モンスターハンターストーリーズ 紅玉の絆石   作:ルークス

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ようやくこの小説シリーズも第五話まで来ました。感想、お気に入り、評価はモチベーションが上がりますので良かったら是非……。

現在、第六話もかなり順調に作れています!全力で制作しておりますので、この小説シリーズとルークスの応援の程宜しくお願いします!


第二章 相対
第五話 戦いで得たもの


【あらすじ】

 村が襲撃にあった日の夕方。”謎のライダーからレウスの奪還”と”モンスターを凶暴にさせる紅力化現象の解決”という目標を達成させるべく、旅の支度をするリオとナビルーとビオン。

 新たなオトモン”ドスランポス”にライドしたリオ達は謎のライダーの後を追い、テンチの森へ。

 テンチの森は紅く染まっており、森の中心部で紅力リオレイアに遭遇。

 アイテム、先輩の教え、そして絆の連携で戦闘を有利に進め、リオのドスランポスが放った絆技”ドスラッシュ”で遂に紅力リオレイアを狩猟した。

 立ち塞がったリオレイアを狩ったリオ達は、レウスを奪ったライダー達の追跡を再開する。

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【挿絵表示】

 

第五話 戦いで得たもの

 テンチの森の中心部を抜けた三人は、ドスランポスに乗りながら地面を見回す。

「ア、コレはきっとアンジャナフの足跡だゾ!」

「レイギエナの足跡は無いな。たぶんレウスを掴んだまま、飛んで行ったのかもしれない」

 ナビルーとビオンが大きな痕跡を見つけた。

「ドスランポス、この足跡を辿ってくれるか?」

「ギャア!!」

 人間二人とアイルー一匹を乗せながらもドスランポスは、かなりの速度で森を駆ける。

 

【テンチの森 北】

 足跡を辿っている内に周りの木々が少なくなり、暖かい陽光が差し掛かってきた。

「アレ? オレ、ココ通った事あるゾ!?」

「本当か、ナビルー?」

「確か、元いた大陸から平原の港街に行った後にそこでライダーの村の噂を聞いて、ここの森を通ってスモス村へ行ったんだよ!」

 

 ビオンが地図を開き、位置を確認しながら話す。

「平原の中心に”カリトモニ”という街があって、そこに大陸一の規模を持つハンターズギルドがある。俺はそこへ行ってハンターになる予定だ」

 ナビルーもビオンの肩に乗って地図を確認した。

「なぁビオン。大規模なギルドって事は、人も多いんだろ? 謎のライダー達もソコにいるんじゃないか?」

「それはこの足跡を辿らないと分からないなぁ……」

 

   ◇

 

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【森の分かれ道】

「「あ!」」

「おっと、これは……」

 森を進むと大きな岩壁に囲まれた分かれ道へ着く。

「リオ、ビオン! 足跡は西の道へ続いているゾ!! 急ごう!!」

「「……」」

 道が分かっている為にナビルーが急かすが、いきなり二人が黙ってしまう。

「ン? どうしたのだ?」

「参ったな。俺はギルドへ向かう為にどうしても東へ行かなきゃならないんだ」

「足跡を追うには西へ行かなきゃいけないけどね……」

「エーッ!? 謎のライダーはギルドとは違う方角に行ったって事なのか!?」

 

 ビオンがポーチとアギトを持ってドスランポスから降りた。

「リオ、ナビルー。ここは二手に分かれよう。お前達は西の足跡を追ってレウスを助けろ。俺は東のギルドへ行って、紅力化を調べる」

「「えっ!?」」

 相棒の別れにリオとナビルーは思わず動揺してしまう。

「ビオン、一人で行けるのか?」

「そ、そうだゼ! 道中でヤバいモンスターが襲ってきたら大変だし、ここは一緒に行動した方が……」

「おいおい、何の為に俺がアレだけハンターの特訓をしたと思ってんだ? ここを突破できないようならハンターにはなれねぇよ。それに、お前のレウスの命も紅力に脅かされる世界も危ない状況だ。もたもたしている暇はねぇ」

「「……っ」」

 二人とも覚悟していた事ではあるが、いざその時が来るとなると胸が締めつけられるような感覚に襲われてしまう。

「……そうだな。西の道へ行こう、ドスランポス」

「リ、リオ!? 本当にいいのか!?」

 ドスランポスは命令通りに西へ行く。

 親しみあったビオンの姿はみるみる内に離れていった。

 

 勇敢に駆けるドスランポスとそれに乗った二人にビオンは力一杯叫ぶ。

「リオ! ナビルー! 絶対に死ぬんじゃねぇぞ!! 死んだら一生許さないからな!!」

 

「……ああ!! お前も喰われたら許さないからなー!!」

「そんな……! うぅぅ……ビィオォン〜! ま、また会おうな〜!! ナビルーとの約束だからな〜!!」

 負けじとリオ達も力一杯の返事を叫ぶ。

 二人は再会の約束を果たし、それぞれ目的の方角へと突き進んでいった。

 

   ◇

 

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【テンチの森 はずれ】

 とうとう森のはずれに差し掛かってきたが、未だに謎のライダー達の姿は見えない。

「まだ離れているのか……あのアンジャナフって奴の脚力もレイギエナの飛行も結構優れているんだな。ナビルー、この先はどんな場所だ?」

 リオに聞かれ、涙で顔がぐちゃぐちゃになりながらナビルーは地図を力無く開く。

「この先は”エムス山”だってさ。凄く寒いらしいゼ……」

「雪山かぁ……。もしかしたら新しいモンスターが見れるかもしれないじゃん! 楽しみだな、ナビルー!」

 リオはなんとかナビルーの元気にさせようと、モンスターの話題に切り替えるが……。

「グス……なんでリオはそんな元気なんだよ……」

「別れの時が来たのはびっくりだけどさ。ビオンは力もあるし道具や自然の知識もあるからきっと大丈夫だよ! きっと次に会う時は立派なハンターになっているから、むしろ楽しみだ!!」

 リオは鼻を啜っているナビルーを励まそうとするが、ナビルーはまだ元気を取り戻さない。

「(ナビルー、情に熱い所はいいんだけどなぁ……)ほらほら、寒い雪山に行くんだから涙を拭かなきゃ! 風邪引くよ?」

「ああ、そうだな。寒い雪山に……アッ」

 急にナビルーの涙が引っ込むが、表情からしていい反応ではない。

「どうしたんだ?」

「しまった。寒い雪山に行くなら暖かい装備か飲み物が無いとまともに動けないゼ……」

「なんだよ。パッと雪山に行ってパッとレウスを取り戻せばいいじゃん!」

「……??」

 深く考えないリオの楽観的すぎる発言にナビルーは唖然に取られる。

「イヤイヤイヤ、リオ! オマエは寒冷地の寒さを甘く見過ぎだゾ! そういう場所って屈強なハンターも対策する程なんだゼ!?」

「そう言われても、ここには身体を暖めるアイテムなんか……っ!?」

「ギャア!!」

「ニャッ!?」

 あれだけ猛スピードで走っていたドスランポスが急に脚でブレーキをかけ、リオとナビルーは体勢を崩してしまった。

「オイ! 急に止まってしまったゾ!?」

「どうした、ドスランポス?」

「グォォ!!」

 ドスランポスが行く先に何か感じたのか、姿勢を低くして威嚇を繰り返す。

 視線の先には怯えた様子のアプトノスの群れがいた。

「まさか、何かいるのか?」

「……! オレのヒゲがビビッときたゼ。近くに大きいモンスターがいる!」

「!!」

 

 ガサガサ……。

 

「ブォォ!!」

 近くの草むらが揺れたと同時に、一番大きいアプトノスが群れに警告の咆哮をあげる。

 

 グワァ!!

 

 しかしその警告も虚しく、草むらから黄色いモンスターが飛び出し、あろう事か成人程の大きさの幼体のアプトノスを丸呑みにした。

 その黄色いモンスターは地面を這う四足歩行の爬虫類のような見た目で、頭にはドレッドヘアーのような体毛が伸びている。

「な、なんだアイツ!?」

「ニャニャニャ!? アレは賊竜”ドスジャグラス”!? 大きな口と伸縮した腹でなんでも飲み込む食いしん坊だ!!」

 

 悲鳴をあげて逃げる成体のアプトノス達をよそに、ドスジャグラスはアプトノスを飲み込んで、みるみる内に身体が膨らんでいった。

「この森にドスジャグラスは住んでいないはずだゾ! なんでここに……!?」

 二人は圧巻の光景に気を取られていたが、ふとドスジャグラスの違和感に気づいたリオが大声で叫ぶ。

「……あれ!? よく見たら人が乗っている!!」

「ニャッ、まさかライダーか!?」

 

「……んん?」

 ドスジャグラスの黄色い鱗や毛を装備として纏った少年が、こちらにようやく気づき口を開く。

 黄色いヘビィボウガンも背負ってまるで規則ある兵士ような出て立ちだが、ドスジャグラスと同じく後方に垂れた黄色いドレッドヘアーは逆にワイルドさや荒々しさを感じさせる。

「なんだ、お前らは?」

「ソ、ソレはこっちのセリフだゾ! まずは自分の名を名乗れー!!」

 ナビルーはリオの背中に隠れながら警戒している。ナビルーをなだめながら、リオはドスジャグラスのライダーに話しかけた。

「ナビルー、落ち着けよ! ごめんな。俺はリオ。スモス村のライダーだ。お前は誰なんだ?」

「俺? まぁ……ただの放浪ライダーさ」

「コイツ、名前を名乗らないゾ! アヤシいヤツめ!」

「やめろって、ナビ……ルー……っ!?」

 

 そのライダーの左腕につけられていたのは、忘れもしない忌まわしき物。

 レウスを奪った謎のライダーと同じ”黒いフレームに中にある赤い絆石”だった。

 すぐにリオは歯を剥き出しにして怒りの表情を浮かべる。

「黒い絆石……!? お前はレウスを奪ったライダーの仲間か!!」

 すると、ドスジャグラスのライダーもリオの発言を聞いた瞬間に驚く。

「あっ、『リオ』ってまさかあの……!?」

「ドスランポス!! 倒すぞ!!」

「ギャオ!!」

「ニャッ!? お、落ちる〜!!」

 怒りのあまり攻撃の指示を出したリオは、鞍から落ちてしまったナビルーを気にせず、ドスランポスと共にドスジャグラスの巨体に突っ込む。

 しかし、既に警戒体勢になっていたドスジャグラスは咄嗟の後退でギリギリ避けた。

 リオは巨体にも臆せず相手のライダーを睨み続ける。

 

 その瞳には謎のライダーの邪悪な笑みが映っていた……。

「はーっはっはっはっ! 初めての任務であのリオレウスのライダーという最高の獲物が来るなんてなぁ!! 殺せばきっと昇格間違い無しだぜ!!」

「う、うわぁやっぱりな。如何にもワルい敵って感じの表情だゼ! リオ、きっと謎のライダーの仲間だゾ。気をつけろ!」

 

     ◇

 

_

 ドスランポスとドスジャグラス。どちらも中型モンスターで互角といえる対決。

 先に突撃したのは素早さに優れたリオのドスランポスだ。

「ははは、そんなひょろいオトモンで俺に刃向かうつもりか! ドスジャグラス、力で押し潰せ!」

「グワワワァ!!」

 ドスジャグラスは軽く吠えた後、風船のような身体を更に膨らませてリオ達を潰そうとする。

「ドスランポス、スピード攻撃だ!」

「ギャア!!」

 

 ガブッ!!

 

 ドスランポスの素早い噛みつきがパワー攻撃を出そうとしてたドスジャグラスを打つ。

「グォウ!!」

 自身より一回り大きいぐらいの身体を脚で必死に押さえ付け、弱点の頭を噛み続ける。

「ぐっ、この!」

 背中に乗りながら謎のライダーがドスジャグラスの皮で補強されたヘヴィボウガン” ジャグラスアサルト”を構え、張り付いているドスランポスの頭を狙う。

「……! 離れろ!」

「ギャギャギャギャオ!!」

 

 ドォン!!

 

 ドスランポスが張り付きをやめ、リオの指示で瞬発的に後方へ回避。

 敵がヘヴィボウガンの重さでもたついていたのか、ジャグラスアサルトの通常弾が少し遅れて発射され地面に突き刺さる。

「ぐぅ、やるじゃねぇか。こうなったら奥の手だ! ドスジャグラス、ダートブレスだ!!」

 膨れたドスジャグラスが低姿勢になってリオ達を狙う。

 

 グポァ!!

 

「避けろ!」

「ギャウ!!」

 ドスジャグラスの口から嘔吐物がブレスの如く吐かれるが、これも察知したリオ達は回避。

「ニャア〜! ゲロを発射なんてバッチぃヤツだなぁ!」

「く、くそったれ! 飛び道具まで避けられちまう!!」

 

「どれも避けやすい攻撃だな。この調子でいくぞ!」

「グォォウ!!」

 ドスランポスが更なる追撃を放とうとした瞬間。

「まだだ。これで勝つ!!」

 謎のライダーの左腕に付けている黒い絆石。

 そのフレームが展開し、中心の絆石が赤黒く光り輝いた。

「……!? まさか絆技か!!」

「ニャッ、これは……ヤバい!!」

 

「”ドスファング”!!!!」

「グワワワワァ!!!!」

 謎のライダーが不気味な輝きの絆石を天に掲げると、ドスジャグラスが力の籠った威嚇を行う。

 

 バッ!!

 

 そして見上げる程の大ジャンプをし、牙が並んだ大口を開けてリオ達に落ちて来た!!

 

 ドォォォン!!!!

 

「うわあああ!!」

「ギャァァオ!!」

 押しつぶされるように噛まれたリオとドスランポスは大ダメージを受け、その衝撃でライドが解除されてしまった。

「うぅ……!」

「ギュォォ……」

「リオ、ドスランポス! 負けるなっ!!」

「ふん、油断したなぁ。じゃあ、お前の命もお前のオトモンも頂こうとするか」

「(マズいゾ……! リオレイアとの戦いで電力は使い切った。今は攻撃ができない!!)」

 ジリジリと近づいていく黄色い巨体。思わぬ大技にリオは一気に劣勢に立たされた。

「(こうなったら、一か八か!!)うおおおおお!!」

「ん?」

 

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 相棒の危機に黙っている訳もいかず、ナビルーは脚をバタバタさせながらドスジャグラスに向かっていった。

「なんだお前? アイルー一匹が俺様に勝てると思ってんのか?」

「オ、オイオマエ! リオに手を出すな! もし手を出したら……エット……このナビルー様がオマエをボコボコにしてやるゼェ!!」

「……ふーん、どうやらお前も喰われたいようだな?」

「うっ……!」

 相手は武装したライダーと大きな身体のオトモン。当然、小柄なアイルーで怯む訳がない。

 

「イ、イイのか!! オレはあの”世界一のライダーのオトモ”だゼ!! “厄災を退けた力”も持っているゾ!! (今は使えないけどな!)」

「はぁっ!? お、お前があの噂の……!?!?」

 謎のライダーも世界一のライダーの伝説を知っていたのか、目を見開いて驚く。

「フッ、そうだ! オレにケンカを売ったら世界一のライダーさんも黙ってないゼ!! 痛い目に逢う前に尻尾を巻いて逃げるんだな!!」

 

 ……。

 

「……んな訳あるかぁ!! お前のようなちっこい変な見た目のアイルーが、『世界一のライダーのオトモ』で『厄災を退けた力を持つ』なんてよ!!」

 ……一瞬だけ謎のライダーは激しく動揺したが、ナビルーの個性的すぎる外見が災いし、嘘だと思われてしまったようだ。

「ニャーッ!? ウソじゃないって!! ホントだって!!!!」

「もういい! ドスジャグラス、こいつらを喰っちまえ!!」

「グワワワワァ!!」

「ニャーーッ!?」

 ドスジャグラスが大口開けて飛びかかるが、勘のいいナビルーが間一髪で避けて猛ダッシュで草むらへ隠れる。

「チッ、逃げたか。まあ、最悪リオさえ殺せればいいか」

 

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「ぐぅっ……まだ戦える……さぁ、続きをやろうぜ……!!」

 トドメを刺そうとリオに再び近寄る謎のライダーだが、リオは体力がまだ残っておりゆっくり立ち上がった。

「……!? くそっ、まだ動けんのか!」

「もう一度だ! ライドオン、ドスランポス!」

「ギャギャギャギャオ!!」

 リオが二回目のライドをし、再び場の空気が張り詰める。

「うおぉぉ!!」

「うがぁぁ!!」

 

【挿絵表示】

 

 

 ドォン!!

 

 両者同時に全速力で走り、オトモン同士の身体がぶつかり合う。

 根性のあるドスランポスと体格で勝るドスジャグラス。お互いに拮抗している。

「ぐっ、こんなただの小せぇ奴に負ける訳……!!」

「俺とドスランポスの絆を舐めるな! 食らえっ!!」

 リオは押し合いに夢中のドスジャグラスに大剣の溜め斬りを繰り出す。

 

 ザァンッ!!

 

「うわぁ、やべぇ!! 油断してた!」

 鉄製の大剣から生み出される重い一撃で大きく怯んだドスジャグラスはドスランポスとの力比べに負け、大きく吹っ飛ばされる。

 

 それと同時にリオの左腕につけた絆石が青白く光輝く!

「グォォォォォ!!」

 バッ!!

 縦回転のジャンプしながらリオとドスランポスは謎のライダーとドスジャグラスに急接近する。

「これが俺とドスランポスの絆技! ドスラッシュだぁぁぁ!!」

「ギャアア!!!!」

 

 ドドドドドドッ!!

 

 ドスランポスは空中で回転を止めた時に鋭い脚爪を構え、上から無数の強烈な蹴りを浴びせた!

「ぐぅっ、うがあああああ!!」

「グアワォォォ!!」

 

 ドォォォン!!

 

 ドスランポスの連続蹴りを全て受けた謎のライダーとドスジャグラスは勢いよく吹き飛び、岩の壁に思いっきり激突した。

 

    ◇

 

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 力尽きた謎のライダーとドスジャグラス。

 敵の戦意が完全に失せた事を確認し、リオはドスランポスから降りて敵達に詰め寄る。

「おい、お前は前の黒い絆石のライダーの仲間だろ! レウスをどうするつもりだ!」

「ひ、ひぃ……! 俺様は”下級ライダー兵”だから、あのリオレウスを何に使うか知らされてねぇんだよ!」

 リオがある言葉に引っ掛かる。

「『下級ライダー兵』? やっぱりお前らは何かの組織なのか?」

「ま、まぁな……へ、へへへ……」

「その組織の名前はなんだ! そして目的はなんだ!」

 その時、後方の草むらから震えながらナビルーがやってくる。

「オ、勝ったのか。リオ」

「ああ、なんとかな」

 

「馬鹿め、隙を見せたな!」

「「……!?」」

 謎のライダーは一瞬の隙を突いて丸い道具を素早く取り出し、地面に投げつける。

 

 ポシュウウ……。

 

 投げつけられたものはけむり玉。白い煙があっという間にその場を包み込む。

 ダッダッダッ!

 ドテッドテッドテッ!

「うっ、油断した!」

「マズいゾ! アイツら、この煙の中で逃げるつもりだ!」

 白い煙の中で一人と一体の逃げる足音。そし謎のライダーが吐いた捨て台詞が響く。

 

 

「俺達の正体を知ろうとした所で無駄なんだよ! “あの方達”がいる限り、お前らはどうやっても勝てねぇ……! ぶっ殺されるその時まで、せいぜい足掻くんだなぁ!」

 

 

 ……。

 

 白い煙が消えた頃には既に謎のライダーとドスジャグラスが姿を消していた。

「あいつ、逃げたか!」

「グッ、よそ見させちゃったな……」

「いいんだ。油断した俺も悪い。それに誰もやられなくてよかったよ」

 戦闘が終わった瞬間にナビルーも緊張が解けて尻餅をついてしまった。木々に囲まれたその場に静寂が訪れる。

「『あの方達』……レウスを攫った二人のライダーの事なのか、それともまだ仲間がいるのか。どっちだろうな」

「ウ〜ン、分かんないな。ソレは……ニャッ!!」

「どうした、ナビルー?」

 俯いていたナビルーが地面を指差した先には薄汚れたアイテムポーチが落ちており、中からは回復薬、携帯食料、ドーナツ、そしてそのアイテム群の中に一つだけ見慣れない赤い液体が入ったビンが転がっていた。

「アイツの落とし物だけど……コレって”ホットドリンク”じゃないか?」

「『ホットドリンク』? あ! ”ホット”って事は身体を温められる飲み物なのか?」

 ナビルーがホットドリンクを拾うが湯気が登る程に熱いらしく、危うく手から落としかける。

「アチチ! そうだゼ。見た感じなんの問題なく飲めそうだ。でも、一人分しかないのかぁ……」

「うーん。まぁ無いよりはましだろ? エムス山へ行こう!」

 思わぬ邪魔者も追い払い、二人は再びドスランポスにライドし、アンジャナフの足跡を追う。

 

   ◇

 

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 タッタッタッタッ……。

 

 ドスランポスの上で揺れているナビルーの顔は曇っていた。

「ゴメンな、リオ。さっきは助けられてなくて。あの超帯電は一度使ったら電気を溜める必要があるし、体力を凄く使うから頻繁には使えないんだ。基本、戦いはオマエとオトモンに任せることになりそうだゼ……」

「ああ、気にすんなって! お前が怪我しても困るしな! でもナビルーは戦えないし、今の戦力であいつらと戦うのはキツいな……」

 リオと固く絆を結び、見事な連携を見せられるドスランポス。

 そのドスランポスですら『下級ライダー兵』と名乗っていた敵に苦戦してしまっていた。それは敵の組織が想像以上の脅威である事を示している……。

 

「そうだ! こうなったら”モンスターの巣”を探すゾ!」

「えっ? モンスターの巣?」

「モンスターの巣の奥にはタマゴがある。親に気づかれないようにタマゴを採取して、新しいオトモンを孵化させるんだ! これはライダーが戦力を増やす基本の方法だゾ!」

「そうか! でも、モンスターの巣はどこにあるんだ?」

「ア、イヤ。それはちょっと分からニャいけど」

「”ナビ”ルーなのに、それはナビできないのか……」

「ウ〜ン、何か痕跡があれば……って、アレ? アンジャナフの足跡が増えてないか?」

 地面の二つのアンジャナフの足跡は北西の雪山方面。もう一つは北東の森方面へ伸びている。

「もう一つの足跡は野生のものかもしれない! ドスランポス、この痕跡を追え!」

「ギャギャギャギャア!」

 リオは途中から発見した北東方面の足跡をドスランポスに追跡させる。

 

   ◇

 

【テンチの森 獣道】

 足跡を追って向かった先は、再び木々が多くなる森の奥地。何度もモンスターが通ったと思われる大きな獣道が、あみだくじのように複雑に広がっている。

 道に迷わないように何度も足跡の行き先を確認しながら、ドスランポスに指示していく。

「リオ、見ろ! モンスターの巣があるゾ!」

「!」

 岩壁に洞窟のようなモンスターの巣の入り口が二つ程ある。

 しかし、左手前の巣の地面には小さく指も細い足跡。右辺りの巣の地面には中くらいの足跡。

 あの巨大な竜であるアンジャナフの大きな足跡ではない。

「ニャ? コレはドスランポスとイャンクックの足跡かな?」

「アンジャナフの足跡はこの巣の中じゃないな。もっと奥に続いている」

「本当だ。行ってみようゼ」

 

   ◇

 

 アンジャナフの大きな足跡は獣道の最深部まで続いていた。

 足跡が続いている巣の入り口の周りは金色の綺麗な鉱石が生えており、心無しか周りの植物も多く空気が澄んでおり、このエリアの環境がなかなか良いような気がしていた。

「この巣の中にアンジャナフが……」

「オオ、モンスターのレアな巣じゃないか? こんな環境が整ったエリアにある巣はなかなか発見できないゾ! モンスターの巣の中には巣の主や小型モンスターがいることもあるから、気をつけて進もうゼ!」

「ああ!」

 

_

【モンスターのレアな巣】

 巣の入り口を潜った先は、また木々と岩壁で覆われたエリアが広がっている。

「アンジャナフの足跡がいっぱいだ!」

「リオ! アソコに痕跡があるぞ!」

 壁の一点に大きな黄色い粘液がへばりついている。

「この痕跡は?」

「アンジャナフの鼻は展開する事が出来て、ソコから粘液を放つ事ができるんだ! コレは『ここからは俺様の縄張りだぞ。入るな!』っていうアピールなんだゼ」

「へー!」

「逆に言えば、この先にアンジャナフの寝床がある。モンスターの寝床はタマゴのありかでもあるんだゾ!」

「そこに行けばタマゴがあるんだな! 早く新しいオトモンを仲間にしたいな!」

 ドスランポスに乗ったままアンジャナフの痕跡を辿り、リオとナビルーはタマゴを捜索する。

 

   ◇

 

 _

 タッタッタッタッ……。

「ん? ドスランポス、止まれ!」

「ギャア」

 

「ブル」

「ブッブッ」

 

 道を塞ぐように屯しているのは、猪に似た小型のモンスター。

 今更小型モンスターは敵ではないが、念の為にリオはドスランポスに停止の命令を出しておく。

「んん……?」

「アイツは”ブルファンゴ”だな。大猪ドスファンゴの子分に当たる小型モンスターだゾ」

「あっ、あいつの子分か! 通りで『どこかで見た事あるなぁ』と思ったんだよ!」

「アイツの突進ってなかなかアブナいんだよなぁ……ってニャニャニャッ!?」

 ナビルーはヒゲが激しく揺れ、そわそわしながら後ろを見渡した。

 一見、後ろには何もいないが……。

「どうした、ナビルー」

「ナニか来るゾ! アソコの茂みに隠れろ!!」

「え? お、おう」

 ブルファンゴに見つからないように移動し、黄色味がかかった大きな茂みに二人が隠れる。

 ドスランポスも中型モンスターの中でも特に細身かつ小柄な体格なので、なんとか押し込められた。

 

 ドン、ドン、ドン、ドン!

「グオオオオオ!!」

 

「「!!」」

 ナビルーの嫌な予感は当たっていた。

 洞窟の入り口の方から、大きな足音を立てながら巨大なアンジャナフが走ってくる。

 

「ブゥゥッ!!」

 ガブッ!!

 

 一体のブルファンゴはアンジャナフに咥えられた後、抵抗も許されずに噛み砕かれてしまう。

 

「ブィィ!!」

「グルル……」

 グシャ!!

 

 もう一体のブルファンゴが驚きつつも自慢の突進で立ち向かうが、咀嚼を繰り返しているアンジャナフは鬱陶しそうに脚で踏み潰す。

 二体共、森の暴れん坊の暴力的な一撃で沈んでいった。

「(ナビルーの言う通り、本当にアンジャナフが住んでいた。なんてパワーだ……!)」

 

「グルルゥ……?」

「「!?」」

 

 黄色い眼光を向けられたリオ達の背筋が凍り付く。

 アンジャナフが口に含んでいたブルファンゴの肉塊を飲み込むと、鼻を展開し中から黄土色の鼻骨が顕になる。

 上に伸びた鼻骨が不気味に蠢いた後、なんとアンジャナフは匂いを嗅ぎながらこちらに向かって歩き出したのだ。

「……!?(こっちに気づいたか!?)」

「……!!(ヤ、ヤバいゾ!! アイツ、かなり鼻が利く!!)」

 少しでも動いて茂みを揺らしたり息の音を聞かれたら、確実にアンジャナフに襲われる。

 息を殺し緊迫した空間が数秒続き、奴が一歩を踏み出す毎に心拍数が上がっていった。

「グルルルゥ……!」

「「(マズい……!?!?)」」

 遂に目と鼻の先までアンジャナフがやってきた。

 アンジャナフがリオ達が隠れている茂みの違和感に気づきかけたその瞬間。

 

 コロコロコロ……。

「グル!!」

「「!!」」

 

 突如、その場に響く”硬い物が転がる音”。

 二人と一体が振り向いた先には一メートル程の金色の球体が地面を転がっていく。

「グァァ!!」

 

 ドン、ドン、ドン、ドン……。

 

 匂いの正体がその金色の球体だと判断したアンジャナフはそれを追っていき、あっという間にエリアから姿を消した。

「ハァッ、助かったゼ……」

「ナビルー。い、今の変な玉はなんだ?」

「アイツは盾虫”クンチュウ”というモンスターだな。ダンゴムシのように丸まり、地面を転がって移動する小型の甲虫種。偶然、近くに潜んでいたアイツが物音に驚いて転がっていったんだと思う」

「そっか! クンチュウがアンジャナフの注意を引いてくれている間に早くタマゴを採取しなきゃな!」

 アンジャナフがリオ達のいるエリアの離れ、巣の主がクンチュウを追いかけている今が、寝床のタマゴを採取する絶好のチャンス。

 二人は急いでドスランポスにライドし、巣の奥へ奥へと向かった。

 

_

【タマゴのありか】

「アッ、リオ! アレは!!」

 天井があって日陰が多く占める広々としたエリア。天井の中心だけ穴が空いており、美しい陽光が寝床を照らす。

 その中心にあったものは……。

「やったぁ!! タマゴがあった!! で、これをどうすればいいんだ?」

「サイズ的に”盗める”のは一つだけだな。どれか一つ頂こうゼ!」

 先程のナビルーは『タマゴを採取』と言っていたが、言い方を変えれば『子供を盗む』と同じ事。

「うっ、『盗む』と考えるとちょっと罪悪感が……」

「ゴメン、言い方が悪かったな。でも、ハンター達みたいに”ある程度は割り切らない”と自然で生き延びる事はできないゼ。ビオンも似たような事を言っていたゾ?」

「ああ、そうだったな。これも謎のライダーにやられない為、紅力化に対抗する為だ。感謝の気持ちを込めて、”頂きます”……!!」

 リオは不在の親に向けて数秒祈った。

 そして、鳥の巣のように枯れ草を円形に並んだ場所を調べ、大きなタマゴを割らないように慎重に抱き抱える。

 そのタマゴは横に伸びた稲妻のような黒い模様が無数にある桃色で、アンジャナフの色合いと完全に一致していた。

「フンフン、ニオイも重さもかなり良いゾ!! 間違いない、コレがアンジャナフのタマゴだ!」

「『ニオイ』? 『重さ』?」

「ヘヘン、知らないのか? タマゴはいいニオイで重ければ重い程、強いオトモンが産まれるんだゼ!」

「本当か!」

「マ、なんとなくだけどな!」

「……おい」

 リオが適当に知識を語るナビルーに呆れてしまった。しかし、タマゴの状態はかなり良く間違っているとは決まってない。

 むしろ、勘の良いナビルーの話なら信憑性は高い……かも?

「ア、こんな話しているヒマはないゾ! 早く持ち帰らないと親が帰ってくる! もし今アイツに見つかったら……」

 

 

「グオオオオオ!!」

「「えっ」」

 

 

 寝床中に響く威圧するような低い咆哮。

 冷や汗を流しながら恐る恐る振り返ると、見覚えのある桃色の巨竜が……。

「あっ……!?」

「ア、アア〜。コレはヒジョ〜にヤバいゼ……」

 

 巣に侵入した挙句、大事なタマゴを持ち去ろうとしていた二人と一体を見たアンジャナフから、メラメラと怒りの炎を湧き上がる。

「グアオオオオオ!!」

「うわあああ!? なんでもう帰ってきてんだよおおお!?」

「ニャアアアーー!! クンチュウゥゥ! もうちょっと遠くに誘導してくれよおおお!!」

 

「グゥゥ!!」

「く、来るゾー! 避けろっ!!」

 

 タマゴで両手が塞がっているリオと戦闘が苦手なナビルー、そして格上の大型獣竜種にあって戸惑っているドスランポス。

 当然、先手を打ったのはアンジャナフ。

 桃色の身体を縮こませた後、頭の天辺を突き出して頭突きしながら突進してきたが、リオはタマゴを抱えながら間一髪で前転回避。

 ナビルーとドスランポスもダイブするようにジャンプし、すれ違いながら回避した。

 

「逃げるぞ! 俺の肩に掴まれ!」

「ら、ライドしないのか!?」

「もしもの為にドスランポスの体力は温存しておきたい! ほらっ、早く!」

「エッ!? チョ、チョット待って!!」

 タマゴを抱えながらリオは出口へ向かって全力で走り、足が短くて歩幅が狭いナビルーも置いてかれる前にリオに乗った。

 

     ◇

 

_

【モンスターのレアな巣 道中】

「ハァッ、ハァッ、ハァ!!」

 ドン、ドン、ドン!!

 アンジャナフが木々を薙ぎ倒しながら、大顎を開いて走ってくる。

 

「ニャアアア!! 近くまで来ているってー!!」

「っ!?」

 気づいたら数メートルまでアンジャナフが迫ってきている!

「しょうがない! ナビルー、タマゴを持ってて!」

「エッ、なんで!? てか、さっきドスランポスの体力を温存していたのって、まさか……!?」

「ああ、ライドしてあいつと戦う!!」

「今の体力じゃあ無理だろ!? やめとけって!!」

 ブンッ!!

「ニャーーッ!?」

 

「ライドオン、ドスランポス!!」

「ギャアア!!」

 

 ナビルーがタマゴを持った事を確認したリオは力一杯入り口方面まで投げ、自身はドスランポスにライドしてアンジャナフに走った。

 

「ゴォォ……!」

 Uターンしてこちらに向かってきた侵入者に、アンジャナフは唸りながら顎を地面に突き立てる。

「何をする気だ!!」

 

 ゴゴゴゴゴォッ!!

 

 なんとアンジャナフは地面を豪快に抉りながら、こちらに突進噛みを繰り出した。

「全力でこっちを噛み砕くつもりか! 跳べ、ドスランポス!」

 指示を出され瞬間的に聞き取ったドスランポスはジャンプ。

 身体の構造的に直接攻撃が届かない上顎に飛び乗って噛み付いた。

「グォウッ!?」

「次は背中!」

 バッ!

 驚いたアンジャナフは乗ってきた相手を振り落とそうと頭を地面に擦りつけるが、ドスランポスは背中に飛び映った。

 ザクッ、ザクッ、ザクッ!!

「グォォォ!!」

 今度は前脚の大爪で大きな背中を滅多刺し。

 アンジャナフが苛立って背中の相手に噛み付こうとするが、あと少しの所で牙が届かない。

 ただでさえタマゴを持っていかれて怒り心頭なのに、体格が劣るモンスターに翻弄されて徐々に理性が失われていく。

「グルァァ!!」

「次は尻尾!」

 アンジャナフが身体を激しく揺らした時は、もう尻尾に飛び映った後。

 ドスランポスにライドしたままリオはアイアンソードで構え、できる限り力を溜める。

 

「うおおお! 食らえ!!」

 ザァンッ!!

「グアアオウウ……!?」

 

 銀色に光る鉄の大剣を尻尾にめり込ませた後、勢いよく引き抜く。

 丸太のように太い尻尾が切断され、血飛沫を上げながら地面に落ちる。

 アンジャナフが後方の激痛に堪らず転倒し、リオを乗せたドスランポスは巨体に押し潰される前に地面に飛び降りた。

 

 キィィィン!!

 絆石が光り輝くと同時に、ドスランポスは雄叫びを挙げ、縦回転しながら跳躍する。

「いっけぇぇぇ! “ドスラッシュ”!!」

「ギャギャギャギャア!!」

 空中で回転を止めた時に鋭い脚爪を構える。

 

 ドドドドドドッ!!

 

 そして、上から無数の強烈な蹴りを浴びせた!

 地べたで転んでもがき続けているアンジャナフにありったけの力で絆技を叩きつけ、桃色の鱗や黒い体毛が剥がれ落ちていく。

「どうだ!」

 

「グォウ……!!」

 しかし、無防備な状態でドスランポスの絆技を受けたのにも関わらず息堪える様子はなく、傷だらけの巨体が起き上がる。

「……ダメージが十分じゃなかったのか!」

 

 ボォウウウ……!!

 

 起き上がったアンジャナフは天を仰ぎながら口に炎を滾らせた。

 完全に殺意に満ちた眼光に、リオのドスランポスが弱気になっていく。

「(まずい、絆技を食らっても倒れないなんて……!! ここからどう攻めればいいんだ!!)」

「ガアアア!!」

 怒り任せに高熱の顎を振ったアンジャナフが再び突撃してくる!

「左に避けろ!」

 リオ達はなんとか横にステップして回避。

 勢い余った突撃は急には止まれず……。

 

 

 ドゴォォォンッッ!!

「グゥッ!!??」

「!!」

 

 

 アンジャナフはリオの後ろにあった岩壁に意図せず牙を打ち付けてしまい、太く鋭い牙が何本も砕け散る。

「ふぅ、今のは危なかった」

「グァァ……」

 痛みで意識が朦朧となっていくアンジャナフは立ち続ける事すら危ういのか、あらぬ方向を見回しながら蹌踉めく。

 

「クゥン……クォンウンウン……」

 ズゥン……ズゥン……ズゥン……ズゥン……。

 

 満身創痍のアンジャナフは脚を引きづりながら、寝床の方へ戻っていく。

「はぁ……あれだけ怪我しているんだし、もう諦めてくれるよな」

「グォォォウ……」

「……よくやったな、ドスランポス! ゆっくり入り口へ戻ろうな」

 強敵が追い払ったリオとドスランポスの身体が一気に解れる。

 謎のライダーとの連戦でドスランポスのスタミナは底を尽きていたので、リオはライドを解除した。

 

「本当にごめんな、アンジャナフ。お前の子供は責任を持って育てるよ」

 

   ◇

 

_

【モンスターのレアな巣 手前】

「リオとドスランポス、なかなか帰ってこないな……」

 タマゴを地面に置いたナビルーは巣の手前でリオ達の帰りを待っていた。

 勿論リオ達の実力は信用していたが、長い時間が経ったにも関わらず姿を見せない事に不安を抱く。

「まさか……食われた……? イ、イヤ! まさかな。リオとドスランポスがヤラレるワケないよな、ハーハッハッハッー!!」

 

 ……。

 

 巣の中は恐ろしいほどに静か。ナビルーの頬に汗が垂れ出し、次第に焦りの感情が湧き出てきた。

「オ、オイ。ウソだよな……? アッチ、ヤバい状況なんじゃないかっ!? 近くに誰かいないか!? 助けを呼ばなきゃっ!!」

 心臓の鼓動が止まらず、ナビルーが慌ててタマゴを持って助けを求めようとしたその時。

 

「おーい、ナビルー!!」

「!!??」

 

 暗闇から現れたのは疲労し切ったリオとドスランポス。

 ナビルーは目頭が熱くなり、タマゴそっちのけでリオ達に駆け寄った。

「ウオォォォ!! リィィオォォォ!! 心っ……配させっ……やがってぇぇぇーっ……!!」

「はは、悪い悪い。でも、戦って追い払わないといつまでも追ってきそうだし、お前もその場に居たら危ないと思ってさ」

「オマエはビオンと同じでっ、ム、ムチャしすぎなんだヨォォォ!!」

「うっ……本当にごめん。とりあえず今はこの巣から離れようぜ? 流石にもう追ってこないとは思うけど、一応な?」

 

   ◇

 

_

【テンチの森 出口】

 紅力のリオレイア戦の後に朝を迎えたはずだが、気づいたらもう夕方に差し掛かっている。

 予期せぬトラブルの連続で疲れたリオ達は、簡易的なキャンプを組み立てて休む事にした。

 

「ヨシ。ここならモンスターの気配もないし、いよいよタマゴを孵化させてみようゼ!」

「ああ!」

 

 リオが左腕の絆石を掲げると、絆石の白いフレームが開き、透き通った青い石から青白い光を放たれる。

「我が名はリオ」

 リオがこれから行動を共にするタマゴに挨拶をし、続けてナビルーがタマゴと絆石に呼びかける。

「聖なる絆石よ、リオと眠りし御霊の絆を結びたまえ!」

 二人の言葉に反応するかのように絆石の光が強くなっていく。

 そして光の輝きが高まった時、ナビルーが力強く叫ぶ。

「いざ、新生の時っ! 目覚めよー!!」

 

 ピキ……ピキ……パリンッ!!

 

 タマゴの桃色の殻が割れると同時に白い光が辺りを照らし、勢いよく弾けた。

 

「クォォォン!!」

 

 二本の後肢で全体重を支え、頭と小さな前脚と尻尾を地面から浮かしている姿勢。全身を包む桃色の鱗に背中に生えた黒い体毛。大きくて荒々しさを感じる大顎と白い牙。

 生まれたオトモンは予想通り、蛮顎竜”アンジャナフ”だった。

「これからよろしくな、アンジャナフ!」

「クォォ!」

 リオを仲間と認識したアンジャナフは幼体にも関わらず、力強い鳴き声で返事をする。

「ギャギャギャギャア♪」

「オオ、やっぱり採取したアレはアンジャナフのタマゴだったのだな! ドスランポスも仲間が出来て嬉しそうだゾ!」

 

   ◇

 

_

 キャンプで食事を摂って軽く睡眠をしてから一、二時間程度が経って辺りはすっかり夜になって暗闇に包まれる。

 しかし、レウスが謎のライダー達の手に渡っている以上、悠長に休んでいる暇はない。

 突如現れた謎のライダーの仲間の撃退。そしてタマゴ採取による戦力増強にかなり手間取ってしまったので尚更だ。

 

 キャンプを急いで畳み、リオとナビルーとまだ幼体のアンジャナフはドスランポスにライドする。

「よし、皆! エムス山に行くぞ!」

「新天地だな。ドキドキ、ワクワクだゼ!」

「クォォ!」

「ギャア!」

 

 まだ暗い夜の中を冒険するのはリスクがあるが、松明の明かりを頼りにリオ達は突き進む。

 そして、謎のライダー達と攫われたレウスが行ったと予想されるエムス山の方に走っていった……。

 

 続く

_

●今回のおまけ

 

【挿絵表示】

 

ドスジャグラス

別名:賊竜

種族:牙竜種

レア度:★2

属性・状態異常:無属性

主な生息地:森林

 

地面を這う四足歩行の爬虫類のような見た目、黄色い全身の鱗と頭のドレッドヘアーのような立髪、そして伸縮する灰色の腹が特徴である中型の牙竜種。

小型モンスターのジャグラスのリーダーと言うべき存在で、通常のジャグラスに比べてパワーもタフネスも断然違う。

 

食欲がとても強い事で有名で、アプトノスなど大きな草食種モンスターを丸呑みにすると身体が大きく膨れる。

戦闘時は噛みつきや突進だけでなく、その膨らんだ巨体で押し潰してくる事も。

 

ドスジャグラスは時々丸呑みにした肉をジャグラス達に向けて嘔吐し、吐いた肉片を餌として分け与える。

上記のように比較的面倒見が良い点からドスランポスらと同じく、見習いライダーを導く者として見習いライダーの初期オトモンにする村も多いようだ。

しかし、空腹で気が立っているドスジャグラスは部下であるはずのジャグラスを捕食してしまう時がある。

流石に絆を結んだライダーを捕食する事は無いが、それでも空腹時は気が立って反抗的になってしまう。

見習いライダーは初期オトモンの反抗と向き合う事で、モンスターとの接し方を学んでいくのだ。

 

◯主な技

⚪︎大食い

相手を豪快に食らいダメージを与え、自身の体力を回復する。

⚪︎威嚇

相手を威嚇し攻撃の勢いを抑える。

⚪︎ダートブレス

嘔吐物でダメージを与えるという相手の意表を突いたテクニック技。体力が少ない時ほど、腹が力んで威力が上がる。

⚪︎攻撃の咆哮

雄叫びをあげ、味方達の攻撃の意思を強める。

 

◯絆技

⚪︎ドスファング

雄叫びをあげた後、大ジャンプ。全体重を乗せて飛びかかり噛みついて、そのままの勢いで押し潰す。

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