりと眉をしかめる

 

     ◇

 

「初めてライダー同士のバトルをやったから疲れたろ? ほら、俺特製の元気ドリンコだ」

 ハンターも愛用しているとされる黄色いドリンク”元気ドリンコ”。スタミナがつく上に、疲労感や眠気も回復する。

「おお、いただきます!」

「ビル先輩の元気ドリンコ。おいしいんだよね~」

「俺にも早く早く!」

 

「ほら、リオの分だゾ」

「ありがとう。ナビルーも貰ったんだね」

「ああ。ビオンが作ったスモスドーナツも美味しいけど、ビル作の元気ドリンコも甘くて美味しいな!」

 一口飲んでみると、ハチミツの甘味が身体中に染み渡る。

 この地方の元気ドリンコはトウガラシとハチミツを調合したものが一般的だが、ビルのドリンコはトウガラシが入っているとはとても思えない程甘い。

 きっとまだ子供の後輩ライダー達が飲みやすくする為に、ハチミツの分量を多めにしているのだろう。

 

「あぁ、リオ。この後ちょっといいか?」

「ビル先輩? いいけど」

「では、リオとナビルーを残して解散!」

「「「はい!」」」

 

     ◇

 

 訓練所にリオとナビルー、ビルとアオイだけが残った。

「お前、やけに表情が暗いな? 何かあったのか?」

「あはは、バレちゃったか……」

 しばらく先輩をやっているだけあって、ビルは後輩の気持ちを察するのはとても得意だ。

「ああ、実はな……」

 ナビルーが朝あった出来事をビルに話した。

 

    ◇

 

「成る程、そうだったのか……」

「ま、まぁ。まだビオンがオレをオトモアイルーとして雇ってくれるか分からないけどな。そもそもあまり戦ったことないし……」

 

 しばらく悩んだ後、ビルが口を開く。

「実はな。紅力化と関係あるかは分からないが、アオイから妙な報告があったんだよ」

「「えっ?」」

「あたしはよく村の周りを見て回っているんらよ。”何か異常はないか”とか”モンスターがこちらに来ていないか”とか……」

 ナビルーが話の内容から嫌な予感を察知した。

「ま、まさか何かあったのか?」

「前からスカスの森に強いリオレイアがいて、獰猛なアイツは森に来たライダーをよく襲うから恐れられていたんだら。昨日、そのリオレイアの巣にたまたま通りかかったんらけど……」

「ら、らけど……?」

 

 

「巣にいるはずのリオレイアがいなかったんら。最初は獲物でも狩っていて留守だと思っていたんら。でも、何回確認しに行ってももぬけの殻で……」

 

 

「えっ!?」

「ど、どういう事なんだ……?」

 突然の不穏な話に二人が困惑の表情を隠せない。続けてビルが推測を語る。

「もしかしたら、ナビルーが言う紅力化モンスターに襲われてしまったのかもしれないな。前もイャンクックが何かに怯えて逃げていただろ?」

「もしかしたら、近い内に逃げたリオレイアがこちらに向かってくるかもしれないら。その時は緊急事態として村人は避難する事になるらよ」

「ぐぬぬ、ライダーはどうするのだ?」

「俺とアオイ、そして先輩ライダー達がなんとか追い払う。リオ、お前を含む新人ライダーは万が一の為に村人の近くにいて守ってくれ」

「ああ、分かった……」

「ムムム、確かに紅力化が関係している可能性もあるな。ウ〜ン、外へ出るべきかまだ様子を見るべきか……」

 結局ナビルーの結論は出ないまま、話が終わってしまう。

 訓練所の不穏な空気が消えないまま、解散となった。

 

    ◇

 

【スカスの森】

「はぁ、はぁ、はぁ! なんなんだあの化け物は!」

「グアアアアア!!」

 緑が美しいスカスの森。いつもならば穏やかな空気が流れる森だったのだが、今回は緊迫した空気が流れていた。

 

「くっ、そういえばこれが!」

 ポシュウ……。

 

 紅い飛竜に追いかけられているスモス村の村人が、逃げながらけむり玉を地面に叩きつける。

 素材玉に巻かれたツタの葉が発火し、白い煙が噴き出て一気にそのエリアを包み込んだ。

 

「グルル!」

 血眼になって獲物を追いかけていた飛竜が、突然眼前に広がった煙に思わず脚を止める。

 煙が消えた頃には村人はそのエリアから姿を消していた。

「グアアアアア!!」

 獲物を見失い怒りの咆哮を上げる飛竜。飛竜はまた森を走り、次の獲物を探し出した。

 

    ◇

 

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【訓練所 入口】

「あ、皆。リオが戻ってきたよ」

「やれやれ、おせーぞリオ」

 リオが訓練所から戻ってくると、新人ライダー達が待っていた。

「ごめんごめん。待たせたな」

「ビル先輩と何を話していたの?」

「……ああ、それについては後で話すよ。そうだ。厩舎の作業をしなきゃ」

「ああ、それはもう厩舎アイルーがやってくれたみたい。『ライダーバトルで疲れただろうから、昼まで休んでてニャ』だって」

「そうか……うん……」

 

 まだ子供の新人ライダー達だが、その三人組もリオの曇った表情に気づく。

 思い切ってブラクが質問した。

「おい、お前ヘンだぞ。訓練所の話を聞かせろよ」

「いや、ビルが『他の新人ライダーには言うな』って……」

 

 『新人ライダーには言うな』。明らかに怪しい発言に三人は食いつく。

「ど、どういうこと?」

「あ、何か隠してる! 余計気になるよ!」

「お前、その専用装備もだけどやけにビルに可愛がられていたよな。……あっ! さては秘密の訓練だな!」

「……えっ?」

 

 予想外の食い付きっぷりと誤解にリオが焦り出す。その表情が更に三人を怪しませた。

「え。ず、ずるいよ!」

「だから、あんな強かったのね!」

「おい、俺達にも教えろよ!」

「ち、違うよ!」

 

「もー、リオ! お前は正直すぎるんだよ!」

 

 訓練所から遅れてナビルーが走ってきた。三人の勢いに押されたのか、リオはすぐにナビルーに助けを求めた。

「な、ナビルー! 助けて〜!」

「ぐぬぬ……仕方ない。話してやるから厩舎の後ろに行こうゼ……」

 

    ◇

 

【オトモン厩舎の後ろ】

「「「えぇーー!?」」」

「しぃぃ!! 声がデカいゾ!」

 またナビルーがこれまであった出来事を話す。三人は内容にただただ驚くばかりだった。

「ナビルー、出ていっちゃうの!?」

「紅力化!? 何それ!?」

「敵が来ても新人ライダーは村人を守るだけかよ!?」

 リオはバラしてしまった事を後悔した。三人はどんどん話に興味を持ち出す。

「皆、落ち着いて! まだどれも確定した話じゃないから! ビルに『パニックにならないように』って今は黙るよう頼まれていたんだよ」

 守るだけという立場にブラクは憤怒する。

「待てよ。俺達だって新人だけど一応ライダーなんだぞ! 俺様はこの村を守る為に戦う!」

「私も!」

「ぼ、僕だって戦える!」

「だ、だから。まだそう決まった訳じゃ……!」

 

 ブオーン……!

 

「「「「「!!」」」」」

 

「「「えっ、今のって……」」」

「……角笛?」

 ライダー三人共、村全体に響いた角笛の音で固まってしまう。顔からは滝のように汗が流れていた。

「ん? なんなのだ今の?」

「リオもナビルーも知らないの!? さっきの角笛って”村にモンスターが攻めてきた”っていう警笛だよ!!」

「「えぇーっ!?」」

 臆病なノスが震えながら説明し出す。

「あ、あの、えっと。ま、前にも村に迷い混んできたドスファンゴが来て、あ、あの警告の角笛がなったんだよ〜!」

「あ、そういえば! リオとナビルーはあの時はまだいなかったから知らないんだよ!」

 

 そう話している内にビルがこちらに走ってきた。

「お前ら、笛の音が聞こえただろ! 『凶暴なリオレイアがこちらに向かっている』との報告があった!!」

「「「「「!?」」」」」

 

 二人が攻めてきたモンスターがリオレイアと知ると驚き、ノスに至ってはもはや涙目で今にも大泣きしそうだ。

「り、リオレイア!? ドスファンゴよりももっともっとヤバいモンスターじゃん!!」

 

「な、なぁナビルー。リオレイアって何だ?」

「リオ!? リオレイアも知らないのか!? 火竜の雌個体で、イャンクックよりも遥かに強いモンスターだゾ!!」

「だ、だって。記憶喪失だったからモンスターも知らな……って、えっ!? “火竜の雌個体”!?」

「流石にリオレウスより力は劣るが、毒の尻尾や鍛えられた脚力とレウスとは別の強みがあるんだ。地上を駆ける脚力から”天空の王者”のリオレウスに対し、”陸の女王”の異名を持つ!」

 

「くっ、リオレイアの件は早めに全員に話しとくべきだったか! 俺とアオイ、先輩ライダー達が撃退に向かう! 新人のお前らは村人達を避難させ、万が一に備えて守っててくれ!」

 新人ライダーに課された重大な任務。しかし、リオは半端ではない覚悟と戦意を見せていた。

「ビル先輩、俺も行く! 火竜同士だから上手く戦えるかもしれない!」

「駄目だ! 幾らリオレウスのライダーでも経験がないなら危険だ! ここは先輩に任せろ!」

「そ、そうだぜリオ! 指示に従おうぜ」

「ブラク、お前はさっき『村を守る為に戦う』って!」

「うっ! だ、だけどリオレイアって相手が悪すぎるんだよ……」

「ブラクの言う通りだ。大丈夫。必ず生きて帰ってくる! お前らは撃退が終わるまで絶対に村から出るなよ!」

「「「は、はい!」」」

 

「ライドオン、ドスランポス!」

 ビルが叫ぶと同時に村の外側へ走りだし、何処からともなく現れたドスランポスが後を追う。

 走りながらドスランポスにライドし、あっという間に見えなくなっていった。

 

「そんな、ビル先輩……」

「とりあえずリオ! 村人を避難させるゾ!」

「……っ! わかった!」

 周囲が感じる程にリオは悔しさを隠せていない。

 例え先輩ライダーをパワーで押せるリオとレウスでも、実戦では何が起きるか分からない故に前線に立たせてくれなかったのである。

 

    ◇

 

 そのリオ達を村近くの丘の草むらから観察している影が二つ。

 望遠鏡でリオの赤い姿をしっかりと捉えていた。

「姉御、まさかこんな辺境にライダーの村があるとは思わなかったですね」

「あの赤髪の坊や。”抹殺対象の子”に似てるわね」

「ああ、あの城中に貼ってあった絵? もしや近くに”例のブツ”もあるんですかね?」

「待ちなさい。今、何かが起きているらしいわ。下手に出ずに様子を見るわよ」

 

    ◇

 

_

【スカスの丘】

 スカスの丘では先輩ライダー達が、リオレイアに備えて待っている。

 ビルは入念に配置や敵が襲ってくる方向を確認し、アオイがその指示を他のライダーに伝えていた。

「方向はあっちで間違いないのら?」

「ああ、森の方から向かっているみたいだ」

 

「ビルさん、アオイ! そろそろ来ます!!」

 丘の奥から響く重い足音と振動。大きさから徐々に近づいていくのが分かった。

 

「グアアアア!!」

 ついに雄叫びを上げながら現れた雌火竜”リオレイア”。

 しかし、先輩達がその敵の姿に”違和感”を感じる。

「……!?」

「なんだら、このリオレイアは!?」

「グルルルル!! ……グォォ、グアアアアア!!!!」

 

「「うわあああああ!!!!」」

 

    ◇

 

【スモス村 避難所】

「この村は終わりだ!」

「わぁぁぁぁ!!」

「うぅぅ……」

 スモス村の奥地にある洞窟に避難する村人達。騒ぐ男、泣き出す子供、家族と抱き合って動かない女。

 反応は様々だが、どの村人も冷静さを失っている事は確か。

「皆、落ち着いて! ナビルー、これで全員か?」

「ああ、全員で間違いないゼ!」

「……なぁ、ナビルー」

「なんだよ、リオ?」

「本当に俺はここで待つしかないのか?」

「だ、だって。『村から出るな』ってビル先輩が! それにもしかしたら本当に先輩達が追い払ってくれるかも――」

 

 ドォォォォン!!

「「!?」」

 

 突然、紅い光と共に轟音が響く。その不吉な音に村人が騒ぎ出す。

「な、なんだ今の音は!?」

「ねぇ、ビルさん達はどうなったの!!」

「お、落ち着けって皆〜!」

 ナビルーが村人を落ち着かせようとするが、それで声が収まる訳がなかった。

 

「こ、怖いよぉ……」

「誰か、助けて……」

「うぅ……!」

 恐らくリオレイアの炎ブレスで生じただろう光と音。そして、いつまで経ってもビル達が戻って来ず、新人ライダー達も弱気になっていった。

 

「俺、やっぱり行ってくる!!」

「「「「えっ!?」」」」

 

「リ、リオ!? 駄目だってば!! 確かに俺も心配だけどさぁ!!」

 ナビルーが慌てて止めようとするが、リオの決意の顔は変わらない。

「何かあってからじゃ遅いんだ! ライドオン、リオレウス!!」

 

「グアアアアア!!」

 

 避難所前に大きな翼を広げ飛来する火竜。リオが飛び乗った瞬間、光った方向に向かって飛んでいく。

「ま、待てって〜! んんもぉ〜〜!! 仕方ない奴だなぁ〜〜!!」

 勘が鋭いナビルーも嫌な予感を察知したのか、リオとレウスに追いかける。

 壁を使って三角飛びをし飛行するレウスの尻尾に掴まった。

 リオ達は急ぎで迎撃地点に向かう……が。

 

【スモスの村】

「グアアアアア!!!!」

「うわぁ、ヤバいゾ! もう村に!」

 既に村に攻めていたリオレイア。突進や尻尾の一撃で家を破壊し、炎ブレスで次々と放火していく。

 そのリオレイアの見た目にリオが驚いた。

「えっ!? なんだあれ!?」

 

 

【挿絵表示】

 

 リオレイアは鷹を思わせる嘴を持つ顔、全身を覆う緑色の甲殻、陸上での運動に特化した脚、毒棘がついた尻尾が特徴。

 なのだが、リオ達が見たリオレイアは全身が紅みがかかった色に染まっており、更に紅く光るオーラのようなものも纏っていた。

 頭を激しく揺らしながら吠え続け、村中を駆けて荒らし回っていた。

「紅い……?」

 初めて見るであろうリオからしても、その紅いリオレイアは明らかに異常な個体だと分かる程だった。

 

 紅い光を見た瞬間、ナビルーの顔が一瞬で青ざめた。

「紅力化!?」

「えっ!? あれが紅力化モンスターなのか?」

「リオ! リオレイアは紅力化モンスターに巣を追い出されたんじゃなくて、リオレイア自身が紅力化していたみたいだゼ!」

 

「グアアアアアオオオオオ!!」

 紅力リオレイアが紅い光を放ちながら恐ろしい咆哮をあげる。

「くっ、やるしかない! レウス、豪火球だ!」

「グオオ……グアアアアア!!」

「レウス、どうした! ……うわぁ!!」

 リオが振り落とされる程、レウスは暴れだしリオレイアに向かう。

 猛突進をリオレイアはバックステップで避けるが、レウスが追い打ちとして鋭い脚爪で頭を押さえ付けた。

「グアア……!」

 悲鳴をあげるリオレイアに構わず、何度も爪でリオレイアを力強く踏みつける。

 当然拘束から逃れようとリオレイアは暴れるが、レウスは隙を見てリオレイアの首を噛みついた。

 

 ミシ……ミシ……!

「グアアア!!」

 

 身の毛も立つ程に痛々しい締め付ける音と悲鳴が響いた。

 そのレウスの目は今までのような暖かい目ではなく、血も涙もない鬼の目つきだ。

「レウス……!?」

「リオ!! なんかレウスの様子がおかしいゾ!?」

 

    ◇

 

「姉御! あのリオレウス、やけに紅力化モンスターに対して攻撃的ですぜ! もしかしたら……!」

「あの赤い坊やのオトモンらしいし、間違いないわね。行きましょう」

 

    ◇

 

 ようやく拘束から逃れたリオレイアが反撃の三連炎ブレスを放つが、レウスは食らっても怯まずリオレイアを襲う。

 近づいた所をリオレイアはサマーソルトキックのような後方宙返りで尻尾を打ち付ける技”毒スパイク”で牽制。

 流石に大技をモロに食らった為レウスは大きく仰け反るが、それでも執拗にリオレイアに攻撃を仕掛ける。

 

「待て! 無理するな、レウス!! レウス!?」

「レウスが紅力化したのか!? いや、でも紅くなってはいないし、本当にどうしたんだ……?」

 

_

 

「ライドオン、アンジャナフ!」

「ライドオン、レイギエナ!」

 

「えっ、誰の声……うわ!」

 突然震動と風圧が発生し、砂煙が舞い上がる。そこには二体の巨影が立ちはだかっていた。

 

 一体はピンク色の外皮と背中から尻尾にかけた黒い毛、そして強靭な顎を持つ二足歩行の竜。

 もう一体は猛禽類のような黒い嘴に青と白の華奢な身体、花のような広がる翼膜を持つ飛竜だ。

 

「……! なんだこいつら!?」

「ニャァァァ!? アンジャナフとレイギエナ!? こんな所にいたっけ!」

 

「まさかこんな辺境に隠れていたとはな。見つけるのにだいぶ時間がかかったぜ」

「ふっ、私達と会ったらもうお終いよ」

「えっ!?」

 

 どこからか聞こえる人の声。

「エッ、ライダー!? しかもこの村のライダーじゃないゾ!」

 見上げるとそれぞれのモンスターに、アンジャナフを模した髪型の少年とレイギエナを模した髪型の女性がこちらを睨んでいた。

 少年からの焼け付くような睨み、女性からの凍るような冷徹な視線。目の前に現れた怪しい二人にリオが狼狽えながらも睨み返し叫ぶ。

「なんだ、お前達は!!」

「はっ、これを見れば分かるだろ?」

 ピンクの少年が見せてきたのは黒いフレームに黒みがかった赤い石のアクセサリー。

 色こそリオのものとは異なるが、そのアクセサリーはとても絆石に似ていた。

「黒い絆石?」

「オレは今まで色んなライダーに会ってきたけど、あんな黒い絆石見たことないゾ!」

 思った反応と違かったのか、青い女性が首を傾げる。

「……ん、分からないのかしら? 変ね。”あんな出来事”、忘れるはずがないのに」

 “黒い絆石のライダー”に”あんな出来事”。どっちも全く覚えがないものだが、リオには一つ心当たりがあった。

「まさか、記憶を失う前の俺を知っているのか!」

「えっ、『記憶を失う』?」

「あの後に記憶喪失になって私達を覚えていないってところかしら。まぁいいわ」

 

「あのリオレウスは頂くわよ」

「「!?」」

 

「はぁ!? なんでレウスをお前にやらなきゃいけないんだよ!」

 激怒するリオに動じず、女性は天を仰ぎながら語り始める。

「うふふ。じゃあ、特別に教えてあげる! この世の灯火は”我らが王”に捧げる事になっている。そして、あなたのリオレウスは天に刃向かった哀れな竜。その哀れな火竜の灯火を捧げた時、私達の悲願は達成されるのよ!」

 

 ……今まで落ち着いていた雰囲気の女性の語りに戦場とは思えぬ程、一気に場が静まり返った。

「……(姉御……また酔いしれて語っちゃっている……)」

 

「……エ? いきなり何言っているのだ?」

 いつもお調子者のナビルーですら、酔ったような女性に白い目を向ける。

「『我らが王』……? 誰なんだそいつは?」

「うっ。い、いいからさっさと渡せ! 渡さないなら痛い目みるぞ!」

「自分のオトモンを渡す訳ないだろ! 断る!」

「あら、残念。……じゃあ、力ずくで奪うのみ。アング、坊やはあなたにあげるわ」

 

「えっ、いいんですかい。しゃあ! ジャナフ、飯の時間だぜ!」

「グアアアアア!!」

 主人の合図と共にアンジャナフが背中にある翼のような膜を広げ咆哮する。

 リオはすぐそのアンジャナフの目線から恐ろしい殺気を感じ、絆石をかがけた。

「くっ! ライドオン、リオレウス!」

 

「グアアアアア!!」

「グアアアアア!!」

 飛行しながら戦闘を続けていた火竜達。リオレイアの毒スパイクをかわしたレウスが、脚爪による毒キックでリオレイアを追い込もうとする。

 レウスはリオに見向きもせずに、只ひたすらにリオレイアに攻撃を仕掛けていた。

「レウス、早く来いって! レウス!」

「だ、駄目だ! なんでか知らないけどレウスは暴走しているゾ! 一旦逃げようゼ!」

「この村を守らなきゃいけないんだ! 頼む、レウス!」

「でも、リオレイアもアンジャナフもレイギエナも相手にするんだゾ!! 勝てないって!」

 

 

【挿絵表示】

 

「ジャナフ、ぶっ潰せ!」

「「!!」」

 ジャナフは巨体に似合わない脅威的な跳躍で押し潰そうとするが、リオは回転回避をした後にアイアンソードを抜刀した。

「やるしかないんだ!」

_

 ジャナフが全速力の突進でリオを襲う。

「!」

 瞬時に攻撃を見切ったリオは横に回避し、そばの岩から跳んでジャンプ斬りを食らわす。

「うぉっ!?」

 そのままジャナフの頭に飛び乗って、再び大剣を叩きつけた。

 思わずジャナフが大口を開けて頭を振り回す。

「くっ!」

 リオが振り払われるが、しっかり受け身をとりそのまま一回転して相手と距離を取った。そのまま納刀し後方へ走り出す。

「てめぇ、逃げんな! 例え世界の果てまでも追いかけてやる!!」

 

「!」

 逃げた先は村はずれのそびえ立つ岩壁。振り向けば激怒したジャナフが追ってくる。

「はっ、もう追い詰めたぜ。ジャナフ、バーニングファングだ!」

「(来る!)」

 ジャナフが炎を纏った牙で噛み付く事を読み、壁を登って回避。再び体重を乗せたジャンプ斬りでアンジャナフの頭を叩き斬る。

「グアア!?」

 二回も頭に重い一撃を貰ったジャナフが、眩暈からかふらついてきた。

 

「なんだ、単純だな!」

「ぐうう、てめえええ!! これで黒焦げにしてやる! ジャナフ、バーニングブラスターだぁ!!」

「!!」

 

 力を振り絞ったジャナフの口から火炎放射が放たれ、その火炎が広範囲に拡散。赤い炎がリオを容赦なく焼き付くす。

「う、うわあああ!!」

「リオー!!」

 

 例え丈夫なライダー装備を着ていても、拡散する炎を受けて無事な訳がない。

 全身に火傷を負ったリオが仰向けに倒れた。重傷なのか立つこともままならない。

「ぐっ……!」

「リオ、大丈夫か!?」

 ナビルーが思わず駆け寄ろうとするが、リオが力を振り絞って手の合図で止めた。

「来るなっ……ナビルー!」

「でも!」

「ふん、調子に乗っからだ!」

 

    ◇

 

「グアア、グアア!」

「グアアアアア!!」

「う~ん、あの紅力リオレイアがちょっと邪魔ね」

 

 空中で攻撃しあうレウスとリオレイア。

 下にギエナがやってきても、レウスはリオレイアの追跡を止めようとしない。

 リオレイアしか眼中に無いのか、優れた飛行能力で何度も重い爪の一撃を与え続ける。

 

「まずはリオレイアの動きを封じるわよ」

 指示と共にレイギエナが軽やかに飛び、風に乗りながら二体の飛竜に急接近した。

「ギエナ、フリーズバーストよ!」

「キョアア!!」

 回転しながらの飛行と共に胸に氷の結晶が一気に付き、一気に拡散する氷として放った。

 透き通った多数の氷の刃が、リオレイアの身体のあちこちに容赦なく刺さる。

「グオアアア!!」

 

 ドォォォン!!

 

 レウスのダメージもあって、ついに紅力リオレイアはまともに動けなくなり村近くの地面に墜落。必死にもがこうとするが、凍傷の影響で立つことすらできない。

「次はあのリオレウスね」

「グオオアアアアア!!」

 紅力リオレイアとの戦いを邪魔された事にレウスは異常な程怒り狂い、恐ろしい咆哮を上げる。

「うふふ、あなたは捕まる運命しかないわ。フリーズバースト!」

 レウスにも放たれる多数の氷の刃。レウスは瞬時に見切り回避する。

「まだ終わりじゃないわ。このスピード攻撃を見切れる?」

 高速で飛行し、レウスに爪による引っ掻きを仕掛けるがこれも回避。

「あら、やるじゃない。ならこれはどう? リベンジアイスドリル!」

 技名の通り、氷を縫い回転しながらレウスに突撃。

「グオアアア……!」

 流石のレウスもリオレイアからのダメージが響いていたのか、レイギエナの強力な一撃に悲鳴を上げて村へ落ちる。

_

 ドォォォン!!

「グォォ……」

「……っ!? レウス!?」

 落ちた場所ばリオが戦っていた場所の近く。紅力リオレイアとギエナによってレウスは痛々しい見た目に。

「おっ、姉御の方も終わったんですね」

「ええ。ちょっと手荒な方法でしたけどね」

 

「や、やめろ! 他人のオトモンを力づくで盗るなんて、ライダーの風上にも置けない奴らだな!」

 ナビルーの必死の訴えにも二人は全く動じない。その目は相手を完全に見下していた。

「ふん、この世の中は”弱肉強食”なんだよぉ!」

「うふふ、アングの言う通り。では頂くわよ」

 ギエナは自身よりも一回り小さい身体のレウスを鷲掴み、翼を羽ばたき始めた!

「……!! やめろ、待て!!」

 火傷を負ったリオが身体を無理矢理動かし、ギエナに全力で向かう。

 

 ドォン!!

「うわぁ!!」

 

 突然、横から炎ブレスがリオを襲い、ついにリオは力尽きて倒れてしまった。

「グオアアア!!」

 炎ブレスを放ったのは動けるようになった紅力リオレイア。無慈悲にも再び獲物達に襲い来る。

「あら、運が良かったわ。では」

「グアア……グゥアアアアア……!!」

 

 バサァ、バサァ、バサァ……。

 

 謎の女性ライダーを乗せたギエナは抵抗するレウスを掴みながら浮かび、無情にもレウスは連れ去れてしまった……。

「レウスーーーー!!!!」

 最悪の結果に涙が止まらない。そして、その間にも紅力リオレイアが四方八方に炎ブレスを打ち、村を荒らし回る。

「てめぇ、ギャアギャアギャアギャアうるせぇな! ここで仕留めてやる!」

「うっ……ううっ……」

 例え敵が涙を流していても、アングと呼ばれる少年は容赦しない。

 アングを乗せたジャナフが少しずつリオに迫ってくる。

「……や、やめろ! リオに何をするんだ!」

 ナビルーが慌ててリオに駆け寄ろうとする……しかし、ジャナフの巨体に足がすくんでしまう。

「こいつは俺達にとって、居るだけで都合が悪いからここで”潰しておく”んだよ。嫌ならお前が止めてみろ? がーっはっはっはっ!」

「!!」

 アングの嘲笑いにナビルーの目付きが変わった。一瞬だけ、ナビルーの周りに鋭い光が閃く。

「ジャナフ、バーニングファングでトドメを刺すんだ!」

「グアア!!」

 

「……よせよ……おい、よせよ……!」

「あ? なんだよ。やんのか?」

_

 

 

「よせ!! リオに触るなーーーっ!!!!」

 ビシャアアアアアン!!!!

 

 

「なんだ!?」

「えっ!!?? ナビルー!?」

 一瞬激しい光が辺りを照らし、気づけばナビルーは黄金の稲妻を纏う謎のアイルーへと変貌していた!

 

「うおおおおお!!」

 ビリィィィ!!

 

「ぐああ!?」

「グオオォォォ!?」

 雷のごとき威力と速さの一撃。完全に油断していたジャナフが全身に走る電流に耐えかねてダウンする。

「はぁ!? な、何もんなんだよ、このアイルー!?」

 

「大丈夫か、リオ」

「な、ナビルー……?」

「一旦離れるゾ!!」

「あ、ああ……!」

 光るナビルーがリオを持ち上げて逃げ出す。

「あ!? ま、待ちやがれ!!」

 予想外の横槍に動揺を隠せないアングだが、すかさずジャナフに追跡の指示を与えた。

 

    ◇

 

【スモス村 避難所に続く道】

 徐々に光りが無くなりいつものナビルーに戻ってきた。

「クッソー! まだ追いかけてくるな!! もう電力が尽きたのに!」

「ナビルー、君は一体……!?」

「説明している暇はない! リオ。ここからは自分で逃げるんだ!」

「え!? まさか戦うの!?」

「オマエが『やるしかない』って言ってただろ! 逃げろ!」

「む、無理だよナビルー……!! お前を置いていくなんて!」

 

「やっと追い詰めたぜー!」

「「!!」」

 遠くからジャナフに乗ったアングが迫ってくる。

 村に住んで以降、この上ない絶望。また涙で視界が見えなくなっていく。

 

 

「食らえぇぇ!!」

 ポシュウ……!!

 

 

「ぐおぉ、うえっ!! く、くっせぇ!! こ、今度はなんだよ!!」

 悪臭を放つ弾をアングに投げたのは、岩壁の上で待ち構えていたビオンだった。

「お前ら、出来るだけここから離れるんだ!」

「ビオン……」

「ビオン、助かるゼ!!」

 

「て、てめぇぇぇ!! ジャナフ、バーニングブラスターだ!!」

「グオオ……」

「ジャナフ、臭いに負けてる場合かよ! 早くしやがれ、くそ!」

「今度はこれだ! それっ!」

 ビオンは耳を塞ぎながら、違う弾を投げ始める。

 

 キイイイイイン!!

 

「ぬああ!? なんだこの音!?」

 弾が炸裂すると同時に不快な爆音が響き渡る。間近で聞けば聞くほど、気分が悪くなり意識が遠くなっていく。

「お、おい! やめろぉ!!」

 

 キイイイイイン!! キイイイイイン!! キイイイイイン!!

 

「ぐっ……うっぷ、おぇぇ……! て、てめぇ……覚え、てろ、よ……!!」

「グゥ、グルル……」

 悪臭と爆音に精神が限界を迎えたアングがジャナフに撤退の指示を出す。

 鼻がよくきくモンスターだったのか、ジャナフにも悪臭がかなり効いていたようでスモス村から離れて行った。

_

「ふぅ……」

 安全を確認し、ビオンが二人に近づいた。

「リオ。大丈夫か?」

「ありがとう。回復薬を飲んだからもう動ける。今の道具は?」

「悪臭でモンスターを撃退する”こやし玉”と、爆音で敵の隙をつくる”音爆弾”だ。ハンターになる為に調合の練習をしておいてたんだ」

「もうダメかと思ったゾ! さっすが~!!」

 一瞬の安心も束の間、ビオンが何かを思い出して焦り出す。

「あっ、待て! 今は話し合っている場合じゃない! あの紅いリオレイアを撃退しないと!」

「ウッ、そうだったな。でもビル達もレウスもいないしどうすればいいのだ……?」

「……レウス」

 

「お前達はここに残れ。こやし玉で撃退する!」

「「えっ!」」

 一言告げるとビオンが村へ走って向かう。ここからも聞こえる炎ブレスの轟音が二人を不安にさせた。

「待って! ビオン!」

 “今度はビオンに何か起きてしまうかとしれない”。

 リオがそう思い無意識に足が動き出すが、ナビルーが慌てて止めた。

「り、リオ! 行っちゃ駄目だゾ! 避難所に戻ろう!!」

「だっ、だって!!」

「悔しいけど、今こんな状態の俺達が行った所で足手まといになるだけだゼ。さっきの電気もしばらくは使えない」

「……っ! くっ、ううっ!」

 リオがここまで自分を憎んだ日はないかもしれない。

 

 勝手に先輩の指示を無視し飛び出した挙げ句、最愛のオトモンを盗られ、そして村も守れない。

 怒り・悲しみ・悔しさ・絶望・罪の意識、そして自分の無力さで心が締め付けられるようだ。

 

    ◇

 

【スモス村】

 紅力リオレイアは傷を負っても尚、村を荒らし食料を食らいだす。

 もはや原型が残っていない村だが、被害を抑える為にせめて一矢報いようと、ビオンはこやし玉を持ちながら近づく。

「食らえ!!」

 全力で投げたこやし玉はリオレイアの顔に命中。玉が炸裂し、中から悪臭が広がる。

「グオウ!?」

「よし、そのまま帰れ!」

「グルル……グオオオアアアアア!!」

 確かにこやし玉は命中させたはずなのだが、リオレイアは大暴れして悪臭を振り解く。全くこの場を去る様子を見せない。

 そして、悪臭に激怒したリオレイアの紅い光が更に輝きを増し始める。

「なっ!?」

 リオレイアは助走を着け後方に宙返り。紅い光を纏ったまま毒スパイクを繰り出した!

「!?」

 

 ドォン!!!!

 

 とてつもない速度の尻尾縦回転。紅い猛毒を撒き散らす尻尾がビオンに命中した。

「うわああ!!」

 予想外の大技に反応しきれず、大きく吹っ飛ばされしまった。尻尾の棘で開いた傷口から容赦なく毒が入り込んでいき、あっという間に体力を奪われる。

「……ぐっ、がはっ!?」

「グオオ!!」

 獲物を仕留めたと確信したリオレイアがじりじりと迫ってくる。一歩迫るごとにビオンの恐怖と身体のダメージが増していった。

「(しまった……毒スパイクよりも更に強力な大技を持っていたとは……!)」

 

    ◆

 

『今度は無茶はするんじゃねぇよ。この自然の中で生きるなら尚更な』。

 

    ◆

 

 死を覚悟した瞬間、あのハンターの言葉が浮かび上がる。

「(俺は馬鹿だ。二回も無茶をするなんて。あのハンターに忠告もされたのに……)」

 リオレイアが牙が並んだ大口を開け、ビオンを食らおうとした。

 

「ドスラッシュ!!」

 

 その時。絶望しかない空気を裂く勇敢な掛け声が響き、絆石を輝かせたビルがドスランポスに乗りながら死角を突いた。

「グル!」

「ビル……!!」

 リオレイアが気づくのが遅かったのか、ドスランポスが速かったのか。

 ドスランポスは空中からの無数の蹴りを頭に全て叩き込み、リオレイアが大きく怯む。

 ダダダダッ!!

「グオアア!?」

「今だ、アオイ!」

 後ろから追っていたアオアシラの”アシラ”に乗ったアオイが同じく絆石を輝かせる。

 

「シャケハントクロー!!」

 二人共鮭を咥え、闘気を高めたアオイ達が高く跳び上がる。

 ザァン!!

「グオオウウ!!」

 そしてアシラが繰り出す全力の両爪引っかきで、リオレイアの頭を斬り裂いた。

 二回も先輩ライダーの絆技をまともに食らいリオレイアがダウンした。

 

「どうだらぁ!」

「気を付けろアオイ。まだ息がある!」

 レウス、ギエナ、そして二人の絆技の猛攻を受け限界まで追い込まれた紅力リオレイアは、よろめきながら立ちあがるが……。

「グルルゥ……」

 

 バサッ……バサッ……バサッ……。

 

 戦意を失ったのか、紅力リオレイアは翼を広げ、上方へ飛んでいった。

 二人がオトモンから降り、急いでビオンに駆け寄る。

「助かった……ビル、アオイ」

「何をやっているんだ……! 『村には行くな』と言っただろ! ビオン!!」

「……すまない。リオがやられそうで、どうしても行かざるを得なかったんだよ……」

「えっ!? てことは、リオもここに来てしまったのら!?」

「遠くから望遠鏡で見ていたんだ。実は……」

 

 ……。

 

 ビオンが村での出来事を話す。

「何!? 謎のライダーがレウスを!?」

「ああ。お前の指示を破って村に向かった頃には既にレウスは連れ去られ、リオはあのライダーにやられる寸前でな……」

「くっ、なんてこった!」

「ビル。今はリオ達の所に行こうら……。そこで話し合おう……」

 

    ◇

 

【スモス村 避難所】

 悪夢が終わった後、避難所には重たい空気が漂っている。

 村の建造物の大半は破壊され、汗水流して手に入れた食料は食い荒らされ……そして、この村で産まれ祝福されたあのレウスも、もうここにはいない。

 幸いにも死人は出なかったが、とても無事であること喜べる状況ではない。

 

 リオはショックのあまり、涙を流しながら自分を責め続けていた。

「ごめん……。俺のせいだ。俺が飛び出していなければこんな事には!!!!」

 そばには寄り添うようにビオンとナビルーがいる。

 いつも一緒だった相棒がここまで泣き崩れている姿を見たことがない。

「落ち着け、リオ。お前の戦いのおかけで避難所にモンスターが来なかった。お前は間違いなくこの村を守った英雄だ」

「そ……そうだゼ、リオ! まだレウスが無事な可能性がある! 今からアイツらを追っていけば……!」

 しかし、動揺している二人は精一杯励ますしかなかった。

 

「いかん!」

 背後から聞こえる怒鳴り。レスフ村長はいままでの優しさからは想像もつかない険しい顔で、二人の提案を否定する。

「「!!!」」

「三人共、落ち着いて聞いてほしい。今は村の外に出てはいかん」

 オトモンと共存するライダーの村。その住人にも関わらず、追う事を止める村長に二人は激怒し、そのまま怒りの感情をぶつけた。

「村長!! そこまで村の掟が大事なのですか!! オトモンの命に関わるかもしれませんのに!!」

「頼むゼ村長! レウスがピンチかもしれないんだ! 村の外に出させてくれ!!」

「お主達の命の事を考えて言っておる。このまま外に出た所で、モンスターに襲われて命を散らすだけじゃ」

「そ、そんな!!」

 リオに続きナビルーも泣きそうだ。絶望する三人が黙り込んだ時、レスフ村長の口から思わぬ言葉が飛び出す。

 

「『落ち着いて聞け』と言ったじゃろ。あくまで”今は”じゃ」

「「えっ……」」

「来たかビルよ。リオにあのタマゴを」

「はっ」

 荒れ果てた村から青い殻に橙色の斑点模様のタマゴを抱えたビルが帰ってきた。

 そして、涙を浮かべるリオにタマゴを差し出す。

「これは……?」

 

「リオ。これからそのタマゴを孵化させ、ビルと特別な訓練をせよ」

「「えっ!?」」

「先程も言った通り、今のお前では外のモンスターに敵わないだろう。そこでだ。ビルと急ぎの訓練で力をつけるのじゃ」

「訓練を終えたら……?」

「外に出る事を許可しよう。そして、あのライダーからレウスを取り戻すのじゃ」

「「えっ!?!?」」

「……!!!!」

 村長の口から飛び出た言葉は思わぬ提案。二人がただただ驚き、リオも目が見開く。

「そしてビオンよ。お前も共に行くがよい」

「……!? どういうことですか!?」

 

「とても悔しいが、村の復興の為にも俺達村のライダー達はここを離れる訳にはいかない。だから、レウスの主人でありライダーの才能も感じさせるリオを旅に行かせようと思う」

 ビルの顔からとてつもない悔しさを感じ取れる。本当は先輩ライダー……いや、同じ村の仲間としてリオ達を守ってやりたかったのだろう。

「ビオンよ。お主がハンターになる事も許可しよう。そして、村を襲った厄災である紅力化を調べてほしいのだ」

「ほ、本当ですか……!!」

「しかし、例え訓練したとしても外ではどんな事が起きるか分からない故に強制はしない。命を落とす可能性も否定できないだろう。選択は急がなくてはいけないがリオ、ビオン。お主達はどう思うのだ?」

 

 ……。

 

 決意に満ちる二人の顔。答えは一緒だった。

「俺、レウスを取り戻しに行きたいです!!」

「村長。俺もハンターを目指します。そして、紅力化を必ずや止めてみせます!!」

 

「うむ、良い答えじゃ! 村の事は心配せんでもよい。お主らはまず自分がやるべきと思う事をやるのじゃ!」

 そしてリオが口を開く。

「ありがとうございます、村長。そして、もう一つ。やるべき事があると思うのです」

「……? なんじゃ?」

 

「俺とナビルーを紅力化を止める旅に出させてほしいのです。守ってくれたナビルーを今度は俺が助けてやりたいのです!!」

 

「……!? い、いいのかリオ!? また紅力化と戦うって事なんだゾそれは!?」

「村をここまで荒らした厄災を見逃す訳にはいかない。これ以上犠牲を出したくないんだ!」

「……お主の覚悟は本物のようじゃな。よかろう、行くがよい」

 

 

 

「そして……あの”紅き厄災”を打ち払うのじゃ! ビオン、ナビルー、そしてリオよ!!」

 

 

 

 続く

_

●今回のおまけ

 

【挿絵表示】

 

ナビルー

年齢:?

性別:男

職業:ライダーさんのナビ(自称)

容姿:丸みを帯びた顔に少し太いヒゲ。目は黒と水色。先に丸い毛並みを持つ細い尻尾。二頭身のネコのような容姿。

 

奇妙な見た目のアイルー。熱血でムードメーカーであるが、それと同時にかなりのお調子者。

ドーナツが大好物。

 

世界各地で起きる厄災”紅力化”を止めるべく、仲間と手分けして情報を集めていた。

ある日、伝説のライダーの情報を手に入れたナビルーはスカス地方へ訪れるが、食料が底を尽き倒れそうになってしまう。

 

食べ物を求めに寄ったスモス村でつい盗み食いをしてしまうが、責められている際にリオに庇われた事で事なきを得る。

偶然見つけたライダーの村、そして村の外は危険な大自然。”紅力化の情報を探す”為にも、ナビルーはスモス村にリオとビオンと共に住むことにした。

 

 

【挿絵表示】

 

アンジャナフ

別名:蛮顎竜

種族:獣竜種

レア度:★5

属性・状態異常:火属性、やけど

主な生息地:森林、砂漠、密林、火山

 

ピンクの鱗に黒い毛が生えた肉食恐竜のような大型獣竜種。

基本的にスタンダードなモンスターとされるが鼻が上方に展開したり、(流石に飛べはしないものの)普段は格納されている対の翼を持っていたりと、獣竜種にしては珍しい個性も持つ。

 

よく森を我が物顔で散歩しており、獲物を見つけ次第気が済むまでしつこく追いかける。

戦闘では強靭な顎や脚力、そして火の攻撃に気をつけなくてはならない。鼻から火を吹く他、興奮すると口に高熱が宿り”炎熱蓄積状態”になってしまう。

炎熱蓄積状態になると炎を纏った噛みつきや口から強力な火炎放射ブレスを行い気が収まるまで暴れまくる。

また、展開した鼻から黄色い粘液を壁につけて縄張りを示すので、フィールドで粘液を見つけたらすぐにその場を離れた方がいいだろう。

 

森にいるハンターやモンスターからも恐れられているモンスター。当然オトモンにすれば頼りになるが、気性が荒く暴れん坊な為に絆を結ぶのは大変かもしれない。

逆にアンジャナフを乗りこなせたら、一流ライダーにまであと一歩とされる。

野生個体は空を飛ぶリオレウスと争って完敗していることも多いが、しっかり育てれば格上にも通用するポテンシャルを秘めている。

 

◯主な技

⚪︎ヒートアップ

火を口に溜めて火属性攻撃を少し強化する。

⚪︎バーニングブラスター

射程の長い炎ブレスで相手を薙ぎ払う。広範囲で複数の相手を巻き込める上に、身体が燃え続けるほどのやけどを負わせる事もできる。

⚪︎バーニングファング

炎を纏った牙で噛み砕く。バーニングブラスターと同じく、敵にやけどを負わせることができる。

 

◯絆技

⚪︎ジャナフディレイル

荒々しく跳びながら移動するアンジャナフ。崖から飛び出し顎を下にして落下。地面に落ちると同時に巨大な火柱が発生。そして火柱から顎で地面を抉りながら猛突進するアンジャナフが!

炎を纏いながら進む顎を食らった相手は大ダメージを負う。

 

またこの絆技の後アンジャナフは炎の余熱でしばらくの間、火属性の攻撃力がアップする。

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