【あらすじ】
ようやく新たな謎のライダーの情報を手に入れたリオ達。
リオ達は二ウェス村のライダー”サス”達と共にエムス山の調査を開始するが、前に遭遇した山賊が再び現れて戦闘になってしまう。
山賊との戦いはアンジャナフとサス達の共闘のおかげで危なげなく勝利。
しかし、忍び寄っていた謎のライダーの爆弾により地面が崩落し、リオとアンジャナフと山賊は下層の洞窟へ落ちてしまった。
ナビルーと離れてしまったリオは洞窟を脱出しようとするが、そこではまたもや山賊と出会う。
更にそのエリアで不気味な咆哮が響き、怪しい影がリオ達に迫ってきていた……。
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第八話 救い
突然、洞窟内に響き渡る咆哮。
「な、なんだ!?」
「グルル……!?」
暗闇の洞窟で、しかも物音も気配も無いように見えた中で、かなりの声量の咆哮に心臓が飛び出そうになってしまう。
その声量はアンジャナフすら一瞬怯んでしまう程だ。
「アンジャナフ、気をつけろ! モンスターが近くにいる!!」
「グルル……!」
すぐにリオはアイアンソードの柄に手をかけ、アンジャナフも戦闘態勢になる。
しかし、周りは真っ暗な為にモンスターの姿が一切見えない。それどころか近くに何かがいるような気配もない。
異様な空気感にリオがこのエリアの違和感を感じた。
「……! (おかしい……今の咆哮は気のせいなんかじゃない。でも、近くに誰かいる感じでもないぞ……!)」
「……!! グァァ!!」
鼻をヒクヒクと動かしたアンジャナフが敵の匂いを感じとり、真上に向かって吠え出した。
「どうした、アンジャナフ!! ……っ!?」
「グゥゥアァ〜……」
なんと咆哮をあげた者は洞窟の天井に張り付いていたやや大型の飛竜種。
全身は血管が細かく浮き出た白いぶよぶよとした皮に覆われ、白い翼の先の指は太く、尻尾は細く丸みのある形。
そして、何よりその飛竜の丸い頭は目らしきものがどこにもついてなく、横に裂けた大きな口の中にはびっしりと生えた牙と赤い口内が見えているという非常に気味の悪い見た目をしていた。
「くっ、上に居たのか!!」
今まで様々なモンスターを見て来たリオだが、ここまで異様な姿をしているモンスターは初めて見る。
バッ!
「グワァァ〜……!」
不気味な飛竜がこちらを敵と認識したのか、急に飛び降りてリオ達を押し潰そうとする。
「くっ! 避けろ!」
「グル!」
ドォン!
間一髪でリオとアンジャナフは後退し、押し潰しを回避した。
「フガフガフガ……」
その飛竜が頭を震わせると同時に鼻息のような音が聞こえてくる。
「なんだ? 目が無い代わりに鼻が効くのか……?」
「グゥ〜……」
辺りの匂いを嗅いだ飛竜が唸りながらゆっくりと後ろに振り返った。
「ウウゥ〜……!」
「うっ……あぁ……! く、くるな……!」
「っ!?」
飛竜が足元の山賊に気づいたのか、無数の牙を覗かせて山賊に歩み寄る。
口からは粘り気のある涎が垂れており、今にも山賊を捕食してしまいそうだ。
「た、助けて……くれ……! まだ……死にたく……ねぇ……!」
「……!!」
あれだけ荒くれていた山賊の少年の目から小さな涙が浮かび、か細く悲痛な叫びを上げた。
「あぁ、た……頼む……! 死にた……死にたくねぇよぉ……!!」
ザァン!!
洞窟内に響く”肉が切れ、血飛沫が舞う音”。
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……怪我を負ったのは山賊ではなく、背後から大剣で斬られた飛竜の方だった。
「グワァ……!?」
「おい、お前の相手は俺達だ!!」
「グアアオオ!!」
飛竜が攻撃に驚きながらリオ達に振り向くと、リオとアンジャナフが相手を挑発する。
「ゥゥホワアァァーーッ!!」
挑発に乗った飛竜は再び大きな咆哮を上げ、牙を剥きながらリオ達に向かってくる。
「ライドオン、アンジャナフ!!」
「グオオォォ!!」
リオは恐ろしい形相の飛竜にも怯まず、アンジャナフにライド。
「ほら、こっちだ!!」
ドン、ドン、ドン、ドン!
飛竜のヘイトを買った事を確認し、後方のエリアへと誘導しようとする。
「フガフガフガッ……! グォァァ……!」
ペタッ、ペタッ、ペタッ、ペタッ!
リオの狙い通り、飛竜は奥へ逃げるリオとアンジャナフの匂いを嗅いで追跡を始めた。
……
「うぅっ……あ、あいつ……」
◇
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【エムス山 中腹下】
一方その頃。
ナビルーとサスはウルクにライドして、エムス山の中腹から洞窟の入り口へ向かっていた。
「ぐぬぬぅ、謎のライダー達め!! 流石に堪忍袋の緒が切れたゾ!! 次会った時は――」
今だにナビルーは怒っており、アイルーとは思えない気迫にサスは冷や汗を掻いていた。
「な、ナビルーちゃん。確かにあいつはリオとアンジャナフを落としたし、『キモいアイルー』とか言ってきたけど、もうちょっと落ち着いて……」
「……オレを馬鹿にした事は今はどうでもいい。アイツがレウスを傷つけて攫った挙句、リオとアンジャナフを爆弾で始末しようとした事の方に腹が立っているんだ!!」
「なるほど。ナビルーちゃんはライダーのオトモだから、本当に絆を大事にしているんだね。うちの村も『困っている人は助ける』をモットーにしているから、気持ちは凄く分かるよ」
なだめられたおかげで、少しづつだがナビルーの怒りが収まってくる。それと同時にサスのある発言が気になった。
「ム? ニウェス村の村長も『困っている人は助ける』って言っていたような? ニウェス村全体で大事にしている事なのか?」
ナビルーの何気ない一言でサスの顔が曇り、しばらくして重く口を開く。
「実は……このエムス地方で悲しい出来事があったんだよ……」
「ニャ?」
ウルクで移動しながら、サスは”悲しい出来事”とされる話を語ってくれた。
「少し前ね。エムス地方にはニウェス村以外にもライダーの村があったんだよ。“ヒマ村”っていうエムス山の凄く寒くて高い場所にある村。厳しい寒さの中、ニウェス村とヒマ村は協力し合って生き抜いてきた仲だったんだ」
「エッ、他のライダーの村があったのだな。山を探索している時、全然気づかなかったゾ」
「気づかないのも無理ないよ。だって、その村は”とある飛竜が滅ぼした”から今は無いんだよ」
「ニャ!? モンスターにヤラレちゃったのか!? ライダーの村を滅ぼせる飛竜って、リオレイアみたいなヤバい奴だったのか?」
「ヒマ村を滅ぼした奴の名前は轟竜”ティガレックス”。『絶対強者』と呼ばれるとても凶暴で大きい飛竜だよ」
その名を聞いた途端、ナビルーの目が見開く。
「ニャア!? 『ティガレックス』だって!? リオレイアよりもヤバい奴じゃないか!?」
「ヒマ村を襲ったティガレックスは特に強い個体でね。ニウェス村のライダーも派遣されたけど全然敵わなかったんだ……」
モンスターと絆を結び共に戦うライダーだが、そのティガレックスは二つの村のライダーの連携すら跳ね除けたという。
前にスモス村を荒らしたリオレイアといい、改めて大型飛竜の恐ろしさが分かる話である。
「そして、ニウェス村のライダー達は身の危険を感じて山の麓、自分達の住処へ戻ったんだ……悪い言い方をすると、”我が身可愛さにヒマ村の人達を助けるのを諦め、見捨てたんだよ”……」
「……っ」
いつもはおしゃべりなナビルーも、今回ばかりは無口になってしまった。
まさかあれだけ優しくしてくれたニウェス村の者達が、人を見捨てていたなんて。
特に母親のように暖かった村長に、そんな判断をしていた過去があるとはとても思えなかった。
「ティガレックスが他のエリアに去った後に見に行った時は……みんなもう……」
最後に言葉が詰まっていたようだったが、恐らくヒマ村の者達はティガレックスに喰われてしまった事が容易に想像できる。
「そ、そんな過去が……」
「あの時以上に後悔した日は無いね……私達はそれ以来、『困っている他人は身を削ってでも助ける』と誓ったんだ」
暗い雰囲気になって黙ってしまっていたが、慌ててナビルーはサスをフォローしようとする。
「ま、まぁ。相手が強くて大きい飛竜だから逃げたくなるのは仕方ないと思うけどなぁ……それこそ、逃げなかったらニウェス村のみんなもヤラレていただろうし……」
「……ナビルーちゃんは優しいんだね。その言葉でちょっと心が軽くなったよ。ありがとう」
ウルクの上で揺れながら過去の話をしていると、前方から洞窟の入り口が見えてきた。
「たぶん、リオ君はあそこの洞窟の奥に落ちたと思う……急ぐよ!」
「おう!」
◇
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【エムス山 洞窟深部】
その頃、リオは不気味な飛竜を山賊から離す為に奥のエリアまで誘導していた。
暗闇の中、飛竜を誘導するのはとても危険だが、山賊が飛竜に襲われない為にも危険を承知で誘導するしかなかった。
幸いにもあの飛竜は走行がそこまで得意ではないのか、アンジャナフを追い詰めるほどではない。
「あ! アンジャナフ、あそこで戦おう!!」
「グルル!!」
前方に天井が空いて光が漏れているエリアを発見。
山賊がいるエリアの近くにまた明るいエリアがあったようだ。
ザザーッ!
「グォゥゥゥ!!」
明るいエリアで追ってくる飛竜に振り向き直し、アンジャナフは迎撃の姿勢に入る。
しかし、今まで後ろにいた飛竜がいない。
「あれ、まずい!? あいつ、山賊の方へ戻ったか!?」
「グゥゥ……!」
ボオオオォォ!!
またアンジャナフが匂いで奴の場所を感じとったようで、暗闇方面の壁に向かって口からバーニングブラスターを放つ。
ドォン!!
「グァ〜オゥゥゥ〜〜!?」
バーニングブラスターの拡散する炎が壁に張り付いて潜んでいた飛竜に見事命中。
やけどを負って慌てた飛竜が、ジタバタと暴れながら地面に落ちる。
「そこにいたのか。よく当てたアンジャナフ! 炎のおかげで洞窟の中も明るくなった!!」
初めて見るモンスターなので、当然どんな攻め手を使うのかが分からない。
かといって自分がいるエリア以外は真っ暗な上に構造も知らない洞窟なので、下手に逃げようとするのも危険な状況。
やはりここでアンジャナフに指示をして狩るしかないだろう。
「グゥゥ〜……」
飛竜がゆっくりとこちらへ近づいてくる。
「何かする気だ! アンジャナフ、バーニングファングで牽制だ!」
「ガゥゥ!」
シュルル!!
ガジッ!!
「グォウ!?」
「えっ!?」
リオは自分の目を疑った。
あの飛竜は確かに頭も首も短かったのだが、少し構えた後に短かかった首が一気に伸び、距離があったアンジャナフに噛みついてきたのだ。
「……グォォ!!」
予想外の攻撃にアンジャナフが狼狽えるが、バーニングファングで反撃。
しかし、瞬時に奴の首が引っ込み、噛みつきを外してしまう。
「中距離ぐらいなら、攻められるのか! 仕方ない。アンジャナフ、接近戦で勝負だ!」
「グル!」
リオの指示を受けたと同時に太い脚で地面を蹴り、飛竜に接近するアンジャナフ。
「グゥゥ〜……グオォォ〜!!」
バリバリバリ!!
「うわぁぁ!?」
「グアォォ!?」
正面から接近してきたリオとアンジャナフを待っていたかのように、飛竜は全身から青白い電気を放つ。
当然、アンジャナフは感電してしまった。
「グルルゥ!!」
「まずい。結構強いぞ!」
距離を置いたら首伸ばしで噛みつかれ、接近したら放電を食らってしまう……。
今までのモンスターとは違い、かなりテクニカルで厄介なモンスターなようだ。
流石に中堅最強格のアンジャナフより攻撃力は劣るが、このまま戦っていたらテクニックの差で押し負けてしまう。
「くそっ、どう攻めればいいだ……! うっ!」
その時、リオが少し肌寒い事に気づく。
どうやら長い間エムス山で調査したり戦っていたりしている内に、ホットミストの効果が切れかかっているようだ。
「まずい。早く決着をつけないと……!」
「グルル……」
アンジャナフの耐寒効果も切れそうなのか、少し顔色が悪いようにみえる。
「グゥゥ〜!!」
ビリビリビリ……。
その時、再び距離をとったアンジャナフに向かって飛竜が口に電気を溜め始める。
「雷のブレスまで使えるのか! 今度こそ避けろ!」
「グゥゥ!!」
「ゴォォォ〜〜!!」
バリバリバリィ!!
地面を這うように電気のブレスがこちらへ向かってくる。
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バッ!
しかし、弾速が比較的ゆるやかで、アンジャナフはこれを難なく回避した。
「(あいつは動きが遅い! 今なら隙をつけるかもしれない!) 今だ、アンジャナフ!」
もう一度飛竜に接近するアンジャナフ。
口から炎を滾らせ、高熱の牙で飛竜に噛み付いた!
バキィ!!
「グァァォォゥ〜!?!?」
またもやアンジャナフのバーニングファングの炎が飛竜の身体に引火。飛竜は堪らず大きく怯んだが、同時に身体に電流が走る。
「放電が来るぞ! 避けろ!」
バッ!
バリバリバリィ!
飛竜が放った反撃の放電を回避。
「また隙が生まれた! アンジャナフ、バーニングブラスターだ!!」
「グゥゥ……グオオォォ!!」
赤熱するアンジャナフの口から赤赤と光る火炎放射が放たれる。
拡散する炎は飛竜の身体を容赦なく燃やす。
「ゲェホゥッ!!」
強力な攻撃をまともに食らった飛竜が思わずダウン。
脚をバタつかせて起きあがろうとするが、上手く立つ事ができない。
キィィィン!!
その時、リオとアンジャナフの絆が最大まで高まったのか、絆石が光輝く。
「今なら絆技を放てる! 行くぞ、アンジャナフ!」
「グォォ!」
「食らえ! ”ジャナフディレイル”!!」
「グオオォォ!!」
アンジャナフが跳ねながら接近し、大ジャンプ。
ドゴォン!!
顎を開けながら地面に落ちると同時に巨大な火柱が発生。
ズガガガガガ!!!!
灼熱の火柱からアンジャナフが飛び出し、高熱の顎で地面を抉りながら猛突進した!
「グオオォォォ!!」
ドゴオォォン!!!!
「グアアォォ〜ン!!??」
そのまま飛竜に炎の突進噛みつきをお見舞いし、火だるまになりながら飛竜が吹っ飛ばされた。
「ゲホゥッ……ゥゥ……グァァォ〜ン……」
アンジャナフの技の数々を食らった飛竜がゆっくりと地に倒れ伏せる。
グググ……。
抵抗するかのように少しもがいていたが、やがて完全に力尽きて微動だにしなくなった。
「よし、大勝利だ! よくやったな、アンジャナフ!!」
「グァァ!」
「あ〜!! ナビルーちゃん、リオ君とアンジャナフがいたよ!!」
「ウォー、良かった!! オーーイ、リオーー!! アンジャナフーー!!」
「「!」」
後ろを振り向くとナビルーとサスの声と共に明るい光が近づいてくる。
明るい光の正体はナビルーが持っている松明だった。
「ニャッ! なんでフルフルがここで倒れているんだ!?」
ナビルーが倒れている飛竜を見て聞き慣れぬ名前を叫んだ。
「えっ。ナビルー、このモンスターも知っているのか?」
「まぁな。そいつは奇怪竜”フルフル”。目が無くてぶよぶよした皮という不気味な見た目をしていて、豪雷ブレスや大きな咆哮からハンター達からも恐れられている飛竜種だ」
「ああ、そこまで説明しなくてもいいよ……だって、さっき戦って全部知っているからな……」
◇
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【エムス山 とあるエリア】
猛吹雪が舞うエムス山。
山の目立たないエリアに木造でできた前哨基地がある。
その基地へプケプケに乗った少女ライダーが飛来し、寒がりながら中へ入っていった。
【エムス山 謎の前哨基地】
……
「『リオを大タル爆弾で始末した?』ですって?」
前哨基地の中にはギエナ装備の女性ライダーとジャナフ装備の少年ライダーが、作戦会議室のイスに座っていた。
「そうぺぅ。大したことなかったぺぅ!」
『リオを始末した』。その言葉を聞くや否や、少年は悪い笑みを浮かべて喜んだ。
「おおぉぉでかした!! へっへっへ、後はあの”あいつ”を渡せば俺達は大出世間違いないですぜ! サファンの姉御!!」
笑っている少年とは逆に、”サファン”と呼ばれる女性の顔は冷酷な目つきをしている。
「アング、待ちなさい。貴方、”本当にリオが死んだのか”確認したのよね?」
「……ぺぇ?」
「二回も言わせないで。本当に死んだのか確認したのって聞いているのよ」
てっきり褒められるのかと思っていたプケプケのライダーだが、サファンの鋭い言い方と目つきから次第に顔中に冷や汗が滲んできた。
「ぺ、ぺぇ。爆弾で地面が崩れてあいつは落ちたよぅ……死んだのかは……あのぅ、確認してなかったけどぉ……」
少し長い溜め息をした後、サファンはプケプケのライダーを圧するように睨み、ゆっくりと口を開く。
「貴方馬鹿なのね? あの子は前の襲撃の時、”あんな高い所から落ちて”生きていたのよ……もしまだ生きていて、こっちに攻めてきたらどうするのよ!!」
先程まで落ち着きのあったサファンの美しい顔。
しかし喋っている間にいきなり椅子から立つと、目は刺すような鋭い目に変わり、口からは獣のような歯を覗かせ、先程の美しさから一変。
そこらの大きな野獣も逃げ出す恐ろしい形相へと変わっていた。
「ぴぃぃ!! ご、ごめんなさいぺぅ!! ゆ、ゆゆゆ許してほしいぺぅぅ!!」
「ああもう。使えない……」
サファンが軽蔑の目でプケプケのライダーをひと睨みし、不機嫌そうに椅子に座り直す。
「がはは! 二回も落ちたら流石にくたばっているに決まってますぜ! 早く祝勝の宴を開きましょうぜ!!」
……そして、アングと呼ばれる少年が空気も読まずに高笑いし、宴の提案をしてしまった。
やはりというか苛立っているサファンにとって、その能天気な発言は更なる”燃料”だった。
「うるさいわね! 貴方の馬鹿っぷりにもほんっとうんざりするわ!! この前、ハンターの道具ごときでリオを仕留める前に戻ってきたし、貴方も使えない馬鹿よ!!」
あまりの気迫に荒々しく豪快だったアングが押され、声がサファンに対する恐怖で小さくなっていった。
「うっ! そんな『馬鹿馬鹿』って何度も言わなくてもさぁ……」
ミスを犯した部下達に苛立っているサファンの顔は歪み、突然ヒステリックな声で叫び出した。
「頭から足先まで大馬鹿な貴方達は存じないでしょうけど、この世には『念には念を』って言葉があるのよ! あの子を舐めてはいけないわ。すぐに確認しに行きなさい!!」
「ぴぃ! ぐすっ、行ってくるぺぅ〜〜……」
◇
【謎の前哨基地 檻】
「ぴぃ〜……早く行かないとぉ!!」
「プケェウ……」
檻の前で見張りをしていたドスジャグラスとドレッドヘアーの少年ライダーの耳に、涙声の少女の声が届く。
「ふぅ……またサファンの姉御か怒ったのかよ? マジでこえーなぁ」
「グルルゥゥ……」
ドスジャグラスのライダーが警備している檻の中からも、不機嫌そうなうなり声が聞こえてくる。
「んあ? なんだよお前。姉御の怒鳴り声で起きたのか?」
「グアアァァ!!!」
檻の中にいた大きな飛竜が興奮し、怒号をあげると同時に口から炎を放った。
バァァァン!!
「グワァ!?!?」
「うおおおっ!? 急に暴れんなってお前!! ドスジャグラスもビビってるじゃねぇかよぉぉ!」
飛竜の放った火力の高い炎ブレスによって、光沢を放つ檻に少しヒビが入る。
あまりの威力に見張り達の鼓動が一気に跳ね上がっていった。
「はぁっ、はぁっ……檻がなかったら間違いなく俺とドスジャグラスはあの世行きだったな。この檻ってカブレライトとノヴァクリスタルの特殊合金で出来ているらしいが、その檻すら壊れかけるって化けもんにも程があるだろうがよ……」
「グオオォォ!!」
まるで逆鱗に触られたかように、いつまで経っても飛竜の怒りは収まりそうにない。
「ひー、姉御すら比較にならねぇぐらいおっかねぇよぉ」
「しっかし、なんで上の奴らはこの”リオレウス”が欲しいんだろうな。ドスジャグラスよぉ?」
「グゥ?」
「いやぁ、お前が理由を知っている訳ねぇよなぁ」
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【ニウェス村 村長の家】
あの後、リオ達は倒れていた山賊を救出し、無事にニウェス村へ帰還した。
「リオ君がこの山賊を助けるなんてね〜」
「敵すら助けられるなんて、シビれるゼ〜!!」
山賊はもう戦う気力が完全に失ったらしく、大人しく椅子に座っている。
先程の威勢はどこへ行ったのやら。か細い声でリオ達に話しかけてきた。
「おい、おめえ……なんで敵である俺様を助けたんだ……? また暴れるかもしれねぇのに……」
「ははは。『なんで助けた』って、お前が助けを求めてきたんだろ? それに、もう悪意を感じない目になっていたからな!」
リオが山賊を元気付けるように明るい笑顔を見せる。
「……そうかよ。これから俺様をどうするつもりだ」
「ああ、それなんだけど……あ、おばあちゃん!」
村長の家に暖かく濃厚な香りが漂う。
「ほらほら、山賊さぁん。外は寒かったでしょう? 早くポポノタンのホットシチューをお食べ!」
ニウェス村の村長がポポノタンのホットシチューを山賊に振る舞ってくれた。
「あぁ!? い、いいのか? じゃ、じゃあ……」
厳しい環境の中で過ごし続けていたのか、山賊はかなり空腹だったようで、ホットシチューにがっつき始める。
「……!?!? う、美味すぎるだろ!? 俺様が焼いたポポノタンよりも遥かにうめぇ!?」
別に自分が作った訳ではないが、つい嬉しくなったナビルーが得意げに語り出す。
「ヘヘン、シチューだから身体もあったまるだろ〜? 村長と料理の手伝いをしたリオに感謝しろよ?」
「お、おめえ。シチューまでくれるのか!?」
「お前、たぶんホットドリンクを飲んで外で野宿していたんじゃないか? 例え防寒できても、その格好で雪山生活は寒すぎると思ってな。俺も前の事件で身体が凍える辛さが十分分かったし」
「ぐぅぅ……!! ありがてぇ。本当にありがてぇ……!!」
ついに山賊の目から大粒の涙がこぼれ落ちていった。
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……
「……『砂漠のライダー村から旅に出た』?」
「そうだぜ。俺様の故郷は貧しい村でよ。治安も悪くて食べ物を盗まれるし、空腹が当たり前だったんだぜ」
砂漠……今まで行った事あるフィールドは緑の多い森や寒い雪山の二つしかなかったが、遠い場所には暑く草木も少ない砂漠があるようだ。
「砂漠かぁ……ここにはいないモンスターもいるんだろうなぁ!」
この大陸を旅していくにつれ、もっと色々な環境の地やそこに適応したモンスターを見れるかもしれない。
勿論リオの一番の目的はモンスターの調査ではなくレウスの奪還と紅力化の解決だが、まだ見ぬモンスターが沢山いると思うとワクワクが止まらなかった。
「オトモンはいないけど、オマエはライダーだったのだな。分かるゾ。ハラヘリのツラさはナビルーもイタいほど分かるゾ」
「それで、いい食いもんを求めて世界を旅する事になったんだがよ。どこもかしこもやべぇモンスターばかりでな……。俺様はいつしか強くなりたいという気持ちが強くなって、『誰かからオトモンと装備を奪おう』って考えちまったんだ」
やはりポポが数を減らしていた要因は山賊。
しかし、『食料に悩まされていた』と聞き、心優しい村長は山賊を咎める事はできなかった。
「そうかい……だからあんたはポポを狩ったり、ライダーを襲っていたんだねぇ」
「ああ、すまねぇ。今後は足を洗い、二度とこんな事はしねぇと誓う……そして、リオとやらにお願いがあるんだぁ!!」
先程の元気の無さは何処へやら。
急に山賊が立ち上がり、恩人であるリオに真剣な顔を見せる。
「えっ? なんだ?」
そして、緊張した顔で山賊は床に跪き、意外な提案を懇願した。
「リオ、俺様を仲間にしてくれ!! どうしても俺様はライダーとして強くなりてぇんだ!!!」
「……はあぁぁ!?」
続く
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●今回のおまけ
フルフル︎
別名:奇怪竜
種族:飛竜種
レア度:★4
属性・状態異常:雷属性、麻痺
主な生息地:沼地、雪山、洞窟、密林
暗い場所にいる大型の飛竜。骨格はリオレウスのようなメジャーな飛竜種の形だが、全身白くてぶよぶよした皮膚に覆われていて、丸っこい顔には目が無く唇と無数の歯が。そして長く伸びる首と思わず耳を塞いでしまうほどの奇声のような咆哮と、とても珍妙で不気味な見た目をしている。
走行や飛行する事はあまり好んで行なわず、その代わりに壁や天井に張り付いて死角からの不意打ちを得意とする。
また、天井から落とす唾液は強酸性で、防具を溶かすほどではないが危険。
そしてフルフルの最大の武器は痺れる電気である。口から球体の雷ブレスとして吐くのは勿論、全身から放電し接近した敵を感電される事も。
麻痺する可能性もあり、麻痺して動けなかったり油断している相手に首を伸ばして覆うように捕食する。
フルフルは目がない代わりに嗅覚が発達して獲物を探すので、食べられて拘束された時や追い払いたい時は「こやし玉」という悪臭を放つアイテムを当てるといいだろう。
オトモンのフルフルは指示をされれば意外な事に走ったり飛行をすることは可能だが、得意な部類ではないようだ。やはりフルフルが真価を発揮するのは、気配を消しての不意打ちや壁や天井を活かした戦い方だろう。
その為フルフルをライドするにはトリッキーな戦い方を磨き、天井に張り付いている時も鞍に掴まっていられる体力が必要だろう。
◯主な技
⚪︎咆哮
音爆弾に匹敵する大きな咆哮をあげて、相手をダウンさせる。
⚪︎吸血
相手に噛みつき体力を吸い取る。
⚪︎首伸ばしかみつき
首を伸ばして敵らを薙ぎ払うように噛みつく。
⚪︎豪雷ブレス
強力な球体の雷ブレスを口から放つ。あまりの電力に食らった相手は麻痺してしまう。
◯絆技
⚪︎フルスパーク
天井に張り付くフルフル。鞍に捕まってぶら下がったライダーが身体を動かし、振り子のように揺れ、それと同時にフルフルは電気を溜める。
揺れの勢いがついたの見計らってフルフルは跳び、着地と同時に大放電を行い相手に大ダメージ。
食らった相手は麻痺することもある。
天井に張り付いたり振り子の状態から勢いよく跳ぶので、乗っているライダーは少し苦労するかもしれない。